カイルたちは物資保管所から地上軍基地に帰ってきた。
早速ディムロスのところへ行こうにも全員疲労が重なっており、とりあえず、話をするのは明日、ということにして、一旦体を休めに部屋へと戻った。
「はぁ〜・・・心温まりますなぁ」
「どこぞの温泉旅行に行ったじいさんみたいだな」
「実際、随分とお歳なんだろう」
部屋について椅子に座って開口一番、が思いきり気を抜きながら―――いつも抜けているところはあえてつっこまない―――言うと、ロニが苦笑いしながらつっこみを入れ、さらにジューダスが他人事のようにロニに返した。






my way of living 65
〜子供の悪戯なめるべからず〜







一番年長のロニと、一番精神年齢が高いと自称するジューダスにつっこまれ、は一人怒りのおサル化していた。
「きぃぃぃ!なんだよー!ジューダスなんてもっとじじくさいじゃないか!喋り方とか考え方とか!」
「僕のはじじ臭いんじゃない。大人というんだ」
「そういう言いまわし子供だけどな」
「お前は黙ってろ」
「やーい子供子供〜〜」
「僕より子供な奴に言われても、痛くも痒くも無い」
口喧嘩がそのままじゃれあいになるのはいつものこと。
今回は室内とあって、剣をださないだけまだましだ。(二人の場合、室内でも剣を出す時があるが)
どこまでも終わらなそうな二人のやり取りを見て、ロニが一人ため息をついた。
「ディムロスさん、どうしてアトワイトさんのことを助けに行かないのかな・・・。そりゃ、悪いことかもしれないけど、でも、やっぱり・・・」
「お前がディムロスの立場だったらどうする?」
「ジューダス、ものっっっっっ凄く緊張感無いぞ」
お茶を飲みながら浮かない顔をするカイルに、の手を取り押さえながらジューダスが問いかける。
がべっと舌をだしながらつっこむと、ジューダスは誰の所為だ!とを蹴った。
「仲間を危険にさらすことになっても、世界中を敵に回すことになっても、助けに行くか?・・・・それを選ぶことは容易なことではないぞ」
蹴られたはベッドにつっぷしながらうめいており、とりあえずナナリーが「だ、大丈夫?」と声をかけている。
見慣れたロニは完全に無視して、「そうか・・・お前もそうだったよな、ジューダス」とさりげなく会話に参加だ。
「いいかカイル、お前にもいずれそういう選択を迫られる時がくるかもしれない。どういう答えをだそうとお前の勝手だが・・・後悔だけは、するんじゃないぞ」
「・・・うん」
「ねぇ、死に掛けてるんだけど」
「そいつはほっとけば直る」
「心配しろよ失礼なっ!!」
カイルが頷き、一人何かを模索しはじめたころ、ナナリーがの背中に手を置きながらジューダスの方に振り返る。
ジューダスがやる気なさそうに言うと、ナナリー曰く死に掛けていたがガバッと顔を上げた。
驚いたナナリーは引き、ジューダスは嫌味を投げてとまたじゃれあいはじめる。
ロニが的確な動きでナナリーを救助に行った。
「危ないから、とりあえず離れとけ」
「う、うん」
「私、ちょっと、出かけてくる」
「おう。あんまり遅くなるなよ!」
「「毎度人の台詞をとるなっ」」
ナナリーにロニが手を貸していると、リアラがさりげなく外に出て行く。
それに返事をしたのはロニ、の台詞を真似したで、じゃれあい途中だったジューダスも、手を貸していたロニも思わずつっこみを入れた。
が一人沈んでいると、カイルが顔をあげて「あれ?リアラは?」と言い始める。
天然ボケを炸裂させたカイルに全員ため息をつくと、それぞれお茶を入れたりじゃれあいを続行したりとカイルを無視して行動しはじめた。
あまりにじゃれあいが続いたとジューダス。
が「ちょっと外でようぜ」とジューダスを誘い、ジューダスも本格的に喧嘩をするのかと首をかしげながら部屋の外にでた。
「ディムさんのこと、周りにばらしちゃおうよ」
「・・・・それはお前の趣味か?」
「バカ言え裏工作だ」
「結局たちが悪いことこの上ないな」
廊下に出てすぐ、こそっと耳打ちしてきたの言葉にジューダスは呆れたようにため息をつく。
ええやん、よくないだろ、と二人がこそこそ言いあっていると、ジューダスの後ろからシャルティエが現れた。
「あ?なんだお前ら、こそこそと。普段に増して怪しいな」
「あらシャル。・・・・いいところに現れた」
「ロクなこと考えて無いときの顔だな」
シャルティエの姿を目に入れてにやりと笑ったを見て、ジューダスがさりげなくつっこみを入れる。
そんなことないザマスよ、とやけに甲高い声でジューダスに言い返すと、はこそっとジューダスに耳打ちした。
「・・・そんなことやると思うか?」
「やるってやるやる!まあ、俺にまかせとけって。お前も合わせろよ」
「なに不届きな会話してるんだ、そこ」
の言葉を聞いてあからさまに顔をしかめたジューダス。
危険を察したシャルティエが早速つっこむ。
「不届きと言えばたしかに君の耳には届いて無いけど」
「意味違うだろ」
「まあ気にすんなって。我々の口で今すぐ届けてあげようじゃないかっ!」
「いや、いい、いらない。なんかいやな予感がする」
「またまたぁ〜〜勘がいいんだからぁ☆」
「すっかりバラしてるがわざとか?」
シャルティエがの言動を見て引きながら手を振ると、はばしっと裏手をだした。その後さらにジューダスからのつっこみだ。
そこら辺は無視してさっさと話をすすめるだが、シャルティエはそそくさと自室に入ろうと歩き出す。
「シャル、ストーーーップ。俺達に協力しないと、ちょっぴり痛い目にあうよん♪」
「もう十分だっ」
「楽しい人生」
に止められ、振り返りながらつっこみかえしたシャルティエは、のつぶやいた言葉を聞いて固まる。
なるほど、とため息をつくジューダスの隣ではにやりと笑うと、さらに言葉を続けた。
「プレッシャーに負けない」
「いい上司・悪い上司の見分け方・・・」
「っだーーーーー!!!もういい!!わかった!協力する!!したらいいんだろ!!」
とジューダスが、それこそ周りに聞こえるか聞こえないかくらいの大きさでぼそりぼそりと本の名前を読み上げていく。
シャルティエが折れて叫んだ。
してやったりとにやりと笑うがジューダスに顔を向けると、ジューダスはやれやれ、といった感じにため息をついた。
協力することに決まったシャルティエと元々数に入れられていたジューダス、主犯のは、イクティノスにバレては後が無いと場所を移動する。
場所は一般のいる最下層に続くエレベーターの前の廊下だ。
「で、僕達はなにをやるんだ」
「だーから、ただたんにディムさんとアトワ姉さんのことを噂するだけ」
「それに何の効果があるっていうんだよ」
「フフフ・・・・まぁ、お楽しみだよ。シャルに悪い役はやらせないし、噂っていうものの恐ろしさが、後できっとわかる」
まだ不服そうなシャルティエにフォローを入れると、は怪しく笑い始める。
まずはこうしてこうして・・・とが二人に作戦を話す。
あらかた伝われば、ジューダスとシャルティエからも色々と意見がでた。
結構乗り気だね、とが二人に言うと、ジューダスもシャルティエも「仕方なくだ」とか「ディムロス中将のためだ」とか言い訳を言った。
「で、問題はこれをいつ何処でするかってこと。なるべく人の多いところのほうが当たりはでかいと思うんだけど・・・」
うーんと考え始める
すっかり乗り気になっているシャルティエがそれならと声を上げる。
「場所は最下層で、夕食の時がいいんじゃないか?一般市民と兵士とが一緒になって食事をとるから」
「そうか。そこならディムロスも、カーレルやイクティノスたちも顔をださない」
「そういうこと」
長年ここで生活をしているだけあるシャルティエの言葉に、ジューダスが頷きながら顔をあわせる。
顔をあわせて3人でにやりと笑うと、「それじゃあ、決まりだね」とが作戦会議に終止符をうった。
「んじゃ、ちょっぴり練習」
というにシャルティエとジューダスがそれぞれいやそうな声を上げたが、強制的にに練習をさせられてしまった。
「うーん。シャルがぎこちない!もっとなりきろうよ!」
「む、無理言うなよっ。元々僕は軍人だぞ?」
「俺にはこっちの才能もあると思ったのにな・・・」
「悪戯の才能か?」
残念そうに目を伏せたに、さりげなくジューダスが言葉をつけたす。
ちょっぴり期待していたシャルティエは、が舌打ちするのを見てそんなのいらない!と叫んだ。
「ジューダスは合格!シャルはもっと練習!」
「そんなぁ〜」
つき合わされるのが目に見えて分かっていたジューダスは、さっさ要領良くなりきって役をやりこなした。
そんな芸当持ち合わせていなかったシャルティエは、恥ずかしさもあって乗り切れず、結局に居残り(?)を言い渡された。
が、そこでふとシャルティエは思いついた。うなだれていた顔をぱっと上げると、に向ってにっこり笑う。
「それじゃあ、マンツーマンで教えてくれよ、先生」
「先生?」
「そうそう先生。どうも他に人がいると乗り切れ無いし、一人で練習してるのも寒いから、どこか人のいないところで稽古つけてくれよ」
シャルティエの顔には、人の良さそうな笑み。うさんくさい。
ジューダスがところどころの言葉に反応して怪訝な顔をしているのをちらりと確認すると、シャルティエはね?とに問いかけた。
はとにかく悪戯を成功させることしか頭になく、即答で「いいよ」と答える。
シャルティエに「じゃ、いこうか」と手を引かれ始めた。
「待て」
シャルティエがさりげなくの手を引きながら歩きだすと、ジューダスがすぐさま呼び止めた。
シャルティエがなに?と噴出しそうになるのを我慢しながら振り向くと、ばっちり不機嫌そうなジューダスと目が合った。殺気立っている。
「僕も行く」
「いいよ。それに、二人じゃなきゃ意味が無いしね(お、面白いーーっこのガキ!可愛いなぁ若いって)」
そいつだけじゃ心配だとつけたすジューダスにくすりと笑うと、シャルティエは二人の部分を強調しながらにっこり笑い返す。
それからなにやらにこっそり話しかけ、二人で笑いあうと、「それじゃ」とジューダスに手をあげて颯爽と歩いていった。
「・・・」
残されたジューダスは眉間にしわを寄せ、それからくるりと二人の歩いていったほうに背を向ける。
「ジューダス、なんか不機嫌だったなぁ」
「だから、今言っただろ?隠れて寂しがりやなんじゃないか?って」
ずんずん遠ざかっていくジューダスの背中を心配そうに見るに、シャルティエは笑いを堪えながら返事をかえす。
そうなんだけどね〜とくすくす笑いながらは手を引かれ、シャルティエは堪えられなくなり小さく笑い始めた。
結局、シャルティエにしてみればジューダスはただの若造。すっかり遊びにはまってしまっている。
「さて、どこで練習をしようかな」
ジューダスでちょっぴり遊び、気分の浮いていたシャルティエは、この後の練習で死ぬほどしごかれることになる。


二人がいなくなった後、ジューダスはずんずんと目的もなく歩いていた。
リアラを探しているというカイルたちとすれ違い、ジューダスは一人部屋に戻った。
部屋に入ると、思いつめた顔をしたリアラがいた。
「・・・この旅の終わりを、ディムロスの苦悩の中に見たか?」
「・・・ジューダス」
察しのついたジューダスは、人が入ってきたことにも気付かないリアラに声をかける。
リアラは驚いたものの、視線を戻して「うん」とうつむいた。
元気の無いリアラを見てため息をつくと、ジューダスは目を細めて窓の外に視線を投げる。
「お前が見出した幸福の形・・・神の力にすがることを否定し、人が人として生きていく道・・・。それがたどり着く先は一つしかない。神の否定・・・即ち」
「フォルトゥナの否定・・・」
「そうだ・・・。それは僕たち自身の否定でもある」
ジューダスの言葉に淡々と言葉を返すリアラの声は、力なくうなだれる姿と違って凛としていた。
頷きながら言葉を続けたジューダスは、次第に顔を下に落としていった。
「神に作られた僕たちという奇跡の否定。カイルはいずれその意味に気付く。道を歩き続けることで、お前を・・・」
「ねえ、ジューダス」
ジューダスの言葉を遮るようにリアラが顔を上げる。
ジューダスも顔をあげて「・・・なんだ」と返した。
「カイルは強い人だよね。どんなことがあっても・・・自分が選んだ道を、歩いていってくれるよね。・・・たとえ、一人になっても・・・」
「・・・お前はそれでいいのか?」
「っ私は、・・・聖女の運命を背負って生まれたから・・・・一人の女の子である前に、聖女だから・・・」
一瞬言葉につまったリアラは、ふっと息を吸うと、それから、諦めたように眉を下げる。
ジューダスはそんなリアラを見ると、しばらく沈黙した。
「・・・・・もう一度聞く。本当にそれでいいのか?リアラ」
ジューダスがまっすぐにリアラを見て問いかける。
リアラは表情をくずし、泣きそうな顔になった。
「・・・わからない・・・わからないよ、そんなの・・・・・・」
リアラが両手に顔をうずめると、ジューダスは顔を背ける。
しばらく二人が何も喋らないでいると、シャッと扉が開いた。扉の向こうに立っていたのは、申しわけなさそうに二人を見る、だ。
「・・・ごめん。聞いちゃった・・・」
「・・・いいの。カイルたちじゃなければ」
「お前にも関係のある話だ・・・半分はな」
はっとしたリアラは急いで涙を拭いたが、だったことが分かるとほっと胸をなでおろす。
ジューダスも胸をなでおろしたが、よかった、と言うの声を聞くと、すぐに不機嫌な顔になった。
「まぁ見ての通り俺ですんで、意見する頭はもってませんわ」
「分かっている」
「理解があるのはいいのだけど、嬉しいんだか悲しいんだか?」
「えっと、悲しむべきだと思うわ」
「そっか☆じゃ、悲しんじゃお。しくしく、せめて期待してほしかったわ・・・」
「悪い期待しかできんな」
首をかしげるにリアラが少し考えてから答えを返すと、はすぐに頷いて泣き真似をしはじめる。
そんなにジューダスが嫌味を飛ばすが、は「だっろー、もう俺ってばスーパールーキー?」とわけのわからない言葉を返してきた。
リアラが二人のやり取りを見て笑っていると、カイルたちがぞろぞろ部屋に戻ってくる。
なにやってんの?とジューダスたちを指差しながらカイルが問いかける。
リアラはもう一度ぷっと吹き出した。
「はげましてくれてるの」
くすくす笑いながらリアラが言うと、カイルもロニも首をかしげた。
その内剣を抜き出さん勢いになりはじめると、リアラは「・・・多分」と言葉を追加したが。
「そーうだ坊ちゃん、そろっと作戦決行だぜ♪」
「・・・楽しく授業でもしたのか。エセ教師」
「だからなんちゃって教師だって。じゃなくて行こう!もう俺の教育のおかげでシャルってば素敵に大変身!って、なに拗ねてるのさ?」
「誰が拗ねてる」
一人手を組みながら自分を誉めていたは、さっきからふてくされた顔をするジューダスに首をかしげる。
ジューダスは睨みながらに言い返し、はというと、首をかしげながら「お前が」と素直に返した。
「目は大丈夫か。うつつをぬかして、頭がおかしく・・・元からか」
「うつつなんてぬかしてないし。っていうかそこ認めるなよ!」
途中から頭の部分を確認しなおしたジューダスにズバッと裏手を入れる。
は時計を見て「ああっ!」と声をあげた。
「とにかく行くぞ!」
夕食の時間まであと5分。遊んでいる場合ではないと、がジューダスの手を無意識に掴む。
ジューダスはパシッと手をはらった。
「・・・そこまでしなくてもいいだろ」
「・・・フン」
「もうわけわかんねえ。昔に戻ってんじゃないの!さっさと行くぞお坊ちゃん!」
「仮面の羽を引っ張るな!」
リオンであった頃の、一番最初に仕事をしていた頃のような状態に戻ったジューダスを見て怪訝な顔をしただったが、とにかく時間がないと騒ぐと仮面についている羽を引っ張って走り始める。
まさかそうくると思っていなかったジューダスは慌てて仮面を抑えると、に間に合うように走って部屋を出て行った。
廊下には青い顔をしたシャルティエが真ん中の階段の横にしゃがんで座り込んでおり、その姿を見たとたん、ジューダスは不機嫌な空気もとばして思わず「ど、どうした・・・?」と問いかけた。
「ど、どうしたもこうしたも・・・あいつ・・・あいつ・・・スパルタだぁ〜〜」
ヘルプ!としがみついてきたシャルティエにやはり同情の目を送る。
ジューダスはふっと一つ笑いを落としてに「アホか貴様は」と文句を言った。
「なにがさー」
「アホだからアホだといったんだ」
さきほどからジューダスに冷たくあしらわれたりアホだ馬鹿だと罵られてばかりだったは、いつものことだが口を尖らせる。
ジューダスはボケにもっていかず怒るを見てしてやったりといった感じに笑うと、やはり「アホだ」と返した。
「わけわかんねーよ!俺の何処がアホじゃー!」
「いうなれば全てが・・・」
「シャル〜〜?もっぺん授業しなおそうか?」
「いい!いい!遠慮しときます!」
「・・・一体なにをされたんだ」
まったくもって的を得たシャルティエの言葉に、がにっこり笑いながら脅しを入れる。
またジューダスにしがみつくシャルティエを見て、は笑い、ジューダスは怪訝な顔をした。
機嫌の直ったらしいジューダスと、練習でばっちりになったシャルティエと主犯のは最下層に移動。
手始めに、どこでやるのが最適かとキョロキョロ辺りを見回した。
「よし、あそこら辺でやろう。あそこら辺」
「なんだかんだいってやる時は楽しそうだね」
「悪戯好きそうだからな・・・シャルは」
「な、んなっ、あーーーもう、いいからいくぞ!ガキども!」
とジューダスに色々言われて恥ずかしさに赤くなったシャルティエだったが、大声でつっこみを入れるとさっさと歩き始める。
目的のポイントにたどり着くと、がニヤリと笑って「作戦開始!」と小声で無駄に掛け声をかけた。
「聞いたか、ディムロス中将の話」
「ああ、アトワイト大佐が攫われたっていう、あの話?」
まず手初めに声を上げたのは、ジューダス。
それにのるようにが話を続ける。
次に登場するのは、ようやく地獄の練習を終えたシャルティエ。
「酷いものだよ・・・仲間を、特に恋人であるアトワイトを盾に逃げたって話しだ。今もどこかに隔離しているらしい」
「うっへ〜。マジで?」
「場所は確定できてないのか?」
「それが、まだわからないらしい。ただ分かっているのは、そいつがディムロス中将に恨みがあるってこと。アトワイト大佐が無事だといいんだけど・・・」
ここまでが決められた台詞。
ここで一旦周りの反応を見て、それからアドリブで文句でも言おうかという話しだった。
最初に作戦会議をした時よりも随分らしくなったシャルティエの演技に、どころかジューダスまでもが思わず笑ってしまう。
うーんと顎に手をやりながらシャルティエがため息をつくと、ちらりと周りの目を確認したが「そうだよね〜」とアドリブを開始した。
「女を攫うなんて考えらんない!」
「悪役のセオリーだな」
「あ、そっか・・・・・そうなのか?でもさぁ・・・恋人をだよ?ディムロス中将も気が気でないだろうに・・・」
「だよなぁ。どこの馬の骨ともわからない男に、最愛の人を攫われて―――」
「あの、シャルティエ少佐」
かかった。
・・・と、シャルティエの後ろから聞こえてきた声を聞いたとシャルティエの顔には、それがありありと書いてあった。
普段の顔にもどしてシャルティエが振り向くと、不安に表情を固める数人の兵士たちがいた。
「今の話は本当ですか?」
「ああ、本当だとも。あのクレメンテ老とベルクラント開発チームの救出作戦のとき、確かに攫われたと・・・この子達が見ていた」
「そ、それじゃあアトワイト大佐がいないのは本当に・・・!!」
「うん。俺達ハロルドの護衛なんだけど、目の前でアトワイト大佐が青くてゴツイ男に攫われて・・・ね、ジューダス」
「ああ。それに今上層部のほうで、アトワイト大佐の救出作戦を行うかどうかの審議がされているはずだ」
「本当ですか?!」
「間違いないよ」
話が盛り上がるにつれ、段々と人が集まってくる。
それから数分後。いつの間にやら勝手に話題が一人歩きしているのを見て、シャルティエもジューダスも唖然とした。
「な?噂ってーのは凄い威力だろ?物がすごければ嘘でも早く回るし、尾ひれもつくしで、たちが悪いのなんの」
「・・・この作戦を考えたお前もお前だよ」
「ハロルドでもきっとこうするね。内的要因に見込みがないなら、外的要因によって変化を促すってね〜♪さーて種まき終わりー!」
さぁ飯だ飯♪とスキップしだすとは裏腹に、周りでは色々な話しで兵士達がこそこそ盛り上がっている。
ジューダスとシャルティエは同時にため息をつくと、ちらりと目を合わせてからの後を追った。



そしてその翌日、事件は起きた。
「しまった寝坊だ!」
白状なジューダスは寝起きの悪いを無視し、同じく起こせなかったのだろうカイルたちとどこかへ行ってしまったらしい。
はすぐさま支度を整えると、「別に急がなくてもいっか」と開き直り、テーブルの上においてあった朝食を食べてのんびり外に出た。
外には兵士達はいなかったものの、ディムロスの部屋の前でカイルたちが集まっていた。
「よぅよぅみなさん。どうしたので?」
「あ、、おはよう!今から起こしに行こうと思ってたんだ」
なにやら気分が浮いているらしいカイル。
はとことこ歩きながら「うんうんそれで?」とカイルに問い返した。
「あのね、ディムロスさんが後で話して疲れて、スパイラルケイブに閣下が待ってて、兵士がアトワイトさんで軍をやめて勝手に決めた!」
「へ〜、思い切ったことしたねぇ。それじゃ、俺も同行させていただくよ」
「ホント?!よかった〜。だけに了解得てなかったからさ」
「・・・つーか、なんで話し通じるんだ?」
一気に言おうとして混乱したのか、はたまた素なのか。
カイルの謎の言葉を聞いて、はうんうん頷きながら会話を進める。
二人のやり取りを見ていた仲間達は驚いたり呆れたり。中でもロニが、声にだしてつっこみをいれるほど困惑していた。
「本当に通じてるのか?」
「え?ディムさんのところに行ったけど疲れてるから後にって言われて、スパイラルケイブにて待つって手紙が来たって兵士が入ってきて、アトワ姉さんを助けに行くのに軍を勝手に辞めちゃったんだけど、一緒に行く?って。カイル言ってたじゃん」
ねー?、と一緒に首をかしげるとカイル。
嫌味半分で聞き返したジューダスとやはりやり取りを見ていたロニやナナリーやリアラは、諦めてため息をつく。
荷物を部屋へとりに行った一行は、部屋を管理してくれていた兵士に挨拶もそこそこ、さっさと地上軍基地を後にした。







続く
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なんとも微妙な終わり方〜。え?ここまで適当にやらずにちゃんと進めろ?
そ、それは・・・・・彼らにかかって(待て)
さーてスパイラルケイブだー☆(逃げるなよ)シャルはお留守番。ていうか彼遊びすぎ(笑)未来のマスターになんてことを!
いやーもう素敵過ぎて涙が・・・・・最近頭がおかしいです。え?前から?
ではでは、ここまで読んで下さった方、ありがとうございました〜