「――以上で、今回の作戦の結果報告を終わらせていただきます」
ダイクロフトから帰ってすぐ、ディムロスたちソーディアンチームとハロルド、そしてカイルたちは会議室で今回の作戦の結果報告をしていた。
ディムロスが全ての話を終えると、リトラーは顔を上げて全員を見回す。
「開発チームを無事に救出できたことで、作戦は成功したといってもいいだろう。諸君、ごくろうだった。なお、とらわれたアトワイトについてだが、彼女の捜索を行うかどうかは、上層部で会議にかけて決めたいと思う」
「そんな・・・・!」
リトラーの言葉を聞いてすぐ、リアラが表情をこわばらせる。
もちろん、同じく話を聞いていたカイルたちも、似たような反応を示した。
my way of living 64
〜鈍チンとフラレマン〜
「どうして、今すぐアトワイトさんを探しに行かないんですか!?」
カイルが抗議の声を上げる。
ディムロスがすぐに「ダメだ!」と険しい声で返事を返してきた。
こうなることもすでに知っていたは、やる気なくため息だ。
「これも、全部知っていたのか?」
うつむくに、ジューダスが声をかける。
は片眉を上げながら苦笑いすると、「ああ、その通り」とジューダスに返した。
「嫌だね〜こういう空気。もっとのんびりできるようなのがいいなぁ」
「いつもそののんびりできる空気とやらを壊しているのは、どこのどいつだ」
「まあまあそこら辺気にするなって。カイルが一騒動やらかすぞ〜」
「・・・!カイル!」
ため息をつきながらにつっこみをいれたジューダスは、笑いながらカイルを指差したにつられてカイルに顔をやる。
未来のことを話そうとしていたカイルを慌てて止めたジューダスだったが、その後続いたディムロスの言葉に、カイルはまだ食って掛かった。
「止まりそうに無いね」
「あいつと同じだな」
「スタンも、バカがつくお人好しだったもんなー。あーあ。早く終わんないかなー」
「・・・少しはやる気をだしたらどうだ?」
頭に手をやりながらやる気なさそうにあくびをするに、ジューダスが顔をしかめながらつっこんだ。
しかし、は「無理無理」と手を振り、カイルたちのやりとりをぼーっと観戦し続けた。
「・・・俺、もう見てるの嫌かも」
はくるりと背を向けて椅子に座る。
ジューダスがため息をついたところで、カイルが大声を上げた。
「あなたは英雄なんかじゃない!ただの腰抜けだッ!」
何度もゲームの中で見てきた場面。実際この目で拝むとはね・・・とぼそりとがつぶやくと、ジューダスは首をかしげた。
周りのソーディアンチームも、リアラたちですらなにも言えず、しんと静まり返る会議室。
暗く重苦しい雰囲気と刺すような空気でいっぱいだ。
嫌だね、とまたがため息をつくと、クレメンテが「もうよい、もうよい。それくらいで気が済んだじゃろう」と喧嘩する二人の間に入った。
「確かに非常な決断かもしれんが、人の上に立つ者は時にこうした難問に直面することがある。その辛さを、お前さんもわかってやって欲しい」
「・・・」
クレメンテの言葉に何も言い返せなかったカイルを見ると、リトラーは話のおりがついたと判断して声を上げる。
「では、会議はこれにて終了する。あとは各自、次の命令があるまで待機していて欲しい。ディムロスの言うとおり、最終決戦の日は近い。十分に英気を養ってくれ」
リトラーが会議を終了させた後、ディムロスはすぐに会議室を出て行った。
カイルは深刻な顔をしてリアラと会議室を出て行き、ロニとナナリーはそんなカイルを心配そうに見ながら後を追って出て行った。
残ったのは、とジューダスとハロルド、そして残りのソーディアンチームだ。
「はぁ〜〜。疲れた〜」
「あんた、なにもやってないじゃない」
ハロルドやカーレルたちの座っている真ん中のテーブルまできて、はべたーっとテーブルにつっぷす。
ハロルドが呆れながらつっこみを入れると、はがばっと顔を上げて「ああいう空気苦手なの」と言い返した。
あそ、とハロルドがそっけなく言葉を返し、シャルティエがはぁー・・・とため息をつく。
「あーあ・・・強くなりたいなぁ」
「なにを急に。シャル十分に強いじゃん」
「お前より強いのなんてあたりまえだろ」
「酷っ!」
シャルティエの半分本気の入った返答に、は思いきりつっこみ(?)返す。
酷い酷いと騒ぐを無視して、シャルティエはさらにため息をつく。
「もっと僕が強かったら、あの時見ているだけでなく、アトワイトを助けることもできたかもしれないのに・・・・」
「それを言ったら、私だって何も出来なかった。彼女が攫われる時だって、ずっと脱出用ポットの中から見守ることしか・・・」
シャルティエに続いてイクティノスが声をあげ、静かになる。
クレメンテがふぅ、とため息をついた。
「そもそも、アトワイトでなくワシがつかまるべきだったのじゃ。老い先短いこのワシが・・・・」
「じゃあなに?じいさんを助けようとした、すべての人の思いを、無視するつもり?」
暗い声で喋りだすクレメンテに、ハロルドが腕を組んで鋭く言葉を返す。
「・・・・たしかに、お前さんのいう通りじゃ。すまん、ハロルド」
クレメンテは苦笑いして素直に謝った。
わかればよし、とハロルドが頷いていると、ハロルドの隣に立っていたカーレルが口を開く。
「ディムロスは今、微妙な立場に立たされている。だが、すべてを彼にゆだねるしかない・・・」
話しにおちをつけるように、カーレルがテーブルを見つめながら言った。
全員それをきいて無言になると、それからは気分でも変えるように、別の話題に話を持っていった。
支給された部屋に戻ってみると、カイルたちはまだ暗い雰囲気のまま、椅子やら床やらに座っていた。誰も話した様子も無い。
ジューダスが入ると、カイルはぱっと顔を上げ、それからまた元の位置に戻した。
「ねえ、」
「なんだいカイル?」
「こうなることも、全部知ってた?」
いつも通り軽いノリでは返事を返したが、カイルは落ち込んだ様子でたずねる。
カイルの言葉を聞いたは、「知らなかった、といったらうそになるね」と遠まわしに答えを返した。
「それじゃあ、これからどうなるの?ディムロスさんは、本当にアトワイトさんを助けにいかないの?!」
顔を上げて段々と熱の入ってくるカイルに、は肩まで手を上げてため息をつく。
「カイル、それはいえることじゃない」
「どうしてさ!」
「俺は、お前らの未来を変える気は無い」
半分以上怒りの混じるカイルに、は有無を言わせない声ではっきりと言い返す。
カイルはの言葉を聞くと、ばつの悪い顔をして椅子に座った。
「やっぱり、こんなのってないよ・・・!仲間を見捨てるなんて、絶対にダメだよ!」
「だから、助けないって選んだんでしょ」
部屋に入ってくると共に、ハロルドがカイルに言う。
ハロルドの言葉を聞いて顔をしかめると、ロニは「おいおい、それ違ってんぞ」としかめ面でつっこみを入れた。
「仲間を見捨てちゃいけないのに、なんで助けに行かないんだよ?」
「ねぇ、人の命の重さって、どれくらいだと思う?」
ロニの質問を無視して急に問題を出してきたハロルドに、ロニはは?と首をかしげる。
「ディムロスは、地上軍の全兵士について責任を持ってる。つまりあいつは、それだけの重さの命をあずかってんのよ」
「・・・つまりディムロスは、アトワイト一人の命と引き換えに、地上軍の全兵士のことを優先した、と?」
「そういうこと。そして、一度決めたからには、それを貫く義務がある。それがあいつの持ってる、中将っていう肩書きの意味よ」
ハロルドの言葉を聞いても、まだ分かっていなさそうなカイルたちを見て、ジューダスがため息をつきながら言葉を続ける。
ハロルドが頷いてさらに蛇足をつけると、カイルはうつむいて無言になった。
「それより、ちょっといいかな?私、これからソーディアン完成に向けて総仕上げにかかんなきゃいけないの。でね、この前言った物資保管所の奥に、開かない扉があったっしょ?あの奥で、これからやんなきゃいけないことがあるのよ。だからもっかい、物資保管所へつれてってくんない?」
お願い!というハロルドに、カイルは微妙な反応しか示さない。
ソーディアンの開発、という大事な作業だから仕方なく、と言った感じで立ち上がるカイル。
ため息をついたは、空気を換えるようにカイルの背中をバンと叩いた。
「ほーら、いつまでもぐずぐずしてない!暗い顔してたんじゃ、いい考えも浮かばないだろ?いつもみたいに、ばーんと行こうぜばーんと!」
「呑気だねぇお前は」
「いつも呑気なこのメンバーに、なに言われたって痛かないよ」
「お前は中でもトップに入る能天気だ」
「はい、ジューダスナイスつっこみ」
ロニから始まるいつものコント。
サムズアップするナナリーになにを!と怒るを見て、カイル以外の全員が可笑しそうに笑った。
「カイル、行こう?」
まだ暗い顔をしているカイルにリアラが声をかけると、やっとやる気が出たのか、カイルはいつもの顔になってガバッと立ち上がる。
「そうだよな・・・いつまでもぐずぐずしてたって始まらないし。行こう、みんな。歩きながら考える!」
ぐっと手を握って言い切ったカイルに、リアラは安心したように笑う。
すっかりいつもの雰囲気になると、やれやれとナナリーがため息をつき、横からとロニが口に手を添えてカイルを冷やかし始めた。
「そうそう、それでこそ、我らがヒーロー☆」
「もとい、リアラの英雄カイルくーん♪」
「な、なにいってんだよ二人ともっ!」
カイルを茶化してロニとが笑っていると、ジューダスがため息をつきながら「バカはほっといて、さっさと行くぞ」と、久々におなじみの台詞を口に出す。
早速出発したカイルたちは、ディムロスのことについて考えるよりまず先に、やはり緊張感なく騒ぎ始めた。
そこら辺はいつものことなのでもはやジューダスもつっこみを入れない。
ハロルドはこれでいいのかと首をかしげ、気にしなくなるとどうでもよさそうにさっさと物資保管所までの道を歩いた。
「いっざすーすーめーや〜キッチーン♪めーざすーはージャーガーイモ〜♪ゆでたーら〜皮をむいーて〜グーニグーニーとつーぶせ〜♪」
「・・・なんなんだお前は」
なにが楽しいのか、はスキップしだしそうなテンションで、腕をブンブンふりながら歌いはじめる。
一気に気の抜けたジューダスは思わずつっこみを入れた。
他の仲間たちも苦笑いしたり笑ったり、とりあえず大体は呆れている。
「たまにない?ふと歌を思い出して思わず口ずさむ時」
「あるある〜☆」
人差し指を立ててが問いかけると、ハロルドが振り向きながら歌うようにのってくる。
そーだよね〜☆ととハロルドが手を繋ぎながら跳ねて回っていると、カイルが「今の楽しそうな歌なに?」とに問いかけた。
「お料理行進曲。カイルも歌う?」
「教えて教えて!」
ディムロスはいいのか。思わずジューダスは顔をしかめ、ロニは呆れ顔をした。
そのうち、カイルやリアラまで本当に歌いだすと、ロニは苦笑いし、ジューダスは諦めたようにため息をつく。
「さあゆーうーきーをーだし〜♪みじんー切ーりーだー包丁〜♪タマネーギ〜目にしみてーも〜♪なみーだ堪えて〜♪」
「炒めーよーうー♪ミンチ〜♪塩〜コショウで〜♪混ぜたなーら〜ポーテート〜丸く握ーれ〜♪」
行進しながら歌っていく様は、傍から見れば保育園児の遠足か。
他人のふりをしている数名を除いてだが、本人達かなり楽しそうだ。
「小麦ー粉〜卵ーに〜♪」
「パン粉ーをーまーぶーして〜☆♪」
「揚げれーばコロッケだーよ♪」
「カイルーは寝ーぼーすーけ〜〜♪」
「キャベツはどうした?!」
歌の最後をが変えると、カイルが即、つっこみをいれる。
リアラとハロルド、そして言った本人の、後ろの方でロニやナナリーまでもが腹を抱えて大笑いしていると、どこからともなくモンスターの鳴き声が聞こえてきた。
「よーしみんな、戦闘開始だ!」
カイルの一声でおう!と勢いよく頷いた仲間達だったが、結局、モンスターは袋叩きにされた挙句に逃がされる。
ぶーぶー文句を言うカイルたちを無視して進むと、物資保管所につてすぐ、ハロルドが「ここでいいわ」と振り向いた。
「送ってくれてありがとね。いつもなら兄貴に頼むんだけど、あっちはあっちで大変そうだったしね」
肩を竦めながらハロルドが言うと、リアラが「ソーディアンの仕上げ、がんばってねハロルド」とにっこり笑う。
ハロルドは少し目を泳がせて頬をぽりぽり掻くと、「完成したら、あんたたちにも知らせるわ。それじゃ」とそそくさと背をむけた。
「あ、そういえばさ、恋人同士なんだよね、あの二人」
入る寸前、ぴたりと足を止めてハロルドが言う。
カイルが首をかしげながら「あの二人って?」とハロルドに聞き返した。
「もちろん、ディムロスとアトワイト」
「え!?」
「だったら、どうしてディムロスさんはあんな・・・!」
「ディムロスさんには、責任があるから・・・だと思う。すごく重い責任を前にしたら、自分の思いを、簡単には、つらぬけなくなるから・・・」
声を張り上げたカイルに、リアラが暗い表情で言う。
カイルは肩を下ろして「リアラ・・・」とつぶやいた。
「しかし、いまさらなぜそのことを僕たちに告げた?」
ジューダスがいぶかしげな表情をしながらハロルドに問いかける。
ハロルドは即、「触媒」と答えた。
「内的要因に見込みがないなら、外的要因によって変化を促す。たとえそれが、毒であってもね。あ、でも、あんたたちは薬だと思ってるから。安心して」
「・・・はぁ、わかったような、全然わからんような・・・」
ロニが曖昧な言葉を返す。
ハロルドはニヤリと笑って、ジューダスを「ちょっと」と呼んだ。
「なんだ」
「あんまりもたもたしてると、大事な子取られちゃうわよ?例えばー・・・シャルティエとかに」
「は?」
「グフフフー☆」
こそっと耳打ちすると、首をかしげるジューダス。
ハロルドは楽しそうに笑いながら入り口までスキップしていった。
入りざま、「あ〜。実験結果が観察できないのが残念ねぇ・・・」とつぶやきながら。
が苦笑いしてる隣では、ロニが「で、どうすんだ、カイル?お前のことだしな、このまま、放っとく気はないんだろ?」とカイルに問いかけていた。
「ああ、もう一度だけ、ディムロスさんを説得してみる。それでもダメなら、そのときは・・・・」
ぐっと拳をにぎりながらカイルが言う。
リアラが一緒になってうなずき、「行きましょう、カイル」と声をかけた。
歩きざま「なーんかいいように使われてる気がするんだよな」とロニが言い始める。
はププーッと噴出し、ジューダスは「使われているんだろ」とため息をついた。
結局カイルもロニも、ディムロスを動かすために働くだろうことは計算されていたわけで、それにやっと気付いたロニはがくりと肩を落とす。
物資保管所を出て数時間。
日は落ちてしまい、カイルたちは空中都市の残骸を宿にしようと中に入っていた。
そこで腰を下ろしていたジューダスは、ふと安心したようにため息をついた。
「当分の間はハロルドと別行動か・・・これでようやく、ゆっくり眠ることが出来るな・・・」
「なにつれないこといってるのさ、ほんとは、さみしいくせに」
本当に安心した声をだすジューダスに、ナナリーが夕食の支度をしながら茶化すように言葉を返す。
「ていうかまず仮面とって寝ようよ。熟睡できるよ〜」
「やかましい」
さらにが冗談を言い、ジューダスはきれいに一刀両断した。
またまた〜と言うとケラケラ笑うナナリーを見ると、ロニがため息をつきながら手を頭にもっていく。
「おまえらは神経が図太いから気づかねぇだけだ。このあいだ目ぇ覚ましたら、あいつ鼻歌まじりでメスといだやがんだぞ?いつ腹開かれるかって考えると、恐ろしくて眠れやしねぇっつーの!」
「俺も俺も!この間変な薬飲まされて以来、朝起きられないのなんのって・・・」
「カイルのは、薬のせいじゃないでしょ?」
ぶるっと肩を震わせたロニに続いてカイルがしかめっ面しながら言う。リアラがくすくす笑いながらつっこみを入れた。
上手いリアラ!ととロニが二人して親指を立て、カイルは「な、なんだよ!」と真っ赤になる。
その後とカイルがギャーギャー騒ぎ始め、リアラは可笑しそうに笑い、ナナリーは呆れながら料理を作っていた。
「・・・」
「おい、ジュー〜ダっス♪」
ぼーっとしているジューダスの隣に、ロニがひょいっと座る。にやにや笑いながらぽんと肩を叩いた。
ジューダスは驚いたのか、はっと我にかえると、すぐに不機嫌な顔になって「なんだ」とロニを睨む。
「なに考えてたんだ?」
「別に」
「当ててやろうか?」
挑戦的な態度のロニに、ジューダスが興味を持ったように目を向ける。
「・・・ほぅ。いったい、いつから僕の心が読めるようになった」
「どーせ女がらみの時だけさ・・・って嫌な台詞だなオイ」
冗談まじりの返事を聞いてロニが肩を竦ませ、ジューダスはフンと鼻であしらう。
ロニは気を取り直したのか、咳払いを一つすると、にーっこりジューダスに笑顔を向けた。
「のことどう思ってる?」
「は?」
ロニが楽しそうに、笑いを堪えたような声でジューダスに問いかける。ジューダスは思いきり顔をしかめながら素っ頓狂な声をあげた。
そんなジューダスを見たロニは、「気になるのか?図星か?」とニコニコ笑う。
「なんでそうなる」
「だってお前、ずっと見てたじゃねえか」
「顔の先に偶然いたのがあいつだっただけだろ」
ジューダスが首をかしげるロニにそっけなく言葉を返すと、ロニは「まったまたぁ〜☆」と言いながらバシッとジューダスの肩を叩いた。
「そんな可愛くないことばかり言ってると、俺が口説いちゃうぜ?ルーティさんに似て、顔はそんな悪くないし」
「フラレるのがわかっていてか?」
「うるせんだよチクショウ!本当に可愛くねえな・・・・」
「お前にかわいいと言われても気持ち悪いだけだ」
ロニが顔を引きつらせながら拳を握るが、ジューダスはフンと鼻で笑いながらそっぽを向く。
「ま、あの天上王ミクトランに、あそこまで溺愛されて背後霊までされてたんじゃ、うかつに手はだせねぇよな〜」
ロニが可笑しそうに笑う。
ジューダスは一瞬気持ち悪そうに顔をしかめ、それからロニを冷たく見た。
「お前・・・まさか、本当にあれがミクトラン自身だと思っているのか?」
「はぁ?だって、お前だってミクトランだって認めて―――」
「確かに、あれはミクトランだった。だが・・・・所詮は夢だ」
ジューダスの言葉に首をかしげたロニ。
その後続けられた言葉に、さっと表情を変える。
「え・・・てことは、まさか?」
「夢は所詮幻でしかない。・・・つまり」
「最初からいなかったってことか?後ろに居た親代わりだったっていう二人も・・・スタンさんも」
「・・・そういうことになるな」
ロニが険しい顔をしながら言う。
ジューダスは視線を落とし頷いた。
「そんな・・・・だ、だってよ、の夢に出てきた、ミクトラン自身が言ったじゃねえか。ずっと傍にいたとか、出てこれてよかったとか・・・」
「それほど、あいつのミクトランに対する想いとやらが、強いということだろう」
「・・・・」
ロニが訴えるように言葉をかけるが、ジューダスは話しに結論つける。
ロニはしばらく黙り込んでため息をつくと、頭の後ろで手を組んだ。
「・・・悲しい奴だな」
「・・・かなりな」
「勝ち目ねぇな、ジューダス」
「だから、どうしてそこにいく」
真剣な顔が一転。
ジューダスは怪訝な顔でロニをギロリと睨む。
ロニははぁ?とジューダスに顔を向け、「お前、もしかして本気で・・・」と眉を潜めながら指差した。
「えーっと・・・じゃあ聞くが、お前が好きな人は、誰だ?」
「す、好きな人・・・?!なんでお前にそんな」
「マリアンさんか?」
「・・・そ、そうだ」
「は?」
「はぁ?」
好きな人、と言われて動揺したジューダスだったが、ロニがの名前をだすと、わけがわからないのか変な声をだして首をかしげた。
ロニはそんなジューダスにじれったそうに「だぁかぁらぁ」と言うと、カイルとリアラとじゃれるを指差して
「のこと、気になってんじゃねーのか?」
と問いかけた。
ジューダスはなるほどとため息をつく。心底呆れた顔をしてロニを見た。
似た様なことは、昔セインガルドの兵士たちに噂されたことがあるジューダスだ。
「アホか」
「んなっ!」
「そんなわけないだろう。なんで僕があんなやつのことを気にしなくては・・・」
アホかと言われて顔を変えたロニを放って、ジューダスため息をつきながらを見る。
いつもと同じく楽しそうなは、カイルにちょっかいをだしたのか攻撃をされている。それをひょいひょい避けると可笑しそうに大笑いした。
ジューダスはふとと目が合い、思わず目を逸らした。そんな自分に内心首を傾げてみるも、ジューダスに答えはみつからない。
「ぼーっちゃん。どうしたんだよ?」
「!」
いつの間にやってきたのか、しゃがみこんでがジューダスの顔を覗き込んできた。
声を聞いてだと気付いたジューダスは顔を前にやったが、あまりに至近距離にがいたことに驚いたのか、すぐさま顔を逸らす。
ロニは「なんでもないっ」と不機嫌な声で返すジューダスを見ると、にやりと笑った。
「ジューダスの奴、目にゴミが入って痛いんだとさ」
「え?そんなの取れよ。って、仮面が邪魔でとれないのか?ど〜れ外してみ」
「嘘をつくなロニ!や、やめろっ。僕に触るな!」
ロニの嘘とは気付かないはジューダスの仮面に手を伸ばす。
ジューダスはロニにつっこみを入れた後に両手で抵抗した。
はむっとするとジューダスの手をがしっとつかみ、「動くな!」と声をあげる。
「大人しく見せる!」
「だ、だからロニの嘘・・・」
「はいはい、ちょいとごめんよ〜」
「おい!」
が両手をつかんたところでロニが仮面をとり、ジューダスは珍しく声を張り上げた。はじーっとジューダスを見る。
居心地が悪くなったのか、ジューダスは思いきり眉間にしわを寄せ、すぐに顔を逸らした。
はロニに手を押さえてもらうと、両手で顔をつかんで正面を向かせ、目を覗き込む。
「んー?ごみなんか入ってないよ?」
「もしかしてもしかしなくとも、髪の毛が入ったんだろ?前髪長い上に仮面つけてるから」
「あ、そっか。お前前髪切れよ〜〜って、あれ?ジューダス、顔赤いよ?熱でも出た?」
「でっ・・・でてないっ」
段々と歳相応な、16才らしいジューダスになっていく。
ロニはますます楽しそうに笑い始めた。幸い他の仲間達は気付いていない。
は首をかしげると、ブンブン頭を振ったジューダスのおでこに手をあてた。
「うーん・・・熱は無いみたい。どう思う?ロニ。いや、ジューダスに聞いたほうが確かか」
「ってオイ!」
「だから、なんでもないといっている!」
首をかしげ、ボケをかましたにロニがつっこみを入れていると、一応我に返ったジューダスが腕をばっと払う。
仮面をロニから取り返していると、急にが「あ!」と声をあげた。
「わかった!」
「な、なんだ」
ジューダスを指差しながら叫ぶ。
ロニは期待の目を向けにやにやと笑い、ジューダスは仮面を手に持ったまま体を後ろに引いた。
「お前、実は赤面症だろ!」
「・・・なわけないだろ」
「なに?!」
仮面もつけずにロニと二人で呆れるジューダス。
は驚いた顔をしながら「じゃあなんだよ?!」と何度も問いかける。
期待が外れたロニは、面白おかしいやり取りをする二人を見て呆れたようにため息をつくと、そのうち噴出して笑い始めた。
「どぉも。前途多難だなこりゃ」
手をばしばし叩きあう二人を見てロニがぼそりとつぶやく。
食事の用意ができたと呼びに来たナナリーが「は?」と首をかしげた。
続く
−−−−−−−−−−−−−−−−−−
せ、赤面症って・・・・・・リオンの時はどうだったんだ主人公。(裏手)まぁたまの素ボケもよしとして(いいのか)
ジューダスってばマヌケっ子全開☆(いたいけな16才で遊ぶな変人)可愛いなぁもぅっ。
一々反応して機嫌がアレコレ変化してることに気付いたり気付かなかったりなんてベタな恋愛しかしらないけど、ああ、まあ、こいつらだしいっかー状態なダメ人間です、自分。(いつの間にやら反省文)
フラレマンロニにまで言われるとは・・・・悲しいな坊ちゃん。ていうか最近、話が本当にじゃじゃ馬化して暴走している。危ない。
考えていたのと違う方向に回りそうでちょっぴり不安。まあ、大体筋と追ってればいっか。ビーストみたいだなこの適当さ・・・。
ではでは。こんなしょうのないもの読んで下さった方、ありがとうございました〜〜〜