ハロルドのロケットが完成した次の日、カイルたちは朝から会議室に招集をかけられた。
「ちょうどよかった。これから作戦の説明を行うところだ。はじめてくれ、ディムロス」
入ってすぐに始まった作戦会議に、相変わらずは聞く耳持たずに今回はうつらうつらしている。
会議も終わり、全員が解散し始めたころ、ジューダスの肩を借りていたは痛く起こされた。
そこに愛はあるのかい?!とがボケると、ジューダスはさりげなく頬を赤く染めながら「あるわけないだろ痴呆娘っ」とつっこむ。
そんな二人を見たハロルドが、すすすとシャルティエに怪しく近づき、グフフと笑いながら耳打ちをした。
「ねぇ、あの二人。面白いからさぁ、ちょっとかまってみない?」
「・・・・」
もうやってる、とは口に出せず、シャルティエはにししと笑うハロルドに顔を向けないまま「オーケー」と頷いた。
my way of living 63
〜レッツエンジョイダイクロフト?〜
ディムロスの話しでナナリーやハロルドたちが盛り上がる中、リトラーは一人浮かない顔をしていた。
「ディムロスの焦りが、作戦に支障をきたさなければいいのだけれど・・・」
傍までいってみたは、リトラーの悩みの種を聞いてなるほど、と頷く。
「大丈夫だよリトラー。作戦に支障なんてでないって。向こうに新しい要素が入ったりしたらちょっと危ないかもしれないけど・・・」
「微妙だな」
の言葉にリトラーが苦笑いしていると、ハロルドたちが「行くわよー」と入り口からに声をかけてくる。
はいはーいと言いながら手を振り走っていく子供に、リトラーはにっこり笑みを浮かべた。
倉庫についてすぐ、形になったロケットの前でディムロスが立って待っていた。
全員中に入ったことを確認すると、ハロルドが一つしかないボタンを押す。
なんのためにシートベルトががっちがちなのかを全員が把握するまえ、にロケットは空へと飛んでいった。
「イテテテテテ・・・・もう、なんなんだよこのマシン!飛び方も着陸も、めちゃくちゃじゃないか!」
「メチャクチャじゃないわよ。ちゃ〜んと、ゆれ方とか衝撃も計算して起動を入力したもの」
「・・・ちょっと待て?ってことは、わざとこういう風に飛んだのか!?」
ダイクロフトについてすぐ、腰やら頭やらを打ったカイルたちがブーブー文句を言い始める。
ハロルドの返答にロニがつっこみに近い言葉を返すと、ハロルドは「このぐらいドッタンバッタンしないと、飛んでるって感じがしないでしょ?」とにっこり微笑んだ。
そこに入ってきたのは、なにやら真剣な顔をしただ。
「五感をしげきするマシンでなければ、僕たちに似合わな」
「なんの話しだ」
その前に刺激しすぎだ。
「ていうか〜、飛んでくるときに真っ直ぐ飛んできたんじゃ、どこに基地があるかばれちゃうじゃん」
ジューダスにつっこまれたが、誤魔化しに笑いながら蛇足をつける。カイルはすぐ「そっか!」と頷いた。
他の乗組員たちは慣れか、それとも場をわきまえているのかすでに理解していたのか、誰一人文句も言わずに周りを見回している。
ハロルドが脱出用ポットをカイルたちに教えていると、「地上軍の、強襲揚陸兵だ!Gブロックのガーディアンを向かわせろ!一人たりとも、生かして返すな!」という敵の兵士の声がどこからともなく聞こえてきた。
「まずいな、思ったよりも早く気づかれてしまった。」
「なに、いつかはみつかるんだ。それが少しばかり早くなっただけのことさ」
「今のってアナウンス?」
「どうでもいいだろ」
カーレルとディムロスが真剣に話しているというのに、緊張感のないはやはりここでも仲間の緊張感を崩す。
見事にジューダスがつっこみを入れたところで、「よし、作戦開始だ!」とディムロスが声を上げた。
「ハロルド、撹乱は任せたぞ。他のものは、私に続け!」
目の前にはどうやら派遣されたモンスターたち。剣を引き抜いたディムロスたちを見て、が慌ててモンスターたちの前に出た。
「邪魔だぞ。なにをしているんだ!」
「こいつらには手をださないで!大丈夫だから!」
55555ヒット参照!と言うと、はモンスターたちに武器も持たずにつっこんでいった。
「「ば、バカ!」」
「久しぶりー!」
ジューダスとシャルティエが叫んだ瞬間、はモンスターに抱きついていた。モンスターの方もなにやら楽しげな様子だ。
モンスターにまで抱きつき癖・・・と仲間たちが呆気に取られていると、はなにやらモンスターに話し始めた。
「この人たち、俺の仲間だから、手ださないでね。皆にもそう伝えて」
が抱きついたモンスターは頷くと、すぐ後ろにいた別のモンスターにピーピーギャーギャー話し始める。
これでよし、とが満足そうに笑っていると、モンスターはなにか伝えようとジェスチャーをし始めた。
「え?なに?ダイクロフト?ディムさん?え?違う・・・?」
「もしかして、ダイクロフトにいる人間、つまり天上人のことじゃ・・・」
「ピッ!」
床を指差し、その後ディムロスたちを指差したモンスターにが首をかしげていると、イクティノスが会話に参加してきた。
その後の正解!といわんばかりのモンスターの反応に、他の仲間たちもイクティノスも苦笑いする。
「ピッ、ピーッ」
「えっとー、床、お前・・・・てことは、ダイクロフトのモンスター?あ、元々いた奴らのことか?ああ、あってる。うんうんそれで?え、えーっと・・・みんなで・・・・リンボーダンス?」
「・・・・・・彼ら以外のモンスターや天上人たちは、我々に攻撃を仕掛けてくるから注意しろ、といっているのではないのか?」
「おおっ、正解?!イクティン頭いいな〜」
「・・・アホか」
またもモンスターのジェスチャーの意味を当てたイクティノスにが拍手を送っていると、さりげなくシャルティエがつっこみをいれた。
後ろでジューダスもため息をついている。
とりあえずモンスターたちが攻撃をしないと分かったディムロスたちはため息をつくと、「道案内を頼めないか?」と問いかけてきた。
「できるって。ついてこいって」
事情を話したの言葉が通じたらしいモンスターは、手と思われるもので道を指差すと、さーっと移動し始める。
果たして罠ではないだろうか、と肩をすくめたシャルティエたちだったが、今は時間がないと、ディムロスはさっさとモンスターについていった。
「なんかさー・・・・私たちって、いても意味なかったんじゃない?」
「何言ってんのよ、制御室いかなきゃならないでしょ。天上人やらなにやらは攻撃をしかけてくるっていうし、さっさと囮になるわよ。・・・ところで、さっきのモンスター、なんであんな仲良かったの?」
「だから55555ヒット参照・・・・って、ああ、そう!あのモンスター、ここにはいないでしょ?いっとくけど俺は連れてきて無いからね」
の言葉にハロルドは「やっぱり」と言い、カイルたちは首をかしげる。
「・・・つまり、あんたたちと同じように未来から来た奴がいるってわけね」
ハロルドが早い頭の回転力を生かしてその答えまで行き着くと、驚いたカイルたちの中からリアラが「どういうこと?」と声をあげた。
「あのモンスター、私見たことないもの。あいつと似たようなのは今も存在してるけど、それよりも、異常なまでに進化してるわ。つまり、あれは誰かが未来から連れてきたってこと。心当たり、ある?」
ハロルドがぴっと人差し指を上げながら説明し、問いかけると、ロニが肩を竦めながら「ありもあり。大有りさ」と話し始めた。
「エルレインて奴の仕業だよ」
「おそらく、奴の手下がすでに天上軍に入り込んでいて、支援しているのだろうな」
「ふむふむ・・・つまり、あんたたちの目的は、歴史修正ってわけね。そのエルレインて奴が天上軍に加担して、この戦争を勝たせようとしている。で、それを阻止するために、あんたたちはこの時代に来たと」
ジューダスの付け足した言葉を聞いて頷くと、ハロルドは結論をだして全員を見回した。
「ええ、その通りよ・・・。私たちは、エルレインの歴史介入を防ぐためにここに来たの」
「歴史をいじるなんて、ずいぶんと面白いことをやってるじゃない。そいつ、神様気取りね」
リアラが頷くと、ハロルドは呆れたようにため息をつきながら肩を竦めた。ハロルドの言葉を聞くと、リアラは表情を暗くする。
「いえ、神の名を語っているんじゃないわ。本当に神を降臨させて、その力を使っているの」
「本物の神の力!?ってことは、あんたたち、神様にケンカ売ってるってわけ!?」
「ま、まあ、そうなるかな」
珍しくハロルドが大声をあげながら驚くと、むしろカイルのほうが驚いて引きながら返事を返す。
しばらく顎に手を添えていたハロルドはうつむくと、その内「・・・・フフ、フフフッ!」と怪しく笑い始めた。
「ハロルド!?ど、どうかした!?」
「面白くなってきたじゃない!神様とケンカなんて最高だわ!よ〜し!私の頭脳が、神をも凌駕すること、証明して見せるわっ!」
「は、はぁ・・・・」
「さ、そうとわかったら、こんなところでぐずぐずしてらんないわ!作戦続行!行くわよ、みんな!」
「わーい・・・じゃなくておーう!」
いきなりやる気をだして手を上げ始めたハロルドに、は同じく乗り気で手を挙げ、カイルたちは顔を引きつらせて笑う。
ジューダスはこのものすごく頼りない集まりを見て、これで本当に大丈夫だろうかと一人ため息をついた。
走っていく中に、は色々なモンスターたちと戯れたり遊んだり。見ている方はもの凄くつっこみを入れたい、そんな状況を作っていく。
ハロルドは気にせず、道案内をしてくれるらしいモンスターと先頭をつっぱしっているしで、どうしようもない。
エレベーターらしきものの前までくると、モンスターはピーピー鳴いて後ろに下がっていった。
「ここまでで終わりってか」
「後は登ってくだけだからほぼ一本道だって。ありがとー」
ロニが中途半端だな、と声を上げると、道順を聞いたらしいがモンスターにお礼を言ってハロルドと一緒に先にエレベーターに乗り込む。
続いてカイルたちが乗ると、ハロルドは上へ登るらしいスイッチを押した。
「・・・ふぅ、とりあえず、第一関門突破ってとこかしらね」
「関門てほど関門じゃないがな」
ナナリーがほっとため息をつき、ロニがそれに笑いながら返事をかえしていると、ハロルドが杖を構え始めた。
「次につく場所は、おそらく本当の関門よ。いい、しっかり準備しなさい」
「おっけーいつでもこい!」
うっしゃあ!といいながら久しぶりにカトラスを抜き取ったは、呆れてため息をつくジューダスの横でうきうき体を弾ませる。
しかし期待とは裏腹に、エレベーターのついた先で待っていたのは、先に出て行ったはずのディムロスたちだった。
なにやってんのよ、と不満声をあげるハロルドに「仕方が無いだろ」とディムロスが答えると、カーレルが部屋が移動したことをハロルドに説明した。
「欠員は出てないか?」
「ご覧の通り、全員無事よ」
「ほう・・・初めての実戦にしては、よくがんばっているな」
「だって戦ってないし」
ハロルドの的確なつっこみに、ディムロスが今日初めて笑う。
それからディムロスはハロルドとなにやら話し始めた。
「ねーえ坊ちゃん。帰ったら夕飯なにか賭けない?」
「断る」
「俺はエビフライ!ジューダスは?」
「・・・・プリン」
「それ願望じゃん」
「言わせたのはお前だろうが、残飯処理機っ」
「なんだとプリンマニア!略してプリマニーー!」
「なんでも短くすればいいと思うな無駄造語製造機!」
答えたジューダスにが珍しくつっこみを入れ、そのまま二人はじゃれあいはじめる。
どたばたと後ろでとジューダスが騒いでいる内に、ハロルドはさっさと扉をあけ、全員中に入っていった。
「お前のせいで遅れただろうがっ」
「なんだよ、ノリがいいって素敵じゃないかっ」
入ってもまだ小声で口喧嘩していた二人だが、ジューダスがアトワイトを見て「あれがアトワイトか?」と声をあげる。
「見て分からないのか」
「・・・僕は始めてみたんだが?」
「ここに入ってディムさんやクレメンテがいった言葉聞いて、察しくらいつけよ〜」
「・・・・お前、実は根に持つタイプだろ」
「あ、覚えてた?ハーメンツの時は頭きたなーと思ってv」
「毎日自分がやっていることを思い出せ能無し」
またもディムロスたちが話を進めていく中、後ろで二人が剣を片手に剣呑な空気をだし始める。
すっかりスルースキルのついたカイルが、ディムロスに声を掛けられていた。
「カイル君、ハロルドのこと、よろしく頼むぞ。格納庫で待っている!」
「は、はい!」
余裕をとりもどしたのか、ディムロスには剣呑ではない、いつもの表情が戻っていた。
カイルが嬉しそうに返事を返すと、ディムロスたちはさきに部屋を出て走っていく。
「ちっとは認められたってところかな?」
「・・・ああ、そうだね!よーし、やってやろうじゃん!行こう、みんな!」
ハロルドの次はカイルがやる気を出して、先頭を走っていく。
あーあ、といいながらハロルドやは後を追い、ナナリーやリアラは相変わらずなカイルをみて笑った。
「今度はカイルか・・・気楽な集まりだな」
「いいじゃん、カイルたちらしくって。堅苦しいのは体に毒だぜ、坊ちゃん」
笑いながらが言うと、ジューダスはフンと鼻であしらいそっぽを向いた。
「せ、制御室に敵襲あり・・・至急、増援を・・・!」
ダイクロフトの制御室に楽に侵入したカイルたちは、早速見張りをしていた兵士たちを袋叩きにしてその場を圧制した。
逃げざま無線で上に連絡をしたのに気付き剣を構えると、「ダイクロフトの制御を奪うなんてことが、本当にできるのか?」とジューダスがコンピュータを覗き込むハロルドに問いかけた。
「私の辞書に、不可能の文字はないわ!」
「可能の文字が太字で、天才って文字が赤字で、破天荒の文字は赤い太字にアンダーラインまで入ってるんだよね」
「わざわざ例えまでありがとう・・・って遊んでる場合じゃないわ。いい?5分間だけ時間を稼いで。それだけあれば、メインコンピュータをハッキングできるわ」
「わかった!その間、ここをまもればいいんだね!」
「ナイスシカト」
カイルがばっちり無視して話をすすめると、はがくりと肩を落としながら親指を突き出す。
「生殺与奪の方だったら相手してくれた?」
「もう頷きまくったわよ」
「バカは放って、集中しろ」
「坊ちゃん酷っ!」
「お前は邪魔せず参加しろ、痴呆娘っ」
ジューダスがつっこみを入れたところで今の時代のモンスターたちがやってくる。
チッと舌打ちすると、カイルが声を張り上げた。
「来たな・・・!けど、ハロルドには指一本、触れさせないぞ!」
「女だと思って甘く見てると、大怪我することになるよ。痛い目見る前に、とっととうせな!」
言うなり、ナナリーはヒュンッと弓を撃つ。
威嚇として上に打ち上げた弓は戦いの合図となり、カイルとロニはモンスターたちの中につっこんでいった。
「・・・今回は殺さなきゃだめか?」
「みたいだな」
を見てもなんの反応もしめさないモンスターたちを見ると、ジューダスはきっぱりに答える。
はそっか・・・とうつむくと、意を決したのか、手にレンズを握って前に突き出した。
「ごめんねモンスターくんたち。せめて安らかに成仏しておくれ・・・・・・ネガティブゲイト!」
「・・・寝起き悪くなりそーな術使ったなオイ」
地面から浮き上がった黒い球体に引き裂かれていくモンスターたちを見て、ロニが言ってることと違う、と呆れる。
は気にせず前に出ると、まだかすかに息の根のあるモンスターをカトラスで斬った。
「さーあバンバン行こうぜ〜」
「やる気ねぇーっ、その声」
へろへろ腕を上げたにロニがつっこんでいると、後ろの方からヒュン、と矢が飛んできてモンスターに刺さる。
「もたもたしてる場合じゃないよ!」
「またぞろきやがったな」
新しく送られてきたモンスターたちに矢を撃ったのは、もちろんナナリー。
ロニは舌打ちすると、下ろしていたハルバートを振り上げて肩に担いだ。
「あいにく取り込み中なんでな。ちょっと手荒いあいさつになるぜ!」
言うなりロニは、早速戦っているカイルとのところまで走り、「うぉぉぉぉっっ」と気合をだしながらハルバートを振り回す。
倒しては増え、倒しては増え、と繰り返している内に、段々とカイルたちの表情に疲れが見えてくる。
もういくつめかのモンスターたちの登場に、ロニは心底呆れたようにため息をつき、またハルバートを肩に担いだ。
「やれやれ、こりもぜすご苦労なこった。学習ってもんを知らないらしいな」
「そんなの、算数のテスト32点のロニに言われたくないっしょ」
「なんっで知ってんだよお前!?」
「減らず口がたたける間は安心だな。せいぜい、息巻いててくれよ」
が点数を暴露すると、ロニは心底驚いたように大声を上げ、ハルバートをガコッと床に落とす。
ケラケラ笑うとマヌケ面したロニを見てため息をつくと、ジューダスはTPがなくなったのか、嫌味を言って前に出てきた。
「今のって遠まわしにがんばれってこと?」
「うるさい」
いいながらモンスターを斬る手に力が入っているジューダス。
笑ったは、目の前に現れたモンスターにつっこんでいった。
胸糞悪いなと顔をしかめただったが、そうも言っていられないと頭を切り替え、攻撃的に伸びてきた手を斬り払う。
使い物にならなくなった手をなにやら叫びながらかばうと、モンスターは体当たりしてきた。
首だけになっても噛み付いてくる、というのは本当にあるかもしれないななどと呑気なことを考えながら、は左に避け、避けざまモンスターの頭を斬る。
使っていなかった割に切れ味のいいカトラスは、モンスターの頭蓋骨も関係無しに斬りおとし、は次のモンスターのところへ走った。
「最後まで力の限り戦ってみせる。それがいま、わたしにできるすべてだから・・・!」
後ろからリアラの声が聞こえてきたかと思うと、頭上になにやら怪しげな雲。
やばい。と焦ってはカイルを引っ張り後退し、攻撃しようと腕を振り下ろしてくるモンスターに時々剣を入れながら、できる限り遠くに離れた。
瞬間、もの凄い騒音と共に火柱が落ちる。
「あ・・・危な・・・・」
あわわわとカイルが青ざめていると、後ろの方にいて晶術にあたらなかったモンスターたちが攻めてきた。
まだかい、ハロルド?!とナナリーが声を上げたが、ハロルドは楽しそうに鼻歌を歌っている。
は戦いをほっぽって、とことことハロルドの傍まで近寄った。指の動きが早すぎて分からない。
「これってマイク?」
「無線か何かじゃない?」
の問いかけに顔を向けずにハロルドが答えると、は「ふ〜ん」といいながらにやりと笑う。
「おい、なにをやっているんだ単細胞!」
『あーあー。テステス。本日は晴天なり。お、入るじゃ〜ん♪』
ジューダスが戦いから抜けてサボりはじめたに怒鳴ると、スピーカーからの声が部屋中に響き始める。
呆気に取られてモンスターたちまでが動きを止め、は楽しそうに笑い始めた。
『ぴんぽんぱんぽーん。ミクトランに告ぐ。お前趣味悪すぎるんだよ、もう少しデザイン考えなおしたら?』
『貴様どこから喋っている!!』
『あら、聞こえちゃった〜・・・?』
が変なテンポで喋り始めると、即、別の誰か・・・というかミクトランが怒鳴り返してくる。
冷や汗をかいてが誤魔化し笑いをしていると、ロニたちが「アホかーー!!」とつっこみを入れてきた。
『まあ、そんな、場所なんて気にすんなって。ねえ?』
『いつの間にやら消えたと思ったら・・・地上軍に帰っていたか』
『言ったじゃん。次会う時は敵だよ〜〜って』
ミクトランが怒りを込めて喋っていると言うのに、は呑気な声を上げた。仲間達はなんともいえない顔をしている。
『さっさと捕まってこちらへこい。あの女との契約がだめになる』
『あの女?!他の女だなんて・・・酷いわっ!私というものがありながら、貴方は別の人にまで手をだしていたの』
『何の話だ!』
いつものノリでがボケると、ミクトランがイライラしながら珍しくつっこみを入れてきた。は大笑いしている。
『全国放送だからタチ悪いね〜〜☆皆聞いちゃってるよ。どうするミク?』
『本当に殺すぞ・・・』
『事件は会議室で起きてるんじゃない!・・・現場で起きてるのか?』
『全軍そちらに向わせてやる』
『え〜〜そりゃあだめだよ―――プリズムフラッシャー!』
『・・・なにをやってるんだ能無し』
『テメェの送ったモンスターとどつきごろつきしてんだよぃ』
動き出したモンスターとカイルたちが戦い始めたので、一応なのかも晶術を撃った。ミクトランとの会話がいまいち気を抜かせる。
隣でハロルドが「秒読みスタ〜ト☆」と言うのが聞こえると、はにやりと笑った。
『ま、全軍送ろうとしたってむ〜り、だぜ』
『逆探知して場所を確認した。向わせる』
『だって、あとちょっとでゲームセットだよん。残り5秒はロボコップ調に〜☆ファーイブ・フォー・スリー・ツー・ワン・・・アデューミクラトン☆』
『名前がちが』
プツン、と言う音と共に、怒り交じりのミクトランの声は聞こえなくなる。
がケラケラ笑う後ろでは、残りのモンスターをリアラが一気に倒し、カイル達は脱力しきって沈んでいた。
くるりと振り向いたハロルドは不敵に笑うと、全員に向って「これで、脱出用ポット以外のダイクロフトすべての機能が停止したわ。ベルクラントもお休み中よ」と声をかける。
「よし、俺たちも脱出だ!格納庫まで一気に行くぞ!」
それを聞いたカイルたちは気を入れなおし、立ち上がって・・・一旦回復に走った。
回復を済ませたカイルたちはさっさと制御室を飛び出し、エレベーターを下ってモンスターの案内の元、格納庫までたどり着いた。
アトワイトとディムロスがほっと胸をなでおろし、カイルとなにやら話していると、急に、聞き覚えのある声があたりに響く。
「クックックックッ・・・・遅かったな、カイル=デュナミス」
笑いながら黒い空間の裂け目からでてきたのはバルバトスだった。
「お、おまえは・・・!」
「「バルバトス=ゲーティア!?」」
驚いたカイルとディムロスが同時にバルバトスの名を言う。
バルバトスはディムロスを見て目を細めた。
「ほぅ、地上軍のディムロス中将閣下が、小官ごときを覚えておいでとは、まこと、光栄のきわみですな」
「なぜお前がここにいる!?お前はあの時、確かにこの手で・・・!」
「たしかに俺は一度死んだ。だが、貴様への尽きぬ憎しみが、俺に再び命を与えたのだ!さぁ、はじめようか・・・・次は貴様が死ぬ番だ、ディムロス!」
「ぬかせッ!!生き返ったのなら、もう一度、倒すまでだ!」
一気に険悪ムードになったディムロスは、腰にあった剣を引き抜いて構えた。
カイルたちが後退ると共に二人はじりじりと間合いをつめ、ディムロスは気合と共にバルバトスにつっこんでいった。
「あ〜・・・やばいなぁ」
「なんだ。お前の知っている未来と違うのか」
「いや、あってるからまずいんだ」
二人の様子を見て、困ったように笑いながら頭に手をやったに、ジューダスは眉を潜めながら問いかける。
苦笑いして間違っていない、とが言うと、ジューダスはさらに眉間のしわを深くした。
「んな顔すんなって。綺麗な顔が台無しよ、坊ちゃん」
「いいから話を進めろ」
「見てれば分かる・・・って、ホラ」
早速、というの見る方向に目を向けてみれば、バルバトスに倒されそうになっているディムロス。
ジューダスはしまった、と舌打ちして剣を構えたが、が呑気に観戦だけしているのを見て、構えた剣をおろしながら首をかしげた。
「おい、いいのか」
「こうなる予定だったんだよ。さあこれからが大変だ」
「予定だっただと?」
ジューダスがの言葉に眉を潜めている頃、バルバトスはアトワイトに手を出していた。
ディムロスが剣を突き刺して立ち上がろうとするも、アトワイトはあっけなくバルバトスに攫われてしまう。
「・・・・チッ!」
これを予定だったと言い切るに、ジューダスは舌打ちを一つして剣をしまった。
苦々しそうに舌打ちしたジューダスに苦笑いすると、は「行こうか」とディムロスに駆け寄るカイルたちの方へゆっくり歩きはじめる。
アトワイトを探しに行こうと言っているのだろう、カイルたちが必死になってディムロスに声をかけていたが、ディムロスは首を振るとゆっくり立ち上がった。
「いや、このまま脱出だ。君たちも早くポットに乗りたまえ」
「なに言ってんだ、あんた!仲間が人質にされたんだぞ!それを見捨てて帰るって言うのか!?」
ディムロスの言葉を聞くと、ロニが信じられない、と表情を変えて大声を上げた。
「開発メンバーの救出は完了した。これ以上の犠牲を増やさないためにも、一刻も早く退却すべきだ。彼女とて軍人だ。死を伴う危険も常に覚悟していたはず。あえてそれに甘えさせてもらう」
ディムロスがはっきり言うと、次にカイルが本気ですか!と声をあげる。
納得できないとそれぞれ抗議の声をあげる中、は一人やれやれと苦笑いしていた。
ジューダスはそんなとカイルたちを見比べて、さらにため息だ。
「はいはーい。帰るっていったら帰るの!とっとと乗る!」
筆頭になってディムロスに抗議しているカイルの背中をハロルドが押していく。
ロニやナナリーたちもため息をついて、脱出用ポットに乗り込んだ。
「これで、いいのよね?」
カイルを脱出用ポットにおしこみ、他のメンバーたちも全員ポットに乗り込むと、ハロルドはディムロスのところまで戻ってきて確認するように問いかける。
ディムロスは申しわけなさそうに顔を落とすと、「・・・・すまん、ハロルド」とハロルドに礼を言った。
そんなディムロスに肩を竦めると、ハロルドは「正直、私も納得できないけどね」と言ってさっさと脱出用ポットに乗り込んでいった。
「・・・」
ディムロスも脱出用ポットに乗り込むと、イクティノスが操縦席に座り、脱出用ポットはダイクロフトから脱出した。
続く
−−−−−−−−−−−−−−−
なんか・・・・なんだろう?(待て)
ディムさんが大変なことになってきましたが、とりあえず流してるしどーでもいっk(コラ)
ていうかミクトランが・・・ミクトランがバカ・・・!(まて)マイクジャック第一弾。つまり第二弾もあると。(予告すんなよ)
さーてこっからどうするかなぁ〜(なんなんださっきから)フフフ・・・壊れてます。壊れてますよ自分。いつも以上に変でごめんなさい。
こんなもの読んで下さった方、どうもありがとうございました〜〜〜〜。