物資保管所から地上軍基地に帰ってきてすぐ、ハロルドは運んできたガラクタを他の兵士に持たせてカイルたちににっこり笑った。
「じゃあ、私はさっそくマシンの製作にとりかかるから、リトラー司令への報告、よろしく」
「えっ!?ちょ、ちょっと待ってよ!」
「飛べ〜飛べ〜ロケット〜♪燃料吹き出し、火を上げて〜♪」
言うなりスキップして行ってしまったハロルドをカイルが止めようとしたが、なんともいえない歌に声が阻まれ、綺麗に無視されてしまう。
残ったカイルたちは呆然とハロルドの背中を見送り、その後全員でため息をついた。
「・・・なぁ、あいつにまかせて、ホントに大丈夫なのか?」
「さぁ・・・」
「と、とにかく、リトラーさんのところに行こう」
未だに信じられない・・・のだろう、半分以上呆れの入ったロニの声にナナリーが首をかしげると、カイルはフォローを入れるように手をブンブン振りながら全員の意識を別のところへ流した。
my way of living 62
〜続・ジューダスの苦悩〜
「なぁ、カイルの奴、報告なんてできるのかな?やったことないでしょ?」
不安そうに眉をひそめるカイルを見て、がこそっとジューダスに問いかけた。
声をかけられたジューダスは、びくりと肩を驚かせたが、いつものむっつり顔に戻ると、カイルの方を見て目を細める。
「報告書を書かなくて良いのならサルでもできる」
「サルは喋れないよ、坊ちゃん」
「サル並みの脳みそしか持っていないやつでもできる、という意味で言ったんだ」
「それは遠まわしに俺への挑戦か?」
「嫌味だ」
「直球で返すな!」
どーせ報告書の一つもだしたことないですよーだフン!と怒るに、ジューダスは「自覚があるのか」とわざとらしく驚いて見せた。
誰かついでにカイルも貶されていることに気付いて欲しい。
きぃぃぃぃぃぃいいいい!!と怒り出したに気付いたカイルたちは首をかしげると、「おーい、早く」と二人に声をかけてきた。
カイルの声を聞いた二人は一時休戦すると、大人しくさくさく歩きだす。
「坊ちゃんはカイル贔屓ですもんね〜。叔父ちゃん」
「叔父ちゃん・・?!変なことを言うなっ」
「叔父ちゃん叔父ちゃん叔父ちゃん叔父ちゃん叔父ちゃ〜〜〜ん」
「・・・殺す」
叔父と聞いてギロリと睨んできたジューダスに、は「叔父ちゃん」を連呼する。
もちろん怒ったジューダスは剣を抜いたが、はすでに毎度のこと。得意の逃げ足でもう何メートルも前を走っている。
そんなには石入りの雪球が頭に送られたが、カイルたちに「遅い!」とつっこまれ、回復する間もなくラディスロウへ連れてかれた。
「うっ・・・ロニ、坊ちゃんがいじめるよ・・・」
「自業自得だろ」
「・・・つっこみが多いと助かる」
呆れながらにつっこみかえしたロニに、ジューダスがため息をつきながらぼそりとつぶやいた。
スタンたちのころではこうもいかなかったのだから。つっこみはリオン一人。他の仲間たちのつっこみは半分以上ボケだ。
ラディスロウの入り口。今まさに入ろうとしたところ、中からディムロスの不機嫌な声が聞こえてきた。
「ダイクロフト内部の見取り図は、まだできていないのか?時間がかかりすぎてるぞ」
「構造も複雑だし、作成班はここのところ徹夜作業が続いている。仕方がないだろう」
無理を言わないでくれ、とばかりのカーレルの言葉にも、ディムロスは切羽詰った声で「しかし・・・」と抗議の声をあげた。
だが、カーレルもここで下がらない。ため息が中から聞こえてきた。
「言いたくはないが、今回の作戦は準備期間が短すぎる。普段の君なら、ここまで時間に余裕のない作戦スケジュールは組まないはずだ」
「わかっている。しかし、我々には時間がないんだ」
そこまで口論をして、二人は黙ってしまった。
・・・・なんか入りづらい雰囲気だな、とロニがこそっと言う。
「ここで焦ってもしょうがない、どのみち、ハロルドのマシンが出来ないことには、動きようがないしな」
「それにしても遅いな、ハロルドは。どこで油を売っているのか・・・・」
雰囲気を変えるかのように話しだしたカーレルに、同じ気持ちだったのかディムロスも乗るように言葉をかえした。
「・・・入ろう、みんな」
ここでおろおろしていてもしょうがない、と、意を決したカイルの声に、全員頷いて中に入る。
ラディスロウに入ると、まずディムロスとカーレルがカイルたちに目を向け、リトラーが笑顔で迎えてくれた。
「おお、君たちか。首尾はどうだったかね?」
「必要な材料はそろいました。今、ハロルドが組立作業にとりかかったところです」
「うむ、ご苦労だったな。ハロルドのマシンが完成するまで、待機していてくれ」
初仕事での緊張も気遣ってくれているのか、リトラーの威厳のある声も今はただ優しい響きにしか聞こえない。
それでもまだ気が高ぶっているのか、一歩踏み出して、カイルが「あの・・・」とリトラーに声をかけた。
「まだ、そんなに疲れてませんし、なにか、手伝えることありませんか?」
「その必要はない。作戦開始まで、休養を取りたまえ」
「あの、でも・・・」
「これは命令だ」
有無を言わせないディムロスの言葉にカイルが押し黙ると、カーレルが苦笑いしながらカイルに声をかけてきた。
「まぁ、好意はありがたく受け取っておくよ。ありがとう、カイルくん」
「はい・・」
「ディムロス、見取り図は完成したら私室に持って行かせる。君も、休んでくれ」
「・・・わかった、後は頼む」
素直に頷いたカイルの後は、ディムロスだ。
カーレルの言葉にため息を一つつくと、ディムロスは会議室から出て行った。
「ふぅ、やれやれ・・・」
「気苦労をかけるな、カーレル君」
「本来なら、部下への配慮はディムロスの専売特許なんですけどね。ま、たまにはいいです」
疲れたようにため息をつくカーレルにリトラーが苦笑いし、カーレルも同じように笑い返す。
そして、カイルたちにとっては意外であろう、本来のディムロスの姿をカーレルが暴露すると、え、とまっさきにナナリーが声をあげた。
「部下への配慮って、あのディムロスさんがかい?」
「あぁ、君たちは知らないのか。彼はね、兵たちの間でもっとも人気があるんだ。「突撃兵」と異名を取るほどの強さも理由のひとつだが、それ以上に、部下への接し方がある。えこひいきや差別をせず、常に公明正大。つらいときには励ましてくれ、喜びは、ともにわかちあう。ま、人気があって当然だな」
と、カーレルが言うと、ロニが「へぇ・・・・こういっちゃなんだが、正直見えないねぇ」と肩を竦める。
少し皮肉の入っているロニの言葉に苦笑いすると、カーレルは「ディムロスも、余裕がないのさ」とため息をついた。
「今度の作戦は、必ず成功させなくてはいけない。そのプレッシャーのせいだろう」
「そうなのか・・・」
「だから、彼のことを悪く思わないでくれ。今度の作戦が終われば、いつものディムロスに戻るはずだ」
というカーレルの気遣いの言葉に、カイルは「はい、わかりました!」というと会議室を後にする。
休んでいいと許可を貰い、カーレルの部屋まで使わせてもらうことになっていた一行は、カーレルの部屋へ移動した。
「ふあ〜。疲れたー。俺ああいう堅っっ苦しい空気大嫌い!」
「それっぽいね」
肩をブンブン振りながらが言うと、ナナリーがけらけら笑いながら「私も同感」と言ってきた。
そんなナナリーにロニが嫌味をいい、二人で喧嘩し始めたのだが、様子を見て笑うとは別に、カイルは期待に目を輝かせていた。
「なんかさ、ワクワクしてくるよね!あのソーディアンチームといっしょに戦えるなんてさ!」
「浮かれていると、怪我をするぞ」
「言われなくても、わかってるよ!」
先ほどまでしっかりしていたように見えたカイルだったが、やはりカイルはカイルだ。
両手を広げてはしゃぎだしたカイルにジューダスがつっこむと、カイルはむっと口を尖らせてふてくされる。
スタンと同じような反応だなとが笑っていると、同じくガキか、と呆れていたジューダスに、ロニが笑いながらひらひら手を振った。
「まぁ、しょうがねえよな。ソーディアンチームといやあ伝説上の英雄。しかも、とびきり有名ときてる。落ち着けって方が無理って話さ。ましてや、こいつの英雄好きときたら、筋金入りだからな」
「ふふっ!そうね」
「あ、リアラまで笑った!ひでーなー!」
つんつんカイルをつつきながら笑ったロニに続いてリアラまで笑い出すと、カイルは両手を上げて怒り始める。
そんなカイルを見たリアラは笑いを止めると、「でも・・・」とやわらかい笑みを浮かべた。
「カイルだって、わたしから見たら立派な英雄なんだけどな」
「そ、そうかな・・・」
リアラの言葉を聞いてカイルが赤くなる。
ナナリーとロニがため息をついた。
「はいはい、ごちそーさま!なんせカイルは、リアラだけの英雄だもんね」
「あー、アホらし。なにが悲しくて、他人のノロケ話聞かなきゃならねえんだよ」
「いつもフラレ話し聞かされるのもどうかと思うけどね」
「うるせえっ」
ロニの言葉の後にがぼそりとつぶやくと、ロニはキッと睨んできた。その後はぁーとため息をつくと、くるりと背を向ける。
「ちょっと、外の空気吸ってくるわ。・・・おいナナリー、お前も付き合えよ」
「な、なんであんたに付き合わなくちゃいけないのさ!」
ロニのお誘いに焦るナナリーだったが、「気ぃきかせろよ、馬鹿」とロニがつぶやくと、しかめっ面しながらしかたなさそうに腕を組んだ。
「・・・わ、わかった。けど、勘違いしないでよ!しかたくななんだからね!」
「へいへい、行くぞ」
ロニがナナリーと仲良く喧嘩しながら出て行く。
ジューダスはをちらりと見てため息をつくと、「・・・・ハロルドの様子を見てくる」と言ってさっさと歩き出した。
「あ、待てよジューダス。俺も行く」
「・・・」
声をかけられて一瞬止まったジューダスは、がとことこついてくるのを見ると、先に外に出る。
ジューダスはが後ろからついてくるのを気配で感じつつ、どこで暇をつぶそうか考えながら足を進めた。
「!」
「さーて坊ちゃん、出刃亀しようか☆」
急に腕を引っ張られて止められたジューダスはたたらをふむ。
案の定、腕を引っ張ったのはで、しっかり耳を扉につけている。ジューダスはため息をつくと、自分も扉まで近づいた。
「またか・・・」
「いいじゃんいいじゃん♪」
乗り気なとさりげなくする気でいるジューダス。
二人の後ろから、先に出て行ったはずのロニとナナリーが現れた。
「お、なんだお前ら、出刃亀か?」
「ジューダスまでそんなことするなんて、なんか意外だね」
「そう?よくやるよね〜俺ら、出刃亀」
「まだ2回目だ」
「前はスタンたちだっけ?」
「なに!?スタンさんたちの?!」
「しっ!なにか話してるよ!」
結局やる気まんまんなナナリーの言葉に反応すると、4人はぴったり扉にくっつく。
が、ジューダスは集中できず、仮面取ればとロニに言われてつっこみ返したところで、未だにと手を繋いでいることに気付いた。
「・・・カイル、さっきのこと・・・冗談でいったんじゃないから」
「えっ?」
注意が逸れているジューダスに誰も気付くわけもなく、リアラたちの会話も進んでいた。
リアラの声が中から聞こえると、ロニたちが「お〜」と楽しそうに小さく声をだす。
「わたしから見たら、カイルも立派な英雄だってこと」
「あ、あはは・・」
「カイルなら、わたしの願いをかなえてくれる。そう、信じてるから」
「わ、わかってるから!おやすみ、リアラ!」
照れ笑いをしたかと思うと、カイルは何度もかみながらどたどた走ってベッドに入った。らしい。どさっと音が聞こえた。
それからすぐにカイルの寝息が聞こえてくると、ロニとが「あ〜あ〜。だめだよカイル」「男ならここでぐっといかなきゃ!」と言いたい放題言いながらクスクス笑った。・・・のだが
「みんな・・・・・これ以上出刃亀するようなら、ちょーっぴり痛い目にあってもらうわよ」
と、中から聞こえてきたため、すぐさま扉から離れ、全員早歩きでカーレルの部屋から離れた。
「あ、危なかった・・・!」
「なななななにが起きるんだよ!」
「・・・あなどれんな」
「仲間内でそんなこといってどうするのさ」
全員心臓を煽られたのか、真っ青になりなが胸を押さえていた。とロニはぎゃーっと叫び、ジューダスのボケにはナナリーがつっこんだ。
それからため息をついてとりあえず落ち着くと、その場に座り込んだロニが頭に手を置いた。
「で、これからどうするよ。あと30分くらいおかねぇと、リアラのやつ静まりそうにも無いぞ」
怒りが、というロニの言葉に全員頷く。
無言になった後で、やはりロニが「・・・俺、外の空気吸ってくる」と一人立ち上がった。
「・・・私も行くよ。なんか頭痛くなってきた・・」
「どうする?坊ちゃん」
「・・・知らん。とりあえず休みたい・・・」
よいしょと立ち上がったナナリーたちを見てが問いかけるが、ジューダスはそっぽを向いてはぁーとため息をつくばかりだ。
はやる気の無いジューダスの返事を受けると、ふてくされたふりをしながらながら「冷たいなぁもう」と腕をつんつんつついた。
「いいもーんだ、ガキどもと勉強中断させて遊んで・・・あ!シャルー!」
「げっ」
丁度部屋に戻ろうとしていたのか、イクティノスと一緒に歩いてきたシャルティエを発見したはすぐさま声をかける。
嫌そうな声をあげたシャルティエに「失礼な!」と叫ぶと、は一目散にシャルティエにつっこんでいった。
「くらえ、ボディーブローっ!」
「危なっ!お前な、ここでそういうことするな!」
「あはははっ!」
しかりつけてくるシャルティエもなんのその。
笑って誤魔化すの頭をシャルティエがぐいぐい押すと、隣にいたイクティノスは二人の様子を見てくすくす笑い始めた。
とシャルティエがぐぐぐと手で押し合いしている後ろから、ジューダスがの首根っこを掴んで引っ張る。
「シャルが迷惑がってるだろうが、痴呆娘」
「なんだよ、全然遊んでるじゃん!」
「あわせてやってるんだっ。ていうか小僧、お前までなんっで僕のことシャルなんて呼んでるんだよ!」
「・・・こいつのが移った」
「人の所為にすんな!」
ジューダスがネコのように持ったままのを指差しながらシャルティエに言い訳する。が、は負けじと言い返す。
がるるるるると威嚇しあう二人を見て、イクティノスはまだ笑っている。
「・・・イクティノス少将、なんか最近、よく笑うようになりましたね?」
「ああ・・・・ディムロス中将の馬鹿と、この子の馬鹿が移ったみたいですね。困ったな・・・」
「イクティンまで俺の所為に?!いや、それほど俺に影響力があるのか」
「はあ?馬鹿だろお前」
「馬鹿もここまで進まれると手に負えんな」
先にシャルティエ、次にジューダスからつっこみを受けたは、一度沈むとまたそれからギャーっと騒ぎ始める。
そんな3人のやりとりにまた笑い出したイクティノスは、いったいどこまで笑い上戸が移ったのか。
「そうだ。お前、荷物向こうもって行けよな。ずーっと置きっぱなしになってるんだから。・・・しかも僕のところに」
「そっか。うん、わかったよ。さあ進めジューダブフッ!」
しかめ面しながらシャルティエが荷物の話をすると、は頷き、ジューダスに命令しつつも部屋の扉を指差した。
が、ジューダスからは見事な平手打ちのお返しだ。
スパァンッと気持ちの良い音が辺りに響いた後になって、ジューダスが「待て。お前、いったい今までどこで寝ていたんだ?」とに問いかけた。
「どこって、シャルと同室〜。ハロルドの部屋は人体実験されるからだめで、アトワ姉さんの部屋は大人の事情でだめで」
「おとっ・・っ・・・!」
「・・・イクティノス少将・・・・」
大人の事情とやらがよっぽど可笑しかったのか、イクティノスは噴出す前に口を手で押さえて震え始める。
シャルティエがげんなりしながら名前を呼んだが、今のイクティノスは止められない。
「カーレルさんの部屋は空いてたけど、男の部屋に女の子はいちゃだめで、んでイクティンよかしてシャルと同じ部屋になった」
「・・・シャルも男だろ」
「そうなんだよねー。だから俺も不思議でさぁ」
ハロルドに言ったら余裕余裕、としか返されないし、というの言葉を聞いて、ジューダスはシャルティエを同情の眼差しで見る。
なんだよ、というシャルティエに「いや、なんでもない」といいつつ同情の眼差しを送っていたジューダスだったが、が「荷物ー!」と騒ぎ出したので、しかたなく手を離してシャルティエとイクティノスの部屋へ行った。
「ここがシャルの部屋か・・・」
『懐かしいなぁ・・・』
つぶやいたジューダスと同じく、背中からソーディアンのシャルティエがぼそりとつぶやいた。どうやら周りには聞こえていないようだ。
イクティノスの荷物はもうすでに元の位置に運ばれており、の荷物はシャルティエのベッドの横の、空いたスペースに置いてあった。
「あったあった。・・・あ、そうだリオン。いいものがあるんだ・・」
「ジューダスだ」
にししと笑いながら名前を間違えたに、いい加減にしろといわんばかりにジューダスがつっこんだ。が、やはりは笑って誤魔化し、まあまあといいつつシャルティエの様子を伺い、それから端においてあった本棚に移動する。
「なんだ・・・?楽しい人生、プレッシャーに負けない、良い上司・悪い上司の見分け方・・・・・」
『ちょ、ちょっと!』
ジューダスが本棚にある本の題名を読んでいくと、声だけで様子を伺っていたシャルティエが声をあげた。
は一人でププーッと笑っている。
怒る剣の方のシャルティエにごめんごめんと謝ると、とジューダスは真ん中のテーブルに座っているシャルティエのところまで移動した。
「・・・・日記発見」
「見つけるなっ!」
テーブルの上においてあった日記帳をが目ざとく見つける。シャルティエががばっと手を伸ばして日記帳を抱え込んだ。
かーわいい☆と遊ぶに煩い!とシャルティエが怒鳴っていると、ジューダスがため息をついて「やめろ」とつっこみを入れた。
ジューダスのつっこみでシャルティエをおちょくるのをやめたは、次にパソコンを構うイクティノスのところへちょこちょこ移動した。
「す、すげぇ・・・」
「え?ああ、ですか」
「イクティン敬語〜」
「あ、ええと、・・・か」
「そうそう」
椅子に手をかけてむくれたに慌ててイクティノスが標準語(?)を返す。はにっこり笑いながら頷いた。
の後ろから画面を覗きこんだジューダスは、同じく感心したように「ほぉ・・・」と声をあげた。
「今までの戦いについての論文か?」
「そうで・・・だよ。まとめておけば、後々の戦いにも何か参考になるところがあると思って」
「へ〜、凄いねイクティンっ。俺論文なんて書けな」
「だろうな」
「無理だね」
「てオイ!」
イクティノスをが跳ねながら誉めていると、ジューダスとシャルティエがそれぞれつっこみを入れてきた。
が二人にむかって裏手を振るとイクティノスがまたプッと噴出し、ひねくれ者二人はにやりと笑ったりフンと鼻で笑ったりした。
「くをの〜〜坊ちゃんめっ」
「ばっ、つつくなっ」
「横弱いもんな〜〜うははっ♪」
がジューダスの横腹をつついてくすぐると、ジューダスはすぐに距離をとって戦闘態勢に入る。
二人はじりじりと間合いをつめては離し、と部屋の中で周り始め、シャルティエがため息をつき、イクティノスがまた笑った。
が走ってジューダスを捕まえようと手を伸ばし、ジューダスももちろん素早く逃げるが、スピード系同士、並のおにごっこではない。
またもつつかれたジューダスが赤くなりながらの頭をばしーっと叩いて逃げていると、シャルティエがん?と首をかしげる。
待て!待つか!と二人が走る中、ぽんと手を叩いたシャルティエがを捕獲した。
「ほーら、部屋ん中で走るなよ。イクティノス少将のコンピュータだってあるんだから」
「えー。・・・はーい」
両手で後ろから抱えられたは、一度不満そうな声を上げたが、シャルティエに睨まれて大人しく返事を返した。
ジューダスはほっとため息をついたのもつかの間、なんだか冴えない顔をしている。
そんなジューダスの表情を見たシャルティエは一瞬にやりと笑うと、そのままの体制でに話しかけ始めた。
「そういえばガキどもはどうしたんだ?今日は遊ばないのか?」
「今お勉強中〜〜。だから、行っても邪魔になるだけなの」
こちらに長くいたにしか分からないような話題をだしたのは、わざとだろうか。
とにかくジューダスの顔はまず間違いなく不機嫌だ。
ちらりとジューダスを見てそれを確認したシャルティエは、そこからさらに会話を進めていった。
「お前勉強なんてしなさそうだもんな」
「失礼な!」
「邪魔ばかりるすんだろ〜」
「むむむーっ」
意地悪なシャルティエの言葉にが子供のような反応をし―――もの凄く彼の予想通りに事が進んでいる―――きぃぃぃぃいいっっっといいながらじたばた暴れだすと、イクティノスが苦笑いしながら下ろしてあげなさいとひらひら手を振った。
「いくら本当の事でも、本人の前で言ってはいけませんよ、シャルティエ」
「なあ、それ俺への喧嘩?」
「なあとかいうなっ」
「いて!」
イクティノスの痛い言葉にが指をさしながらつっこみを入れると、音が聞こえそうなゲンコツをシャルティエが落とす。
そのまま二人がギャーギャー騒ぎ出すと、ジューダスがさっとマントを翻して部屋の入り口まで行った。
「あ、ジューダス行っちゃうの?」
「・・・リアラの怒りももう冷めただろう。僕は先に戻ってる。・・・お前は遊ぶだけ遊んでいろ」
「うん・・・?」
言うだけ言うと、ジューダスは本当に出て言ってしまった。
は首をかしげると、シャルティエに出していた突きをしまって顎に手を添えた。
「どうしたんだろう?なーんかめちゃくちゃ不機嫌だったなぁ」
「さっきのアレがまずかったんじゃないのか?」
標準語にも慣れてきたのか、イクティノスが先ほどのジューダスとのやりとりを取り上げる。
はまたうーんと唸ると、まずいな・・・とつぶやいた。
「だとしたら毎日色々やってるから・・・その分も謝らなくちゃならないかなぁ」
「・・・いったいなにをしているんだ君は」
毎日色々、と聞いて、イクティノスがため息をつく。
はえーっと仮面の羽引っ張るでしょ、マント踏むでしょ、と指おり数え始め、ジューダスの不機嫌な理由をよく分かっているシャルティエですら呆れてかえる。
だめだこりゃ、とイクティノスとシャルティエが顔をあわせていると、は荷物をもって「俺も行くー」といいながら部屋を出て行った。
「さて、どうなることやら」
とは誰の言葉か。
とりあえず、イクティノスとシャルティエの部屋から嵐が去ったことは間違いない。
続く
−−−−−−−−−−−−−−−−−−
プププーッ!ジューダス遊ばれまくりっ(お前遊びすぎ)
シャルティエまで遊び始めました。ロニもなにやら気付いたようだし・・・・さーてさてさて坊ちゃんどこまで遊ばれるかな〜(待て)
ていうか・・・イクティノスがありえないくらいに優しすぎる。これでいいのか、軍隊(よくねえよ)これじゃ甘すぎだろー世の中が。
それにしても筆(違)が進まない・・・!!書きたいのに〜〜〜!(叫ぶな)
ハイ、すみません。こんなものを読んで下った方、ありがとうございました・・・・・・。