地上では、ベルクラントの攻撃をラディスロウ越しに受けた地上人たちがおぼつかない足取りでふらふらと歩いていた。
土や泥がついたり、服がボロボロになったり。酷い怪我を負った人までいる。
そして、その人々の集まりの中心には、光る青いかたまりがあった。
「エルレイン!」
「・・・来てしまったのですか」
「どういうことだ貴様!説明しろ!!」
人を掻き分けて一番前まで走ってきたバルバトスとに、エルレインは少し暗い表情で返事を返した。
my way of living 57
〜あぁ久々のボケつっこみだ・・・〜
「なにを怒っているのですバルバトス?これであなたは、晴れて英雄として、歴史に名を残すのですよ?」
英雄、という言葉に反応したバルバトスだが、やはり腑に落ちないらしい。
自分の精神に反するのか、まだエルレインに色々と文句を言っている。
「・・・・今すぐ、俺をカイルたちの時代に帰せ」
そんなバルバトスの隣から、エルレインを睨み上げ、が静かに言った。エルレインはの方を向くと、地面に足をおろしすぐに「無理です」と返してきた。
「もう、あなた方の世界はなくなりました。彼らも、生きてはいないでしょう」
「・・・!お前は!全て分かっていてどうしてそこまでした!?これで未来の人間の、ほとんどが死んだんだぞ!!」
エルレインの言葉に、はかッとなりながら大声で問いかけた。
「地上軍が勝とうが、天上軍が勝とうが、結局変わらぬこと。ただ生まれる人間が違うだけです」
何の問題があるのか?とあたりまえのように聞いてくるエルレインを、は胸倉を掴んで引き寄せた。
「だからお前はなにもわかっていないんだ!!幸せを何だと思ってる!?人をナンだと思ってる!なにが導くだ!これから生まれる人々の幸せを、お前は全て壊したんだ!!クレスタの人々も、ハイデルベルグの人々も、アイグレッテの人々も!!」
「それも、これから生まれてくる人間たちを全て幸せにしたなら同じこと。そこから完全なる神が生まれ、完全なる世界が完成するのです」
今まで会った未来のことをどうでもいいことのようにしらっと言ってのけるエルレインを、は睨みながらバッとつきはなした。
「なにが完全なる世界だ、思い上がりもはなはだしい!お前の目指している世界は完全な幸せを人に与える世界じゃない!完全なる支配があるだけの、意味の世界だ!!幸せなんてありはしない!」
「意味の無い・・・・?なにを言っているのです。完全なる幸せを与え続ける世界のどこに、意味が無いというのですか?」
ぱっぱっと服のしわをのばしながら、エルレインは怒って怒鳴るに怪訝な顔をした。
「人間には意思がある、感情がある!それを都合よく歴史を変えて、誘導されてできた幸せなんか、本物の幸せでもなんでもない!まがい物の汚れもんだ!」
「それこそ単なる屁理屈でしょう。幸せしか感じなければ、それは、本当の幸せになる」
「まさに市に虎あり。ギャルだけでできた不細工集団が仲間内だけで可愛い可愛い言い合ってるもんとわけが違うだよ!んな理屈通るか!」
右手をバッと横に広げたに、エルレインは「何故理解しようとしないのです」と無表情に言ってきた。
はすかさず「理解できるかんなもん!」と言い返した。
大人しくしていたバルバトスも、やはりまだ腑に落ちないのかぎりっと唇をかんでいる。
「とにかく俺を未来へ帰せ!カイルたちのところへ行く!!」
「・・・なるほど。まだ彼らは生きているのですか」
先のことをすべて知っているがここまで言うのだからそうに違いないと、エルレインは納得したように頷いた。
は何もせずエルレインを睨むだけだ。
「エルレインさま、この地上人、どういたしましょう」
「レンズを与えます。それからはとりあえず、どこか安全な場所に保護しておきなさい。しばらくすれば地上が老廃し、天上の人間たちも困って降りてくるでしょう。それまでは、資源の支給も無しで。地上人の生き残りの居場所も教えてはなりません」
後ろに現れたガープに指示をだすと、エルレインは二人を無視して先に地上人の生き残りたちにレンズを与えた。
力を与えられた地上人たちは、ところどころで「おお!」と歓声を上げている。
「そこまでいうのなら未来へ送りましょう・・・ただしその前に、本当に未来へ行くべきなのかそうではないのか、ダイクロフトに言ってから考え直しなさい」
「ど」
どういうことだ、と言う前に、は同じく文句を言おうとしていたバルバトスと共に白い光に包まれていた。
あまりのまぶしさに目をつぶり、次に目を開けてみると、ミクトランが目の前にいた。
「・・・帰ってきたか」
「・・・あ、うん」
ミクトランのいるこの部屋以外、他ではお祭り騒ぎが起きているようだ。窓の外から花火をあげるような音が聞こえる。
静かにこちらを見てくるミクトランを見て、の気持ちはぐらついた。
「未来に行けば、このものとはもう会えませんよ、」
「・・?未来へ行くのか?」
「・・・・」
折角少しだけでも心を開いてくれたのに、とつぶやくエルレインは無視するとして、エルレインの言葉を聞いて問いかけてきたミクトランの質問に、は答えられずにうつむいた。
「ここに残れば、これから一生ミクトランと共に過ごすことができるのですよ?それは、アナタが一番望んでいたことではないですか?」
「・・・・そうなのか」
エルレインの言葉を聞いて、また問いかけてきたミクトランに、は答えることも出来ずずっと下を向いていた。
おい、とミクトランに声をかけられて、はやっと顔を上げた。
「・・・違う」
「なんですって?」
「違う、俺の望んでいたことは。こいつを、あの時のこいつを幸せにしてやりたかった」
強く意思表示をする目をエルレインに向け、は首をふった。ミクトランの方は向けない。見られない。
信じられない、というような顔をしたあと、エルレインはふっと笑った。
「それでも、彼であることに代わりは無いでしょう?これからずっと傍にいて、幸せにしてあげればいいじゃないですか」
「・・・・確かにそれも素敵かもね。でも、それは違う。俺の求めていたものは、もっと別の場所にある。お前の壊した未来にだ」
「・・・・・」
ならばなおさら、ここに残るべきじゃないのか、というエルレインに、は首を振った。
それから、今度はゆっくりとミクトランの方に振り返った。
「・・・ごめんミクトラン。まだここに無理矢理居座って邪魔したり悪戯したり嫌がらせしたりしたかったけど、俺、やることがある」
「いないほうが良いな」
「よかった。もう1000年後には会えないから」
ミクトランの言葉を聞いて「痛ぇ〜」といいながら、は涙目のままにっこり笑った。
「殺さないでね」
「な・・・」
なにをするんだ、と言いかけたミクトランに、はぱっと抱きついた。
存在を確かめるようにぎゅっと抱きつくと、数秒もしないうちにまたすぐに離れていった。
どういう意味を込めてかはわからないが、一瞬だけ肩に置かれた手が、余計に離れたくない衝動を大きくする。は知らないふりをした。
なにも言わず立っているミクトランににっこり笑うと、は剣を持ち、エルレインに「さあ、さっさと送ってくれ」と声をかけた。
「・・・まったく、あなたの行動は理解できません」
「だろうね。もっとちゃんと遊んでおけば、理解できたかもしれないのに」
手を上げながらため息をついたエルレインに、はフッと笑いながら答えた。ミクトランは何も言わずただその行動を見ている。
「あ、そうだバトとミクトラン。と、エルレインもか。次にあったときは、敵同士だから」
「・・・会うことなんてあるのか」
「少し前の時間になるだろうけどね。ま、その時は宜しく」
なんだ、といいながら問いかけてきたミクトランに答えると、は薄く笑いながら3人に言った。
エルレインは力を解放しながら無表情のままだ。
「もし会うことになったとしても、俺は容赦はしない」
「ははっ。だろうね。言うと思った。再開を楽しみにしてるよオッサン。・・・でも手加減はしてくれよぉ」
「断る」
「ケチ」
まだ機嫌の直らないバルバトスはムスッとしたまま、をフンと鼻であしらった。もう光が身体を包み始めている。
はミクトランの方を名残惜しそうに向くと、手を上げてひらひらと振った。
「ばいばい」
次の瞬間、目の前は真っ白な光でいっぱいになっていた。
「ヴァンジェロ、スペランツァ、そして、このレアルタ・・・・どの街も、まるで見分けがつかねえな。確かに、ここのドームも中はすごしやすいし生きていくにはなんの問題もないけどよ。こうも変化がないと、正直気がめいってくるな」
大きなレンズに囲まれたドームの中。ロニが熱くも無いのに手で顔を仰ぎながらべっと舌をだした。
「似たような街でもたらされる、似たような幸せ、か・・・・・幸せなんて、千差万別なはずなのにね」
「そうだよね、やっぱおかしいよここは!」
「・・・」
ナナリーが肩を竦ませながら言うと、カイルが息巻きながら頷いた。リアラは先ほどから会話に参加もせず、思いつめたように黙っている。
「世界がなぜこうなてしまたのか、この街に手がかりがあれば良いのだがな」
「こうしててもはじまらない、行こう、みんな!」
カイルの掛け声とともに、まず目に入った大きな建物を見て、リアラ以外の全員はその中に入っていった。
建物の配置や大きさこそ変わっているものの、この世界にあと2つはある、大きなドームに囲まれた街と同様、このレアルタの空気も綺麗に澄んで、温度も湿度も過ごしやすい環境に保たれていた。
吹雪いていた外とは裏腹に、ドームの中は明るく、暖かく、そして清潔だ。
「・・・・でも、このドームがどこも同じなら、この世界の人たちはみんがな幸せってことだよね・・・。それなら、私の役目ももう・・・」
辺りを見回して、リアラは一人つぶやいた。と、建物の中から、カイルの元気の良い声が聞こえてきた。
「リアラ、早く行こうよ〜!」
「う、うん!今行く!」
建物の中に入っていくと、カプセル我並ぶホール状の建物の入り口で、全員がキョロキョロと中を見回していた。
「予想してたことだが・・・やっぱ、城なんてないよな」
「ここが、ハイデルベルグでない以上、城も、そこに住むウッドロウも存在しないということだ」
「・・・・・・」
とにかく、情報をあつめよう。と、いうことになり、全員一緒になりながら建物の中を回った。
その間中、リアラはどこか心あらずという感じで、ずっとぼーっとしながら歩いていた。いつもなら楽しそうにカイルと話しているのに、今日はカイルが隣にいないことにも気付いていない。
そしてそのカイルは、リアラを後ろから観察しながらさりげなくナナリーの隣に並び、こっそり耳打ちした。
「ねえ、ナナリー。最近のリアラどう思う?」
「なんだい、やぶからぼうに」
「この世界にきて、リアラ、凄く換わったなって思ったんだ。元気になったっていうか、ふっきれたっていうか」
そうだねぇ、とリアラを実ながら唸り始めたナナリーと、ナナリーの答えをまつカイルのさらに後ろで、ジューダスははぁ、とため息をついた。
(いつもはバカをいって騒ぐだけの能無し集団が、どうしてこうごちゃごちゃとする時があるんだ・・・・)
なんとなく大体の察しがついているジューダスだったが、あえて口も出さず、今は情報を集めることに集中しようと気持ちを入れ替えた。
(こんなときあいつがいたら)
もう、随分と会っていないような気がしてならない。毎日横で騒がれていたからだろうか。
ムードメーカーというよりはトラブルメーカーの煩い人物を思い浮かべて、ジューダスはまたため息をついた。
今頃どこにいるのだろうか、と、考え出すと止まらない。なんの情報もないからなおさらだ。可能性が高いのは18年前だろうか。
とにかくなにをするかわからないところが、一番心配でならないジューダスだ。変なことをしてなければいいがとどこかずれてるようで的を得ているジューダスの勘に、今は拍手を送るものもボケ返してくるものもいない。
と、切り替えたはずの気持ちが別の方向に言っていたジューダスの前では、カイルがどこかのおばあさんに質問をして話を聞きだしていた。
急いでそこの中に入ったジューダスは、話が終わると、「とりあえず、図書館を探すぞ」とまとまりそうにない予想の論争をまとめて、歩き出した。
図書館を探すこと1時間。
未だにそれらしきものはみつからない。
「疲れた〜〜」
さすがにずっと歩き詰めで疲れたのか、カイルが情けない声を上げながら壁に背中をつけた。
そのままずりずりと下にしゃがもうとして、カイルは「ん?」と首をかしげた。
「見て、これ、なんか扉っぽくない?」
「ソーサラースコープを使ってみましょう」
ボタンを押すと共に、オレンジ色の光が下からふわりふわりと浮いてきた。それをカイルが手に取ると、つるにかこまれていた人工的な切れ目が、扉のようにぱっくりと開いた。実際、それは図書館の扉だった。
中に入ると、大きく円を描いた階段の先に、丸く広がった部屋がある。
中に入って降りていくと明かりが勝手につき、ほこりを被ったいくつかの映写機が現れた。
「ん、これは?」
「どうやら映写機のようだな。ここにあるということは、資料的価値のあるものだろう」
ぱぱっと埃を払いながらカイルがそれを見ていると、ジューダスが覗き込みながら説明を入れた。
ロニはそれを聞くと顎に手を当て、ふむ、と頷いた。
「映像資料ってわけか。もしかしたら、俺たちの探し物はこれかもしれんな」
「ごちゃごちゃいってないで、調べてみるのが手っ取り早いだろ?それっ!」
「あっ!ば、バカ!こいつ・・・・!」
ナナリーがガンッと映写機を蹴ると、一斉に映写機が動き始め、それにあわせて、真ん中にある円形の水晶から、縦に光がのびた。
『はるか千年の昔・・・』
やらなにやら、声が流れたかと思うと、急に、光が強くなって目が開けられないほどに輝き始めた。
「うわ!」
「な、なんだ!?」
全員手で顔を覆ったりなんだりと目を隠していると、どさっ、という重いものが落ちたような音と共に、まぶしい光も消え、映写機の動く音だけが部屋に響いていた。
「・・・!!」
「?!」
「だ、大丈夫!?!」
光が収まってすぐ、目を開いたカイルたちは驚いた。
前に見たときとは明らかに格好は違っていたが、が床に倒れていた。
まっさきに気付いたのはカイルだったが、近くにいたリアラがぱちぱちと頬を叩きながら反応を確かめると、は「う・・・」と唸りながらゆっくり目を開けた。
「あれ・・・・リアラ?」
「!無事だったのね!」
「〜〜!どこにいたんだよー!」
なんとか起き上がりながら首をかしげるに、リアラが思わず抱きついた。カイルやロニもわいわいと声を上げ、一度も顔をあわせたことの無いナナリーは「誰だい?」と首をかしげていた。
色々と言ってくるカイルたちにごめんごめんと苦笑いしながら謝ると、は拍子抜けしたようにほっとため息ついた。
「やっと・・・戻ってこれたぁ・・・・なんか安心する〜。な、泣きそう〜」
「何弱気なこと言ってんだよ!」
「でもよかったよ〜〜っ」
「フン、らしくもない。飛ばされて頭でも打ったか」
ロニにばしっと背中を叩かれてむせながらも笑っていたは、ここでようやく口をだしてきたジューダスを見ると、すぐさま顔色を変えてバッと立ち上がった。
「り!」
「ジューダスだ」
「っ、っ、っじゅーだす!!シャルむぐっっ!!」
気を動転させて次々と危ない言葉をはきかけるに、ジューダスがつっこみを入れ、最終的に口を押さえてひっぱりだした。
「お前らはそれを見てろ。僕はこいつに話がある」
「あ、うん・・・」
なんなんだ?とジューダスとの行動に首をかしげていたカイルたちだったが、映写機が動いていることに気付くと、慌てて続きを見始めた。
外に連れ出されて、初めては口を離してもらえた。
「ぷはっ」
「で、なにがあったん」
「ジューダス!シャル!シャルは!?生きてる!!?シャル!!」
「落ち着け!」
『生きてるよ。失礼な』
がっしとジューダスの肩をつかんで叫びだしたに、ジューダスは慌てて対応した。背中に入るだけのシャルティエは、動じずのんびりゆったり返事だ。
シャルティエの声を聞くとはずるずると座り込んでしまい、「シャル〜〜〜」といいながら泣き出してしまった。
久々にあったと思ったらコレか、と、ジューダスはため息をつき、しゃがんで「なにがあったんだ」と問いかけた。
「シャっ、シャルがっ、はろるどがぁ〜」
「いいから泣きやめ」
わけがわからん、とこんな時にまでつっこみを入れるジューダスは、またうえーんと泣き出したに疲れたようにため息をついた。
『坊ちゃん、女の子が泣いてるんですから、頭の一つでもなでてあげなきゃですよっ』
「何で僕が・・・」
というか頭はひとつしか無いぞ、シャル、とつっこみを入れるジューダスに、シャルティエは『いいから!』と声をかけた。
ジューダスはシャルティエに何度もほらほらといわれると、嫌そうな顔をしながら、渋々頭に手を置いた。
泣き止んで少し落ち着いたは、さらにジューダスの顔をしかめさせた。
「シャルに触りたい」
シャルティエが『いいじゃないですか、ちょっとくらい』というと、リオンを知っている人物がわんさかいるわけでもないしと、ジューダスはを人目のないところへ引っ張っていった。
『ほら〜。シャルですよ〜』
「シャル〜」
いつもなら気持ち悪い、やら子ども扱いされた、やら言って投げ捨てるところを、今回はシャルティエをぎゅっと抱きしめた。
そんなの行動に驚いたのはもちろんジューダスだけでもなかったが、『あの時代にいったんならしょうがないか』とシャルティエはため息をついた。
「・・・で、いったいなにがあったんだ」
ジューダスに問いかけられて今しがた起きたことを思い出したのか、はまたじわっと目に涙をためた。
慌ててジューダスが「な、なんなんだお前はっ」と噛みながらつっこむと、はシャルティエにおでこをつけながらはーっとため息をついた。
「シャルたちが殺された」
『「は?」』
「ベルクラントから攻撃受けて、ラディスロウがふっとんで、シャルもハロルドもディムさんもみんなみんな・・・」
「ちょっとまて」
急に飛んだ話をされたジューダスとシャルティエは、頭を整理するためにに制止をかけた。シャルティエ、ハロルド、ディムロスとくると、18年前なのか1000年前判断しかねない。
というか、18年前に飛んだとばかり思っていたジューダスとシャルティエは驚くばかりだ。
「ハロルドという名前があるということは・・・・お前、1000年前に・・・?」
「うん」
『ちょっ、それこそまってよ!なんで僕が死ななきゃならないのさ!戦争に勝ったのは地上軍でしょ!?』
「ううん。天上軍」
「ということは、エルレインか」
「うん。鬼ごっこ・・・ゲフッ。エルレインが天上軍を勝たせて、ボロボロになった地上人にレンズ与えて・・・」
映写機を見れば早いだろ、と、説明をがしているのにもかかわらずジューダスはいい、さっさとシャルティエを布につつむと歩き出してしまった。
ひ、ひどっ!とがシャルティエを取られたショックでまた泣きそうになっていると、「さっさと行くぞ」とジューダスは少し前で振り向いた。
「俺、ここの世界にもなれて無いのに・・・・」
「わかった。わかったからいじけるな」
一人演歌でも歌いだしそうな勢いのに、ジューダスはこいこいと手招きをした。
「ふふふーっ」
「・・・・なんなんだ本当に」
「なんか、久しぶりにジューダスに会ったら安心したなーと思ってさ。ただいま、ジューダス、シャル」
『おかえり』
にこにこ笑いながらジューダスの隣を歩くに、ジューダスは怪訝な顔をした。というか、どこにいても気は抜いていそうだ。
シャルティエがくすくす笑っていると、カイルたちが丁度図書室から出てきたところだった。
「あ、ジューダス、!何処行ってたのさ!」
「野暮だなカイル〜vそういうことは聞くなよ☆」
「何してたんだジューダス!」
「なにもしてない!」
カイルの言葉に冗談でが返すと、ロニがジューダスの肩を掴まん勢いで聞いてきた。
もちろんジューダスは眉間にしわを寄せながらつっこみ返しだ。
久々に聞いた仲間たちのやりとりにがじーんと浸っていると、カイルが横から「ねぇねぇ、どこに行ってたのさ」と問いかけてきた。
「ん?ジューダスと?」
「違うよ、今までだよ」
「1000年前」
「ええ?!」
1000、という大きな数字を聞いてか、それともその意味のある数字を聞いてか、カイルとリアラ、ナナリーとロニが驚いた顔をした。
はそれを見てプッと笑うと、「本当だよ」とさらに言った。
「じゃ、じゃあ、もしかして歴史が変わるところなんかも・・・」
「・・・ああ、見たよ。ラディスロウが撃たれたところ(しかもラディスロウ内の画面)だけだけど」
「てこたぁ本当に・・・」
というロニに、ジューダスがため息をつきながら「これで確実だな」といった。
「歴史は変えられたんだ。エルレインの手によって。天地戦争の勝者と敗者を入れ替え、己が望む世界・・・人々が神を称え、あがめる世界をつくりあげたんだ」
「なぁ、ジューダス、ずっと、思ってたんだけどよ・・・。この世界ができたってことは、俺たちがいた世界は・・・」
「残念だが、お前の思っているとおりだ。ゆがめられた歴史のベクトルの上に、僕たちの世界は存在しない・・・」
「くそッ、なんてこった・・・!」
うつむいていったジューダスの言葉を聞いて、ロニは舌打ちをしながらダンッと壁を殴った。カイルも渋い顔をしている。
そして誰も喋らなくなり沈黙が流れたが、ナナリーが「ようやくハッキリしたね。この世界のからくりってヤツがさ」と腕を組みながらその沈黙を破った。
「・・・・けどね、「はい、そうですか」って、全てを受け入れられるほど、あたしは人間ができていないんだよ!」
「オレだってそうさ!こんな世界を作ったエルレインを、絶対に、許せない!」
ぐっと手を握りながら言うカイルやナナリーに、はうんうん頷きながら「そうだよねー!」と気の抜けるような声をあげた。
幸いジューダスにしか聞き取られてはおらず、聞いてしまったジューダスは一人しかめっつらだ。
「でも・・・この世界の人は、みんな、幸せそう」
「えっ?」
全員が闘志を燃やすような状態の中、水をさすように、リアラがぽつりとつぶやいた。
首をかしげたカイルに答えるように、リアラはゆっくり顔を上げた。
「・・・ねぇ、カイル。この世界は、本当に間違っているのかな?確かにこの世界は、ゆがんだ方法で作られたかもしれない。でも、結果として・・・人々は幸せに暮らしているじゃない。もし、間違ってないんだとしたら、私の役目も終わって、カイルとふたりで・・・」
「リアラ!」
まるで夢でも語るように喋るリアラの言葉を止めるように、カイルが大声でリアラの名前を呼んだ。
リアラはカイルの声に驚くと、いちど身体を跳ねさせてカイルの方を見た。
「どうしちゃったんだよ、リアラ!リアラは、このままでいいっていうのか!?」
「それは・・・」
「オレはイヤだ!だって、ここには誰もいないじゃないか!父さんも、母さんも、フィリアさんもウッドロウさんも・・・誰もいない!このまま、みんなが消えるなんて、俺は・・・イヤだ!」
「消える・・・」
一度目を伏せたリアラは、カイルの必死の言葉にうろたえるように顔を上げた。助け舟でもだすように、ジューダスがここで口を挟んだ。
「人が消えるということは、その人間が積み上げてきた歴史も、また、消えるということだ。人の歴史を否定し、存在するこの世界・・・少なくとも、僕は許せない!」
「ジューダス・・・」
珍しく感情的に怒るジューダスを見て、リアラはまたうつむいた。はさりげなくジューダスの頭をなでて手を叩き落とされている。
「・・・わかったわ。ごめんなさい、みんな。変なこと、言っちゃって・・・・」
「・・・・わかってくれたら、いいんだ。やろう、みんな!俺たちの世界を、取り戻すんだ!」
「あぁ!エルレインに俺たちの意地ってもんを見せてやろうぜ!」
と、もりあがるカイルたちの後ろでは、ジューダスとが手をのせ弾き、手をのせ弾きの大合戦だ。かなり緊張感がない。
けどさ、どうやったら世界を元に戻せるんだい?というナナリーの言葉を聞いたジューダスは、がしっとの腕を上手い具合に掴み、話しに入った。
「簡単なことだ。エルレインの捻じ曲げた歴史を元に戻せばいい。そのための力は・・・リアラ・・・お前が持っている」
「時間移動・・・ね」
「ていうかそろそろやめねぇかジューダス」
「こいつに言え」
真剣な話をしているのにいまいち緊張感をもちきれないジューダスとのじゃれあい光景に、思わずロニがつっこみを入れた。
楽しんでいるの腕をぐぐぐと押さえつけながら、ジューダスは逆にロニにつっこみかえした。
ロニがの腕を掴んで動きを止めると、ジューダスはやっと安心したようにため息をついた。カイルたちは話を進めている。
「そっか!天地戦争の時代に行って、エルレインのしたことを元に戻せばいいんだ!早速行こう、リアラ!俺たちをその時代へ連れてってくれ!」
「それは、無理だな」
問題児をロニに任せてすぐ、ジューダスはカイルにつっこみを入れた。どうして!?と騒ぐカイルに、今度はリアラが説明をいれた。
「みんなを過去に連れて行くだけの力が、わたしには、ないの・・・。レンズがあればいいのだけれど・・・」
「あ、そっか・・・」
「・・・」
またも全員で沈黙していると、急に、そらから声が聞こえてきた。
「地上に住む人々よ・・・扉を開け、外においでなさい。そして、神の恵みをその身に・・・」
「!!」
「この声は・・・エルレイン!」
驚いて全員が空を見上げ、リアラが声を上げた時だった。ベルクラントから、光がぱっと発射された。それと同時にドームの天辺に光が集まり、街の真ん中に集まって人々のレンズに。小さな光の粒がいくつもいくつも吸収されていった。
「敬けんなる者たちに、神の恵みを・・・!」
「おお・・・力が・・・!」
「ありがたや、ありがたや・・・」
と、ところどころで拝みだす人々とその光の粒に驚いて、カイルがおろおろしながら「今のは、いったい・・・!?」と声をあげた。
「おそらく、ダイクロフトからああやって、人々のレンズに力を与えているんだ」
「空から見下ろして、力を与える・・・へっ!神様きどりかよ」
「待てよ・・・そうか、その手があった!」
ロニがけっと悪口を言ったところで、ジューダスがはっと息を呑んだ。
「どうしたの、ジューダス?」
「時間移動のためのレンズなら、あそこに山ほどある。照射されているのは、レンズの力だ。ということは、ダイクロフトに相当な量のレンズがあるはず」
とジューダスが言うと、ロニがぽんと手を打ってそっか!と顔を輝かせた。
「そのレンズを使っちまおうってわけか!」
「なら、ついでにエルレインの鼻っ柱も折っていこうよ!一発殴らないと、おさまりそうにもないよ!」
「よし、決まりだ!それじゃ・・・・」
と、言うと、カイルは近くにいたおじさんにダイクロフトへ行く行き方を聞き始めた。そのころ、ほとんど賀屋の外だったがほのぼのしながら腕を組んでいた。
「すっかりロニといいコンビになってきたね、ジューダス」
「なにを馬鹿なことを。そんなわけがないだろ」
はっ。と嘲笑したジューダスだったが、は「えー?」と笑いながら疑わしそうな目を向けた。そんなに、ぽんぽんと誰かが後ろから肩を叩いてきた。
「えーっと、だっけ?」
「お姉さんはナナリー?いつの間にやらこのへんてこな集まりの仲間に入ったんだね」
「ということは、あんた、もう一人の仲間ってやつかい?」
振り返ると、そこにいたのはナナリーだった。がにっこり笑いながら愛想良く返事を返すと、ナナリーもにっこり笑いながら言葉を返してきた。
もう一人の仲間という言葉を聞いてが首をかしげていると、ナナリーは苦笑いしながらロニを指差し、「あれから聞いたんだよ」と答えてくれた。
「あ〜なるほど!夫婦漫才」
「な、なんでそうなるのさ?!」
「いや、なんとなくね〜☆ま、とにかくこれからよろしく!」
「ああ、よろしく」
と、二人が仲良くなっている間に、どうやら行き方を聞いたらしいカイルが「光の祠へ行こう!」とロニと共に息巻いていた。
「も戻ってきたことだし、出発だ!」
「おー!」
久々のこのノリに、は楽しそうにカイルと一緒になって手を上げた。
「でーもホント、がいなくなってからジューダスのやつ大変だったんだぜ」
「そうそう。夜毎〜〜〜って寝言で叫んでさ」
「そうそう。大変だったのよ」
「ああ。私たちの部屋まで聞こえてきてたよね」
「ウソをつくな貴様らっ!」
準備を整えて街を出てすぐ、ロニがケラケラ笑いながら冗談を言うと、カイル、リアラ、ナナリーと全員がそのボケに乗ってきた。
ジューダスが青筋をうかべながらつっこみをいれると、はゲラゲラ笑った後に「マジでー?」とつっこみを無視して全員に答えた。
「そこまで思われてるなんて、困っちゃう☆」
「困るのはその思考回路だっ」
「ね、面白いでしょ」
「あははっ!本当だ、面白いね〜この二人組ませると」
ね、と、カイルが二人を指差しながらナナリーに説明をし、笑うナナリーに気付いたジューダスはまず真っ先にカイルに仕返しをした。
といっても、雪だまを頭にぶつける程度だが。
「ぶわ!つめたっ!!」
「雪合せなら俺もやるぜー!」
「もう終わりだ!お前がやったらエルレインのところに行く前に体力なくなるっつの!」
ぎゃーっと騒ぎ出したにロニが思い切りつっこみを入れると、リアラとナナリーが大笑いし、ジューダスが疲れたようにため息をついた。
山の頂上に着くと、不思議な模様をした円状の魔方陣があった。見張りも一人ばかりついている。
「これのことだな?ダイクロフトへ行くための魔方陣って」
「いーい趣味してるぜエルレインさまよぉ。どうせレンズの力であがるってーのにわざわざ魔方陣書くなんてネ」
「その他のつっこみは全てダイクロフトでやれ」
魔方陣を発見すると、まず最初にカイルが確認をし、それからが口笛を吹いた。ジューダスがつっこみをいれたところで注意をする見張りの兵士も無視して全員魔方陣に入り込み、カイルが上を向いた。
「すぐに引き返して・・・って、おい!」
「まあまあお兄さん、気にしないでね〜」
「聞こえているんだろう、エルレイン!オレたちは、逃げも隠れもしない!ダイクロフトまで連れていけ!」
すっと息を吸ってカイルが叫ぶと、しばらくして、エルレインの声が街と同じく空から聞こえてきた。
「・・・やはり、来ましたね。いいでしょう、あなた方の望どおりに・・・」
というや否や、魔方陣は白い光に包まれた。
「うわぁ〜なんか空間移動すんのと全然変わんないってところがむなしいね」
「芸のないところも芸術性のないところも後で全部つっこんでやれ」
「無理、俺ボケ担当だから」
「たまにはつっこみもやってみろ」
「嫌だー。ジューダスを見てつっこみの苦労が身にしみるほど分かるから」
「・・・だったら少しは直せっ」
「もっと嫌だ」
等々。二人で話しこんでいるうちに気付けばお空の上だ。
周りを見回して、カイルが「ここが・・・・天空都市ダイクロフト・・・?」と首をかしげた。
「本来の形と随分かわっちゃってるけどね・・・あいつ殺されでもしたのかよ。もっと趣味悪かったぞ・・・」
「・・・」
確かに。と、いえるのはジューダスだけだろう。今ではすっかり教会のように作りが変わっているが、前の趣味の悪さを思い返して、思わず二人は顔をしかめた。
「敵を招き入れるとは大した自信だな。それとも、俺たちをナメてるのか」
「どっちでもいいさ。あとで後悔させてやりゃいいんだから」
「そういうこと!よし、行こう、みんな!」
がっと腕をくむナナリーと同じようなテンションで手を上げると、カイルは先頭を切って走っていってしまった。
後ろから追いかけるロニに「おいカイル!転ぶと危ないって!」と注意されているところがなんだか痛い。
「ダイクロフトか・・・まさかこんな形で来ることになるとはな・・・」
「おりゃ色んな形でこんにちはだよ本当に。でも、リオン・・・・いや、来ない方が良かったかもね」
悪趣味だし。とまだ言うに、ジューダスはため息をついたが決して否定はしなかった。
しばらく進んでいくと、ダイクロフトの入り口を背に、老人が一人立っていた
「カイル様、それに、リアラさまですね」
「あ、危ないよおじいちゃんっ!」
「・・・あなたはさまですね」
すぐさまボケたんだか本当に心配なんだか、は口元に手をやりながら老人につっこみをいれた。
老人が目を細めての名前を呼ぶと、カイルが「おまえは・・・誰だ!」と上手い具合に話を進めてくれた。
「わが名はダンタリオン。エルレインさまの理想に賛同する者です。無理を承知でお願いします。・・・カイル様、ここは、お引き取りください」
「・・・それはできない」
と、カイルが言ったところで、はリアラを引っ張って「耳貸して」と小声で喋った。
「こうこうこうして・・・」
「うんうん・・・」
「お?なんだ?」
「みんな協力して!」
リアラとが小声で話しているのに気付いたのか、ロニが一番後ろでしゃがんでいる二人の方に向いた。
ナナリーやジューダスも気付き何事かと首を向けてきたところで、が人差し指をくちにやりながら協力を促した。
作戦を全員に伝えると、背の高いロニと次に高いナナリーが真ん中に並び、さらにロニの斜め前にジューダスがたった。
後ろは丁度死角になる。
カイルもダンタリオンも何も気付かず話している。
「二つの道は、交わらず。ということですか・・・・。ならば、私も自らの理想に従いましょう。エルレインさまの理想に・・・!」
「あー!ちょっとまった!」
「・・・なんですか?」
話が終わり、戦闘が始まりそうなところでロニが慌てて声をかけた。怪訝な顔をしたダンタリオンにあははと苦笑いすると、ロニはナナリーに小突かれながら「あー、えーっと」と頭に手をもっていった。
「ほ、本日はおひがらもよく・・・・」
「なに天気の話しなんてしてるんだいっ」
と、どつき漫才を始めた前では、さりげなくジューダスがカイルに何かを話している。
「え、えーっとだなぁ?しゅ、趣味はなんだ!」
「そんなもの聞いてどうするのさ!」
「じゃあ他に何言えってんだよ!」
「・・・とりあえずなんだ」
「・・・読書だ」
「うわベタッ!」
「お前はひっこんでろ」
ダンタリオンが答えた瞬間、ジューダスたちの後ろから聞こえてきた声に、ジューダスがつっこみを入れた。
首をかしげるダンタリオンにまたロニがあはははーと苦笑いすると、今度はナナリーが「え、えーっと」と喋り始めた。
「じゃ、じゃあ、職業は・・・」
「エルレイン関連なら神官だろうがっ」
「・・・何がしたいんだお前ら?」
「気にするな。少し頭がおかしいだけだ」
「「おい!」」
ロニとナナリーが同時につっこみを入れたが、ロニに言われてナナリーはもう一度「えっと」となにかを考え出した。
「あ!好きなタイプとかは?!」
「それこそどんな質問だっつの!」
「だって、しょうがないだろ?!」
「・・・とりあえず、なんだ」
「・・・・・・・・。エルレインさまのような清楚な方だ」
「ブッ!」
少し間をおいてから答えたダンタリオンに、またジューダスたちの後ろから声が聞こえてきた。しかも失礼なことに噴出している。
ダンタリオンには聞こえてなかったようだが、前にいるロニたちが笑いを堪えるのに必死だ。
「はい、次ジューダス」
「僕までやるのか」
「あたりまえだろ?一人逃げようったって、そうはいかないよ」
ロニとナナリーに責められて、ジューダスはしかたなくといった感じにため息をついた。
「・・・というか、お前らのノリ合コンじみてて嫌だ」
「「うるさい!」」
いいから質問!と二人につっこまれると、ジューダスはうーんと考え始めた。ダンタリオンはイライラと腕を組んでいる。
一応待っているあたり律儀だ。
「・・・・カイル、頼んだ」
「ぇえ?!ジューダス言って無いじゃん!」
「僕には・・・無理だ」
「それ秘奥義!ジューダスそれ秘奥義!」
と、カイルが懸命につっこんだが、ジューダスはしらんぷりだ。もはや特技か。
逃げられてしまったカイルはうぐぅ・・・と泣きそうな顔になったが、ダンタリオンの方を向くと、じっと目を開きながらうんうん唸って考え始めた。
「え、えーっと・・・えーっと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お前を倒す!!」
「「煽ってどうする!!」」
「え、えー!?だ、だって!他になに言えばいいんだよ!」
つっこまれたカイルはあたふたと慌てふためいたが、後の祭りだ。
やっと言ってきたかとダンタリオンはため息をつくと、手に持っていた矛をブンと振り回して構えた。
「もう待つのにも飽きた」
「わわわわわー!ストップ!まった!まった!」
「まったはなしだ!」
「そうそう。もう時間稼ぎはいらないよ」
「なっ!」
後ろから急に声がしたと振り向こうとしたダンタリオンは、服の背中を引っ張られ、そのまま横に回されて下に落ちかけた。
すんでのところで、ガッと床を掴んだ。が、片手だけで身体を支えるのは辛い。
そんなダンタリオンを上から見下ろしているのは、腰に手を当てただ。
「お〜。がんばってるがんばってる」
「まったく・・・・ろくなことをさせないな」
「おまえなにもやってないじゃん!」
隣にやってきたジューダスがため息をつくとが即座に突っ込み、その後に続いてカイルがそーだそーだ!と抗議してきた。
逃げ場無しだ。そんな呑気な上のやり取りとは違って、ダンタリオンはかなり必死だ。
「ねえリアラ、まだレンズたりる?」
「ええ、まだ結構あるわよ」
「じゃ、このおじいさん街にでも飛ばしちゃわない?」
「そうね、見殺しにするのも嫌だし」
と、言うと、リアラはとことこやってきてレンズ片手にそっとダンタリオンの手に触れた。
ぱっと光ったかと思うと、「な、なにを!」と叫んだダンタリオンは光と共に消えていった。
「さ、行こうか」
「おう!って、おまえ、その首のなんだ?」
「え?げっ!」
道が開け、よっしゃ!と立ち上がったの上から丁度例のアレが見えたのか、ロニが思い切り驚きながら問いかけてきた。
は首をかしげたが、決して目立たないわけでもないところについていた例の印を思い出し、一気に青ざめた。
「え?なになにー?」
「だめだカイル!お前は見るな!」
「何なんだ、見せてみろ」
「見るなー!俺を見るなー!」
うわー!と叫び、真っ赤になりながら逃げようと走りだしたを、ジューダスは数メートル先ですぐに捕獲した。
いつもと違ってふわふわのファーがついたコートだったが、指で引っ掛けてちょっと覗き込むとすぐに見つかる場所だったため、捕獲されたはじたばたもがくもまったく効かず。ジューダスにしっかりと見られてしまった。
「・・・・どういうことだこれは」
「悪戯だ!悪戯で付けられてたんだ!朝起きたらついてたんだ〜〜っっ」
「余計に怪しいぞ、その言い方」
うわーんとジューダスに泣きつく・・・・真似をしたに、ジューダスはじと目で睨みながらつっこみを入れてきた。
は「決してそういうことがあったわけじゃない!」と必死の弁解だ。
「そうか・・・少し離れて旅をしているうちに、お前も大人になったんだな・・・」
「なってねえ!!ぜってー違う!!というかロニ!おまえ実はまだど」
「言うな。皆まで言うな!!」
「・・・図星か?」
そこらへんは分からないが、デリカシーもクソもなくそんなことを聞いてきたジューダスに、ロニは涙を流しながら「ジューダスのバカ野郎ー!」と走り去っていった。数メートルだけ。
敵地にいるというのに大した余裕だ。
「いつまでもそんな話してないで!さっさといくよ!」
「あぁ〜つっこみが増えた〜〜」
「ボケも増えたがな」
「元からだから数に入らない入らない」
と、ナナリーのつっこみに感涙しているにジューダスがつっこんだが、にはすぐに流されてしまった。
そんなこんなで呑気に歩きながら進んでいくと、一番奥に、神の眼とともにエルレインが立っていた。
「エルレイン!」
「やはり、来たか・・・・」
カイルがかっこよく決めたところで、次に続く。
ということです(殴)
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うーん、なんだか壊れてますねェ〜〜(お前のせいだし)
ていうかロニ・・・・まさか本当に・・・・?(もう離れろ)まっさかそんなわけないですよねー☆
まあジューダスは(帰れ)さてさてドリ主、勘違いされたままきちゃいましたが(笑)いいのかなぁ〜。
ミクがさりげなくいいトコ取りです。そこらへんは気にせず(撲殺)
ではでは、ここまで読んでくださった方、ありがとうございます〜〜(礼)