ラディスロウで、今一つの問題が起きていた。
「・・・・・・この子、どこで寝かせましょうか?」
この子、とはいわずもがな、だ。無事夕食を済ませたのはよかったのだが、問題は、何処で寝るか、だ。ハロルドの私室はラボも兼ねているので少しどころでなくかなり汚い。
とりあえずイクティノスに指をさされてきょとんとしているに、ハロルドが肩を竦めながらやる気の無い声で提案をした。
「さあ?シャルティエに懐いてんだったらイクティノスどかしてシャルティエと一緒の部屋でいいんじゃない?」
「絶対嫌だ!」
「そこまではっきりいわれると照れるな〜」
「・・・誰も褒めてないわよ、」
嫌だと断言したシャルティエの言葉を聞いて何故か照れたに、ハロルドが少ししらけながらつっこんだ。
my way of living 51
〜天地戦争時代でコントのマキのマキ〜
「さて、それじゃあどうします?ハロルドの部屋を片付けるのが一番打倒だと思うのですが・・・」
荒れるシャルティエとボケるをとりあえず流すと、イクティノスはさっさと話を進めた。イクティノスの言葉を聞くと、ハロルドはめんどくさそうな顔をして「え〜〜〜」と声をあげた。
「じゃ、あんた片付けてくれる?」
「え・・・・?そ、それはちょっと・・」
「私だって野郎を部屋にいれるつもりなんてないわよ」
「・・・・・・」
ハロルドの最初の言葉に引いたイクティノスだった。が、その次のハロルドの言葉を聞くと固まった。なら言うなよ、という言葉が顔に浮かんできそうな勢いだ。
後ろでとシャルティエが「いじめだ」と言ってこそこそと笑っていると、ハロルドが振り向いて「じゃあ」と声を上げた。
「兄貴の部屋に空きがあるから、そこで寝るってのはどう?」
「年頃の女の子を男の部屋で寝させるのはいけないだろう」
「あらカーレルさん」
ないす自分、とハロルドがぱちんと指を鳴らしていると、音もなくカーレルが現れてさっそく妹につっこんだ。これが兄弟漫才・・・とが頷いていると、カーレルはハロルドに「お前の部屋に布団を敷いたら良いだろう」と一番妥当な案をだしてきた。これでハロルドが縦にうなずいたらイクティノスがかわいそうだ。
だがハロルドは首を横にふると、即答で「嫌よ」と返してきた。
「そんなハロルドっ!俺のことがそんなに嫌いなの?!」
「いや、別に嫌いって訳じゃないんだけどね、あの部屋でと過ごすと思うと・・・・・・・グフ、グフフフフ・・・」
軽くのボケを流したハロルドだったが、そのうちにやりと笑ったかと思うと、怪しく含み笑いし始めた。それを見たが引きながらカーレルの横にさりげなく避難すると、シャルティエたちも一緒になってカーレルの横まで避難してきた。
「・・・カーレルさん、妹さんが危ないですよ」
「危ないね」
「止めてください」
「うーん、無理かなぁ」
「冗談でしょ」
「よくわかったね」
あくまでにこにこ笑顔を絶やさないカーレルだったが、はさりげなく顔を青くした。さすが、ハロルドの兄貴だ。
伊達にハロルドと兄弟ではないところをカーレルに見せつけられた後、話は本題に戻った。をどこでねかせようか。
「ハロルドの部屋で寝るのは危ないということがわかったから・・・」
「毎夜メスなんてとがれたら俺寝らんない・・・」
がぼそりというと、カーレルもイクティノスもを見てしばらく無言になった。シャルティエは下に目を泳がせながら青い顔をし、ハロルドは未だに笑っている。
「やっぱりここは、イクティノスに移動してもらおうか」
「ぇえ?!っていうことは・・・・・?」
「と同室だ、シャルティエ」
叫び声をあげてカーレルに聞き返したシャルティエには、もれなくカーレルからの素敵な笑顔と痛いお言葉を頂戴した。それをきいたシャルティエは思い切り嫌そうに顔をしかめて、次の瞬間叫んでいた。
「そんなーーー!!!僕の安眠はどうなるんですかっ!」
「酷いなー。人をなんだと思ってるんだっ!襲わないしいびきだってかかないぞ!多分」
「絶対にするな!」
こうして、結局はシャルティエと同室になってしまうのだった。ところでカーレルに聞きたいのだが、先ほど年頃の女の子を男の部屋で寝させるのはいけないといった発言はどうなったのだろうか。とにかく、決定してしまったものは決定してしまったので、逆らう間もなく移動は開始された。
同室に任命(?)されたは荷物が元々置いてあったこともあって、イクティノスの移動を手伝うとすぐにベッドにダイブしていた。
それからハロルドが遊びに来ると、空間移動の話から始まり、そのうち二人でなにやら楽しそうにお喋りをして笑っていた。
「僕、もう寝るから。あんまり煩くしないでくれよ」
「ああ。おやすみシャル〜」
「で、、ここはさ・・・・」
色々とありすぎて気がめいったのか、シャルティエは疲れたようにため息をつくとさっさとベッドの中に入った。もう既にシャワーは済ませ済みだ。ベッドに入って布団を被ったシャルティエだったが、後ろから聞こえてくるあまりの会話の内容に、思わず目を開いて顔をしかめた。
「上からカツラでも落としてみる?瞬間接着剤付きの奴」
「んで『ディムロス中将、イメージチェンジですか?』なんてね〜☆」
「イクティノスにさ、告白薬みたいなの飲ませて、大暴露大会〜☆なんてどうよ?」
「いいねー!普段色々溜めてそうだから、何言い出すかわかんないね☆」
「でしょーっv」
「あっ、あっ、おじいちゃんの椅子の下にぶーぶークッションなんてどうよ?」
「クレメンテの椅子にブーブークッション!マジいいわそれ、なんならリトラーの椅子にやっちゃいましょ」
「おっ、強いねーv」
「って何はなしてるんだよお前ら!!」
とうとうがばりと起き上がってシャルティエがとハロルドに突っ込みを入れると、二人は仲良くにこーっと笑って見せた。
「もちろん」
「悪戯の計画。ばらしたらどうなるか、わかってんでしょうねピエール?」
ウフフフフ・・・・と笑うハロルドの威圧力は尋常じゃない。うっと一旦引くと、シャルティエはまたずいと前に出て(ベッドの上で)二人をきっと睨み返した。
「そんなことするなよな!みんな怒るぞ!」
「わーかってるわよ。だ・か・ら・面白いんじゃない」
「ハロルド、違う違う」
「おっと」
まともにつっこんだシャルティエに力説したハロルドを、が横からつっこんだ。おっとといってハロルドは口を手で押さえたが、後の祭りだ。
「皆下手に気が立たないように、私たちがたのしませちゃおーぅ。っていう企画よ。わかった?」
「全っっ然説得力ないんだけど」
「あ、やっぱ?」
「ていうかいつの間にお前ら仲良くなってるんだよ!」
やっかいだ、とは口にださずに言ったシャルティエ。とハロルドはそれを聞いて顔を見合わせると、それからすぐにシャルティエの方に顔をむけて「今さっき」と声をそろえていった。
「はあ?」
「私は空間移動についてのデータをとりたかったから色々と話し聞こうと思ってきたんだけど、ってば案外面白くってね〜」
「案外とは心外なっ。俺は面白いぞ!」
「自分でいうな」
すぱっとシャルティエにつっこまれると、はいじけて床にののじを書き始めた。そんなを気にせずに、ハロルドはまだ悪戯の計画を頭の中で練っている様子だ。口元は笑ってはいないが、目が笑っている。
一抹の不安どころか二抹も三抹も四抹も五抹も不安がよぎったシャルティエは、とりあえず諦めてさっさと寝た。
そして、その悪戯が決行されたのは次の日からだった。以下、ほとんど会話文で続く。
事件その1
「だぁっ!!なんだこれはっ!!」
「あらディムロス―――よく似合ってるわよ、それ。・・・ショッキングピンクの・・かつらっ・・・・・・!!」
べしゃ。という音ともに、ディムロスの頭にはショッキングピンクのロングのカツラが落ちて張り付いていた。丁度隣を歩いていたアトワイトはそれを見てブッ!と噴出し、口を手で押さえ、目に涙をためながらディムロスに何が乗っかっているかを教えた。
「わ、笑うなアトワイトっ!くそっ!接着剤がついているぞ!こんなことするのは・・・・・ハロルド!!どこにいる!!」
と、ディムロスが真っ赤な顔で大声をあげると、二人の丁度真上から、「はぁ〜い」という間の抜けたような楽しそうなような声が聞こえてきた。
「って、ハ、ハロルドと?!」
「ぶはーっ!!大成功だよハロルドーー!!マジ可笑しいーー!!!」
「あったりまえでしょー!私なんだから!―――あーはははははは!!おっかしーー!!」
「笑うな貴様らー!!」
ちなみに、カツラについていた接着剤はシャワー程度の熱で簡単におちるものだった。
事件その2
「ふー・・・・疲れた・・・・」
「お疲れ様です、ディムロス中将」
会議室で、ディムロスとアトワイト、そしてカーレルとイクティノスの4人が仕事を終えて一服しているところだった。それぞれくばられたお茶を手に適当な談笑をしていると、急に、アトワイトの様子がおかしくなった。
「う・・・」
「アトワイト?どうしたんだ?」
「いえ、大丈夫よ・・・少し、くらっと・・・・」
「おい、本当に大丈夫なのか」
頭を抑えてふらりと傾いたアトワイトをディムロスが支えていると、急にアトワイトが「ねぇディムロス」とディムロスに声をかけた。
「あなた、仕事と私とどっちが大事なの?」
「は?」
「今は戦時中だからっていうのもわかってるけど、私としては気になるのよっ」
「そ、それは・・」
「ねえイクティノス」
「は、はい?」
「あなた本当に30代?顔はそうだけど、行動といいなんといい、40代でもおかしくないわよね」
「は、はぁ・・」
「ねえカーレル。あなた浮いた話がないけどもしかしてホモなの?女の子と経けムグ」
「それ以上は禁句だ、アトワイト」
「・・・・」
危ないことを口走りそうになったアトワイトの口をディムロスがぎりぎりで抑えた。カーレルは絶句している。
急におかしくなったアトワイトを見て、ディムロスは辺りを鋭い目つきで見回した。
「・・・ハロルド!!またお前たちか!」
「やぁ〜だそんなのあたりまえじゃない」
「こんな高度な悪戯、俺たち以外に誰が出来るのさ」
「・・・・どこからでてきてるんですか」
「「机のまんなか」」
「ちゃんと穴はふさいでおきなさい」
注意するべきところがずれているんじゃないのか。イクティノスはそう思ったが、結局その意見は外にでることはなかった。
「アトワイトがのんじゃったね、あのお茶」
「残念だったわ。本当はイクティノスに飲ませるはずだったのに・・・・」
「・・・・・冗談でもやめてください」
「俺たちはいつでも本気さ☆」
「さらにやめてください」
「いいからとっとと解毒剤をよこせっ!!」
何か喋りたそうなアトワイトの抵抗する手をなんとか押さえながら、ディムロスが怒鳴った。
事件その3
司令塔のリトラーを中心に、ディムロス、アトワイト、イクティノス、クレメンテ、カーレル、シャルティエの6人が会議室に呼び出され、ソーディアンについての話を聞いていた。とうとう話が本格的に動き出したらしい。
「・・・というわけだ。以上、会議を終わる」
というリトラーの一言で会議は終了し、7人それぞれに新人の兵士からお茶がくばられた。一気に気を抜いて椅子に座った6人を見ると、リトラーもやっと一息ついて表情をゆるませ、椅子に座った。
瞬間。
ブーーーー〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・ハロルドーーー!!!ーーーーーー!!!」
「「はぁ〜〜い☆」」
リトラーが座った瞬間、お○らのようなものすごい音が部屋中に広がった。・・・リトラーは思わず途中で立ち上がった。
そしてそれを聞いて全員が絶句した一間後、ディムロスがかなりの怒りを込めて部屋を見回しながら怒鳴った。すると、リトラーの丁度後ろ、ラディスロウの先端の壁から、楽しそうな二人の間の抜けた声が聞こえてきた。
何故、と顔をしかめながら全員がリトラーの後ろの壁を見ると、きぃ、という音とともに壁がくるりと回転した。
「な?!」
「へっへー!驚いただろ!忍者屋敷の定番、回転扉〜☆」
「考えたのがで、もちろん作ったのは私よ」
「アホか!!」
と、得意げに笑っている二人に思わずシャルティエがつっこみをいれると、二人は「どこがアホだ」と逆に言い返してきた。だが楽しんでいたのもつかの間、ディムロスの堪忍袋が、とうとうブチッと切れた。
「・・いい加減にしろ!!」
「ぅお!」
「そんなに怒んないでよディムロス。単なる悪戯じゃない」
本気で怒り出したディムロスには驚いたが、ハロルドは飄々としてむしろ言い返した。が、今回ばかりは逃げられなかった。
「そうだな、そろそろおいたがすぎるぞ、二人とも」
「リトラー、本当にやったわけじゃないんだから、いいじゃない。おな」
「みなまでいうなハロルド」
とうとうリトラーに叱られてしまったのだが、ハロルドは気にした様子もなくリトラーにまで言葉を返し始めた。が、途中の言葉はカーレルのつっこみによりなんとか止められた。
まったく、といってため息をつくと、リトラーはとハロルドを怖い顔で見下ろし、腰に手をおいた。まるで子供を叱るお父さんだ。
「遊ぶなとはいわないが、時と場所を考えなさい。今日は罰として二人とも夕飯抜きだ」
「えええーーーー!!そんなっ!リトラー、それだけはなしっ!!」
「酷いわよ!軍のために毎日一生懸命働いてる私にまで〜〜〜!!」
「お前のは半分以上遊びだろ、ハロルド」
なんともいえな罰に思わずズルリと椅子の上で滑ったディムロスたちだったが、二人には随分と効果があったようだ。カーレルはさりげなく冷静につっこみをいれている。毎度ながらどこかずれているが。
うわーんと泣きつくとハロルドだったが、リトラーは「だめだ」の一点張りでこれ以外の罰にしようとはしない。
「ていうかお前、リトラー総司令のことを呼び捨てにするなよっ」
「えー?いいじゃんよ。1000年後じゃあみんなそうやって呼んでるんだし」
「今は1000年後じゃない」
「まあ、いいじゃないか。まだ子供なんだから」
シャルティエをなだめようとリトラーが自分の呼び名を了承すると、クレメンテがふと「そういえばはいくつなんじゃ?」と問いかけてきた。
「ん?16だよ」
「・・・」
「・・いい年じゃないですか」
「・・・12・3歳かと思っていたよ」
「酷っ!!」
全員を代表してイクティノスとリトラーがそういうと、はショックを受けたかのように手をバッと頭に添えた。
全員が12・3歳だと思っていたと頷いていると、は本格的に沈み、リトラーはそれをみてくすくすと笑っていた。
めそめそと泣き真似までするに肩を竦めると、ハロルドははーぁとため息をついた。
「てか行動が歳相応に見えないのよ、あんた」
「ハロルドにだけは言われたくないッ!」
「確かに」
がばっと顔を上げてハロルドにつっこんだに、カーレルが頷いて全員が笑った。
「あ、だ!」
「ねえ、また遊ぼう!」
「オッケー☆」
あれからハロルドは仕事に戻ってしまい、は一人暇をもてあましながらラディスロウの中を歩いていた。
途中最下層にいつもいる子供たちに声を掛けられると、は部屋に戻ってギターを持ち出し、それから子供たちと一緒に最下層まで降りていった。
「じゃあ今日はどうする?」
「ビスケットー!」
「はいはい。好きだねぇお前らも」
一人がビスケット、というと、は苦笑いしながらも子供たちと一緒に円になって腰を下ろした。それから子供たちとくすくす笑うと、「せーの」といって息を吸った。
「ぽーけっと〜の中にはビスケット〜が一つ♪ぽーけっと〜を叩くとビスケットが〜二つ♪」
「も一つ叩くとビスケットーがみっつ♪!」
「も一つ叩いてビスケット〜がよっつ♪」
「ねえよ!」
言葉の分だけでてくるビスケットにあわせて、子供たちが全員一緒になって歌った。子供たちが途中から勝手に数を増やしていくと、は最終的に突っ込みを入れた。
それからしっかりと全員にビスケットをくばると、「次なにしよっか?」とビスケットを頬張りながら首をかしげた。ビスケットを食べながらの作戦会議はこの時代に来てから数日の、の日課だった。
「手ー!」
「おっけー、いっくぞー。1・2・3はい!」
「幸せなら手を叩こう♪幸せなら手を叩こう♪」
叩こう、の後にしっかりとパンパンと手を叩くあたり、しっかりと遊びを覚えているようだ。
「次はこれ〜。はい手ぇ出して!」
「えー、なに〜?」
子供たちに手をだせといい、は両手を前に出してぐっと握らせた。
「ずいずいずっころばーしごーまみそずい♪ちゃつぼにおわれてドッピンシャン♪抜けた〜らドンドコショ♪」
「わー!なにこれっ!」
手を動かしながら歌を歌うの動きを真似しようと、子供たちは笑いながら手を賢明に動かした。はそれを見て笑うと、そのまま歌を続けて歌った。
「たわらのねずみが米食ってちゅー♪ちゅーちゅーちゅー♪おとさんが呼んでもおかさんが呼んでもいきっこなーしよ♪井戸の周りでお茶碗わったのだ〜ぁれ!」
「きゃはははは!」
「わけわかんねー!」
とにかく面白いのか、子供たちは笑いながらに何度もずいずいずっころばしをやらせた。それからずっころばしを覚えると、今度は「鬼ごっこしよー!」ときゃーきゃー騒ぎ始めた。
「うーん。それがさぁ、俺今日夕飯抜きだから動けないの」
「え!なんで抜きなの!?」
「悪戯がばれたの?」
「大当たり」
の言葉をきいてなんだよーというと、子供たちは遊ぼう遊ぼうとわらわら集まってせがんできた。
だがは「む、むり〜〜」と目を回しながらも断り、代わりにギターを取り出した。
「歌なら歌えるから、それで遊んでよう!ずっころばしいってみる?」
「やだー!別のがいいー!」
と、子供たちに煽られると、はそれならばとギターをじゃかじゃか鳴らし始めた。周りで子供たちの親や兵士たちが微笑ましそうに眺めている。ここでも12・3歳にしか見られていないのだろうか。
「さーはじめよう♪もお止まらない♪もーっとドキドキずっと君とー♪」
思い切りノリの良い曲を歌うと、子供たちは面白がって跳ねて喜んだ。そのままのりにのってと子供たちがきゃーきゃー騒いでいると、何か用事があったのか、シャルティエが最下層に入ってきた。
「なんだ、夕飯抜きで部屋で死んでるかと思ったら、案外元気じゃないか」
「シャルティエさんよ・・・あんたは俺をそんなに殺したいのかい?」
兵士になにか言うと、シャルティエはの横を通り過ぎながらにやりと笑った。はシャルティエにつっこんだが、シャルティエからはやはりにやりと笑われるだけだった。
その内怒ってギャー!と騒ぎ出しただったが、結局空腹になってへろへろと床に座り込んだ。
とりあえず夕食の時間になったので遊ぶのはまた明日にして、はギターを肩に担いで部屋に寂しく帰っていった。
部屋に入ると、はどさりとベッドに倒れこんだ。かなり腹が減っているらしい。
「水だけで過ごそうかな・・・」
あきらかに無理だ。この腹では。と、水で過ごそうと考えた後すぐには諦めた。
しばらくすると、部屋に夕食を持ったシャルティエが入ってきた。夕食を見て「・・・いいなー」と言ったに、シャルティエは「いいだろう」といって夕食を見せびらかした。
「・・・・・」
いつものように黙々と夕食を取っていたシャルティエだったが、ベッドに寝転がってぼんやりとしているを見ると、その内はぁ、とため息をついた。
「・・・ほら」
「・・・ほえ?」
「やるっていってるんだよ」
ぶっきらぼうに言ったシャルティエだったが、その言葉を聞いたは目を輝かせてがばりとベッドから起き上がった。
目を大きく開いて「マジで?!」とが言うと、机に片肘をついたシャルティエが「ちょっとだけだからな」と少し渋りながら言ってきた。
やったー!といって喜ぶと、はテーブルまでやってきてちょこんと座り込んだ。
「あーん」
「はい、あーん・・・って誰がやるかっ!!」
「途中までのってくれてたくせに」
あやうくパンをの口まで運びかけたシャルティエは、途中でハッと気付いて上手い具合につっこんだ。
チッと舌打ちしたに御盆ごと渡すと、シャルティエはまたテーブルに肘を着いてはぁーっとため息をついた。
「このシャルティエ様の夕食をわけてやったんだからな、ありがたく思えよ」
「まったく、ディムさんたちがいないとすぐこれだシャルは」
「うるさいっ」
やらないぞ!と言って御盆を引こうとしたシャルティエの手を、は「あーー!!ごめんなさいーー!!」といいながら馬鹿力で食い止めた。お盆から手を放してフン、と鼻であしらうと、それからシャルティエはまたふぅ、とため息をついた。
「階級が上だったら、僕だって・・・・」
ぼそりとつぶやいたシャルティエの言葉を聞いて、が食べる手を止めた。
「シャルってさー」
「なんだよ」
「高い階級や人気が欲しいんじゃなくて、本当は、自信が欲しいんだね」
シャルティエを見ながらふと言ったに、シャルティエが視線を合わせて顔をしかめた。
「・・・・なんだよ急に」
「なんとなく。話し聞いててそう思っただけ。下手な欲なんてださなくても、十分強いんだからいいと思うんだけどな〜」
「・・・変な奴」
「よく言われる」
シャルティエが視線をそらして変というと、はスープを飲みながら返事を返した。
「シャルはちゃんとここまでやってこれたんだからさ、自分のこと信じて認めてあげてもいいんじゃないの?・・・ぷはっ」
「ってぁあー!スープ全部飲んだ!」
「硬いこというなよ」
からになったスープの皿を指差すシャルティエにさらりと言葉を返すと、シャルティエにお盆を全部とられてしまった。
「あ〜〜〜!!!」
「没収」
「なんだよーっ!もうちょっとくれよーっ!おなかすいたよーっ!」
「自業自得」
うわーんといくらが泣き真似をして駄々をこねても、シャルティエはぷいとそっぽをむいて食事を取るばかりだ。
そのうち諦めたのか、は「はぁ〜あ〜・・・」とため息をつきながらテーブルにべたっと頬をつけた。
「まったくひねくれてぇ。折角褒めたのに」
「褒めてもあげない」
「これは本音だ!・・ほしいけど」
じり、と、とシャルティエは食器をもちながら臨戦態勢に入っていた。会話と行動がめちゃくちゃだ。
それから欲しいあげないいるいらないの合戦を繰り広げると、いい加減シャルティエが折れてに食事をわけた。
「暴食」
「それもよく言われる。あ、俺バッカ食ってていいのかな。ハロルドは・・・」
「今頃、カーレル中将がこっそり食事をわけにいってるよ」
ため息をつきながら言ったシャルティエの言葉に思い切り納得すると、はぱくぱくと料理を食べ、途中でシャルティエに返した。・・・・というか、強制的に返された。
「僕の分がなくなるっ」
「たくさん頂いたわvシャルティエさまってば優しい☆」
「そりゃあ僕は紳士ですから」
が身体をしならせながら猫で声を出すと、シャルティエがそれに乗って・・・か素でか、ふんぞり返ってそれに続いた。
二人してプッと噴出すと、それから声を立てて大笑いした。
「あはははは!アホくさー!」
「つっこみかよ!」
自らつっこんだに、シャルティエが裏手を入れた。それを受けてさらに笑うと、はなんとか笑を止めようとひーひー言いながら深呼吸した。
「でもアホすると、楽しいだろ?シャル」
「僕に冗談が通じるからできたことだろ?」
「いうねぇ。じゃ、そのノリでもちょっとパン頂戴vひとくちー!」
「ったく、がめついやつだなぁ。一口だけだぞ?」
「ハイ、あーん♪」
「ほれ」
と、良い雰囲気で―――シャルティエが乗せられてるとも取れる―――シャルティエがパンを一ちぎり、の口に放り投げようとしたときだった。シャッという音とともに、ハロルドが入ってきた。
「・・・・・あら」
「「あ」」
丁度シャルティエがにパンを食べさせるところに入ってきたハロルドを見て、二人とも声をあげて固まってしまった。しばらく三人して固まっていると、そのうちハロルドが「ムフフフ〜♪」と怪しく笑い始めた。
「おじゃまだったみたいね〜vvごめんなさぁい☆」
「ま、まてハロルド!!」
「誤解だーー!!!パン頂き」
「あ!コラ!」
笑いながら部屋を出て行ったハロルドに叫ぶと、どさくさにまぎれてはシャルティエの手にあったパンをぱくっと食べた。
もともとあげるつもりだったが、易々と手からとられてしまったことに腹が立ったらしいシャルティエは、今はハロルドの方が問題だったのでとりあえず席を立って後を追いかけた。
「やばいぞ!変な噂たてられるかもしれない!!」
「いや、むしろする!!ハロルドならする!!」
部屋を飛び出しとにかくピンク色の頭を追いかけていくと、会議室の出入り口でお茶を飲んでいるカーレルにあった。
「おや、二人とも。これからデートかい?いいねぇ若いというのは・・・」
「カーレルさんあんたも若いです!!」
「もう回ってるーー!!(噂)ハロルドーーー!!!待てーーー!!!あ、誤解ですからね中将ーー!」
ところどころつっこみを入れると、二人はカーレルに適当に礼をしてハロルドを追いかけた。
「わかってるよ。これからが楽しみってことくらいはね」
と言うと、一人お茶を飲んで含み笑いを一つ。・・・・どこまでが本気なのか、いまいちわかりずらいカーレルだった。
ところかわってハロルドを追いかけるツインズ。
ラディスロウの外に出ると、ハロルドの姿はすぐに見つかった。ピンクはかなり目立つ。
「よかった見つかって!」
「それがよくもないんだよ!くっそー!人気の無い外に向かったと思ったら、アレが狙いだったんだなハロルド!!」
全力疾走しながらぎゃーっと叫ぶシャルティエに首をかしげただったが、ハロルドが入っていった建物から流れた音を聞いて、その理由を理解した。
と、外で奮闘が巻き起こっている頃、ラディスロウの一角ではほのぼのとお茶会が開かれていた。
「さっきとシャルティエがものすごい顔して走っていったけど、いったいどうしたのかしら?」
二人が走り去った後、アトワイトとディムロス、イクティノスにクレメンテの4人が会議室に上がってきてカーレルと共にお茶をすすっていた。
走り去った二名を目撃して首をかしげるアトワイトに、どこまでなにを察しているのかカーレルがにっこり笑って返事を返した。
「ああ、若気の至りというやつだよ」
「はあ?」
「今に分かるさ」
のほほんという雰囲気をくずさずに、いぶかしげな表情をするディムロスやイクティノスも気にせず、カーレルは一人楽しそうにお茶を飲んでいた。そして、そんなカーレルをみて他の4名が首をかしげながらお茶を飲もうとした、その時だった。
《あー。あー。マイクテス。うん、おっけ!》
急に流れたハロルドの声に、カーレル以外の全員がお茶を吹きかけた。むせる4人をまつこともなく、どこか楽しそうなハロルドの声はまだまだ続く。
《え〜地上軍にいる皆々様方、聞いてください。なんと、あの捻くれ者でへそ曲がりなシャルティエ少佐がと――――》
《っっだーーーーーー!!!変なこというなーーー!!!》
《そうだハロルド!!ウソをつくな!!》
ハロルドが一番のミソを言おうとした時、ガタガタンッという物音と共にとシャルティエの声が入ってきた。ここまでせっぱつまった声をだすシャルティエは久しぶりなのか、カーレル以外の全員、お茶を持ったまま唖然としている。
《あーらまだなにもいってないわよ〜?単に、シャルティエがに「あ〜んv」ってしてあげてたって・・・》
《ちっっがーーーーーう!!!!》
《誤解だーーーー!!!》
《なによ、本当のことじゃない。隠さなくったっていいでしょ〜?》
《《公表することもないだろっっ!!》》
《でももう言っちゃったもん》
《可愛く言ってもだめなもんはだめだ!!どうしてくれるんだよ!!》
《・・・・・》
《・・・?》
シャルティエのつっこみの後に黙りこくってしまったを不思議に思ったのか、ハロルドがに声をかけた。
しばらくし・・・んとした空気がはりつめ、最下層にいた一般人までもがこのやりとりの行く末を生唾を飲みながら見守っていると、ふぅ、というため息をついたような声が聞こえた。
《・・・もう隠すのはやめましょう、ピエール》
《ってお前いつから僕のことピエールって呼ぶようになったんだよ》
《もう隠し切れないわ私たちのことっ!!》
《私たちのことってなんだよ!!》
《無理して隠しても、結局はバレてしまうものなのよ・・・!!こうなったら、ここでみんなに公表してしまいましょう!》
《だからなんなんだっつの!変な誤解招くような演技するな!!》
《あはははははははははは!!!やけに上手いわね〜。みんな騙されちゃうかもv》
《笑うな不吉なことを言うな!!》
《きいてくださーい。俺とシャルティエは〜》
《だからわけわからんこといおうとするな!!僕は無実だー!!》
《きゃははははは!!》
哀れだ。この放送を聞いていた、約90%の人間がそう感じていた。(当社比)
その後、シャルティエはカーレルにだけ、このネタでしばらくいびられることになる。合掌。
続け
−−−−−−−−−−−−−−−−
フフフ・・・・なんだこの終わりわ。(最近多いな)
てかシャルいじめられまくり。でもここらで未来に続くようにちょっぴりノリの頭角をば現して・・・・・(表しきれなかったことに反省)
ねむーーーい!!てかもうあかんね俺は!!馬鹿だよ!!あー馬鹿だともサー!!
ていうかリトラーがやけに丸い人になってるし・・・。てかずっころばしかよ!!古っ!!最後のお茶碗だっけおちゃずけだっけ?(そこか)
まだまだ続く戦争時代。そして長谷川に今週の土日はあるのかっ!!(知るか)
ああああ〜〜〜〜休みが欲しい〜〜〜〜。もう忙しすぎて疲れました・・・・ふ・・・フヘヘ・・・・(帰って来い)
とにかく、ここまで読んでくれた方、どうもありがとうございました!