ウッドロウのいる玉座まであともう少し、というところで、ザシュッという肉を切るような音が聞こえた。
「ぐああぁぁぁあっ!!」
玉座へ丁度たどり着いた時、青いたっぷりとした髪をなびかせた大男がウッドロウに斧をつきたてていた。
「ウ、ウッドロウ!」
「ガングロ!!」
つい、出てしまったあだ名に、は全員から睨まれ誤魔化すように「あはは」と笑った。
my way of living 49
〜カローラUにのって〜♪○○へ〜出かけ〜たらー♪(分かるかよこんな古いネタ)〜
「お、お前は、バルバトス!」
「ほう、またあったな小僧。カイルといったか。貴様とは、妙な縁があるらしい」
野太い声ににやりと口をゆがませたいやらしい笑い。どう見てもバルバトスだ。
カイルがバルバトスと会話のやりとりをしているあいだに、焦って思わずウッドロウの名前を呼びながら駆け寄ったジューダスと、焦って思わずガングロと呼びながら駆け寄ったの二人がウッドロウに声をかけていた。
「大丈夫か!?しっかりしろ!ウッドロウ!」
「う、うう・・・」
ぜいぜい息をしながら苦しそうに唸るウッドロウの様子を見ると、ジューダスもも顔をしかめた。
ぎり、と歯軋りをしたとは逆に、ジューダスは冷静に怪我の具合を調べ始めた。これも場数の違いだろうか。
「傷は深いが、かろうじて急所は外れている。大丈夫だ、これなら助かる!おい、早く医者を呼んで来い!」
死に至るわけではないと分かると、ジューダスは階段のあたりから顔をだしていた兵士に急いで声をかけた。
「ちょっといいかジューダス。・・・・・ヒール!!」
ウッドロウの肩をもっていたジューダスをよかすと、はヒールを唱えた。少しは出血の量が減ったが、それでもまだ傷は塞がりきらず、次から次へと出てくる血が青い服の上でテカテカ光っている。
「バカか貴様は。これだけじゃこの傷は塞がらない!TPの無駄だ!」
「わかってるよ!でもできるだけのことはしたいだろ!?使える時に使わないでなにが晶術だ・・−−−ヒール!!」
ジューダスがつっこんだが、は怯まずに言い返し、またヒールをかけた。ぎゃーぎゃーと騒ぎながらあれよこれよとウッドロウに手を焼いている二人の後ろでは、リアラが青い顔をしていた。
「フィリアさんに続いて、ウッドロウさんまで・・・このままでは・・・時の流れに大きなひずみが生じて・・・。・・・・!まさか、これは全部、あの人の仕業なの・・・!?」
「だとしたらなんだというのかしら・・・・リアラ?」
はっと息を吸ったリアラとは裏腹に、随分と落ち着き払った穏やかな女性の声がどこからともなく聞こえてきた。そこにいた全員がキョロキョロと辺りを見回していると、急にどこでもないところに光が現れ、さらにその中からエルレインが姿を現した。
「なるほど・・実に彼らしい。どんな英雄であれ容赦はしないということか・・・・。あの時素直にレンズをわたしていれば、こんな目にあわずにすんだものを・・・・」
「なにを自分勝手に・・・・」
ウッドロウを見ると、エルレインは感心したようにいい、その後ふっと笑った。それを聞いたが立ち上がってエルレインをギッと睨み、今まさに罵声を浴びせようとした・・・・が、その前に、リアラがエルレインに向かって叫んだ。
「エルレイン!あなたは間違っているわ!こんなやり方で、人々は救えはしない!」
訴えるように叫んだリアラを、エルレインは冷たく見下した。
「・・・・ではお前はどうするの?いまだに何も見出せないお前に、救いが語れるとでもいうのか?」
「そ、それは・・・・」
口をつぐんでしまったリアラを見ると、エルレインはにこりと余裕の笑みをうかべた。
だがこの中で一番動揺しているのは、他でもないカイルだった。リアラがエルレインと知り合いらしいことを知ると、双方をキョロキョロと見ながら「え?え?なに?」と一人で挙動不審になっている。
「ど、どうなってんだ?!なんでエルレインがここに!?それに、リアラ、どうして君はエルレインのことを・・・・・」
「わかんねえことだらけだが、一つだけはっきりしてることがあるぜ。それは、あの女が黒幕だってことだ!いくぞッ!覚悟しろエルレイン!」
リアラに問いかけようとしたカイルの言葉を遮ると、ロニはたくしあげるようにして言葉を並べ、それからすぐにエルレインに向かって突っ込んで言った。しかしロニの攻撃は、いきなり上から降ってきた大きな犬(らしきもの)の所為でふさがれてしまった。
「くっ!こいつ・・・・」
「エルレイン様には、指一本触れさせん」
「喋る犬?!」
「犬ではないガープだっ」
ロニの前に格好よく現れたのもつかの間、ついボケてしまったの所為で台無しだ。
のボケにつっこんだことによりガープに隙が出来た瞬間、ジューダスが目を光らせた。
「ならばッ!」
真正面からつっこんでいったロニとは違い、横に回ってからエルレインに斬りかかろうとしたジューダスだったが、あと一歩というところでガープに逆に吹き飛ばされた。
「ぐはっ!」
「ジューダス!」
「ぐあっ!」
「ロニ!」
吹き飛ばされたジューダスと共に、ロニも後ろの壁まで吹き飛ばされていた。それぞれむせながらもなんとか立ち上がる。
ガープとカイルたちがにらみ合っていると、エルレインが遠くを見るように目を細めた。
「人々の救いは神の願い。それを邪魔するものは誰であれ、容赦はしない」
と、エルレインが言った時だった。の我慢は、どうやら限界に達したらしい。
「何が救いだ、何が神だっ。ここを見てみろ!兵士たちはどうなった?瓦礫につぶされ、お前の送り込んだモンスターに引き裂かれ・・・。それにこいつだ!」
エルレインにそう怒鳴ると、はウッドロウを指差した。
「こいつも大怪我をしてる・・・・。ただ単に、お前やアイグレッテにいる人間たちの欲をかなえる為だけにだ!こいつだけじゃない、こいつが動けない状態になったら、ハイデルベルグの人たちはどうするんだ?!今まで放浪癖まで我慢してがんばってきた、こいつの苦労はどうするんだ?!お前はそこまで考えたことはあるのか!!お前のやっていることは、捕まえてきたカブトムシをまわりの迷惑考えずに一人で育てようとしている子供と同じだ!!」
「その例えはやめろ・・」
「ぴったりじゃないかっ。きゅうりとかがなくなってお母さんは大変困るんだぞ!」
場所とるし、といちいち解説まで始めたの言葉にジューダスが咳き込みながらつっこむと、カイルが「ああっ、ジューダス!」と心配そうにジューダスに声をかけた。
エルレインはそんなの言葉に一瞬顔をしかめると、それからすぐに微笑した。
「そういうあなたこそ、周りの迷惑を考えずに行動してきたじゃないですか・・・・そう、18年前に」
「やめろ!」
微笑を浮かべながら言ったエルレインの言葉を聞くと、はそれまでボケていた顔が嘘かのような豹変振りでエルレインを睨んだ。
エルレインはそんなの様子を見ると、楽しそうにくすっと笑みをこぼした。
「折角私が力をあげたというのに・・・・あなたは何故、昔の過ちをなおしにはいかないのですか?」
「るせえよ」
まるでそこにいる全員に言い聞かせるかのように言うエルレインに、は低い声でうなった。
「会いに行けば苦しみもせずに、幸せな生活が手に入るというのに。何故、逢いに行かないのですか?愛しい男に・・・・」
「・・・・るせえっつってんだろババア!!耳聞こえねえのかよ!!あいつに逢う気なんざさらさらないわドアホ!!」
ズバッとエルレインを指差し、が怒鳴りながら一気に言った。
エルレインは「バ・・・?!」と言って顔を引きつらせると、気持ちをおちつかせながらフッと笑い、それからに向き直った。
「いいでしょう。そこまでいうなら、私にも意地があります」
「なっ、わっ!」
「!」
スッとエルレインが手を上げたかと思うと、の足元からまばゆい光が現れた。なんだってんだ!と騒ぐにニヤリと笑うと、エルレインは「会いたいのでしょう?」とワザとらしく声をかけてきた。
「逢わせてさしあげます。あなたのもっとも愛しく思っている男に・・・」
「ってまさか、あいつか?!」
ふざけんな!と顔をあげたに、エルレインは不敵に笑うだけだった。おろおろと慌てるカイルたちの後ろから、壁と宜しくしていたジューダスがハッとして前に出てきた。
「!」
「くんな!」
ジューダスがに手を伸ばそうとした瞬間、が静止をかけた。
反射的に手をひっこめたジューダスを見て笑みを浮かべると、は「大丈夫」といった。
「お前はカイルとリアラを見ていて。ロニと一緒に守ってあげて」
「・・・」
「かならずあえるから。絶対」
「・・・わかった」
自信満々で言うに、ジューダスは渋々頷いた。はそんなジューダスを見てにっと笑うと、その後ろにいるカイルたちの方を見た。リアラが血の気の無い顔をして微妙にだが、震えている。おそらくこの後のことを考えてだろう。
「カイル、リアラ。自分を見失わないで!何が起きても、絶対あきらめないで」
「っ」
「何情けない顔してんだよリアラ!大丈夫、やってけるさ。ロニ、ジューダスも、後は頼んだよ」
「頼まれなくてもいつもなにもやっていないのはお前だ」
「いうなよバカッ」
しーっと人差し指を口にあてているの身体は、もはや上半身しか残っていない。はくるりとエルレインの方に向くと、ばっと腕を伸ばし、ビッと親指を下につきだした。エルレインが顔をしかめると、にやりと笑ってさらにべーっと舌をだした。
「っ」
手、首、と消えていき、べっとだした舌のあたりまで光が届くと、カイルがあっと声をあげた。
そこまで消えていることに気付いたのか、もう一度ジューダスたちの方へ身体をむけると、はにっと笑った。
「またね」
「!」
光と共にすっと消えてしまったにジューダスが手を伸ばしたが、その手につかめたのは空気だけだった。
つんと張り詰めた冷たい空気の中、ぎちぎちという機械音、ガリガリという金属のこすれ合う音、爆発の音、たくさんの人々の悲鳴、叫び声、そしてわー!という気合があたりにたちこめていた。
「全軍突撃ーー!!」
剣を振り上げた男の一声により、後ろで待機していた大勢の武装した兵士たちが一気に走りだした。
それに伴い、剣と剣のこすれ合う音や悲鳴などがまた増える。
そんな中、衛星のアンテナのようなものがついたごつい機械の上にのったピンク色の少女−−−に見える−−−が手を額に当てながら呑気な声をあげた。
「まぁた派手にやってくれてるわねぇ〜。さーてと、もうそろっとかしら?兄貴ってば、こんな状態でどう敵の目をひきつける気なのよ・・・」
ピッピッと機械についているボタンを押すと、少女(?)はふぅとため息をついた。
この機械に乗っているのは、少女(?)以外では見当たらない。
じっと何かを待つかのように一点を見つめていた目は、そのうちだんだんとイライラしたように釣りあがっていった。
「んもー!なにやってんのよ兄貴の奴っ!いい加減、いつになったら合図をだすの!」
と、少女(?)が声を張り上げた時だった、急に敵側の上空に、思わず目を細めてしまうほどのまばゆい光がカッ!と現れた。
それとともに両軍の兵士とも目を細めて思わず手で影をつくるように顔をかばい、戦いの手が一瞬やんだ。無論、少女(?)も例外ではなく、思わずよろけてしまった。反射的に出してしまった手は、身体を支えるのと同時に何かを押している。
「うわわっ!やばっ!」
それによって機械が起動してしまい、アンテナらしきものの先には、光の球が現れた。まだ誰もそれに気付いてはいない。
「うーんと。いっけーーー!!」
今がチャンスといわんばかりに、少女(?)が機械のスイッチをぽちぽちと押し出した。最後のボタンをピッと押した瞬間、機会の先端からシュッと光がさした。光が飛んでいった次の瞬間、敵軍の方の真ん中辺りから、大きな爆発が起き、それに伴ってか、頭上にいきなり現れた光は爆風に煽られ少女(?)たちの軍側にふっとんできた。
「これ・・・女の子ですよ!?」
チャンスとばかりにつっこんでいった前線の兵士たちの後ろで、弱まった光を確認しに数名の男女が近づいてきた。やがて光が消えていくと、そこにはぐったりと横たわった少女がいた。それを見て、金髪の、見た目からして華奢そうな青年が驚いたような声をあげ、その隣にいた男性はひょいと覗くと、すっかり気を失ってしまっている光から現れた少女を見て首をかしげた。
「男じゃなくてか?」
「髪がみじかければすべてが男というわけじゃないのよ、ディムロス」
女として言っておくわ、と髪の長い女性がディムロスと呼ばれた男性につっこむと、男性は肩を竦め、青年に「運んでおけ」とそそくさと指示をだした。
「あ、はい・・・」
青年は男性の指示に頷くと、顔をしかめてため息をつき、よいしょといって少女をもちあげた。
目が覚めたは、見たことのない部屋の風景に思わず頭を混乱させた。
「・・・・・ここって?」
寝起きで頭がぼーっとするのか、むくっと起き上がってもまだ状況がつかめずにいた。
「気分はどうだい。奇跡の少女」
ぼーっとしていたは、急に頭上から声を掛けられてガバッと顔をあげた。見ると、コーヒーカップを持った金髪の青年がこちらを見ている。
あった覚えも無い青年に、は首をかしげた。見覚えはない。だが、声に聞き覚えがある。
「・・・・てか奇跡の少女って?」
勝手に自分についているあだ名に、は思いきり怪訝な顔をして青年に問いかけた。青年は「ああ」というと肩をすくめ、
「人数的にも武器の数でも、完璧な負け戦だったのに、君が急に現れてくれたおかげで僕らの軍が勝てたんだ。だから、奇跡の少女」
と簡単に説明してくれた。それから机のポットへ行くと、持っていたカップを置き、まだ使っていないカップに粉を入れてお湯を注ぎだした。
「ふ〜ん・・・・・ネーミングセンスのないあだ名」
青年にコーヒーを受け取りながらがそういうと、青年はプッと噴出し、それから慌てて顔をきりっとさせた。
青年の反応にが首をかしげていると、急に部屋のドアがシュンッと音をたてて開いた。
「あんたいいこと言うわねー。私もそれ、思ったわ」
外から入ってきたのは、ピンク色の髪をあちこちに跳ねさせた、背の低い少女(?)だった。はその顔を見ると、「あ!」と言って指差した。
「は、ハロルド?!ってことは・・・・ここって1000年前ーーー??!」
「ん?あんた、なんで私の名前知ってんの?」
「あ・・・・」
きゅっと眉を潜めたハロルドに、はしまった、という顔でサッと目を泳がせた。が、ハロルドも青年も甘くはなく、説明しなければ解剖するとまで言って脅しをかけてきた。
本物を前にして、は初めてロニたちのいう「冗談に聞こえない」というのを実感できた。確かに、雰囲気がまず冗談ではない。
「い、いやーねぇ?有名なハロルド博士のことはそりゃあ誰だって・・・・」
「1000年前とか言うのはなんなのよ」
「・・・・・」
目を泳がせながらしどろもどろ言い訳をするに、ハロルドがぎろりとにらみをきかせながらさらに痛いところをついてきた。
うっと行き詰まると、はどう言い訳しようかぐるぐる頭の中で考え、黙ってうつむいた。
そんなとハロルドのやりとりを眺めていた青年が、なにかひらめいたかのようにぽんと手を叩いた。
「もしかして君、1000年後から来た未来人・・・・?」
「あぁ、なるほど」
「んなー!!」
青年が言った言葉だけでも痛く心臓を煽られたのに、は扉の前にいつの間にやら立っていた赤毛の男性にさらに驚いた。
しかも、何故かにこにこと笑いながら青年の言葉に納得している。・・・のかどうだかは謎だ。「夢のある話をしているね」と素敵にさりげないつっこみをいれてきている。
青年も男性に気付くとはっとし、「カ、カ、カーレル中将っ」と噛みながら男性の名を呼んだ。
「・・・・カーレルーーーーー!!!?ってことは、ま、ま、まさかそこのお兄さん・・・・本物のシャルティエ?!」
シャルティエらしき青年の言葉を聞いて、はカーレルらしき男性をを指差し、それからシャルティエらしき青年を指差した。
カーレルらしき男性とハロルドは軽く目を見開いている。あまり反応のないところはやはり双子か。
シャルティエらしき青年は、の言葉を聞くとカーレルの方をちらりと見てそれからおろおろと焦り始めた。
「こ、こらっ、カーレル中将のことを呼び捨てにするな!」
「わーーーー本物だーーー!!そういえばシャルの声だーーー!!!」
「うわっ!ちょ、ちょっとっ!抱きつくなーー!!」
首に腕を巻きつけて抱きついてきたに、シャルティエは怒り半分恥ずかしさ半分でぎゃーぎゃーと喚いた。
ハロルドが呆れ、カーレルがくすくすと笑い始めた頃、はシャルティエによって無理矢理はがされていた。で、話し戻すけどというと、ハロルドはウサギの顔のような小型のパソコンを取り出してカタカタとキーボードを打ち始めた。
「まずは、あの光が現れたとき、次空間の歪みから生じる大気中の成分の変化。こりゃ相当のものね。それに、私と兄貴、あとピエール・・・シャルティエを知っていたってことこか、他にも色々理由はあげられるけど・・・。あんた、本当に未来から来たの?」
「いやーうん、そうなんだけどね」
「「・・・・・は?」」
ぴっと指差しながらハロルドが言った言葉をがあっさり肯定すると、シャルティエと、これまた別の聞き覚えのある声がカーレルの後ろから聞こえてきた。男性はカーレルに用があったのか、今まさに肩をぽんと叩こうとしているところで固まっていた。
「未来?なにわけの分からないことをいっているんだ?」
「その声はディムさんーーーーー!!?」
「ディ、ディムさ・・・・・・」
怪訝そうな顔をして首をかしげたディムロスであろう男性の、が叫んだ名前を聞くと、カーレルが言葉を繰り返し、それから3人が同時に噴出した。
笑いが止まらないらしい3人にディムロスが「笑うな!」とつっこむと、カーレルとシャルティエは素直に笑うのをやめたが、ハロルドだけはまだげらげらと笑っていた。
「ハロルドっ」
「だ、だって、あのディムロスにディムさんて!あはははははは!あんた、やっぱいいわ〜。んで、名前は?」
「」
ここまで受けたことが嬉しいのか、は笑いながらハロルドに自己紹介をした。
ハロルドは名前を聞くと、「んじゃ、ね」と再度確認をしてきた。
「で、。あんたはなんでこんなところへ来たの?歴史の勉強かなんか?」
「いや、無理矢理飛ばされたの。エルレインとかいう神様万歳27歳独身女に」
「・・・・」
なんだよそれ、とつっこみたかったのだろうが、シャルティエはとりあえず口をつぐんでおいた。
ハロルドはの言葉を聞くと「ふーん」と興味なさそうに返事をし、それからすぐに「時を越えてくるのはどんな感じだった?」と少し目を光らせながら問いかけてきた。
「うーん・・・途中で気を失っちゃったからわかんないけど、なんか、光の中をぐいぐい引っ張られる感じ。色んな出来事が頭の中・・・っていうか目の前って言うか・・・で、もの凄いスピードで過ぎていく感じもした・・・かな?あとはわかんない。レンズの力で飛ばされてきたから」
「ふーん。レンズの力でねぇ」
の言葉を聞くと、ハロルドは「ふむふむ」といいながら上を見て何かを考えるかのように顎に手をおいた。
そんな二人のやりとりを、さきほどからそわそわしながら聞いていたシャルティエが、ここぞとばかりに「ねえ」と声をかけてきた。
「それより、未来から来たって事は、もちろんこの戦争の結果も知ってるんだろう?」
シャルティエがに質問した瞬間、部屋の温度が4℃ほど下がった。しーんと静まり返った周りの空気に気付くと、シャルティエは冷や汗を流しながら「・・・あれ?」と顔を引きつらせた。
「そうだね〜知ってるけど・・・教えてあげない」
「そうね、その方がいいわ。ところで、色々と聞きたいんだけど・・・」
「ああ、いいよ」
しらけた空気もなんのその。ハロルドはに気になるらしいところを色々と問いかけてきた。
はできるかぎりそれにこたえ、そこにいた他の3人も珍しいものでも見るかのように二人の話を聞いていた。
は自分がここにはない世界から来たこと−−−といっても遠く離れた日本から来たと言った−−−、他にも仲間がいること、いつごろから来たか・・・・など、とりあえず色々と答えた。
「ところで、なんでシャルティエやディムロスのことを知ってるの?愛称で呼んだり抱きついたりしてるし・・・・」
「うーん、どういおうかね・・・・。ハロルド、もう最終兵器についての話はしてる?」
「・・・・最終兵器ってまさか・・・」
「ソーディアンを知ってるの?」
の言葉にシャルティエがハッとし、ハロルドが少し真剣な顔で聞き返してきた。が頷くと、ハロルドはまた「なんで?」とといかけてきた。
「1000年後のシャルたちに、俺、会ってるから。ソーディアンとそのマスターたちと旅をしてたことがあるんだ」
一人現在進行形だけど、とは口にださず、はさらりとハロルドに説明した。の言葉を聞くと、全員がうーんと顔をしかめた。
「てことは、1000年も僕たちソーディアンの中で過ごすの?」
「ていうかこれは言わなかった方が良かったって奴?」
「まあ、そうかもしれないわね。まだソーディアンチームのこと発表はしてないし」
「むしろそうだろう」
1000年と聞いて気がめいったのか、ディムロスがげんなりしながら言ってきた。シャルティエは自分が選ばれたということに少し浮き足立っているようだ。
そうして5人がわいわい騒いでいると、次にイクティノスらしき青年がやってきた。第一声は、「・・・何の集会ですか?」だ。
ハロルドととカーレルが笑っていると、ディムロスとシャルティエがハロルドとカーレルとの3人を端に連れて教えるのかどうするのか、とひそひそ相談をもちかけた。
「うーん。ま、ここだけでも4人に知れてるわけだし、別に話しても良いんじゃないの?」
「馬鹿ね。そんなことして噂が広がりでもしてみなさいよ。馬鹿なこと考える奴らがわいわい集まってきて、下手したら歴史が変えられちゃうかも」
「ソーディアンチームの一員が、そんなに口軽いとも思えないけど。とくにイクティンは」
「「イクティン・・・・」」
と、がイクティノスのあだ名をつい口にすると、カーレルとシャルティエがあだ名を繰り返し口にだし、ぷっと吹き出した。
どこまであだ名をつけているんだこいつ、と顔をしかめるディムロスを特に気にしないで、はハロルドとどうしようかと頭を悩ませた。
イクティノスが後ろの方で首をかしげていると、ハロルドがふぅ、とため息をつき、「もうパーっと言っちゃいましょっか」と言い出した。
そして止める間もなく
「この子ね、1000年後から来たんですって」
「・・・・は?」
予想通りの展開に、ハロルドとが笑いだした。他の4名はそれどころではない。
言って良いのか。
1000年後とはどういうことか。
・・・・この後結局、が1000年後から来たということは、後のソーディアンチーム内全部にひろがってしまうのだけれど。
そしてはというと、ハロルドからこの時代の今の状況を色々と聞いていた。
「・・・・で、あの戦いでが来たってわけ」
「ふーん。そんで、奇跡の少女ねぇ〜。どーりでこんな平々凡々がシャルの部屋で特別待遇受けてるわけだ」
「だから、シャルっていうなって!」
ぞろぞろとラディスロウの中を歩きながら、はたえずシャルティエやディムロスにつっこみを受けていた。
ぎろりと睨むシャルティエたちに臆せず、はけらけらと笑い飛ばして「まあいいじゃんよ」とひらひら手を振った。
「ここは軍の中だ。階級だってある」
「相変わらずかったいなぁーディムさんは。俺、子供だからわかりませーん」
「・・・・どうするんだハロルド。こいつをリトラーのところへ連れて行くのか」
「つっこみなしかい」
指差すなよ、と、は自分を指差して不機嫌そのままにハロルドに問いかけるディムロスにつっこんだ。ハロルドはというと、「もちろん。そうしなきゃならないでしょ」とさらりとそれに答えを返した。
「さっすがハロルド。でもさ、俺ってこの後どうなるの?した働き?」
「は一応武器も持ってるみたいだけど、戦えるの?」
「ああ、まあ。戦えるっちゃー戦えるけど」
「じゃ、決まりね」
何がだよ、と全員が首をかしげ、が問いかけようとしたが、ハロルドは、その前にラディスロウの一番最上階の扉を開き、中へ入って行ってしまった。
「リトラー、紹介するわ。今日から私の護衛につく、よ」
「なんだと?!」
入ってすぐハロルドにおいついたたちだったが、ハロルドの突然の発言にディムロスがまったをかけた。しかしハロルドは飄々としていて、ディムロスの方を見ると「なによ。なんか文句ある?」とふんぞり返って言い返した。
「ハロルド、その前に奇跡の少女の紹介が先だろう?」
部屋の最奥から、ディムロスたちと同じく聞き覚えのある声が聞こえてきた。まぎれもなくリトラーだ。懐かしさにが表情を緩めてそちらを見てみると、リトラーがにっこりと笑いかけてきた。
「初めまして、。地上軍の総司令官を勤めさせてもらっている、メルクリウス=リトラーだ。よろしく」
「こちらでは初めましてリトラーさん。1000年後から参りました、です。ちなみに趣味は人で遊ぶことと悪戯です」
「だーーーっっこのバカ娘!!」
「いってー!」
総司令に向かっても気軽に話しだしたこともそうだが、自分から1000年後から来たと暴露したに、思わずディムロスが頭を小突いた。というか殴った。
ごん、といい音がするほど殴られたは、痛いと喚くと頭を抑えてしゃがみこんだ。
「なーにすんだよディムさんっ!女の子には優しくしろってじっちゃんにならわなかったのか!オラ見損なったぞ!」
「どこの喋り方だ。大体、お前はことの重大さが分かっているのか?!」
「ぜーんぜん」
「・・・・・・この」
即答で返してきたに、ディムロスが青筋をたてながらぐっと拳を握った。そんな殴る気満々のディムロスを見てわー!と逃げる準備をしているとディムロスの間に、カーレルが止めるように割って入ってきた。
「まぁまぁディムロス、いいじゃないか。折角の未来からのお客さんなんだから」
「さっすがカーレルさん☆」
「あのー・・・っていうかね、私たちの存在に早く気付いてほしいんだけど・・・」
「盛り上がるのはいいが声が大きすぎるぞぃ」
ばっと後ろを振り向くと、アトワイトとクレメンテと見られる若い女性とすらりとした威厳のありそうな老人(失礼な)がいた。二人に気付くと、ディムロスがげっと声をあげ、それを聞いたアトワイトが表情をむっとさせた。
「げっ、とはなんですか、ディムロス中将?」
嫌味と棘をふんだんに含めてアトワイトがディムロスにといかけると、ディムロスは「い、いや・・・なんでも・・・」と目を泳がせた。はっきりいって面白い。そんな二人の痴話喧嘩をさらりと流すと、カーレルが「二人は何処から会話を聞いていたんだ?」と問いかけた。
さすが、ハロルドを妹にもつだけはある。
アトワイトとクレメンテは顔を見合わせると、のほうを見て「その子の・・・自己紹介から」とバツの悪そうな声で言った。
「・・・・ということは、ここにいる全員はの正体を知ってしまったと。まあ、他の兵士たちに言わなければ、それでよしとしようか」
「そうだな。とりあえず、全員席についてくれ」
呑気なカーレルの言葉に賛成すると、リトラーは話を進めた。は「ここよ」といわれたとおりハロルドの隣に座ると、大体の話を流してぼけーとしていた。いい加減難しい話にも参加したらどうだろうか。
「つまり、地上軍を裏切って寝返ろうとしてるやつを倒しに行くっての?」
話が終わった後、はハロルドに首をかしげながらといかけた。ハロルドはふあ、とあくびをするとうなずいた。
「まあ、そんなとこ。あいつはあいつで、天上軍から助けをもらって人集めてるようだし、この作戦が決行されるのはあと6日後くらいかしらね?」
「ふーん。結構かかるんだね」
「そりゃあ、準備があるからね。こちらも色々とそろえなくっちゃ。それじゃ、なんかあるときまで適当に遊んでいいわよ」
がたっと席をたちながらそういったハロルドに、は首をかしげた。
「え?ハロルドは仕事でもあるの?」
が「手伝おうか」と問いかけると、ハロルドは今から行う作業を頭の名まで整理しながら「いいわ。あんた頭悪そうだし」と答えた。酷い。
「暇になったら相手してあげるわ。あ、そうだ。シャルティエ、あんた、この子に地上軍基地内を案内してあげて」
「なんで僕がっ」
「一番暇そうだから」
「う、ぐっ・・・・あ、あのねえ!」
「じゃ、頼んだわよ〜」
といってさっさとをシャルティエに押し付けると、ハロルドはスキップしながらどこかに消えていった。シャルティエはなすすべもなくぽかんと口をあけ、それからがっくり肩を落とした。
その頃一方、ジューダスたちはというと・・・・・?
続く(コラ)
−−−−−−−−−−−−−−
なんじゃこの終わり方は。と、皆さんお思いでしょう。フフフ、青春万歳(なにそれ)
あーーーもう首痛いし鼻水出るしさーいあくーーー!!
とりあえず、主人公は一足先に1000年前に飛んじゃいました〜☆(急に話を元に戻す)
ジューダスと一緒にいくと思っていた方、もしくは行きたかった方、すみません、こんなオチです。
とかいいつつ最初から決まっていたりします。(うわ)
これから色々とあるけど、・・・あ〜〜〜〜楽しみvv(帰れ)てかソーディアンチームのみなさん、やけにフレンドリーで失敗・・・(だめじゃん)
さーてジュダたちはどうしてるかなー?ウケケケ(怖)
ではでは、ここまで読んでくださった方、ありがとうございましたー。