「・・・っていうわけで、俺たち、ここにきたってわけ」
「そう・・・大変だったわね、カイル。それに、みなさんも」
船を下りると、一行はリーネの村へと一直線に向かった。
さすがのカイルも珍しい蝶や鳥に気を取られず、リアラを背負い黙々と歩いた。
とりあえずおしかける形になったが、スタンの妹リリスは、このいきなりの訪問を快く受け入れてくれた。
「ここがスタンの言ってたリーネか〜。すっげー田舎だね〜」
「本人の言ってた通り、本当に何も無い田舎だな」
ここにスタンがいたら間違いなく半泣きだ








my way of living 42
〜田舎珍騒動。ストーカー乱舞覗き英雄殺傷事件ファイル0〜









「リリスおばさん、一つ、聞いてもいいかな?その・・・・父さんのことなんだけど・・・・」
リアラをベッドに寝かせてもらい一息ついたところで、カイルがリリスにしどろもどろ問いかけた。
そんなカイルの様子を見ると、リリスはにっこりと笑って「わかってるわ」と返した。
「小さい頃どんなだったか、知りたいんでしょう?」
ずばり言ってきたリリスに、カイルは頭をかきながら「えへへへ・・・」と笑った。そんなカイルを見てまたにっこりと笑うと、リリスは「そうねぇ」と昔を思い出すように遠くを見た。
「そう・・・とにかく寝ぼすけさんだったわ。兄さんを起こすのは私だったから、毎日、そりゃあもう大変だったの。大声でさけんだり、毛布を取ったり、ほっぺたをつねったり。でもね、それでも起きないのよ。で、最後にはフライパンをもちだして、乱れ打ちするの。『秘儀、死者の目覚め!』ってね」
フライパンとおたまを持つマネをして言ったリリスに、カイルが「あー・・・・」と苦笑いしながら頷いた。
横にいたロニやたちはぷっと吹き出して笑っている。(ジューダスはもちろん呆れた)
「あとはいたって普通の子供だった。夢なんかも意外にちっちゃくって。お城の兵士になりたいなんて言ってたっけ」
「そういえばそんなこと言ってたね、スタン」
「ああ・・・そうだったな」
カイルが大声で驚いている後ろで、とジューダスが小声で話し始めた。
の言葉を聞いて思い出すようにジューダスが頷くと、その後二人で小さく笑い始めた。
といってもジューダスは口元を緩めるくらいだったが。
「でも、しょっちゅう旅の途中に『俺・・・・なんで戦ってるんだろう・・』とかいいだしてたよね」
「いい加減にしろといっても言っていたな。あんなんじゃ兵士はおろか、レンズハンターもできるかどうか・・・」
ふぅ、とため息をつきながらジューダスが肩を竦めると、は笑って噴出した。
「ププッ!ルーティに弟子入りすりゃできるようになるんじゃね?」
「それだけは止めてほしいな」
「なんで?」
「バカが移る」
「あはははははっ!」
至極嫌そうに言ったジューダスにが腹を抱えて笑い出すと、カイルたちが驚いて振り返った。
なんだ!?と驚くロニたちに「あ、ゴメン」とが笑いを堪えながら謝ると、カイルがはしゃぎながら「それより早く行こう!」とじれったそうに言った。
「村の人たちに、父さんのこと聞いてこよう!」
「あ〜・・・・ごめん、ちょっと疲れたから遠慮しておくよ。(嘘だけど)ジューダスは?」
「・・・・・僕も遠慮しておく」
「そう?じゃまた後でね!行ってきます!!」
二人が断ったがそれどころではないのか、カイルは目を輝かせ、ロニをつれて走って出ていった。
すげぇ〜とが笑いながら見送っていると、リリスが「それじゃあコーヒーでも入れましょうか?」と二人に勧めてきたので遠慮なく頂くことにした。
と、リビングの方へ移る途中。二人は浴槽の向こうにある窓から顔が出ていることに気付いた。
「「・・・・・・」」
とジューダスがその顔と目があってしまい固まっていると、窓から顔を覗かせている男は一人で語りだした。
「フッ、どうやらばれてしまったようだな・・・」
「いや、バレバレだし」
が思い切り手を振ってつっこんだが男は気にせず話を続け、ジューダスはさりげなく引いた。
「リリスちゃんちの風呂を覗いて二十数年・・・。雨にも風にも雪にもまけず、・・・ただ風呂を覗き続けた英雄。それが俺だ」
「それはただの変態だろう」
英雄違うし、とジューダスとがつっこんでいると、男の後ろに人影が現れた。男も気付いたのか、顔を真っ青にして「ハッ・・・!?」と声を上げた。
後ろに立っていたのはもの凄い形相のリリスだ。
男の首根っこを掴むと、ずるずると家の後ろの林へと引っ張りこんでいった。
「待って!俺が悪かった!もう止めるから!サンダーソードだけは勘弁して!」
奥からは声が聞こえるのだが、あまりの生々しさにジューダスは顔をしかめ、は顔を引きつらせた。
「や、やめて!げふっ!た、たすけ・・・がはっ!」
最後のうめき声以降、男の声は聞こえなくなり、すがすがしい木々のこすれる音がしばらく耳に流れた。
「・・・・。さよなら、のぞき英雄・・・・」
合掌。
言葉の後、は手を合わせた。ジューダスは心底呆れたような顔をしている。
がちゃり、という音と共に、家の入り口からリリスが入ってきた。
「あ、二人ともごめんなさいね。ハチが入ってきてたから、ちょっと外へ追い払ってたの」
「あー・・・はー・・・そう」
ハチ、と言っていたが、手に持っているお玉には明らかに血痕があった。ハチからそれほどの血痕は取れないはずだ、というほどの量の血が、だ。
なんとなく寒気を感じたので、二人は何も聞かず、大人しくリビングにあったソファに腰を下ろした。
「はい、どうぞ。砂糖まだいる?」
「あ、もらいます。こいつも」
「僕はいらないっ」
「甘党のくせに強がんなっテ☆」
リリスが砂糖を取りにいっている間、二人は剣で競り合った。
ぱたぱたと音をたてて戻ってきたリリスに気がつくと、二人はさっさと剣を鞘に戻した。
「いきなりだけど、あなたさん?」
「え゛」
コーヒーを飲もうとした瞬間声をかけられ、は口元にコーヒーを持っていったまま固まった。
ジューダスにいたっては噴出しかけていた。
そんな二人の行動をとくに気にもせず、リリスはをじーっと眺めた。
「うん、やっぱりそうよ。だって兄さんやルーティさんたちが言ってたの、そのままだもの」
「言ってた?」
納得して満足そうにコーヒーを口に入れたリリスに、今度はが問いかえした。
ん?というと、リリスは一口飲んだコーヒーをコトンとテーブルに置いた。
「あの騒乱の後、1年後に全員がここに集まって宴会をしたの。その時あなたのことが話題になって・・・・」
「ちょっとまった。俺がだって決まったわけじゃ・・・」
「だって皆が言ってたのそのままよ?あなた。顔はルーティさんに似てて、白い、胸を隠すまでのシンプルな鎧、その下が黒のノースリーブ(見えないけど)、ズボンはルーティさんくらいの長さで白に近い黄土色。手首から肘までに黒い布みたいな籠手をつけてて、左に指を全部覆うような指輪、腰にはカトラス・・・・」
と、人相と服装共にまったく変える努力をしていなかったは、リリスにずばりと言い当てられ青ざめていった。
ジューダスが隣で呆れる中、はどう言い訳をしようかと思考をめぐらせていた。アドリブには弱いらしい。
「・・・・で、いつもボケをして、人目もはばからずハジけてて、どんな大変な状況でもふざけてて」
「間違いないな」
「てめ納得すんな!!」
その後のリリスの説明を聞くと、ジューダスが大当たりだと驚いたように−−−もちろんワザとだ−−−に言ってきた。なんというかものすごく他人事あつかいだ。
がこん畜生と騒いでいたが、リリスはまだ思い出すように話を続けた。
「でも、いつでも笑ってて、人のこと心配するくせに自分は強がって、辛いことがあってもいつも前向きだったって。兄さんやルーティさんやフィリアさん、マリーさんとウッドロウさんと・・・・」
「ジョニーさんとコングマン。でしょ?」
「そう!じゃ、やっぱりさんなのね。一度会ってみたかったんだけど、兄さんてば虐められた話と面白い話し意外なんにも教えてくれないんだもの」
「・・・・そっか」
まったく、と腹を立てているリリスの言葉を聞いて、は両手に持っていたコーヒーを見ながら嬉しそうに笑った。
そんなの表情を見て、ジューダスは首をかしげた。が、その後すぐ二人がスタンの話に花を咲かせ始めたので、考察をする余裕もなくいつの間にやら会話に参加していた。
「ホント、兄さんてば寝起き悪くって・・・・」
「だよね〜。旅の最中なんていっつもスタンが最後でさ、ルーティが「起きろこのスカタン!!」とかいいながら男部屋入って何かとやってたなぁ〜」
「突き落としたり剣で刺しかけたり髪をひっぱったり関節技をかけたり鞄でぶん殴ったりマントを引っ張ったりしてたな・・・」
「まあ・・・・ルーティさんにそんなにお世話になってたの、お兄ちゃん」
呆れた、というリリスにまったくだよな!とが言うと、さりげなくジューダスが「人のこといえるか」とつっこんできた。
それをキレイに無視すると、はリリスに「そういえばさ〜☆」と話しかけた。故意にだ。
というかリリスはジューダスが何故スタンのことを知っているのか、つっこまなくていいのだろうか。ぶっちゃけ口が滑ってしまっていたジューダスは、心中ほっとため息をついた。
「・・・・なあジューダス、コーヒー飲みづらくないか?」
「ほっとけ」
その後二人でギャーギャーじゃれあうと、は「う〜」と唸りながら背伸びをした。
「コーヒーご馳走様。俺、村の探検してくる!ジューダスもいく?」
「・・・・風に当たってくる」
「冷たいなぁ〜もう。ジューダスったらい・け・ドブァッッッ
誘いに乗らなかったジューダスをが指でつついていると、「い・け・ずv」と言いきる前に左ストレートを食らわせられソファに沈んだ。
リリスがくすくす笑っているうちにジューダスはさっさと出て行ってしまい、その後起き上がったはリリスに手を振り、外へと出て行った。


(ゲームそのままだっ!)
外へ出て、目の前に広がった風景に思わずは笑みをこぼした。
建物はみな木造。建物意外は畑か田んぼか森だ。
村長の家の横を通って宿屋の前まで来ると、カイルとロニが誰かと話しこんでいた。人々の話す声か水の流れる音意外、そこにはなかった。騒音などどこからでようか、というくらいなにもない。
はずれにあった森の中に、随分と昔に人が使っていたようなさびれた道があった。好奇心に誘われ、はそのまま森の中の半獣道へとつっこんでいった。
カトラスを片手に邪魔な草を斬りながら進んでいくと、道は段々と急な坂になっていった。
待てコラ、と一人つっこみをいれたが、ここまで来て引き返すのもなんだろうと思い返し、はそのまま道を進んでいった。
「やっべー・・・アスラーダーが欲しい〜〜〜。アスラーダーーーー!!
車も無いのになにを言っているのか。その前にこのネタが分かる人はいるのだろうか。
ぜいぜい言いながら進んでいくが、一向に道は終わらない。
「なんだよ・・・ここ・・・・・・ゼロの領域だ・・・・・」
だからわからないネタを使うな。との声が聞こえてきそうだが、本人一人しかいないのでとりあえずつっこみは入らなかった。
ざくざくと適当に草を斬りながら進んでいくと、急に開けたところに出た。
年季の入っている、切り傷の入った丸太や板がそこらじゅうに散らかっている。
「まさかここって・・・スタンの秘密の特訓場所?」
そういえば裏山だな、と周りを見回して始めて気付き、は自分に呆れて笑いながら丸太に腰掛けた。
坂にある木の向こう側には、先ほどまでいたリーネの村があった。村の外では羊飼いが羊たちを移動させている。
鳥の鳴き声や風が吹いて木や草がこすれ合う音を聞きながら、はぼんやりとその風景を眺めていた。
「スタンはこれを守りたかったんだよな」
足の上に肘をつき、手に顔を乗せながらぼそりと言うと、はなんだか不思議な気持ちになった。
それから、また涙がでそうになったことに今度は事前に気付き、「うわぁっ!」と驚いて両手で顔を押さえた。
「・・・。誰もいないしいっかぁ。好きなだけ流れやがれ涙めっ」
ぷっと顔をふくらませ憎たらしそうに言うと、はふぁ・・・とあくびをしてまたぼんやりと景色を眺めた。
がそこから引き上げたのは、それから1・2時間してからだった。結局涙は流れなかった。



リリスの家の前にある洗濯物の裏でうさぎと戯れているに、ジューダスが「おい」と声をかけてきた。
「よぅジュダっち。風に当たりすぎてしおれちゃいないかい?」
「風に当たるだけでしおれてたまるか」
うさぎを抱え込んで手をもち、ジューダスにお茶らけながらうさぎ手のを突き出してきたにジューダスが不機嫌そうにつっこんだ。
それを見て笑うと、はウサギをかまいながらジューダスに「さっきついてきてただろ」と話しかけた。
「なんのことだ」
「頭に葉っぱ、ついてる」
「!!」
がジューダスの方を見ずに言うと、ジューダスはバッと頭に手をやった。
「なーんてウッソーvあはっ☆・・・ってオイ、そのリアクションは本当に来てたのか?」
「・・・・」
笑いながらジューダスの方を見たは、頭に手を当ててむっつりしているジューダスを見て真面目に問いかけた。
ジューダスが何も返せずに固まっていると、はその内ぷぷぷと笑い出し、最後には大声をあげて笑った。
「あーははははっ!お前かわいすぎ!!ていうかストーカーしすぎ!!」
「う、煩い!大体いつも問題を起こすくせに変な道にばかり入っていきたがるお前が悪い!」
「おや〜?そんなこと言って良いのかな〜?」
弱みを握った、とばかりに、は不敵に笑った。ウサギをもちながらなのでいまいち迫力に欠ける。
「今ここでキャーーッッ!!変態仮面ストーカーがいるわ〜〜〜〜っっ!!と俺が叫んだら、1時間後には村中にその名が知れ渡ることになるぞっ!なんてったって田舎だからな!」
「今お前がそれを大声で自白したことによってそうはならなくなったぞ」
「ああっ!しまったっっ!!」
ジューダスからつっこみをうけ、は両手を頭の上へばっと挙げた。ウサギは落ちないようにわたわたと頭の上にのっている。
アホが、とジューダスにつっこみを受けながら、はリリスの家へジューダスと入っていった。
ウサギをのせたまま。
「あら、お帰りなさい二人とも。?そのウサギは外に出さなきゃだめよ?」
「え〜〜〜〜っっ」
「駄々をこねるなっ」
ウサギを頭にのせながら地団駄を踏んだに、ジューダスが心底恥ずかしそうに突っ込みを入れた。
が頭にのせているウサギに「寂しいよね〜」と語りかけていると、リリスがくすくす笑いだした。
「ウサギなら家の中にもいるから、そのこは外に返してきてね、
「ホント!?行ってくる!」
「ガキ・・・・」
嬉しそうにはしゃぎながら外へ飛び出していったを見て、ジューダスが呆れたようにぼそりとつぶやいた。
リリスが「兄さんに聞いたとおりだわ」とのほほんと言っているのを聞いて、なにを言ったんだあいつは、とジューダスは心底不安になった。というかどちらかというと、自分がどういわれているのかが気になった。
が、リリスに聞くわけにもいかず、スタン本人もいないので、その質問が外にでることはなかった。
「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃ〜〜〜〜ん」
「呼んでない。土に返れ」
「バカッ!帰るのはビンだっ!魔界だっ!」
「・・・知るか」
入ってきてすぐボケたにジューダスがつっこむと、はさらにボケた。最終的にジューダスが疲れたようにつっこみ、つっこまれた本人はもうリリスの家にいるウサギにむかって走っていっていた。
哀れジューダス。明日があるさ。
「後でカイルにも言うつもりだけど、今日はここに泊まっていってよ。なにもないとことだけど」
「えっ、そんなの悪いよ」
「もう十分にくつろいでるがな」
寝転がりながらウサギとじゃれあっているには説得力のかけらもなかった。ジューダスがそれをみてつっこむと、リリスは笑いながら「じゃあ決まりね」と言った。
その内がウサギの手をつかんで隣に座っているジューダスの手を引っかき、遊び始めると、カイルたちが帰ってきた。
さっそくリリスはカイルたちのところへ行き、どうだった?と問いかけていた。
結局リリスの家に泊まることになると、それぞれ夕食を手伝ったりなんだりと手伝いをしはじめた。
ちなみに料理の手伝いはカイルとロニ・・・といってもリリスが「いいのよそんなことしなくても」と言って皿を運んだ程度だ。
ジューダスは人数分布団を取り出し、はウサギを頭にのせて風呂掃除をしていた。
夕食を取った後、ロニが「そういえば旦那さんは・・・」と問いかけると、リリスは普通に「今出かけていていないのよ」と答えた。
「そういえば、はどこで寝る?二段ベッドの上で寝る?」
「ん?俺もカイルたちと一緒でいいよ。リリスの寝る場所とるわけに行かないしね〜」
「いや、お前それはちょっと問題だろ・・・・」
ウサギを抱き、けらけらと笑いながらが言うと、ロニが真面目につっこんできた。
が、当のは首をかしげ、カイルも「なんで?」と首をかしげ、ロニは「だ、だからだな・・」と目を泳がせ大変困っていた。
最終的にジューダスがため息をつき、「別にいいだろ。寝るだけだ」と承諾してしまい、ロニとリリスは「うーん・・・」唸って苦笑いするだけだった。
なんだかんだいって対数ヶ月前までと仕事をしていたジューダスだ。近くで寝ていてもさして問題もないだろうと判断したのだろう。ロニも好みは年上!と自称するほどなのだから、変な気はおこらないだろうと軽く考えたようだ。
布団を敷き、全員が入浴をすませると、することもなかったので早々と電気をおとした。
「リアラ・・・いつ起きるかな・・・」
「夜這いはダメだぞカイル」
「そ、そんなことするわけないだろっ!」
心配そうにつぶやいたカイルにが真顔で茶々を入れると、カイルは顔を真っ赤にして−−−暗くて見えないが−−−がばっと起き上がった。それを見たロニが一緒になってにやりと笑い出し、カイルに「なにぃ!?」と抗議した。
「おまえそれでも男か!」
「関係ないだろ!?」
「夜這いの一つもしておけよ〜。ロニみたいになるまえに」
「それはやだけど誰がやるかっ!」
「一言余計だ!」
同時につっこんできた二人にが笑っていると、ジューダスが「煩い」とつっこんできた。
15歳相手に猥談はやめてほしいのか。それとも可愛い甥に変な知識は入れたく無いのだろうか。そこら辺は分からない。
ちなみに蛇足だが、18年立った時代にいるといってももジューダスも16才だ。
つっこみをうけた後、はーいやらへいへいやらそれぞれ返事を返すと、全員眠りにつこうと目を閉じた。
「坊ちゃんおやすみぃ〜v」
「「ブッ!!」」
「おい・・・・・」
しん・・・と静まりかえったところでがふざけて声を上げると、ロニとカイルが噴出して笑い始めた。
ジューダスの不機嫌そうな声を聞いて二人とも堪えているが、声がもれていてバレバレだった。
も同じくして笑っていると、ジューダスがやってきてガスッと剣の鞘でをなぐった。
「きゃ〜〜お〜そ〜わ〜れ〜る〜〜〜」
「「あははははははっ!!」」
「誰が襲うか!」
さらにがボケると、ロニもカイルもとうとう声をあげて笑い出した。
が、しばらくすると3人ともジューダスの殺気におされ、しん・・・と静まり返るほど口をとざした。
それから30分たっただろうか、カイルががばっと起き上がった。
それからもう一度布がすれる音がしたかと思うと、今度はロニの声がした。
丁度浅い眠りでまどろんでいたは、遠くに二人の声を聞きながら急速に意識が戻っていくのを感じた。
ゲームで何度聞いただろうか、ロニがカイルに最初に教える、スタンの言葉だ。
まだぼーっとした状態だったは、二人がどんな会話をしていたか思い出していた。
ゲームでしか知らなかった頃は「そんなやつだったのか」で終わっていたが、今となっては彼らしい、懐かしい言葉に思える。
「・・・じゃ、もう寝ろ」
「うん、おやすみ、ロニ」
がしっかり聞いた会話は、これだけだった。
畜生と内心舌打ちしていたが、数秒後に二人の寝息が聞こえてきたため感情はすっかり笑いのほうへ移っていった。
それからすっかり目が覚めてしまうと、は音を立てないように起き上がり、ゆっくりと家から出た。
外にでると、涼しい風が中途半端な睡眠で火照った身体に気持ちよく吹いてきた。
「30分睡眠て丁度目冴えるんだよね〜。まったく」
「だったら、もう30分起きてそれからまた寝るんだな。頭のつくりが単純だからできるだろう」
「リ・・ジューダス?!」
不意に声をかけられ、は驚いて振り返った。
振り返るとジューダスに「いったいどうした」と聞かれ、は「別に。単に外に出たかっただけ」と飄々と答えた。
ジューダスが呆れてため息をついたのを見ると、は笑って「おやすみ〜」といい、洗濯物が乾されていたあたりまで歩いていった。洗濯物が乾してあったさらに奥、ウサギを構っていたところまで行くと、草の上に寝転がった。
「・・・夜露でぬれるぞ」
「ぉおうっ!?ジューダス戻らなかったの!?」
「明日になって風邪を引かれたらこっちが困る」
驚くの隣に、ふんと鼻を鳴らしながらジューダスが腰を下ろした。
あははははーと笑うと、はくしゅんっと一つくしゃみをした。
「だから言っただろうが。大体そんな薄着ででてくるな」
「いいじゃんあったかいんだし。くしゃみなんて風邪引いたうちに入んないよ」
というの格好は、いつも通りの格好・・・から上に着ている白い服(鎧?)を脱ぎ、上はノースリーブのみだった。
上に白を着ていても結局は二部袖なのであまり露出度は変わらなかったが、寒さしのぎというとあったほうがまだ暖かい。
どこまでも能天気なの言葉を聞くと、ジューダスはため息をつきマントをぺいっと投げてきた。
「およ?」
「寝転がるなら下に敷いてろ。服がぬれて体温が下がる」
「サンキュ〜」
よいしょといって起き上がると、はジューダスのマントを敷いてその上に寝転がった。
「でもいいの?草つぶれて液がつくかも・・・・」
「そしたらお前が洗え」
「ええ!?」
そげなー!とが叫んだが、ジューダスはふんっと鼻であしらうだけだった。
「で、ジューダスはなんで出てきたんだ?」
「どこかのバカが薄着のまま外へ出て行ったからだ」
「やぁだジューダスvそれって俺への愛?」
「そのまま川へ落ちろ」
「冗談です」
ぐっとマントの端を持ったジューダスに、が急いで対応した。
が引っ張られないようにその周りを抑えていると、ジューダスは諦めたように手を離した。
「お前こそ、何でわざわざ外なんかに出たんだ」
「夜ってどきどきしない?」
「しない」
「即答かよ」
ジューダスのあまりの返答の早さにが逆につっこんだが、ジューダスはあまり気にしていないようだ。
一瞬ぷくっと頬を膨らませると、はすぐに元の顔に戻って楽しそうに笑い、うきうきと声を弾ませた。
「昼間は活気あるところがさ、夜になると違ってくるじゃん。なんかそれって知らないことが沢山あって楽しくない?」
「その思考がまず分からん」
「てめぇつくづく嫌味な奴だな」
「お前の考えが常識からはずれすぎてるだけだ」
「ばーかいうでねぇ!人生夢に生きなきゃ!」
「どこの言葉だ・・・・」
が力説したが、ジューダスは呆れたようにはぁー・・・・と深くため息をついた。
なんだよ!とが言ったが、ジューダスは別に、と返すだけだった。つくづく嫌味なやつだ。
は呆れたようにため息をつくと、ころんと寝転がった。
「田舎の夜はとくにいーぞ〜。星がきれいだからね」
「・・・・まぁ、そこは否定しないでおこう」
寝転がって空を見上げたに続いて、ジューダスも空を見上げた。
まわりに光がない分、小さな光の星から大きな光の星まで空一面にちらばっていた。
それを見て満足そうに笑うと、はジューダスに「だろ?」といった。
しばらく二人で眺めていると、すー・・・という音が聞こえてきた。
「寝るなこの痴呆娘!」
隣で気持ちよさそうに一人寝こけていたに、ジューダスが青筋を浮かべながら鉄拳を食らわせた。



次の日の朝、はロニよりも早くジューダスに起こされた。
「ぅん〜・・・・なんだよぉ〜、リオンのばかー」
「寝ぼけるな大馬鹿。それに僕はジューダスだ。いい加減覚えろ」
「んー・・・・・・・・・・・・・」
「寝るなっ」
怒られてもなお眠りだしたの頭を、ジューダスがグーでがつんと殴った。背中からシャルティエがさりげなく『まったくもー』と呆れたような声を上げている。
いたぁ〜〜っっと叫びながら頭を抑えたは、コーヒーよりも効く一発を食らってすっかり目が覚めた。
「なにするんだよっ」
「一度起きたら寝るなどあほうがっ。人が折角スタンの次に寝起きが悪いことをロニにばれないようにしてやったというのに」
「どーせいつかばれるじゃん」
「バレる前に直せ」
と、ぶーたれるとつっこみ役一直線のジューダスが朝も早くからぎゃーぎゃーとじゃれあっていると、リアラがふらふらと部屋から起きてきた。そんなリアラを見つけると、二人ははっと驚いて「リアラ!」と声をかけた。
玄関に腰を下ろし靴をのろのろと履くと、リアラはようやく驚いて駆け寄ってきた二人に気付いた。
「おはよう二人とも。あれからどれくらい立ったの・・?」
「おはようリアラ☆昨日からまだ1日しかたってないよ。ってか」
リアラの問いかけにが答え、さらに言葉を続けようとすると、横からジューダスが乱入してきた。
「動いて大丈夫なのか?カイルが心配していたぞ。食事はよくとっていたがな」
「きさんは一言多いんじゃっ!」
の言葉を取ったジューダスだったが、一言余計な追加をしたところをにスパンと頭を叩かれつっこまれた。
「なにをするっ」
「なにをしたっ」
「・・・・・」
「あぎゃぁあぁあぁああああっっ」
頭を抑えながらキッと睨んできたジューダスにがボケて返すと、ジューダスは無言で関節技をかけてきた。と、いっても腕を後ろへ回されたくらいだったが。
相変わらずな二人を見ると、リアラはくすくすと笑った。
「ほら見ろっ笑われてるぞ!」
「笑われてるのはお前だけだ」
「いーやお前もだその仮面とか仮面とか仮面とかぐぎゃあああっっ!!」
「虫がとまっていたぞ
「め、めずらしく名前呼んだと思ったら、棒読みかよっ!あいててっ」
すさまじい早口で繰り広げられるコントを見て、リアラがププッとまた笑った。
そんなリアラを見ていい加減止める気になったのか、ジューダスはの腕を放した。
「私、外の空気を吸ってくるね。少し・・・考えたいことがあるし」
「一人で大丈夫?ついていこうか?」
立ち上がってとんとんと真っ赤な靴のつま先を地面につくと、リアラは心配そうに声をかけてきたに笑いかけた。
「大丈夫よ。ってば案外心配性ね」
「そお?どっかの誰かの小姑がうつったみたいだね」
くすくす笑うリアラにが肩を竦めると、横にいたジューダスが異様な気を出してきた。
「ほーぉ。どこの誰だその小姑というのは?」
「ふふふーv誰かなー?」
「仲が良いのね二人とも。それじゃあ、いってきます」
「はーい」
殺気を撒き散らすジューダスに笑顔で応戦しているたちを見てまた笑うと、リアラはひらりと軽い足取りで外へと出て行った。
リアラが出て行った後、結局はジューダスにまた関節技を掛けられたりなんだりと半泣きの刑にさせられた。
「ふあ〜・・・・ってお前ら、なにやってんだ?」
「た、たふけてろぬぃ〜〜〜」
「お前が悪い」
それからしばらくして起きてきたロニは、目の前で繰り広げられている光景に思わずあくびとともに挙げた手を止めた。
キッチンとリビングの間にある間で二人して座り込んでいると思ったら、はジューダスに両方の頬を伸ばされていた。
びろーんとのびることろまでのばされた頬は真っ赤になり、は半泣き状態だ。
やられると相当痛いお仕置きだが、傍から見て・・・というかロニから見て、珍しく二人が(特にジューダスが)歳相応に遊んでいるように見える。
「で、なんでこんなことになってんだ?」
「ジューダスがわけのわからない理由で僕のことをいじめるんだっ」
「お前がわけの分からないことを言って人で遊ぼうとするからだろうがっ」
上半身を倒して二人に顔を近づけ問いかけたロニに、がジューダスをずびっと指差しながら言うと、ジューダスが逆にすぱんっと指を払いのけながら言い返してきた。そのまま臨戦態勢に入った二人を見てため息をつくと、ロニはさっさと顔を洗いに水場へと移動した。
その内リリスが起きてくると、ロニが一番初めに挨拶をした。
「おはよう、リリスさん」
「あら、おはようございます。みなさん、随分早く起きてらしたんですね」
リリスはもう起きていた3人を見て感心したように言った。
が、未だにとジューダスは応戦中だ。がるるるる・・・と唸りながら(一部)相手の隙を狙っている。
「ひとり、例外はいるがな」
といってロニが親指で指した先には、別のソファーに移動させられてもまだぐっすりと眠っているカイル。
「こら〜っ!カイル!起きろ!お・き・ろ!」
耳元でいくらロニが叫んでも、カイルはすやすやと眠っていた。そんなカイルを見て、リリスは「はぁ・・・・」とため息をついた。
「こんなところまで兄さんに似ちゃったのね。仕方が無い。久しぶりに、アレをやるか!」
「リリスさん、それってまさか・・・・」
ロニがさーっと血の気を引かせている間に、リリスはキッチンから嬉々としてフライパンとお玉を持ってきた。
「な、なに?」
何事か、と、応戦中だった二人も一時休戦し、フライパンとお玉をもったリリスの背を追った。
「あ、耳、ふさいでてくださいね」
「ぇえ!?ちょ、ちょっとまって・・・・ってジューダスっ!」
「隙あり、だな」
にーっこりと笑ったリリスに驚き、あたふたとして耳に手を持っていこうとしたの両腕を、ジューダスが後ろからぱっと抑えた。
ロニと同じくさっと血の気を引かせると、はじたばたと暴れだした。
「待て!それはなしだ!!一時休戦だっ!!」
「いつどこで誰がそんなことをいったんだ?これで勝負は決まりだな」
「待て!マジで早まるなジューダス!お前も耳を押さえなきゃ・・・って押さえらんねえか。わっ、わっ、うわーー!!嫌だーーー!!放せーーーー!!!つかどこの小学生だよいつ誰がどこでってーー!!地球が何回回ったらが抜けてるぞーー!!!ぎにゃーーーっっ!!」
にやりと笑ったジューダスに、さらにじたばたと暴れながらぎゃーぎゃーが喚いたが、がっちりジューダスが腕を押さえていたためもはや逃げようがなかった。
「いくわよ・・・・秘儀、「死者の目覚め」!!」
ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン(中略)といいようのないほどどでかい音が村中に響くと、カイルはようやく目を覚ました。
「ふにゃ・・・・おはよう・・・・・・あれ?なんか母さん・・・感じが・・・・ムニャムニャ・・・」
「はいはい、いいから起きてカイル。朝ごはんにしましょう」
「・・・ふぁい・・」
寝ぼけるカイルを上手い具合にコントロールすると、リリスはさっさとキッチンへ行ってしまった。
「・・・・さ、さすが本家。しっかり塞いだはずなのに耳鳴りが・・・」
カイルがたちながらうつらうつらやっている横で、ロニがゆっくりと耳から腕をはずしながらうぅ・・・っとうめいた。
「・・・・・」
「・・・・生きてるか?」
「み、み、耳が・・・・キーンどころじゃ・・・つか、め、目が・・・チカチカ・・・」
リリスの技が終わってから力尽き、ジューダスに腕を持たれてだらんと寄りかかっているにジューダスが声をかけると、今にも死にそうな声が返ってきた。
未だに視点が合わないをジューダスが腕を引っ張り挙げて立たせると、ふらふらと危ない足取りで歩き出したためソファーに非難させた。
「な、泣く子も黙る新撰組・・・・泣く声消える死者の目覚め・・・・」
「なにわけのわからんことを言ってるんだ。とっとと起きろ」
「おきとるワイ!!」
某お笑い芸人おさる(某必要性皆無)の真似をしただったが、ジューダスはばかか?の一言でさらりとそれを流した。
ちなみに、死者の目覚め実行中に叫んでいたの悲鳴は、リリスの奏でた音にすべてかき消された。
「・・・あれ?リアラは?」
ようやく頭が覚めたカイルが発した一言に反応して、ジューダスがから逃げるようにぱっと答えた。
「考えごとがあるからといって外に出て行った」
「そういえば随分長いな。お前呼んでこいよ。戻ってきたら朝飯にしようぜ」
わかった、と素直に頷いて出て行ったカイルを見送ると、がにししと笑い出した。
「気が利くねぇオニイサン☆」
「そりゃあお前、俺は恋愛のエキスパートだからよ☆」
「・・・とっとと飯を食うぞ」
二人してにししと怪しく笑い出すと、ジューダスはげんなりとしながらさりげなく流した。


「リリスおばさん!ご飯!」
10分もしないうちに、かわいらしい満面の笑顔を浮かべたカイルとそんなカイルを見てくすくすと笑うリアラが帰ってきた。
「ごはんになると元気になるのも、兄さんと同じなのね。もう用意はできてますよ。覚めないうちに食べてね」
リリスが出迎えに行くと、カイルとリアラは「はーい」と元気よく答えて中へ入ってきた。
「やっべカイルが来たぞ!!いそいで食べなきゃなくなっちゃう!!」
「やべえぜ!かっこめ!」
「大食らいが何人もいると困る・・・」
「「悪かったな!」」
冗談を冗談で返すやりとりをとロニがやっていると、ジューダスが肩を竦めてはぁーあ・・・とため息をついた。
「な、なんだよジューダスっ。もー」
「ふふふっ」
大食らいの一人であるカイルがふてくされると、リアラとリリスが4人のやりとりを見て面白そうに笑った。






続く
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ひっさびさのUP〜〜〜〜〜〜〜!!!!でハイ☆テン☆ション☆の長谷川です(☆ウザっ)
ようやくここだよって感じですねぇ〜。ていうか早くノイシュタット行きてぇーーーー(遅いしね)
あぁ・・・これからめくるめく冒険の嵐各地にボケところによりつっこみ激しい濃霧そしてさりげない兄貴風が吹き荒れるんだ・・・(どんなだ)恋の嵐は当分先ですね〜〜〜。
あ〜〜早く吹け吹け恋の風☆(にあわねぇー)
・・・と暴れに暴れた後ですが、ここまでお付き合いいただいた方、お疲れ様で・・・いやいや、ありがとうございました☆