カイルたちがジューダスを追いかけていった後、はその3人組をおいかけ道を走っていた。
「そろっと捕まる頃かな〜♪」
おいていかれたにしてはのんきに鼻歌なんかを歌っているだが、この先の話を全て知っているための余裕としかいいようがない。
本人はこの冒険をもとより望んでいたのだから、嬉しくなるのも無理は無い。ただ・・・・
「・・・こんな気持ちでここにいるとは思わなかったなぁ・・・・」
と、ため息を漏らす。大神殿からの上り坂が終わりにさしかかったころ、はよく見た金髪と背の高い銀髪、おかしな仮面を被った少年を見つけた。








my way of living 40
〜火事と喧嘩は江戸の花☆漫才コンビ復活〜









「・・・やめておけ、僕を仲間にするとロクでもないことになるぞ」
「ロクでもないことって?」
が追いついた時、カイルたちは話しの半分以上を終わらせていた。
もう仲間になろうって言ったのか、と少し残念そうにがため息をついていると、後ろからリアラが走ってきた。
カイルたちはまだジューダスに向き、当のジューダスは背をむけている。
「・・・・話す必要は無い」
「おい、お前たち!この辺りで、怪しい奴を見かけなかったか?」
ジューダスが思いつめたように言葉を発したた瞬間、手前の門の番をしていた衛兵たちがやってきた。
「神殿に賊が侵入したらしいんだ。何か知らないか?」
どうやら自分たちのことをかぎつけられたらしく、衛兵たちの言葉を聞くとロニは一人顔を引きつらせた。
衛兵たちがロニに気付き、口をあけようとしたときだった。
「怪しい奴なら礼拝堂の近くの茂みにいました。青くて髪が長くて肉体美ラヴって感じのマッチョで大きな斧もちながらむさくるしく動き回ってました」
「それは本当か?女!」
がロニの前に進み、衛兵たちに嘘の情報を教えた。あながち嘘でもないが、内容があまりにもかわいそうだ。
衛兵たちのうちの一人がに確認をとると、は涼しい顔で「ええ」と返した。
これで衛兵たちはどこかへいくかとロニがほっとため息をついたときだった。もう一人の衛兵が「まてよ」といって全員をみまわした。
「・・・そういえばお前たち、今日は参拝の日ではないはずなのに何故こんなところに・・・」
「友人のフィリア=フィリスに会いに来てたんです。フィリア本人に今日5人友人が訪ねてきたか聞いてみれば分かります」
「そ、そうか・・・・ん?ちょっとまて。その後ろにたっているやつ、何故こちらを見ない」
がまたも上手い具合に質問を流すと、今度はジューダスが目を付けられた。
ジューダスがしらんぷりをして沈黙していると、衛兵たちがますます不審がり、「怪しい奴だな・・・おい、こっちを向けと言っているんだ!」とジューダスのところまで歩き出した。
「ま、まってください!その人は、僕らの仲間です!」
その衛兵たちの前にかばうようにしてカイルが立ち、衛兵たちがジューダスの元へと歩いていくのを止めた。衛兵たちは「仲間・・・?」といって首をかしげている。それにカイルが元気よくはいと答え、「そうだよね、ロニ!」とロニに話をふった。
「あ・・・ええ、そうなんですよ!いやね、あいつなんか腹が痛いらしくて・・・なあリアラ!」
「あっ、えと・・・そうなんです!動くとつらいからって、ここで休んでたんです!」
「ホントか・・・?」
いつまでも疑わしげに見てくる兵士たちに痺れを切らせたのか、ロニが「ああ〜〜〜〜っっ!!今怪しげな人影が!」といって衛兵たちの気を別のところへそらせた。
どこだ!?と騒ぐ衛兵たちに「ほらほら、向こう!早く追いかけないと見失っちまう!!」とロニがホラを吹くと、衛兵たちはソレを信じて森の中へと走っていった。
「ねぇ、ロニ、どこ!?どこにいるの!?」
「バ〜カ、嘘だよ。こうでもしなきゃ。あいつらにしつこく聞かれるだろ?」
本気で探しているカイルに、ロニがべっと舌をだしてホラだったことを教えた。というか、仲間内で分かっていないのはカイルくらいだ。
「何故かばいだてした。仲間だという嘘までついて」
カイルとロニがじゃれているところにジューダスが水をさした。そんなジューダスをきょとんと見ると、カイルはさもあたりまえのように「だって、ジューダスは仲間だもん」といった。むしろそんなことを聞いてきたジューダスを不思議に思っているようだ。
「かばうのも、あたりまえだよ」
「僕は仲間じゃ・・・!」
「じゃあ聞くが、あんた、カイルが仲間だって言ったとき黙ってたよな?仲間じゃないと思ってたら、「ちがう」って、ハッキリいうはずだぜ、あんたの性格ならな」
カイルの言葉を否定しようとしたジューダスに、今度はロニが皮肉を込めて言葉をなげた。的を射たロニの言葉にジューダスが「それは・・・ただたんに言うタイミングが無かっただけで・・・・」としどろもどろ言い訳をしていると、カイルがにっこり笑いながらとどめをさしてきた。
「それにさ、ダリルシェイドで別れたときになにか言いかけてたよね?あれって、一緒に行こうっていいかけてたんでしょ?うん、絶対そうに決まってるよ!」
「それは・・・」
カイルにトドメをさされたジューダスは目を泳がせてくちをつぐんだ。
はそれをみて笑いを堪えている。
仲間であることを否定する気はさらさらない、という顔でいるカイルを筆頭に、ジューダスはロニやリアラを見回した。
「・・・さっきのように、またロクでもないことに巻き込まれるかもしれんぞ。それでも・・・いいのか?」
「英雄は困難を恐れない。むしろ、望むところさ!」
「俺は、こんな能天気な奴と旅をしてるんだぜ?つまり最初ッからロクでもないんだ。ロクでもないことが今更一つや二つ増えたってかまいやしねえよ」
「困難に巻き込むということなら、私も同じだと思います。だから、私も気にしません」
口々に言われると、ジューダスは一瞬固まり、それからふぅ、とため息をついた。
「・・・馬鹿者どもが。後で後悔しても知らんぞ」
「それじゃ、決まり!よろしくね、ジューダス!」
折れたジューダスにカイルが嬉しそうに笑うと、ロニが「んじゃ、仲間もそろったことだし、出発しますか」と盛り上げた。
ハイデルベルグへ向かうことが決まると、ジューダスの助言により一行は港へと歩き始めた。
「ふふふふーっ♪」
「・・・・やけに楽しそうだな」
カイルがリアラを引っ張って歩き、ロニがそれを見て「あーあ」といいながらも一緒になって楽しそうに笑っている後ろを二人が歩いていた。
急にがすきっぷをしだしそうな勢いで笑い出したため、ジューダスが怪訝そうな顔で声をかけた。機嫌が良いのか、それとも別の理由か、その言葉にはとげが無い。
そんなジューダスに気がつかないほど機嫌が良いのか、はとうとうスキップしだし、ジューダスににーっこりと笑った。
「だーってさ〜♪俺、ずっとみんなやジューダスと冒険するの夢だったんだ!それが今目の前で起きてるんだよ!?くーーーっっ!!」
「煩い。恥ずかしいからやめろ」
「あっはー☆つっこみが帰ってきたかなー?♪ていうかなんか懐かしい台詞聞いた気がする・・・」
「マゾか?」
「君が相手の時だけサ!」
「とうとう頭まで侵されたか・・・」
「いーや、とある変態王のうけうりだ」
「二人とも・・・すっごい会話速度ね」
二人で話しこみながら歩いていると、いつから聞いていたのか前を歩いていた3人が目を大きく開きながら二人を注目していた。
しまった、と思った時にはもう遅く、ロニが二人に向かって疑いの目を向けながら口を開いた。
「神殿でも思ったんだけどよ、お前ら知り合いなんだろ?」
「えーうんまあねえ?」
「・・・・・」
「うんくらい言えよ!寂しいっ!」
「やめろ気持ち悪い」
「あ、やっぱり知り合いだ。なんか二人とも仲いいもん」
ついついいつものようにじゃれあってしまった二人は、カイルにすら確信をつかれた。
お前のせいだろお前のせいだと二人が罪の擦り付け合いをしていると、ロニがさらに問い詰めてきた。
「べっつに隠すこともねえじゃねーかよ。お前らどこで知り合ったんだ?」
「ああ、前に一緒に旅してたの」
「−−!!おいっ」
がロニの質問にさらりと答えると、カイルたちが「へー」と意外そうに声をあげた。
ジューダスが小声で叱咤し小突いたが、言った本人は何処吹く風だ。
そこでロニが「ん?ちょっとまてよ?」と言い出し、ジューダスはぎくっと肩を慄かせた。
「それじゃあそんとき、はジューダスのことなんて呼んでたんだよ?本名とか知ってんじゃねえのか?」
やはりきた、といわんばかりにジューダスがうつむくと、は「うーん」と唸り、しばらくしてから口を開いた。
「そのときこいつに「僕に名前など無意味だ。なんとでも呼べ」って言われて」
「あ、それ俺たちも言われたー」
「で?はジューダスのことを何て呼んでたの?」
何故か興味津々な仲間たちに一旦引くと、じと目で睨んでくるジューダスを無視してがさらりと答えた。
「坊ちゃん」
「「ブッ!!」」
「・・・・・斬る!」
「ギャーーッッ!!それは無しーーー!!」
それを聞いたカイルたちが噴出し、一緒になってが笑いかけたところで腹を立てたジューダスが剣を抜き出した。
それを見たは叫ぶと急いでカトラスを抜き出し、振り下ろしてきたジューダスの剣をなんとかうけとめた。
そんな二人を見て笑うと、ロニが「そういえば」と嫌なことを思い出したように顔をしかめた。
「あのバルバトスってやつ、とんでもなかったな。この仮面ストーカーがいなかったら、ほんとやばかったぜ」
「仮面ストーカーとはぼくのことか。変なあだ名をつけるんじゃない」
腹を立てたジューダスがそのままロニに剣を向けると、カイルが二人の間に入った。
「まあまあ、俺たちも脱獄犯なんだからさ、ストーカーだからって気にすること無いって」
「それはフォローのつもりか?」
「ぶははははははは!!!」
「笑うなっ!!」
「め、目の前で仮面ストーカーが〜〜〜!俺は今、猛烈に感動しているーー!
「ネタが古い!」
「なんで古さ分かるんだよ!」
その後、とジューダスは港まで突っ走り、カイルはそれを見て「なになに!?競争!!?俺も入れてーー!!」と言って二人の後から大爆走をした。ロニとリアラはその後を急いでおいかけ、全員港に付いた頃には肩で息をしていた。
チケットを買いに行くことになって歩いていると、ジューダスが全員に「ファンダリアへは海路を使っていくことになる。お前ら準備はできてるのか?」と問いかけた。
「あ!忘れてた!あれがないと、むこうでは大変なんだよな」
「え?買うってなにを?」
ジューダスに言われて焦り始めたカイルに、リアラが小首をかしげて可愛らしく聞き返した。
「ほかほかカイロさ!雪国の必需品なんだ!」
「あのなカイル・・・・ジューダスが言ったのは、海の方の海路だっ」
ロニがつっこむとリアラが苦笑いし、ジューダスがため息をつき、はプッと噴出した。
(や、やばい・・・!目の前で数々のチャットシーンが繰り広げられてるっっ!!お、可笑しーー!)
カイルたちが何か言い出すたびには笑いを堪えていた。傍から見ると少し怪しい。
そのままカイルの暴走は止まらず、船乗り場の手前にあった売店を見ると「あー!」と声を上げた。
「そうだ!船に乗る前に、なにかかっていこうよ!」
「おいおい、遠足じゃないんだぞカイル。どうせ買うのはおやつだろ?」
呆れたようにロニが言うと、カイルは笑って誤魔化した。
「っへへー。あったりまえじゃん♪ねえねえリアラはなにを買う?」
「カイル、おやつは300ガルドまでだぞ」
「え!?それじゃあ、バナナはおやつにはいるのかな?!」
「なるなる!カイル、リアラ、早くおやつ買いに行こ!ほらジューダスも!!」
「ぼ、僕は・・・」
カイルに言葉を返すと、はジューダスをひっぱって売店に走り出した。
「よーしいっぱい買うぞー!」
「ばっ、ひっぱるな暴食女!」
なんだかんだいって引っ張られていったジューダスは、しぶしぶながら一緒になってお菓子を買っていた。
ロニはその様子を見て笑うと、さりげなくいちゃくつカイルたちのところへ「カイルー!俺にもよこせっ!」と乱入していった。
「見て!船があるよ!あれにのってファンダリアまで行くのか・・・。よーしみんな!ファンダリアまで競争だ!」
「みんな同じ船に乗っていくんだから、競争もへったくれもないだろうが・・・」
リアラと二人で走っていったカイルを見て、ロニがため息をついた。
「か、か、か、カイル可愛い〜〜〜!!」
「可愛いという割りに笑ってるぞ」
だ、だってーー!!と腹を抱えて笑うに、ジューダスはため息をついた。
ロニがカイルを追いかけて船へ行った後、ジューダスはをつれて船へと歩いた。
「ほんと、スタンに顔そっくりなくせにさらにバカになったっていうか!」
「あれは典型的なバカだろ。あいつどんな育て方をしたんだ・・・」
「あはは・・・。あ、ていうかさ、あのせっかちなところルーティにもにてない?」
「・・・・そうかもな」
微妙な間を置いて、ジューダスがふっと笑った。いつまでものんびりと話していた二人を、カイルが船の上から急かして呼んだ。



夜、夕食を取った後、は甲板の上にいた。
「・・・・・もしかしてここに来るのは癖か?」
甲板の上で一人ぼやーとしていたは、ふと思い立って男性陣の部屋へいってみた。
間のよいことにカイルはリアラのところへ行っており、ロニはナンパにくりだしていた。
「ジューぅダッスッ♪」
「・・・なんだ、気持ち悪い」
かちゃ、と扉を開けると、剣を磨いているジューダスだけが部屋にいた。
ベッドに座っているジューダスにがにっこりと笑いかけると、ジューダスはふぅ、とため息をついて「なんだ」ともう一度声をかけた。
「暇だったからさ。ジューダスのとこにでも遊びいこうと思って。カイルたちの邪魔できないしね〜」
にしししとが笑いながら言うと、ジューダスはまた一つため息をついた。
勝手にしろ、というジューダスの声を聞くと、は嬉しそうに部屋に入り同じベッドにこしかけた。
数分ほど会話もなくぼけーっとすると、はジューダスに「ねえねえ」と話しかけた。
「いきなり18年後にとばされて、どう思った?」
「・・・別に」
インタビューでもするかのようなノリで質問をしたに、ジューダスはいつも通りむっつりと答えた。
つまらない返し方をしてきたジューダスになんだよーと言うと、は腕を伸ばしながら後ろにぱたりと倒れた。
ジューダスは気にせず剣を磨いている。から見えるのはジューダスの背中だけだ。
つまらなそうにため息をつくと、は腕を頭に持ってきてふあ・・・とあくびをした。
「・・・・おい」
「なに?」
うとうととし始めた時、ジューダスが剣を磨く手を止めてに声をかけてきた。
浅くなりかけていた呼吸を元に戻すと、はむくりと起き上がった。ジューダスは下を見たまま動かないでいる。
「・・・ルーティは見てきた?」
「・・・。ああ。お前が運ばれていくところを見た。といっても、まさかお前だとは思ってもいなかったが」
「いやだ坊ちゃんてばカイルたちのストー・・・・冗談です」
両手を頬に沿えワザとらしく言っただったが、ジューダスが磨いていた剣をちらりと輝かせたためその手を上へあげた。
「それはどうでもいい。ただ僕は・・・・」
「マリアンさん、だろ?」
が言うと、ジューダスはうっと息詰まった。
そのまま反対側に顔を向けるジューダスにくすくす笑うと、は追いかけるように身体を前へ倒した。
「大丈夫、ちゃんと助けた。・・・・ただ、今はどうだか知らないけど」
「・・・そうか・・・」
ふざけたような物言いから、はしっかりとした声でジューダスに・・・リオンに一番気にしているであろう事実を伝えた。
それを聞くと、リオンは先ほどまでとは違い安心したような声で返事を返した。
その声を聞いたは、とげとげしい空気を和らげたまま下を向くリオンに微笑んだ。
しばらくすると、ジューダスは思い出したように顔をあげ「そういえば」とに声をかけた。
「お前は僕と同じように飛ばされた、と言っていたが、なぜ僕が飛ばされたことを知っていた?それと何故お前が」
「まあまあ、そう焦らずに」
マリアンの事を聞きいつもの調子が戻ったのか、ジューダスは昼間のの言葉についてつっこんできた。
一気に質問しようとしてくるジューダスを止めると、は「そうだねぇ」と呑気に話し始めた。
「なんていえばいいんだろ・・・。うーんと〜」
「嘘をついてもお前は表情に出るからすぐばれる。下手なことを考えないんだな」
「てンめぇ相変わらずだなオイ」
ふん、と鼻を鳴らしたジューダスに、はケラケラ笑いながら小突いた。
どっちがだ、とジューダスにつっこまれながら笑っていると、いつの間にやらはぽろぽろと涙を落としていた。
『あの〜・・・・?また勝手に泣いちゃってるみたいだけど?』
「おお!?いつの間に!?」
「・・・気付け自分で」
それまでしゃべらなかったシャルティエが、いい加減声をだしてきた。
泣いていることに気がつくと、は呆れてつっこんできたジューダスに誤魔化すように笑った。結局泣き笑いだ。
「まったく・・・わけの分からない時によく泣くなお前は」
「アホ言え。久々にお前に会えたんだぞ?コレが泣かずにいられるかっ」
「いつからそんなキャラになった」
「知らね。でも、やっと会えたって思ったら、なんか嬉しくなってな。俺って情にもろい人間だから?」
「言ってろ・・」
がしがしと腕で涙を拭きながら冗談を言ったに、ジューダスが心底呆れたように言い返した。
その後きぃーー!と怒り出したに、ジューダスは「いいから質問に答えろ」と再度つっこんだ。
「うーん・・・いつか分かることだから言うけどさ・・・俺はこの先何が起こるかを、少しだけ知ってるの。だから、お前がこの時代にエルレインに復活させられたことも知ってたってわけ」
「なぜ先のことを知っているんだ?」
「エルレインに・・・飛ばされた時にちょっとな。あいつって結構お喋りじゃん?つっても、本当にちょっと先までなんだけどね」
といってが肩を竦ませると、ジューダスはふう、とため息をついた。
「で、なんでお前までこの時代に飛ばされたんだ?お前もあの騒乱中にどこかでおっ死んだか」
『あ・・・坊ちゃんは・・・』
「いーや。どっかの誰かさんとは違ってあの後マリアンさん助けてスタンたちと行動してたから。そうだね・・・ミクトランを倒した後・・・神の眼の前から一気にこっちへ−−−って感じかな?流れは」
皮肉をこめて言ってきたジューダスに、同じく皮肉を込めてが返し、ついでに質問の答えも返した。
それを聞くとジューダスは一瞬むっとし、マリアンを助けたところで借りとでも思ったのか「まあいい・・」と言った。
それからジューダスはふと思い出したように、「カイルたちとこれからどうするつもりだ?」と再度に問いかけた。
「仲間になっちゃった以上一緒にいますよ〜。もう待ちわびてた旅だからね♪」
「待ちわびてた?」
思わずが言ってしまった言葉に、ジューダスが敏感に反応した。それに気付いたは表に出さないように表情をかえず、なるべく普通を装って目も離さずジューダスに返事を返した。
「あー、うん。だって、みんなでグレバム倒すのに旅に出て以来、全然いけてなかったから・・・・さ・・・・ってゴメン」
「・・・・何故謝る」
「いや・・・・だって・・・・」
というと、はうつむいて指を組んだ。
ジューダスは鋭い眼で仮面の下からを見ている。
はため息をつくと、「あーそーだよ」と開き直ったようにぱっと手を挙げて喋り始めた。
「お前が裏切り者だって呼ばれてる事だって知ってるし、スタンたちに何も話せずあんな結果になったこと後悔してることだってなんとなく分かる。ていうか同じ場所にいたから分かるってだけだけど・・・」
「だから気を使ったのか?余計なお世話だ」
心底嫌そうに言うジューダスに、がむっとした。
「なんだよそれ。お前だって嫌だろ?18年たった場所にいるっつったって、結局俺たちにっとってはあれから数日しか立ってないんだ」
「だからなんだ。いくら僕たちがそう思っていようと、時間はまってはいない。割り切るしかないから余計なお世話だと言っているんだ」
かわらず突き放すようなジューダスの物言いに、が感情的になり「は?」と喧嘩腰に言葉を返した。
「時間は待ってない?18年たつと時間の速さまでかわるのかよ」
「わけのわからないことを言うな」
「単なる言い訳にしか聞こえないよ。割り切ったならそのよそよそしい態度なに?似合わなく遠慮なんてしてさ。なんでもないなら時間なんて気にするほどのものじゃないだろ?いつからそんなにちっちゃくなったんだよっ」
「煩い、喚くな」
「じゃあなんだよっ。まだ引きずってるお前にスタンたちの話しして無理につっこみやら笑いやら入れさせろってのか?!本当はお前」
「煩い、お前に何が分かる!!」
声を張り上げたに、ジューダスが同じく声を張り上げた。
はっとすると二人はうつむき、しばらくその状態から動けず、嫌な沈黙が部屋に流れた。
「・・・・・・。そうだね。俺お前のことなんにも分かってない。ヒューゴさんに・・・ミクトランにどんな風に育てられたか知ったのもマリアンさんから聞いただけだし。一緒にいたっていってもほんの少しだけだし。なにより俺、お前が一人で秘密隠してること全然気付かずに、スタンたちと一緒になってグレバム倒すことだけ考えたり楽しんだりしてた・・・」
ため息混じりに言うと、はゆっくりと立ち上がりドアの前まで歩いた。
「嫌な奴だねー俺。なんにも知らない人間に偉そうにべらべら喋られると腹立つよね」
ジューダスの方にくるりと振り返ると、はぱっと肩まで手をあげながら笑った。
うつむいたまま何も返してこないジューダスを見ると、はため息をつきながら自傷気味に笑い、音を立てずにドアを開けた。
「ゴメン、リオン。さっき言ったこと気にしないで、っていうか忘れて。バカなこと言って悪かったね。・・・じゃ、おやすみ」
パタンとドアを閉めると、はダッと廊下を走っていった。
『坊ちゃん、追いかけてくださいっ。いっちゃいますよ!?』
「・・・なんで僕が。そんな必要ないだろ」
の足音が聞こえなくなった頃、シャルティエがジューダスに急いで声をかけた。が、当のジューダスはやる気なさそうに返事を返すだけで、のんびりと剣を磨いていた。
『何言ってるんですか!本当は・・・・分かってるんでしょ?!折角に会えたのに、このままでいいんですか?!』
あえて「言われたこと」とは言わないシャルティエだったが、ジューダスには十分通じているのか不機嫌そうな声で返事をしてきた。
「煩いシャル。自分で勝手に出ていったんだ。放っておけ」
『坊ちゃん!』
「なんでそこまであいつにかまうんだ?シャル。なにかあるのか」
『・・・。とにかく、追いかけましょう!』
ほらほらほら!と騒ぐだけでほかの事を話す気の無いようなシャルティエにため息をつくと、ジューダスは腰を上げて部屋を出た。


「はぁ〜〜・・・・」
甲板で、は一人足を抱えて座り込みため息をついていた。
罪悪感といいようのない怒りで気持ちが悪い。
膝に顔をうずめていると、後ろから声をかけられた。

「・・・お?ロニ?どしたの?」
呼ばれて振り返ると、不思議そうに首をかしげたロニが立っていた。
「部屋帰ろうと思ったら泣きそうな顔して走ってたから、どうしたのかと思ってな」
「あははっ。俺そんな顔してたんだ」
「今もしてるっつの」
抱えていた足を伸ばして笑ったにロニがつっこむと、はまた「マジで?」と言って笑った。
それを見ると、ロニはため息をついて隣に腰掛けた。
「どうしたんだ。なんかただことじゃないように思えるのは俺の気のせいか?」
「俺が泣きそうな顔してるから?」
「だってそんなキャラじゃねえだろ」
とロニが言うと、は「よくわかってるね〜」と言いながら大笑いした。
「俺でいいなら聞いてやるぜ。部屋から出てきたって事は、ジューダスだろ?」
ずばり、と人差し指をさして言ってきたロニに、は「大当たり〜」と返した。
二人がそんなやりとりをしているころ、ジューダスが甲板へたどり着いた。
「・・・・」
『・・あれ、ロニですよね。なんで?』
小声で知るか、と返すと、ジューダスは近くにあった柱に身を隠した。
ロニにずばりと言い当てられたは、笑うだけ笑うとまた足を抱え込んだ。
「ジューダスと喧嘩・・・・っていうか俺が一方的に嫌〜なこといっちゃってさ。怒られちゃった」
「怒られたぁ?何言ったんだよ」
「うーん。色々言ったんだけどね〜。俺、あいつのことなんにも分かってもいないのに勝手なことべらべら喋ったから、その所為。俺・・・あいつのこと傷つけてばっかなんだ・・・いつもいつも助けてもらってたのに(多分)」
やんなっちゃうよ〜といいながらむふーと変なため息をついたに、ロニは「そうか・・・」と静かに返した。
「一番あいつと仲いいお前がわからないんじゃ、俺たちなんてどうすりゃいいんだよ?」
「あっははーどうしよっか?」
右手で頭を抱えながら言ったロニに、が笑いながら返した。
どうしようもねーよ、とロニが同じく笑いながら返すと、はまた可笑しそうに笑った。
「ありがとね〜ロニ兄貴。話したらすっきりしたわ」
「おう。そりゃよかったぜ。って案外泣き虫なんだな」
「いつもは違うぞ!ただロニたちに拾われる前に色々とあったから、ちょっと疲れただけ」
「なんてったって海だしな」
肩を竦めて言ったにロニがお茶らけると、二人はぷっと吹き出し笑った。
なんで海にいたんだろうとうち上げられていた本人のがいうと、ロニは知らねえよ、と笑いながら返し立ち上がった。
「んじゃ、俺そろそろ寝るわ。はまだ残るのか?」
「おう。すまんね、つき合わせて」
「いいよ別に。減るもんじゃねーしぃ?」
「・・・フラれたんだ」
ふあ・・・とあくびをしながら言ったロニにがぼそりとつぶやくと、ロニはしばらく固まり、それからぎりぎりと頭を掴んできた。
「テメェ話し聞いてやったってのにこの野郎っ」
「あはははははっ!ごめんごめん冗談です〜〜!」
が謝るとロニはよし、と言い、「あんまり遅くなるなよ」というと背を向けた。
「明日、頭冷えた頃に謝りいってこいよ」
「もちろん。そのつもりですよ」
が答えると、ロニはそのまま部屋へと戻っていった。ちょっぴり寂しそうな背中で。
明日もまた船内を駆け巡るのだろうことはもう分かっているのだが。
ロニがいなくなった後、はふぅとため息をついた。
「・・・・・」
膝に顔をうずめると、それからしばらく動かなくなった。
ロニがいなくなり静かになった頃、ジューダスは柱から音を立てずに出てきた。
『・・・・きっと泣いてますね、あれ』
「・・・・」
『声かけるの、明日にします?』
「・・・・。・・・・ん?」
シャルティエと小声で話していると、ぼそぼそと別の声が聞こえてきた。
の声だ。
「・・・ごめんなさい・・・・・ごめんなさい・・・・ごめんなさい・・・・っ」
ぎゅっと両肩をつかみながら、はひたすら 「ごめんなさい」 と繰り返していた。
それを聞いたジューダスは首をかしげ、シャルティエに「・・・あそこまで追い込んでたか?」と問いかけた。
『え・・・さ、さあ・・・・?だったらあそこまでならないと思いますけど・・・・。あっ』
「なんだ。何か知ってるのか?」
『いや、坊ちゃん、あの・・・・・もしかして・・・・。えと、って、僕らより遅くこっちに来たんですよね?』
「そうらしいが。それがどうした」
中々確信に近いことを話しださないシャルティエにしびれをきらせたのか、ジューダスはまた不機嫌そうに聞き返した。
ジューダスのそんな声を聞くとシャルティエは慌てだしたが、『だから、その・・・』と曖昧な返事ばかりかえした。
『もしかして、イレーヌたちが死んでいて、その場面をが見ていたとなると・・・』
「・・・なるほど。それで一人で思いつめてるのか。あいつらしい。なにより、ヒューゴのやつも死んでいるようだからな。相当ショックだろ・・」
『いや、坊ちゃんは・・・・・・いえ、なんでもないです』
言いかけて途中でやめたシャルティエに、ジューダスはさりげなく甲板から離れながら「なんだ」と聞き返していた。
しかしシャルティエは一向に口を開けず、『明日に謝った後で、僕らが死んだ後どうなったか聞いてみましょう』と返してくるだけだった。
ジューダスが甲板から姿を消してから30分後、も甲板を後にした。



次の日、ジューダスはやけに早くから目が覚めた。
スタンの血を色濃く受け継いでいるカイルはもちろんぐっすり眠り、ロニも疲れていたのかよく眠っていたため、ロニを起こさないよう静かに部屋を後にした。カイルが起きないだろうことはスタンで経験済みだ。
少し風に当たろうかと廊下を歩いている途中でシャルティエが目を覚まし、『おはよぅございます・・・』と寝ぼけたような情けない声で挨拶をしてきた。
甲板へ上がると、手すりに寄りかかって海をぼけーっと眺めているがいた。
「・・・・」
なんでこんな間の悪い。ジューダスの心境はまさにそれだった。
そうして顔をしかめているジューダスの気配に気付いたのか、がふと振り返った。
「あ、おはようジューダス。き」
「昨日は、悪かった。・・・少しいいすぎた」
言葉を遮って謝ってきたジューダスに、は心底驚いたようだった。目を丸くしてジューダスを見ている。
近づくと仮面の上から額に手を置いた。
「おまえ、熱ある?!」
「ベタなボケをするんじゃない」
「アイター!つっこみじゃなくダメだし食らったーー!」
あほかっ、とつっこまれると、は腕をばっと頭へ持ってきて大きくリアクションを取った。
それからおかしそうに笑うと、ジューダスに「本当にどうしたんだ?」と笑いながら問いかけた。
「別にどうもしない」
「だってお前が謝るなんて・・・・。うん、俺もっていうかむしろ俺が悪かったんだ。ごめん」
ぷいっと顔をそらしたジューダスに、が照れくさそうに謝った。が、嬉しさのあまりか顔がにやけている。
いつまでも会話の無い二人に、シャルティエが『ハイハイ』と声をかけた。
『二人ともいつまでもぼーっとしていないで、朝ごはん食べに行きましょう』
「わーい!朝ごはんだー!」
「暴食」
「なに?!」
その後食堂まで変なあだ名を付け合い、早歩きで競争するいつも通りの二人を見て、シャルティエは小さく笑った。







続く
−−−−−−−−−−−−−−−
や、やっと書けたーーーー!!(遅っ)
もうこの話で何日かけてんだよ俺・・・スランプか?!(お前にあるのか?)
えー、ジューダスとこれでやっと前のようにコントができます。今までのは少し遠慮しているところがありました。
・・・わざとだったけどなってたのか?(コラ)
というか、ロニがでてきました。ロニが。リアラ出てねぇー(出せや)
さー!次はタコだーー!!(タコ言うな)もう早く書きたくてしょうがない!!
ではでは、ここまで読んでくださった方ありがとうございました〜。