月がぽっかりと出て、風のない良い夜だった。金髪の少年と銀髪の青年が騒がしくお喋りしながらダリルシェイド近くの砂浜を歩いていた。
「あ、あれ?ロニ、あれ人じゃない?」
「人だぁ〜?なんでこんなところに人がいるんだ・・よ・・・・女の子だ!倒れてるぞ!!」
ばしゃばしゃと水を蹴ってそこに打ち上げられたらしい少女をロニが抱き上げた。ぐったりとしていて反応は無いが、呼吸はある。
「急いで孤児院へ戻ろうぜ!」
「そうだね!あ〜〜もう急いでロニ!!」
「バカッ!人一人しょってそんなに早く走れるか!ってオイカイル!!コラ!おいていくな!!」
青年は少女を抱き上げ背中にかつぐと、少年の後を急いで追いかけた。








my way of iving 39
〜18年ぶりのどつき・・・・いやいや再会。待ち望んでいた冒険の始まり☆〜









夜ももう中盤をすぎたころ、孤児院の扉の開く音が聞こえてルーティは思わず立ち上がった。
入ってきたのは待っていた二人組みだった。カイルとロニだ.
「あんたたち・・・・今何時だと思ってんの・・・・?」
ルーティが静かに、しかし威圧を持っていうと、二人はビクッと肩を慄かせた。脅えているようだ。
「ご、ゴメン母さん・・・あ、それよりちょっと待って!」
「あ、あの、実は女の子が落ちていて・・・」
謝ってすぐ、二人は焦ったようにルーティに喋り始めた。ロニが背中に乗せていた何かを下ろしている。
「それより?!それより何が大事だって言うのよ!!母さんがどれだけ心配して・・・・って!?」
ロニが背中から下ろして抱き上げた少女を見て、ルーティは思い切り驚いた。
18年前に自分の目の前で死んだはずの、しかもその当時そのままの服のが目の前にずぶ濡れで現れたのだ。
カイルたちに怒ることも忘れ、ルーティはの顔をまじまじながめた。
信じられない。信じられるはずが無い。そう、確かに死んだはず・・・と考えていたところで、ロニに声をかけられた。
「ル、ルーティさん!とにかく早くあっためないと、この子死んじゃいますよ!」
死ぬ、という言葉を聞いて、ルーティはぞっと背筋を凍らせた。
お風呂場へ運んでいって!服はぬがせない!とロニとカイルに指示をだすと、タオルやらなにやら回りにあるものをひっつかんで二人の後を追いかけた。
とにかく意識を取り戻させなければわからない。娘かもしれないし、親族かもしれない。
色々な可能性を考えたが、あれは昔のままのそのものだった。考えた案はどれもふにおちなかった。
風呂場のある別宅−−−むしろ納屋に近い−−−につき2階へ登ると、少女を置いたカイルが「話があるんだけど・・・」と話しかけてきた。
ロニとカイルに「明日話を聞くから、もう寝なさい」とらしき少女を運びながら声をかけると、カイルが「ま、まってよ!」と返してきた。
「少しだけでも聞いてよ母さん。俺、冒険にでたいんだ!」
「何言ってんのよ!あんたにはまだ無理って言ってんでしょ!?」
二人が出て行かない所為で服を脱がすことができず、ルーティは急かしながらカイルを頭ごなしに怒鳴った。少し残る罪悪感が痛い。
「でも母さん!」
「いいから!今日はもう寝なさい!」
「母さん!俺の話も聞いて」
「カイル!」
「っ!!」
思わず、ルーティはカイルの頬を叩いてしまった。横を向いたまま、カイルは動かなくなった。
ルーティははっとすると、カイルに手を伸ばしかけてぐっとそれをとめた。
「・・・・もう、寝なさい。遅いから・・・」
「・・・・分かった」
小さくつぶやくと、カイルはロニと一緒に風呂場を出て行った。
二人が階段を下りていったのを確認すると、ルーティはふぅ、とため息をついた。
とりあえず気を失っているらしいに似た少女の服を脱がすと、浴場の中へゆっくり入れた。
「・・・本当にこの子、そっくり・・・」
始めてみたとき直感でだと思ってしまったが、18年もたって今更が出てくるはずも無い、とルーティは考え直していた。
確かに着ている服も同じように思えるが、記憶が曖昧になって錯覚しているだけかもしれないと冷静になって考えた。
今日は色々なことが起こりすぎたと、ルーティは今更ながらに今日起こったことを少しだけ思い起こした。
とりあえずお湯を肩にかけたりしながら、ルーティはによく似た少女をまじまじ見てみた。
本当に似ている。本人かと思うくらい。
実際身体のつくりも18年前一緒に露天風呂に入ったと同じように見える。
「とりあえず身体をあっためなくちゃね・・・」
そして気がついてもらえば、全てがわかる。
自分はではないと否定してもらうことを期待している自分に気がつくと、ルーティは「やきが回ったわね・・・」とまたため息をついた。
少女の顔は、青白くなくなりほんのり赤く染まってきていた。


結局目覚めはしなかったが顔色が良くなった少女を孤児院の空いている部屋のベッドに寝かせると、ルーティは外に出て木でてきたベンチに腰かけた。
孤児院の壁に頭をこつんとつけると、ふぅ、とため息をつき、まるで目の前に相手がいるかのように喋り始めた。
「今日ね、また、カイルのことぶっちゃったんだけど、なんだか様子が違ってたのよ、今回は。なんせあの子ったら、あたしに歯向かってきたのよ!?このあたしに!」
胸に手を置いて力説すると、今度は呆れたようにため息をついた。
「あんたみたいな英雄になりたいってさ、あの子。・・・やっぱりあんたの子ね。あ〜あ、せめてもう少しあたしに似てくれたらなぁ。そしたらそんなバカなこと言わないのに・・・。・・・・あ、今笑ったでしょ。ふふっ!」
くすくすと笑うと、ルーティは少し寂しそうな顔で前を見た。
「心配しないで。覚悟はできてる・・・・つもり。明日、あの子が打ち明けてきたら、そのときはあたし・・・・・」
きゅっと手を握りうつむくと、ルーティは何かを思い出したように「あっ」と声をあげた。
「・・・あ、そうだ。今日あの子達がね、に似た女の子を拾ってきたの。服も顔も18年前のにそっくりで、あたし、びっくりしちゃった・・・。あんたもそう思う?まさか本人じゃないわよねぇ。あの子は・・・確かに18年前、あたしたちの目の前で死んだ・・・。なつかしいわね・・・すごく面白い子だった・・・。え?もしかしたらですって?!あははっ、それは明日、目覚めてから聞いてみるわ。・・・それじゃ、おやすみ」
にこりと笑うと、ルーティはそのまま孤児院の中に戻っていった。



次の日の朝、朝食を済ませたルーティとカイルとロニは昨日の夜拾ってきた少女を寝かせておいた部屋に集まっていた。
「この子・・・・死んでないよね?」
「めちゃくちゃ血色いいだろうがどうみても」
不安そうに言ったカイルに、ロニがとんでもない、と即つっこみを入れた。
そんな二人を無視して、ルーティはベッドに手をかけて少女を見ていた。
(・・・やっぱり似てる)
少女を見て眉をひそめるルーティに、カイルとロニは首をかしげた。が、しばらくしないうちに、少女がうっとうめき、うっすらと目を開けた。
「気がついたみたいね・・・」
立ち上がりほっと息をつきながらルーティが言うと、少女は上半身だけ起き上がり、ぼんやりしながらルーティの方をみた。
その後、少女は3人にとって・・・というよりルーティにとって信じられない言葉を言った。
「・・・・・ルーティ?」
「っ!!?」
カイルたちもそうだったが、名前を呼ばれたルーティは一番驚いていた。
(やっぱりこの子・・・)
「・・・老けた?」
ドゴォォッッ
「ブッ!!」
「・・・・」
「・・・・」
目覚めて数秒後、母によってベッドに沈んだ少女のその光景を、息子たちは深く心に刻んだ。


30分後、は再び目覚めた。殴られた左側の頭が酷く痛い。
「・・ったくルーティのやつ思いっきり殴りやがって・・・・本当の事言っただけじゃん・・・・」
等々、ぶつくさいうと、はよいしょと言ってベッドから降りた。そこは2階の、子供たちが使っている部屋だった。
「うわ〜・・・本当にデスティニー2まで来ちゃったよ・・・・。孤児院じゃんここ!く〜〜〜〜っっ!!」
叫びたい衝動をなんとか抑えると、は周りを見回した。
廊下に出るとハムスターが奥に飼われていて、余計には気分を浮かせた。
階段はこっちだ〜♪と歌いながら下に下りていくと、コーヒー片手になにやら眺めているルーティがテーブルに座っていた。
「ルーティ」
声をかけると、ルーティははじかれたようにの方へと振り向いた。
にっこりが笑うと、ルーティは一瞬顔をゆがめ、そして手でごしごしと目をこすった。
とたとた階段をおりきってルーティに近づくと、はまだ目をこすっているルーティの顔を覗き込んだ。
「・・・・ルーティ?」
「・・・んのヴァカ!!!生きてるならなんで連絡の一つもよこさないのよ!!も〜〜〜このバカバカバカバカバカバカバカバカバカ!!」
「ギャァっっ!!!ル、ルーテっ・・・・息・・が・・・・・・」
普通なら抱きつくところを、あまりの怒りの所為かルーティは腕で首を絞めてきた。
がぐったりしたころになって、やっど腕は開放された。
ぐすっと鼻を鳴らすと、ルーティは「で?いったいどうしてこうなったのよ」とやぶからぼうにに問いかけた。
「見たところ18年前の姿のままだし。むかつくことに肌はか・わっ・て・な・い・しぃ?」
またぎりぎりと首を絞めてきたルーティに「ギブギブ!!」とが叫ぶと、ルーティはふん、と鼻を鳴らして腕をはなした。
「細かいところまではまだ言えないけど・・・ってあれ?カイルたちは?」
「ああ、カイルたちならもう旅に出て・・・・ってあんた、なんでカイルたちのこと知ってんの?」
「え?あ・・・・さっき起きたときに、二人が話してるの聞いたんだ」
が焦って言い訳すると、ルーティは「ふーん」と素直に納得した。
ほっと息をつくと、は「俺っていったい何故ここに?」と逆にルーティに質問しかえした。
「ダリルシェイドの砂浜に倒れてるところを、あいつらが拾ってきたのよ」
「へ〜そうなんだ。お礼言うのも兼ねて、あの二人追わなくちゃ」
「ちょっとまった!」
腰にある剣を確かめると、はさっさと孤児院を出て行こうとした。
そんなを腕を掴んで引き止めると、ルーティは脅し半分で「まだここにいなさい」と言った。
「久々に会った仲間になんの話もせずに出て行く気?」
「あ、あはははは・・・そういえばもう18年もたってるんだっけ?・・・・ハイ。残ります」
折れたによろしい、というと、ルーティはを隣の椅子に座らせてコーヒーを入れてきた。
「で、あんた今まで何処にいたのよ」
「んー何処にいたっていうと・・・・実家?」
「実家って・・・・ニホンてとこ?」
ルーティが聞き返すと、は「うん、まぁ・・・」と曖昧に答えた。
そんなに痺れをきらせたのか、ルーティが「はっきりいいなさい!」と渇を入れてきた。相変わらず短気だ。
「ていうか、あんたあの状況からどうやって逃げたのよ?」
「あーうん、その話もこの話もそうなんだけどさ・・・今は、話せないんだ」
「どういうこと?」
「とある事情で俺はここまで来れた。実はカイルたちの旅に関係あるんだ」
カイル、という言葉が出た瞬間、ルーティは目を見開いた。
「・・・どういうことよ、説明して」
「細かいところまでは言えない。ただ、カイルはこれから大きな運命に巻き込まれることになる」
「大きな運命って・・・まさかまた18年前みたいなことが?!」
「いや、あれに比べたら・・・そうだね、精神的には全然ましだよ。沢山の仲間とルーティたちがいるから。カイルは影の英雄になる」
「影の英雄・・・・?」
またわけの分からないこと言い出したよこいつわ、と、ルーティは眉をひそめた。
「大切な人を救う大きな旅をする。俺は、その手助けをするためにこっちへ戻ってきた。といっても、俺の助けなんて要らないんだけどさ」
「なによ、言ってること訳わかんないわよ?」
「ルーティ、スタンは相変わらずだね。元気そうでなによりだ」
「な、何言ってんの?スタンはいないわ。今、旅に出てて・・・」
急に話をそらしたに対抗できない内容をだされ、ルーティは目を泳がせながら焦ったように喋った。
はそんなルーティを見ると、にっこりと笑った。
「ルーティ、俺全部知ってるんだ。10年以上前に、スタンが殺されたってこと・・・」
「・・・・っ!」
が言うと、ルーティは驚いてバッと顔をあげた。
「ずっとカイルに秘密にしてたんだよね。ロニと相談して。それから、ずーっとこの孤児院一人で守ってきたんだろ?」
なんでそこまで知ってるの?と言いたそうな目で見てくるルーティに、は「おつかれさま」といった。
「おつかれさま、ルーティ。10年以上も・・・よく頑張ったね」
っ・・・・」
「大変だったろ?辛かっただろうな・・・ずっとスタンのこと誰にも打ち明けられずに、周りに嘘通して一人で孤児院経営して・・・」
両手で顔をつつみ泣き出したルーティをそっと抱きしめると、はもう一度「おつかれさま」と声をかけた。
それからすぐに泣き止むと、ルーティは目をこすりながら顔をあげた。
「ごめんね、みっともないとこ見せちゃって」
「いいよべつに。昔はもっと酷いところ見せられて・・・・・いえ、冗談です。鬼のルーティなんてもう言いません」
「まだ言ってんじゃないのよっ!」
「あははははっってギャァァァッッ!!し・・・死ぬ・・・・!!」
笑って誤魔化そうとしたは、ルーティによって関節技をかけられた。
少しだけあの世と交信をすると、はやっとルーティに開放された。
「んじゃまたね〜。3ヶ月くらいしたら帰ってくると思うから」
「なんでそんな細かいところまで計画立ててんのよ」
「まあまあ」
二人で笑っていると、ルーティが「あっ、そうそう」と言って2階へ登っていった。
なんだ?とが首をかしげていると、ルーティはほこりを被ったギターを持って降りてきた。
「あ、それ・・・」
「そ、18年前あんたにあげたギターよ。あのままヒューゴ邸においていくんだもん、私が預かってきちゃった。使えないから、もう一度あんたにあげるわ」
「そりゃあどうも。どこかで絃張り替えなきゃなぁ」
「あら、弾けるんじゃない?」
「まーさかぁ?」
ルーティからギターを受け取ると、は絃をはじいてみた。
「・・・・鳴ったわよ」
さすがアンスズーン
いや、関係ないし、とルーティがつっこみをいれると、は大笑いしながらギターをケースの中にいれて背中にかついだ。
「あ、そうだ。ルーティに渡そうと思っててずーーーっと忘れてたんだ」
「もう18年も立つんだけど」
ルーティが呆れたように言うと、はまあまあと流しながら鞄の中をさぐった。
取り出したのは数枚の写真だった。
「・・・これ」
「そ、リオンの写真。マリアンさんと部屋荒らしてたら発見してさ。ルーティにあげようと思ってもらってきた」
から写真を受け取ると、ルーティは一枚一枚じっくりと写真を眺めた。
見るだけ見ると、ルーティは一枚だけ抜き取ってのこりすべてをに返した。
「え?ルーティ他のは・・・」
「いらない。私、あいつのことこのときしか知らないから・・・・。だんだんふてくされていく面なんて拝みたくないし?なによりなんにもしらないで笑ってるあいつの顔なんて、見てると寒気がしてくるわ」
というと、ルーティは肩を抱いて体を振るわせた。
ルーティが取ったのはおそらく16才の頃のリオンの写真だろう。
「・・本当にいいの?」
「・・・・いいのよ。あいつの笑った顔が見れただけでも、ラッキーだと思わなきゃね」
「確かに、これレアだよな」
プププと笑い合うと、二人は孤児院の外へと出た。
外では子供たちが元気よく遊んでいる。
「そんじゃ行って来るね。スタン、ルーティ泣かせてばっかいるんじゃないよ!」
「さっきから私の方見て言ってるけど、あんた見えてるの?」
ルーティの後ろの方を眺めて言うに、ルーティが問いかけた。
ん?といって笑うと、は「勘」と一言言った。
「あんたなら当たってそうね・・・」
「だってスタン、死んだって絶対ルーティから離れないでしょ。どーせルーティの背中にいつもいるんだろ?スタン。絶対笑ってるぜ、今」
そうにちがいない!と断言するを笑うと、ルーティは「そうね」といってまた笑った。
「頑張れよルーティ。もうちょっとの辛抱だから・・・」
「え?」
「いや、こっちの話し。じゃ、ばいばーい」
ひらひら手を振ると、はさっさと歩き出した。ルーティは首をかしげると、相変わらずマイペースな仲間を見てプッと笑った。
「あんたのこと、皆にも伝えておくからねー!」
「そんときゃ生き返ったとでも書いておいて〜♪」
くるっと振り返り後ろ歩きしながら、はギターを弾く真似をした。
それをみてまた笑うと、ルーティは手を振り、見えなくなるまでを見送った。
「・・・・さて、手紙でも書きますか。ゾンビが行くから気をつけてとでも書いて送りましょ」
にやりと笑うと、ルーティは楽しそうにすきっぷしながら孤児院へと入っていった。



「さーて2をレッツエンジョイ☆あ〜〜〜もう興奮するっっ!!」
町を出てさっそく叫びだしそうな勢いの。先ほどから大声をあげたりくるりと回ったりで相当テンションが高い。
遠くに見えるラグナ遺跡を発見し、は騒ぐのをやめた。
「バルックさん・・・」
こちらの世界ではもうすでに18年という月日が流れていたが、実際はあの後すぐにこちらに来た。
下を向きぐっと目に力を入れると、は前を向いて大きく深呼吸した。
「よしっ、行くぞー!おー!」
一人で盛り上がるだけ盛り上がると、は先ほどと同じようにハイテンションで道を歩き始めた。
ゲームの中だけで見た山が、森が、川がある。大きなクレーターもある。
やっと憧れていた世界へ来れたのだと、は改めて実感した。ルーティたちと話していても、あまり実感はわかなかった。
数時間歩き続けると、つい数ヶ月前までよくリオンと歩いていた道にでた。
ダリルシェイドが見える。
「・・・懐かしい。ってまてよ。オリャ数日前ここにいたんだぞ?」
と一人でボケてつっこみを入れると、は好奇心に負けてダリルシェイドへと入っていった。
入った後で、は後悔した。
「そんな・・・町の4分の一も残っていないなんて・・・・」
他の町で進んでいる復興も、やはりゲームで見たとおりここでは進んでいなかった。
暗い雰囲気の街では大粒の雨が振り続け、人々は皆悲しそうな顔をしている。
町で一番大きかった宿の下を抜けると、大通りが続き見慣れた屋敷が見えてきた。
周りの建物が壊れている中、ヒューゴ邸だけは全壊せずに残っていた。
人々が活発に行動し、いつも明るく美しかったダリルシェイドしか知らなかったにとって、ここはあまりにも悲しすぎた。
中にマリアンがもういないのは分かっている。入りたい気もしたが、はあえて入るのをやめておいた。
踵を返して歩いた先には、崩れ去った王城があった。
外郭の破片もそのままに、痛々しい姿を18年間変わらず残しているかのようだった。
身分の格下な自分に優しくしてくれた王と王妃、将軍たちを思い出し、は息を呑んだ。
しばらく心を落ち着かせて城を眺めると、はさっさとダリルシェイドを後にした。
そのまま橋を渡りちょくちょくある砂漠を抜けると、大きな橋・・・が崩れた後があった。
「ああ、あんたも渡りたかったのかい?残念だったね。なんだかしらないがこの通り落ちてしまってるんだよ」
「ありゃ〜〜まだなおんねえかこれ。さすがにそうだわなぁ・・・」
急がなきゃならないのに、とため息をつき、は落ちた橋のそばまで歩いていった。崖だ。
おおすげ〜〜と下を覗き込んでるに商人らしき親父が「あ、危ないよ!」と声をかけると、は親父を見てにっこり笑った。
「空飛ぶのなんてわけないぜ♪」
「いや、無理だってそりゃ」
「レッツ☆(紐なし)バンジー☆」
「うわああああっっ!!ま、まったー!!」
とんっと飛ぼうとしたを捕まえると、親父はほっとため息をついた。
「なにするんだよぅ」
「死ぬ気かあんた!崖降りる道具くらい売ってるから!」
「いらない。俺飛びたいの」
「パラシュートもあるから!!」
「うそこけ!!」
駄々をこねるにとんでもないことを親父がいった。アホか!とがつっこむと、親父は大きな鞄からなにやらとりだした。
パラシュートだ。
「・・・マジで?」
「マジで」
「サンキュー親父!じゃ!」
「あっ、ちょ、ちょっと!金払ってけーーーー!!!!」
親父からパラシュートを受け取ると、はすぐにギターを手に持ち替え、パラシュートを担ぎ、親父の止める間もなく崖から飛び降りていった。
びゅんびゅんくる風と浮遊感を感じながら、は「ひゃっほ〜〜〜〜い☆」と叫んでいた。
「めっさ気持ちいーーーーー!!!」
普通なら出ない感想を言うと、はそろそろか、と言って紐を引っ張った。
バッと大きな音を立てると、背中の鞄に入っていたパラシュートが開いた。とたんに上に引き上げられたかと思うと、今度はゆっくりと下へ降りていった。
「着地成功!」
どさっと降りると、は体操選手のようにぴしりと腕を挙げた。
それからパラシュートが落ちてくることに気付くと、急いでパラシュートの下から脱出した。
パラシュートの入った鞄を降ろすと、もって行きたい衝動に駆られたが重過ぎるためそれは辞めておいた。
それにしても自分の鞄重いよな、と今更になって気付くと、は歩きながら鞄の中を覗いてみた。
着替え、洗面道具、食料、アイテム、本2冊(でかい)
「・・・・本!?」
そういえばヒューゴ邸のレンズの本かっぱらってきたんだっけか、と思い返し、はその本を手に取った。
「練習したよな〜これ。ちょっとやってみるか。レンズ残ってるし」
鞄の中からレンズをとりだすと、は立ち止まってむむむ・・・・とうめき始めた。
「・・・ウィンドスラッシュ!!」
「「うわぁぁっっ!!」」
シュバシュバッと楽しい音が聞こえたかと思うと、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
10数メートル前にカイルたちがいる。
「あーー!!見つけたーー!!」
「あーー!!見つけたーー!!じゃねえっつの!殺す気か!」
「いやー失敗失敗☆」
「流せる失敗じゃねえ!」
数十メートル離れてコントをするというのも初めてだが、ロニがよくつっこんでくれた。
まあ危うく怪我をしかけたのだからそれもしょうがないことなのだろうが。
がおいつくと、むすっとしたロニとカイルがいた。
二人に何度か謝ると、相当お人よしなのかすぐに許してもらえた。
「へ〜。って言うんだ。母さんとはどういうつながり?」
「ああ、前に一緒に旅したことがあってね」
「旅って・・・・ルーティさんずっと孤児院にいたはず・・・」
「あ〜〜ほ、ほら!たまにマリーさんていう人のところとか尋ねてただろ?そん時とかにね」
ロニの言葉を遮ってが説明すると、ロニもカイルも「なるほど」とすぐに納得した。
いいのかよ、と思いつつほっとため息をついていると、ロニが「ハーメンツヴァレーを抜けられるぞ」と嬉しそうに声をあげた。
やっと岩だらけのところから抜けられるとはしゃぐと、カイルは「早くあの子をおいかけなくちゃ!」と息巻いた。
早く早く!と急かし先を歩くカイルを見てため息をつくと、ロニがにこっそり耳打ちしてきた。
「あいつな、今好きな子がいるんだ」
「へ〜っ♪もしかしてその子を追って?」
「そうそう!」
と二人で盛り上がっていると、カイルが遠くからしびれをきらせて「早くー!」と大声で呼んできた。
しばらく歩くと、ふとロニがに声をかけてきた。
「そういえば、あんたはどこにいくんだ?」
「あ、言って無かったね。俺も二人に同行しようと思ってついてきたの」
「ぇえ!?」
さらりとが言うと、ロニが大声をあげた。
カイルもソレを聞いて驚いたようだが、ロニほど驚いてはいなかった。
「なんか二人とも楽しそうだしさ。だめってんならアイグレッテについてからすぐ別れるけど・・・」
「どうするカイル?」
「別にいいんじゃない?大勢いる方が楽しくていいじゃん!というわけで、改めてよろしくね、!」
「さっすがカイル〜!かわいーーーvv!!」
「ぅわっ!」
サンクスー!といいながら抱きついてきたに驚くと、カイルは顔を真っ赤にさせた。
ますますかわえぇ・・・と悦に入るを見て、ロニが一言いった。
「俺には?」
「危険そうだからなし」
一言言われると、ロニは即座に「なんだそりゃ!」とつっこんだ。
「あたってるじゃん」
「あはははははは!」
「カ、カイル・・・」
そんなロニにカイルがさも当然、というように言うと、と一緒にロニを見て大笑いした。
数秒落ち込んだロニは復活すると、カイルをつかまえてぎりぎりとシメた。



ロニとカイルとが旅を始めて2日目、やっとこさアイグレッテにつき、カイルが「うわぁ・・・・!」と歓喜の声をあげた。
「ここがアイグレッテかぁ…!!」
入り口でアイグレッテの町を見回すカイルに、ロニが「そう、アイグレッテだ」と答えて簡単な説明をし始めた。
もうきうきと胸を弾ませながら周りを見回すと、「うわーっ」と声を上げた。活気のある町はダリルシェイドを思い出させるが、なによりアルメイダという名前だったころの村を思い出し、よくここまできたものだと感心した。
「すごいなぁ!人がいっぱいだ!」
「それじゃ、ちょっくらぶらぶらしていくか」
カイルたちの話がまとまったところで、3人は町をぶらぶらと歩き始めた。
途中ロニがカイルの手を取って歩くところを見ては大笑いし、なんだかんだ文句をいいながらカイルはしっかりと楽しんでいた。
しばらく町を歩き回ると、ロニが「そろそろ宿へ行くか」と声をかけてきた。
そうだね、とが答えると、カイルがまだ遊びたそうな目をしていたがとりあえず「そうしようか」と言ってロニについて歩いた。
「いらっしゃい、旅のお方!泊まりかい?3人でいいんだね?いやぁ、お客さんたちみたいな神殿への参拝逆が増えたおかげでうちも大もうけだよ」
「あ、いや、俺たちは・・・」
というカイルの言葉もきかず自分の世界に入る宿屋の親父の話しに興味がないのか、は手前で苦笑いしながら話を聞いている二人の後ろでキョロキョロを宿の中を見回していた。
(やっぱ宿といえば温泉やどの方がいいなぁ・・・・・温泉入りたい・・・・)
が感傷に浸っていると、急に宿屋の扉がバターンッと開かれた。
「エルレインさまだ!いまそこに、エルレイン様がお見えになってるぞ!」
入ってきた男が言うと、宿屋にいた人たちも全員外へ出て行った。
な、なに?何か始まるの?とまわりにおいていかれ、いまいち状況がつかめていないカイルがロニに問いかけると、ロニは眉をひそめながら「エルレインがきてるんだよ」とカイルに教えてあげた。
ロニがエルレインのことをカイルに教えると、カイルは都合のいいところだけ頭にいれ、「早くでよう!」とロニをせかした。
「あ、も行く!?」
「いや。俺はここにいるよ。ロニと楽しんでおいで」
「うん、わかった!もう、なにブツブツ言ってるのさロニ!早く早く!」
「わかったからじゃれるなってなつくな」
手を振るに見送られながら、カイルはロニをひっぱって外にでていった。
飛び跳ねるカイルを見てかわええ・・・と言いふぅ、とため息をつくと、は2階へ登り、窓から様子を眺めた。ゲームで見たとおり、カイルはエルレインに食って掛かっている。それを見て笑っていると、しばらくして騒ぎは収まり二人は宿へと戻ってきた。
おっと大変、と言って下へと降りると、カイルが驚いたように大声をあげていた。宿屋の親父がリアラを見たらしい。
「ストレイライズ大神殿の方へ向かってたぜ。なんだい、待ち合わせして無いのかい?」
親父が場所を言うや否や、カイルは宿屋を飛び出そうと走り出した。それに気付いたロニが慌ててカイルをつかまえた。
「待て待て!お前、どうするつもりだ?」
「どうするって、追いかけるに決まってるじゃないか!ぼけっとしてると、あの子、またどっかに行っちゃうよ!さ、早く!」
「お、おい!」
のことをすっかり忘れて、カイルはさっさと宿を出て行った。
おいていかれたと親父がそこに残り、ぽつんとしていると、しばらくして二人は顔を向かい合わせ「ははは・・」と苦笑いした。
外に出てみるともうすでに衛兵たちに追い返されたのか、カイルとロニが深刻な顔で話していた。
が近づいていくと話がついたのか、カイルが腕をばっと挙げて「よし、探そう!」と叫んだ。
「あ、どこにいたのさ?今からストレイライズ大神殿に行くよ!」
「もうそこまで話が進んだんだ?ぃよーし、それなら俺に任せて!秘密の抜け穴知ってるんだ♪」
「マジで!?」
が言うと、カイルがぱっと顔を輝かせた。が、ロニは逆に疑うかのように眉をひそめた。
こっちこっち!といってが歩き出すと、カイルは「早く行こう!」と言って走り出し、面白がっても走り出した。
「ってオイ!お前らちょっと待て!」
「あはははっ!ロニ早くー!あ、こっちだよ」
の案内でたどり着いたのは、町の外れの洞穴だった。
中に入ると、ロニが中の構造を見て唸りだした。
「ふーむ、…どうやらここは、ストレイライズ大神殿に関係した遺跡らしいな。柱の作りとか、そっくりだぜ」
廊下の端に立つ柱をロニが物色していると、カイルが廊下の先を見ながらもしかして、と言った。
「ねえ、この廊下ってストレイライズ大神殿の方に向かって伸びてない?もしかしてここ、大神殿とつながっているのかな?」
何かを期待するように目を輝かせるカイルに、「多分そうだろうな」とロニが答えた。
が、奥から聞こえてきた物音と不気味な声を耳にすると、ロニはとたんに表情を緊張させた。
「けど、気をつけろよカイル。どうやらここは、モンスターの住処になってるみたいだぜ」
「ぇえ!?それって、新しい防犯システムかな?!」
「きっとそうだよカイル!」
「そんなわけあるか!」
カイルにならんでボケだした。そんな二人にロニは思い切りつっこみをいれた。
プププ・・・と笑うと、は荷物を左手に持ってカトラスを抜き取った。
「さーて・・・・いっくぜ野郎どもー!」
「あー!まってよ!ずるいよ!」
「ずるいとかそういう問題か!お前ら二人とも待てー!!」
イェーイ☆といいながらカトラスを上にかざし、楽しそうに走っていったの後を続いてカイルが追いかけ、さらにロニがおいかけた。
その後モンスターを蹴散らしながら進むを見て、二人は「すげぇ・・・」とそろって声をあげた。
って強いんだねっ」
「そりゃあ色んなとこ回ってるからね」
なんだか尊敬の眼差しをかけてくるカイルに、苦笑いしながらが答えた。
「でもなんで殺さないんだ?」
「殺したって意味無いから。二人は気にしないで。俺が単に一人でやってることだから」
にっこり笑って言うにうなずくと、カイルがとにかく急ごう、と急かして二人を歩かせた。
簡単なトラップを抜けると階段が現れた。日の光がみえたので警戒しつつのぼると、そこには白い大きな建物が建っていた。
「す、すごい・・・!これがストレイライズ大神殿か!」
「ここが大神殿の中央に位置する大聖堂だ。ここへ入れるのは高位の神官だけで、俺も入ったのは初めてだ」
ぽかんとしているカイルたちの横で、も同じようにぽかんと口を開けてみていた。
「いや、っていうか・・・・でけぇ〜・・・」
実際に見てみるとそこはとても大きく美しかった。白と水色でつくられたその建物を見て、は「いかにも聖地って感じ」とつぶやいた。
奥の大聖堂の方へいってみると、中から話し声が聞こえた。
「どうすれば、英雄にあえるのですか!?お願いです、教えてください、フィリアさん!」
「この声・・・あの子だ!」
中から聞こえてきた声を聞いて、カイルが嬉しそうに声をあげた。
フィリアの声が聞こえたところで、は思わず微笑んだ。
(そういえば最後に見たのは泣き顔だったな。逢ったら驚くかな?驚くよナァ。つか俺は逢って良いのか?いや、よくないけど)
と、が一人で色々と考えていると、中から悲鳴が聞こえてきた。
「こりゃあまずいぞカイル!っておい、!!」
ロニとカイルがはっと息を呑んで話を始めたとき、が一人先に走り出した。
「行こう、ロニ!」
カイルも言うや否や、大聖堂の中へと入っていった。
「弱い・・・弱すぎる。これがかつての英雄の姿とはな。まったく、失望させてくれる。せめて、最後の断末魔だけは楽しませてくれよな・・・」
というと、青い髪をたっぷりと伸ばした大男は持っていた斧を大きく振りかざした。
「死ね!」
ガィンッ
「ぶぉっ!!な、なんだ!」
斧を振りおろそうとしたまさにそのとき、大男は飛んできた何かに頭を打たれた。
ギターだ。
入り口には荷物を下ろしたが立っている。
「動くな!フィリアさんから離れろ!」
男がを目で捕らえたところで、今度はカイルたちが入ってきた。
「・・・なんだ、貴様は!?」
「よくもフィリアさんを!次は俺が・・・・未来の大英雄、カイル・デュナミスさまが相手だ!」
「英雄だと・・・?!貴様のような虫けらが、英雄を名乗るとはな・・・!!死にたいのか、小僧!!どりゃあぁぁぁああああ!!」
カイルたちが剣を構えた瞬間、男がものすごい速さでつっこんできた。
ロニがカイルをつかみ紙一重でよけたが、まだが残っていた。
はっとカイルたちが気付いたときにはもう遅く、男はぎりぎりまで近づいていた。
「死ね!女!」
「ふんっ」
カイルたちより後ろにいた分動きが見えたのか、は男が振ってきた斧を避け、転がりざま一斬り入れた。
そのまま走って距離をとると、男は斬られた部分を手で触った。
秘儀、アシタカ斬り!
「お前は・・・!そうか、お前はここの時代だったか」
「つっこみなしかよ・・・・。悪いけど、俺まだあんたらのいるところまでは行ってないんだ。行ったときはよろしくたのむよ」
「それはいいとして、お前・・・・俺と同じか?」
「さあ・・・・それはどうだろうね」
カトラスをかまえるに男がにやりと笑っている横で、カイルたちがわいわい話していた。
カイルたちの存在に気付くと、男は「ああ・・・そうだったな・・」と何かを思い出したかのように薄く笑った。
「だからって引き下がれるか!俺の全てを、ぶつけてやる!!」
「覚悟だけは認めてやろう、小僧。俺の前で英雄と口に出したこと・・・死の淵で、悔やむがいい!!」
そういうと、男はカイルとロニに襲い掛かった。
「カイル!ロニ!」
最初の一撃を避けたカイルは、晶術を使おうとしている男に斬りかかった。
その一撃は男の脇あたりをかすり、今度はロニがデルタレイを打ち込んだ。も急いでカイルたちの元へと行くと、早速男に斧を振られ一歩下がった。
カイルも同じように下がると、じりじりと間合いをつめて一気に中へ踏み込んだ。
「でやぁああ!!」
「はっ!!」
カイルと同じくしても踏み込み二人の剣が入ると、男は「ぐぁっ」と声をあげ膝を突いた。
「どうだ!思い知ったか!」
「油断すんなカイル!」
男からさっさと離れていたとは違い、カイルはその場で男に言い放った。
ロニに言われてそこから離れると、男は立ち上がって笑い始めた。
「クックックッ・・・・なるほど、油断して、礼を失したようだ。ならば、改めて敬意を払おう!」
言うや否や、男は斧をブンッと振った。
すると白い衝撃波のようなものが斧から現れ、3人は後ろに吹っ飛ばされた。
カイルとロニが倒れ、隙だらけになったところで、は急いで立ち上がった。
「どっかの自称王より弱いね」
「そうだったな・・・お前はまだやれる方だったか・・・。だが、その細い腕と足でどう俺にダメージを与えられる?」
どこまでもバカにしてくる男の物言いを聞くと、はうつむきふるえだした。
「・・・るさいこの死霊戦隊肉ブルーがーーー!!
「に、肉!?」
がーーーっっと叫んだの言葉を聞いて、男が顔を引きつらせた。なんとも言えないネーミングだ。
さりげなくカイルたちが笑っていると、男はふっと息をつき「バカか?」という目で見てきた。
「その減らず口もここまでだ!!」
ブンッと斧をふり衝撃波らしきものを男が出すと、は横にあった椅子に隠れそれをしのいだ。通り過ぎた瞬間椅子を離れると、男がすでに目の前に来ていた。
「どうした?。遅くなったんじゃないのか?」
「もう歳なんだよっ!」
冗談に冗談を返しながら、が剣を振った。男はそれを斧で抑えると、バッと下から持ち上げるようにして背中の方へふきとばした。
そのまま男の背中に回ったはくるりと回って上手く着地し、すぐさま男に斬りこんだ。
だが付いた傷は浅く、振り向いた男に斧で遠くへふき飛ばされた。
「うわっ!!」
数メートル飛ばされたが起き上がろうとしたが、目の前に斧を突きつけられ身動きが取れなくなった。
チッと舌打ちしては男を睨みあげた。
「さて、ようやく別れがきたようだな、
わざと哀愁を漂わせて言う男を睨むと、はふんっと鼻をならした。
「それはどうかな?俺はあいつに認められるほどの強い生命力をもってるもんでね」
「それも・・・ここで終わりだ!!」
男が斧を振り上げた瞬間、の頭の上を何かか通った。剣だ。上手い具合に男にささっている。
すかさずは男から離れた。
「ぐぁっ!!き、貴様は・・・・!?」
「受け取れ、カイル!」
男の横を通って、もう一本の剣がカイルに投げられた。カイルは受け取ると、すぐさま男に斬りこんだ。
「でやあああああぁっ!!」
「ぐぬっ!!」
それが綺麗に決まると、男はふらつき椅子に手をついた。
「・・・ククク。我が飢えを満たす相手が、この世界にいようとはな・・・。我が名はバルバトス=ゲーティア。カイル=デュナミス・・・その名、覚えておこう!」
「いいから早帰れ肉奴隷!
「肉・・・!?・・・・お前本当に今度覚えていろよ・・・」
「だーって本当の事だし。大将によろしく☆」
最後のの言葉が聞こえたかどうかは分からないが、バルバトスは腹立たしそうに睨みながら黒い光の中へと消えていった。
バルバトスがいなくなると、カイルやロニたちが一気に緊張をほぐした。
だが酷い怪我を負っているフィリアを見つけると、二人とも大慌てしてフィリアを運び出した。
「フィリアの自室ならそこでて知識の塔の一階だよ!」
「わかった!急いで運ぼう!」
フィリアをロニがかつぐと、リアラとカイルが急いで走り出した。
「あ、ジューダス!さっきは」
あーーーー!!!リむごぅっっ!!!」
ジューダスと呼ばれた少年にお礼を言おうとしたカイルを遮って、が大声をだした。というかかなり今さらの話しだ。
ジューダスはの口を急いで押さえると、首をかしげるカイルたちに「フィリアが危ない、早く行け」と指示をだした。
フィリアのことを思い出したカイルたちは「そうだった!」と叫ぶと、二人のことを忘れてさっさと走っていった。
「ぶはっ!あー息つまるかと思った!!」
「鼻があるだろうが馬鹿者」
「あ〜そのつっこみ久しぶりに聞いた〜・・・・v」
あほか、といわんばかりにつっこみを入れてきたジューダスの声を聞いて、は手を胸に添えながらじ〜んと浸っていた。
そんなを見てますますあほくさい・・・とまゆをひそめるジューダスに、はにっこりと笑った。
「久しぶり。つっても、お前は俺と別れてそんなにたってないのかな?それともゾンビの時も覚えてる?リオン」
「ゾンビの時というのが理解できんが、何故お前は僕だとわかった」
「いや、だってその仮面じゃ・・・」
真顔で聞いてきたリオンに、が苦笑いしながら仮面を指差した。
「・・・?この仮面がどうした?」
「あのー坊ちゃん?もしや完璧な変装だとか思ってらっしゃる?」
、本人気づいて無いから言わないであげて』
リオンの背中からぼそぼそと聞こえてきた声に、がはっとして顔を輝かせた。
「シャル!!?シャルもいるんだ!!?そうだそうだいるんだったーー!!わーいシャルーーー!!!」
「どさくさにまぎれて僕ごと抱きつくな!!」
感極まってはリオンに突進した。そのままリオンごとシャルティエに抱きつくと、リオンに思い切り嫌がられた。
数秒後膝蹴りを食らわされ、しゃがみこみ「ひ、酷い・・」と泣くに、リオンはつっこみもせず問いかけた。
「何故お前がここにいる。しかも、18年前と同じ格好で」
リオンが問いかけると、は泣き真似をやめてぱっと顔をあげた。立ち上がると、リオンの顔を覗き込んだ。
「ほんとーーーに覚えてないんだ。ゾンビ」
「だからなんなんだ」
「ま、その方がいいけど・・・・。俺も18年前からここに飛ばされたの。リオンより遅く、ミクトランを倒した後で、だけどね」
ちょっぴり不機嫌になったリオンに肩を竦ませながらが言うと、リオンはそうか・・・・というだけで他に何も言わなくなった。
「マリアンさんならちゃんと助けたよ。お前にドつかれると思ってね」
「・・・・。そうか」
「どうしたんだ坊ちゃん?元気ないなー」
「坊ちゃんと呼ぶな」
昔よりさらに暗くなったリオンにが声をかけると、リオンはきっとを睨んでつっこんだ。
それでこそリオン、とが笑うと、リオンはふぅ、とため息をついて忠告をしてきた。
「いいか、僕は死んだ人間だ。もうリオンと呼ぶな。僕は」
「ジューダスだ。か?わかってるって。甥っ子につけてもらった大事な名前だもんね〜vおっじちゃんv」
「・・殺す」
「わーー!!ストップストップ!!シャルヘールプ!!!」
『もう僕使われて無いから無理v』
ジューダスの剣を避けながらが助けを求めたが、さらりとシャルティエは流した。
結局二人は随分と送れてフィリアの部屋へと向かった。
「・・・わたしと、一緒にきてくれますか?」
リアラが恥ずかしそうにカイルにお願いしたところだった。入ってきたはジューダスと並んで立ち、ひゅうっと口笛をならした。
「カイルくんてばラヴラヴ☆どうするおじさん?♪」
「・・・本当に殺すぞ」
きゃはははっとわざとらしく笑うにドスの聞いた声でジューダスが怒ったが、言われた本人は何処吹く風だ。
そのうち話しこんでいたカイルたちの間からフィリアがに気付くと、驚き・・・とはいかず、ごく普通に声をかけてきた。
さん、お久しぶりです」
「やっほーフィリア、久しぶりvってなんでお前は驚かないんだよ!ちょっと楽しみにしてたのに!」
「フフフっ。そういうと思ったルーティさんが、いち早く手紙を出してくれていたんです」
にっこり笑うと、フィリアは手紙を取り出した。もフィリアの元に歩いていくと、「マジかよ〜」と残念そうに肩をおとした。
「ていうか、なんで旅に出た俺より早く手紙が着くんだよ?」
「あらさん、速達制度をご存じないのですか?
うわ〜速達か〜。やられたっ☆フフフフッ」
この世界でどうやって速達をするのかがまずわからないが、フィリアの笑顔があまりにも綺麗なのであえてつっこまないでおいた。
と、二人が話している間に、ジューダスは一人部屋を出ていった。
「あ!まってよ!ジューダス!」
「このやろ、逃げんな!」
「あっ!フィリアさん、それじゃあ!リアラ!早くおいでよ!」
「フィリアさん、お体お大事に!・・・・って待てよカイル!」
ものすごい速さで喋ると、二人はジューダスの後を追って走っていった。
「さて、俺もおいかけますか〜」
さん、ちょっと」
ちょっと、と言ってこいこいと手を振るフィリアに近づくと、フィリアはひそひそとに耳打ちしてきた。
「あれってもしかして、リオンさんですか?」
「なんで?」
「仮面を被ってらっしゃいますが、顔がほとんど見えてましたので・・・・もしや、と思って」
聞き返したにフィリアがそういうと、は悪戯っぽく笑ってフィリアに耳打ちし返した。
「大当たり」
「やっぱり」
「あいつって変なところでボケてるよね。先が思いやられるわ・・・」
「それ、きっとリ・・・ジューダスさんも思ってらっしゃると思いますよ?」
顔を見合わせると、二人は可笑しそうにプププーッッと噴出して笑った。
フィリアにいたっては目に涙を溜めるほど笑っている。
「んじゃまた今度。ゆっくり話ししような」
「ええ、さんもお体に気をつけて」
フィリアに挨拶をすると、はカイルたちの後を追った。
これからリアラと話をするだろうことを思い浮かべ、そしてその後の仮面ストーカーを楽しみにしながら町へと続く道を走った。







続く
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はーいTOD2第一話でした〜。ルーティとしょっぱなからとばしたねぇ。ていうか痛い・・・。
なんだかもう早くジューダスに逢いたくて逢いたくて逢いたくて飛ばしに飛ばして書いてました(待て)
ていうかなんでパラシュート売ってるんだ親父。(お前が書いたんだろうが)
やっとこさジューダスとあえましたが・・・・・これからのお話やいっかに〜♪(ロニかよ)
ハイ、すみません。ちょっとはしゃぎました。
ここまで読んでくださった方ありがとうございました〜。最初だからってつまんなすぎた〜〜。