「・・・・・・ぬ」
次の日の朝、目覚めたはいつもなら入ってくるはずの太陽の光がないことを一瞬本気で「何故?」と考えた。
ようやく頭が作動しハッと気がつくと、近所迷惑なことには大声で叫んだ。
「ぅウォにーーーーーーーーちゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!」
叫んだ後で、は自分がなにをしたいのかよく分からなくなり、両手を口に添えたまま固まっていた。
それは周りの人間が一番思っていることだということに本人は気付いていない。
とりあえず書いている奴のネタが無かったということは確かだ。
どうでもいいことだが。









my way of living 37
〜時代遅れクラムボンの住みか侵入作戦(川の中にあらず)〜









その後朝食を取ろうと、は一階へ向かっていた。
あの後つっこみもいなければ失笑する仲間たちもいなかったので、とりあえずは歌っていた。
「生きてるって〜なーんーだーろ♪生きてるって〜なーあーに♪」
「おはよう。今日も楽しそうね」
「あ、おはようマリアンさん☆今日も早起きだね!」
このような状況ではたして楽しむべきなのかどうかのつっこみはおいておくとして、は大広間で朝食の準備をしていたマリアンにあった。
が来た時に運んでいた物が最後だったのか、手に持っていた皿をテーブルに置くと「さあいただきましょう」といってにっこりと笑った。
二人は朝食をすませると、コーヒーと少しのお菓子を手に持ってリオンの部屋へ行った。
食後のコーヒーからリオンの部屋で過ごす気らしい。
リオンの部屋に入るとすぐ、はお菓子をもったままリオンのベッドにダイブした。
「やっほーい!本人がいないから荒らし放題だ〜〜〜☆」
「あんまりやると夢の中で斬られちゃうわよ?」
笑顔で言ったマリアンだったが、本当にありそうなその状況を考え、二人は一瞬沈黙した。
コーヒーをベッドの近くにあった小さなテーブルに置くと、マリアンもベッドにダイブまではしなかったが腰掛けた。
ごろごろとベッドの上で伸びるを見て笑うと、マリアンはコーヒーを一口飲んで天井を見上げた。
「この部屋がこんなに騒がしいのも、昔じゃ考えられなかったわね」
「まあ相手もいないんじゃね」
ってば案外毒舌ね〜」
「ルーティにも言われた〜」
コーヒーを飲みながら痛いことを言ったに、マリアンがへらっと笑いながら意外そうに言った。
もにへらと笑いながら答えると、二人はくすくすと笑った。
「本当に、が来てからここは色々と変わったわ」
「そう?あんま変わんなかった気もするけど」
「そりゃあが変わる元だったからよ」
さりげなく毒舌なマリアンとそれを聞いたが顔をみあわせてにーっこり笑うと、マリアンは話の続きを話した。
「リオンは前よりよく話すようになったし」
「あれで・・・?」
「なにより、ヒューゴさまが一番変わられたわ。最近じゃ優しい顔なんて見たことがなかったのに、あなたがきてから少しずつ増えていった・・・。食事もリオンと一緒に過ごすことなんて無かったのに、朝だけでも一緒に過ごすようになったし。仕事第一だったのに、休日に一緒に買い物にでたり、大勢で外で食事するなんて今まで見たこともなかったわ」
「そーとーなひきこもりだね」
「まさかとりつかれていたいたなんて・・・・」
「お経でもあげておけばよかったかな」
微妙に会話になっていないが、本人たちは案外楽しそうだ。
マリアンがふぅ、とため息をつくと、は「まあお菓子でも」と言ってマリアンにお菓子を一つ手渡した。
クッキーを食べたりコーヒーを飲んだりとしばらく二人でほのぼのしていると、マリアンがふとの方を見た。
「まあ、お行儀が悪いわ。寝ながら食べちゃダメじゃない。こぼれちゃったらそれこそリオンに斬られちゃうわよ?」
「わざと〜♪相当怒るでしょこんなことやられたら」
といってまた一つクッキーを口に入れたを見て、マリアンが可笑しそうに笑った。
「そうね、私もやっちゃおうかしら??」
「マリアンさんは斬られないからいいよな〜〜。絶対あいつ、その分俺にやってくるんだぜ!!」
それじゃあなおさらね〜vと言いながら一緒になって寝転がると、マリアンはクッキーを一つ口に入れてとくすくす笑いあった。



正午。と言っても日が無いので時計でしか確かめることができないのだが、スタンたちは宿から王城へともうすでに移動していた。
集積レンズ砲をいじっている助手や城の兵士たちをぼーっと眺めているものの、その表情は緊張してこわばっていた。
「グーーッドアフタヌ〜〜ン皆さん☆今日も元気ですかぁ?」
聞いたことも無いような機会音しか響いてなかった城の入り口の手前。門をくぐってが無意味に元気よく入ってきた。
よくわからない言葉を喋りながら、スキップで中に入ってきたを、仲間たちは呆れたり苦笑いしたり爆笑したりとそれぞれ色々な表情で見た。
作業をしている兵士たちの何人かが今、持っていた物を落とした。
「あんたは相変わらず・・・緊張感を崩してくれるわ」
手を頭に持ってきてあきれ返ったルーティの後に、仲間たちはどっと笑った。
「でも、それがだもんね」
「わーかってんじゃないのさスタン!」
さんが緊張感を崩さなかったときなんてありませんものね」
「なにぉうフィリア!俺だってな!俺だってー・・・・えーっと・・・・?」
「結局、思い当たる節は無かったようだね」
「オチをつけるなガングロ王子!!」
「懐かしいあだ名だな」
「覚えてたんだ!さっすがマリーさん☆」
「そりゃああんたに比べたらマリーの方が記憶力いいに決まってんじゃない」
「る、ルーティさん酷いわっ!!」
と、楽しそうに会話する5人を見てチェルシーやコングマンが首をかしげていた。
「あのぅ、ウッドロウさま。会話についていけないんですけどぉ?」
「ああ、チェルシーはあのとき一緒じゃなかったからな。コレくらいの速度がこのメンバーじゃ普通なんだよ」
「ありえねえだろそれ!!」
コングマンの突っ込みどおり、その速度は速かった。先ほどの会話を彼らは役10秒。ちょっと早口くらいだろうか。
のノリボケつっこみが人一倍早くなされている所為もあるが、それについていっている仲間たちもさすがというところか。
「まーあまあ。楽しくっていいんじゃねぇの〜?」
「うわっ!ジョニーさん!」
後ろからがばっと抱きついてきたのはジョニーだった。
といっても身長はジョニーの方が上だったので、肩の上から手を伸ばしての頭の上に顎をのっける形だったのだが。
驚いてすぐケラケラ笑い出した二人を見て、ルーティが顎に手を当てながら言った。
「なんかそうやってると本当の兄弟みたいね」
「「うわー似てねぇ〜〜〜〜!!」」
「そっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっくりだと思いますよ」
大笑いしながら同じ事を言った二人に、思い切り「そっくり」の「っ」の部分を溜めてスタンが言った。
『あのノリも相変わらずですね』
『・・・・』
『ディムロスってばあれでよく』
『いうなアトワイト』
『ほっほっほっ。いい思い出じゃないかのぅ?』
『絶対に違いますっっ』
マスターたちが話しこむ中、ソーディアンたちも結構楽しそうに話していた。
『でも、本当に懐かしい。娯楽の少ない時でしたから、よくに笑わせてもらいましたね』
『・・ああ、そうだったな』
『なにがあっても笑ってる子だったわよね。皮肉屋だったシャルティエを丸め込んで遊んだり。ハロルドと組んで悪戯したり演技したり』
『あいつの話はもう』
『ディムロス。今となってはもう本人の口から聞けはしないが、あやつも色々と考えた末の行動だろう。マスターと共に過ごした時間が一番長かったあいつだ・・・。なんだかんだいって、面倒見は良かったからの』
アトワイトの言葉を否定するように怒りの混じった声で喋りだしたディムロスに、クレメンテがあやすように話しかけた。
クレメンテの言葉を聞くと、ディムロスは沈黙した。
『マスターが大切な人を守るためにあんな選択をとったとなると、シャルティエも協力せずにはいられなかったんでしょうね・・・。リオン・マグナスのことを誰よりも一番分かっていたのは、シャルティエだもの』
『・・・そうだな。俺のマスターがスタンではなく、リオンと同じような境遇のやつで同じようなことが起こったとしたら、きっと俺も・・・』
『まぁ、そんな話はもういいじゃろ。最後の花じゃ。ぱーっといこうかのぅ』
『クレメンテ、本っっっっ当にお変わりになられましたね』
『お前は少しも変わらんの』
ほっほっほっとクレメンテが笑ったのを最後に、ソーディアンたちは会話をやめた。
集積レンズ砲を発射させるらしい。スタンたちも先ほどまで騒いでいたもみんなそちらを見ている。
「よし、集積レンズ砲充電完了!各部のチェック急いでください!」
集積レンズ砲が淡い青い光を出して動き、いつでも打ち込む準備が出来たときだった。大きなバスケットを持ったマリアンがやってきた。
「あの、みなさん」
「あー、マリアンさん!」
「マリアンさん!どうしたんですか?」
「これをもっていってください。食料とか、オベロン社の薬品とかつめておきました」
「うっひゃ〜!ありがとうございます!」
「わざわざすみません」
マリアンが手渡してきたバスケットを受け取ると、二人とも喜びながら礼を言った。
中身を見たはかぼちゃパイが入っていてさらに大喜びだ。
私に出来ることはこれくらいですから、と苦笑いするマリアンに、が「かぼちゃパイあるから役立ってる!」と叫びながら抱きついた時だった。
「集積レンズ砲、発射準備よし!いきます!集積レンズ砲、発射!」
集積レンズ砲が発射された。ダンッ!!!という大きな音と共に、蒼白い大きな光が機械から発射された。
みんなその威力に驚きながら、期待の入り混じった目で空を見上げている。スタンやは「すごい!」と大ハシャギだ。
もうすぐで外郭まで届くか、というときだった。光がぱっと散らばったかと思うと、すっと消えてしまった。
「あ、あれ?なに?どうしちゃったんだ?」
光が消え、外郭に傷一つついていないところをみて、全員が空を見回し、ざわめいた。
何が起きたと混乱が起こる中、助手が「し、信じられません・・!」と集積レンズ砲についた画面を見て青ざめていた。
「エネルギーが、拡散されてしまいました・・・」
「どういうことだ!?」
同じく青ざめたウッドロウが急いて問い詰めたが、助手はわからないとしか返さなかった。
そんな時、通信機からピピッという音が聞こえた。
《聞こえるかね諸君》
「リトラーさま!」
「うわー久しぶりリトラーさん」
通信機から流れた声はリトラーだった。音信不通だったはずのリトラーから通信がきて、皆すがるようにその声に反応した。
《久しぶりだな。どうやら元に戻ったようだが・・・まあ、それは置いておいて。どうやら集積レンズ砲では、外郭を破壊できないようだ》
と、深刻な事態をさらりと言ったリトラーに、ルーティが「なに無責任なこと言ってんのよ!あんたが作らせたんでしょ!」と噛み付いた。
が、リトラーは話を続け、ルーティも大人しく話を聞いた。
《今の攻撃ではっきりした。外郭が青い光を放っているが、あれはエネルギーアブソーバーだ》
エネルギーアブソーバー、と聞きなれない名を聞いて、全員が首をかしげた。それをアトワイトが説明すると、リトラーは話を再会させた。
《だが、エネルギーアブソーバーを設置した目的は防御のためではない。あの装置は、地上から生命エネルギーというものを吸い上げるために使用されている》
「生命エネルギーって・・命のこと?」
スタンが問いかけると、リトラーは「そうだ」とはっきりこたえ、さらに絶望的な情報を全員に知らせた。
《まず花や昆虫など小さな生き物から死に絶えていくだろう。だがそれはやがて人間にも及ぼす。このままでは地上は死滅だ》
リトラーの話を聞くと、そこにいた全員が驚愕した。
フィリアが嘆き、スタンが悔しそうに地面を足で打つと、ルーティが悲しそうに「今まの努力は・・・無駄だったの・・・?」と言った。
《そんなことはない。今の攻撃の間に、私もようやく敵の観賞を退けた。こうして通信も回復できたわけだ》
「だからって、どうしようもないでしょ?」
《いや、あるんだ。外郭が空を覆いつくし、エネルギーアブソーバーをはりめぐらせていたが、一箇所だけ、それが敵わぬ場所がある。そこなら集積レンズ砲で撃ち抜ける》
八つ当たりのように言ってきたルーティに、リトラーが安心させるようにしっかりといった。
それを聞いたスタンが「どこですかそれ?!」とリトラーに嬉しそうに問いかけると、リトラーがはっきりといった。
「このラディスロウだ」
リトラーの言葉を聞いて、そこにいた全員が固まった。
「だけど・・・だけど、ラディスロウを撃ったら!」
《船底は外郭に覆われてしまったが、ラディスロウの船体そのものが邪魔になってエネルギーアブソーバーは生じていない。そこを撃てば外郭に穴があく。飛行竜で突入が可能だ》
「だけど、リトラーさんは!」
《後は頼むぞソーディアン諸君。ダイクロフトを落とすのだ!》
スタンの言葉をことごとく遮って言いたいことを言うリトラーに、ディムロスとが堰を切ったように話しかけた。
『死ぬ気か、リトラー!』
「そうだよ!!折角また地上に出られたのに!!」
《人よりは長く生きたんだ。ラディスロウに自爆装置でもあればとっくに使っているところだが、生憎とそんなものはない》
二人にふっと笑いかけると、リトラーは諦めたように、残念そうに言った。
その後緩めた表情をきっと引き締めると、リトラーはまるで1000年前に戻ったかのように声を張り上げた。
その声は1000年立っても変わらない、地上軍の司令の衰えていない力を感じさせるような力強い声だった。
《最後の指令を伝える。集積レンズ砲でラディスロウを撃て。そして勝利せよ!以上、交信を終わる》
「リトラー様?リトラー様!!」
助手が通信機に向かって何度も話しかけたが返事はなく、ガーッッという砂嵐のような音が聞こえたかと思うと、プツンッといって消えてしまった。しばらく画面を見て呆然とすると、助手は集積レンズ砲にダンッと手をついてうつむいた。
「そんな・・・そんなこと、私にはできない!」
「・・・・・。撃つには・・・どうすればいい?」
スタンが助手の横に来て、集積レンズ砲を見ながら小さな声でいった。
「まさか・・」
「誰かがやらなくちゃいけないんだ。俺がやるよ。リトラーさんだって覚悟を決めてんだ」
「・・・わかりました。通信の発信方向は確認しています。そちらに照準を変更します。・・・・集積レンズ砲!エネルギー再充電開始!スタンさん、エネルギーが満タンになったら、発射ボタンを」
「わかった。これだね」
キィィィィィ・・・ンと不思議な音を立てながら、機械は蒼白く光り始めた。助手が「・・今です」と小さく言うと、スタンが勢いよくボタンを押した。
「発射!」
ボタンを押した瞬間、さっきと同じような光がダンッッ!!!という音と共に発射された。光が飛んで言ったかと思うと、遠くの方でドォォォォォォッッ!!!と大きな音がした。それと共に、そこからだけ太陽の光が入ってきた。
それを見た瞬間、辺りは歓声に包まれた。チェルシーたちは飛び跳ねて喜び、兵士たちも飛び跳ねそうな勢いだ。
「よし、飛行竜に乗り込もう」
「その前に最後の作戦会議だ。全員、城の会議室に集合してくれ」
ジョニーがその勢いのまま飛行竜へ向かおうとするのをウッドロウが止めた。
そんな話しきいちゃいねえぞと文句をいうコングマンに「集積レンズ砲という新しい要因も加わった。もう一度作戦をまとめよう」とそれらしいことをウッドロウが言うと、チェルシーやジョニーたちも「ウッドロウ様のお言葉とあれば!」「そういうことなら、さっさといこうぜ」と言って城の方へ入っていった。
スタンたちも顔を見合わせてなにやら話すと、その後を追っていった。
「あれ?あなたはいかないのですか?」
「・・うーん・・」
全員が城に入って言った後、だけがそこに残っていた。集積レンズ砲を構っていた助手はそれに気付くと、首をかしげて問いかけた。
うつむいていたは光のさしている穴を見ると、ふぅ、とため息をついた。
「なんでリトラーってば最後の挨拶もさせてくれなかったのかな。薄情者」
「え?」
ぽつりとつぶやいたに助手が「なにか?」と聞いたが、は「なーんにも!」と笑って誤魔化し、マリアンからもらったバスケットを走りながらぱしっととると飛行竜へ向かっていった。
「あ!あの!!会議室へいかなくても・・!」
「いいよ。どーせ話し聞いてもわかんないし。それになんかみんな怪しいんだよねぇ。よそよそしいっていうか」
「で、でもっ」
焦りだした助手を見て、がニヤリと笑った。助手の近くまで来ると、は耳元に口をやってぽそりとつぶやいた。
「あのこと、皆に話してもいいのかなぁ〜・・?」
「!!? な、なんでそのことを・・!!?」
「フフフーvさーあねぇ〜〜?あ、でも大丈夫。なんかあったときは俺の所為にしとくから☆まかせといて〜〜♪」
驚く助手からケラケラ笑いながら離れると、はスキップしながら飛行竜にのりこんだ。
「さーてどこに隠れようかな?甲板でも行っとくか〜。いや、死ぬって自分」
一人でぶつくさしゃべりながら、は飛行竜の中を歩き回った。ここだ!といって倉庫の中に入り込むと、バスケットを目の前において鼻歌を歌いながらすみっこに座った。
「・・・どうしてこんなことになったんだろぅ」
リトラーが死んだということが、未だに信じられない、と、は膝に顎をつけて考えた。
(ていうかここって本当にゲームの中かよ?!こんな手の込んだ話しあるかよ普通・・・・。現実味ありすぎ。・・もしかして、俺が来た所為で色々と変わっちゃったのかな・・・?)
そこまで考えて、は頭をぶんぶんふった。ぱちんと両手で頬を叩いたところで、飛行竜が動き出した。
「・・・っていうか、あの助手なに隠してるんだろう」
ふと思い出して、は一人首をかしげた。


「あ?他の奴らはどうした?」
「なんだ?いつの間にか私たちだけだぞ?」
城の会議室に向かっていた4人は、スタンたちがいないことに2階まで来てやっと気がついた。
外から聞こえてきた大きな音に、チェルシーが「この音・・・飛行竜の音ですよ!」といち早く反応した。
「まさかあいつら・・・!!」
ジョニーが言ったのを最後に、4人は急いで外へと出た。が、時は既に遅く、飛行竜は飛び立った後だった。
なぁんで飛行竜が発進していく?俺たちゃまだ乗ってないんだぞ!とコングマンが騒ぎ出したところに、兵士が一人近づいてきた。
「あ、あの・・・その・・・ソーディアンチームだけで行くとの事で、あの助手どのが操縦して・・・」
「俺たちを置いていったってのか?!」
「そんなー!」
「おい!その通信機をかせぃ!!」
兵士がおどおどと全員に説明をすると、コングマンは通信機をひったくってボタンを押した。


「あの、通信が入ってきました」
外郭に飛行竜が近づいてきたころ、ピピッという音が室内に響いた。
《コルァ!!こりゃどういうことだ!!》
「ここからは私たちにまかせてくれ。我ら、ソーディアンとその使い手に」
いきなり怒鳴ってきたコングマンにウッドロウが言うと、今度は他の3人まで口々に文句を言ってきた。
《ウッドロウ様の裏切り者ーー!》
《おいおいおい!俺を領民たちの笑い者にさせるつもりか!?》
《ルーティ!この私まで置いていくとは、どういうつもりだ!!》
「ごめんねマリー!だけど、こうするしかなかったのよ・・・!」
《せっかくのただ酒を堪えてまで用意したのに!何て仕打ちだ!!》
なにを言っても帰ってこいと言い続ける4人を見かねて、ウッドロウが「通信を切ってくれ」と助手に言った。
「いいんですか?」
《戻って来ーい!!》
《俺たちもつれていけーー!!》
「切ってくれ!」
「はい」
まだ叫ぶジョニーやコングマンたちを無視して、助手が通信機を切った。
ようやく落ち着いた頃になってスタンがあることに気がついた。
「・・・・ねえ、あんまり考えたくないんだけどさ・・・」
「なによ。これからってときに怖気ずいたとか言わないでしょうね」
ぎろりとにらみを利かせながら言ってきたルーティに「ち、違うよ!」とかみながら言うと、スタンが眉をひそめながらそーっと辺りを見回した。
「さっきのメンバーの中にさ、、いなかったよね」
「あ」
「そ、そういえば・・」
スタンの言葉にルーティが声をあげ、フィリアが苦笑いすると、ウッドロウがまさか・・・と顔をこわばらせた。
くん、出てきたまえ」
「えーなんだよもぅバレたのー?」
「「うわぁあ!!」」
「きゃぁっ!」
スタンとルーティが同時に驚き、その後フィリアが叫んだ。ウッドロウもさすがに引いたようだ。
『床からとは愉快じゃのぅ』
「おじいちゃんてば親父ギャグ☆」
『ホッホッホッ』
どうやって見つけたのか、床をかぽっと開けてが現れた。の現れ方にクレメンテが親父ギャグ−−−しかも寒い−−−で返すと、イクティノスをいれた3人が呑気に笑い出した。
「なにを考えているんだ君は!」
「お前らこそ人のこと言えた義理かよ、薄情者(本日2度目かよ自分)。それとも、今から俺を下ろすためだけに帰る?そんなことしたら、ジョニーさんたちもついてきちゃうよ♪」
むっとして言い返した後、はしてやったりという顔で笑いながら痛いところをついた。
それを聞いて「・・・分かった」とウッドロウもルーティも諦めたようにため息をつくと、今度はディムロスたちまでため息をついた。
『まったく、またか
「え?またって?」
『この子、1000年前も同じことしたのよ。まさか同じことしてくるとはね』
「へー」
「あんたねぇ・・・」
そうなんだ、とディムロスたちの話を感心して聞いているにルーティがつっこんだ。
『あれ?でもあの時はリトラー指令の後ろの壁を回転扉にしてませんでしたっけ?』
『それは悪戯のときだろう?確か机の真ん中からいきなり現れてハロルドと・・・』
『それこそ悪戯のときじゃろ?確かあの時は天井にワイヤーをひっかけて・・・』
「なんにせよ、ロクなことはしてなかったようだな」
「さっすが俺!」
「褒めてないよ
ウッドロウが終わりそうに無いソーディアンたちの話しに静止をかけると、が指をぱちんとならし、その後スタンがつっこんだ。
笑って誤魔化すや一緒になって笑うソーディアンの一部たちのおかげで一時空気が和んだが、前を見たフィリアの一言で一気にあたりは緊張に包まれた。
「外郭に開いた穴が近づいてきましたわ」
「あの穴をぬけたらダイクロフトを目指してくれ。我々を下ろしたら、君は飛行竜で待機だ」
「わかりました」
ウッドロウの指示を受けると、助手はこくりと頷いた。内心ではほっとしつつ。
「よーしいくぞー!打倒ミクラトン!!
「え・・・?あの、ミクトランじゃ・・・」
フィリアがつっこむと、は「ノンノン」と言って指をふった。
「ミクラトンで十分。クラムボンの仲間と言って虐めてやる!!
「あははははっ。それいいわね」
ぐっと手を握り締めたを見てルーティが大笑いした。
とりあえず腹ごしらえしようよ、と言いマリアンからもらったバスケットを取り出したに苦笑いすると、仲間たちは座ってバスケットの中身をほとんどとって食べた。
ひ、酷い!!とほとんど食べ物が取れず涙目になるに全員がにっこり笑うと、ウッドロウが「お仕置きだ」と代表して言った。


ダイクロフトに入ってすぐ、は見たことのある風景に思わず笑いをこぼした。
「ここがダイクロフト・・・!!」
と言って、ディムロスと会話をしだしたスタンたちから意識を離し、あたりをみまわした。
(ここでバルバトスとあいつらが戦ったんだよな・・・!)
ついに来た、とは思った。横を見ると、小さな階段があった。恐らく彼らが改変された歴史のときに通る道だろう。
『道は覚えています。急ぎましょう』
イクティノスの言葉を最後に、全員走り出した。
入っていってすぐ、モンスターたちのうめき声が聞こえた。数はかなり多い。
「全部倒す必要はない!通れるだけ倒して進もう!」
「おうよ!」
スタンの掛け声に剣を引き抜きそれを掲げると、は仲間たちの後にくっついて走り出した。
丁度ウッドロウの隣を走っていると、イクティノスが話しかけてきた。
『あなたはいっつも無茶をするんだから、怪我しないで下さいね、。ここまでついてきて、疲れたから帰るっていうのは無しですよ』
「あったりまえよイクティン!オイラは無敵の正義の味方さ〜」
『どうせまた、今だけっていうんでしょ?』
「よくわかってんじゃない。もちろんそうさ」
『前も言ってましたからね。期待してますよヒーロー』
「もち!その喧嘩、買った!」
最後の部分を言い終わったところで、目の前にいたモンスターの集団につっこんでいった。
いつも通り止めを刺さずに殴りけりついでに斬りと攻撃をすると、モンスターをなぎ倒して進んでいった。
『相変わらず、殺しはしないんだな』
『それがあの子のやり方でしょ。ちゃんと進めているんだし、いいんじゃない?』
『何言っても無駄なのはわかってるからもういい・・・』
ディムロスの諦めたような声をきいて、スタンたちは思わず苦笑いした。
「急ごう!こっちだ!」
開けた道を全員で走ると、目の前にワープゲートが見えてきた。
ワープしてとんだ後で、全員しまったと顔を見合わせた。
「スタンだけ切り離された!」
「しまった・・罠か!!」
「とにかく探しましょう!」
「イクティン!道は覚えてるんだろ!先へ進めば逢えるかもしれない!」
『こっちです!』
イクティノスの言葉に従って、全員スタンを探しながら走り始めた。


カプセルが何百も何万も並ぶ広い部屋へ来て、全員辺りを見回した。
「ったくスタンてば迷子になって・・・」
「ま、迷子じゃないよ!!」
結局、スタンは漆黒の翼の3人と共に行動していた。しょうがないのでその3人も連れていた。
何故かスタンだけ未だに全員に遊ばれていた。
だが今はいくつも並ぶカプセルの方に気を取られているようだ。
棺おけのようだと言い出したグリッドの言う通り、中には人が入っていた。ゾンビ化したものまである。
見回して気味が悪いというルーティに、アトワイトが「これは生体保存装置だわ。肉体を保存する装置よ」と説明をした。
『するとこれは天上人か。これだけの天上人が、ダイクロフトに眠っていたというのか』
『生きているとは思えないわ。でも装置は作動している。エネルギーが注ぎ込まれているわ』
周りを見回していったクレメンテと医学に詳しいアトワイトがそういうと、イクティノスがはっと息をのんだ。
『エネルギーアブソーバー・・・・!地上で吸い上げた生命エネルギーを、ここに回しているんですよ!』
『地上からエネルギーを吸い取って蘇るつもりなの!?この天上人たちは!』
信じられない、とアトワイトが声をあげた。ディムロスも同じように怒りをあらわにし、『そんなことをさせてたまるか!破壊するんだスタン!』とスタンに声をかけた。
「そうだね、ちょっと、かわいそうな気もするけど・・・」
「何言ってんの!こいつらは死人よ!それが他人の命を奪って生き返ろうだなんて、冗談じゃないわよ・・・!」
怒りをこめてルーティがいうと、ウッドロウが「ああ、破壊するしかあるまい。蘇ってミクトランの味方につかれても困るからな」と同意した。
よし、と言ってスタンがディムロスを構えたときだった。
「それに触るのはよしてもらおう」
「ミクトランだ!」
奥から聞こえてきた声は、紛れも無くベルクラントの中で聞いたものだった。
全員がバッと声のした方に顔をむけると、金色の長い髪をした男がベルセリオスを手に持って立っていた。
「剣じゃないよ!?人だ!ベルセリオスは持ってるけど」
『あれはミクトラン・・!?生きていた頃の、ミクトランです!』
『肉体まで復活したって言うの!?』
それぞれ驚きを隠せない中、漆黒の翼の3人組はカプセルの陰に隠れていた。
「やっと見つけたぞ・・・・ミクトン!!」
「ミクランだ。またその変なあだ名で呼ぶのか君は。折角再会できたというのに・・・・」
ふぅ、とため息をついて悲しそうにうつむいたミクトランに、が指差しながらつっこんだ。
「どこのパロだよソレ!ていうかその服センスないよ!変な羽ついてるし!やっぱ天才は天才でも1000年は時代を感じさせますなぁ」
言ってプププーと笑い出したに、ミクトランはむっとした。
「しょうがないだろう、他の作業に忙しくてこれしかなかったのだから」
『服の話しなんてどうでもいい!今度こそ決着をつけてやる!!』
いじけたように言い訳したミクトランにディムロスがどなりつけた。は耳を押さえて下がっている。
だがそれすらも動じず、ミクトランは余裕の笑みを浮かべていた。
「地上ではコアクリスタルに精神をコピーする技術を開発していたようだが、天上では肉体をコピーする開発を進めていた。だが、精神のコピーは不可能だった。私がソーディアンの技術を手に入れるまではな・・・」
『わかったぞミクトラン!お前は残っていた肉体に、ベルセリオスに入り込んだ精神をコピーしたのだな!』
いきなりコピーやらなにやらと話し始めた前線から下がったは、ぼちゃパイを食べながら漆黒の翼の3人と一緒に後ろでしゃがんでいた。
「なあ、何の話ししてんだ?」
「んー?なんかねぇ、どうやってミクラトンが生き返ったかって話し」
「へー。よくわからない話してるなぁ」
ソーディアンの話が聞こえないグリッドたちには入れない会話だったため、に聞いていたようだ。
ジョンが分からない話というと、も肩を竦めて「俺もわかんない」と言った。
「えーっとなになに?残っていた肉体に、ソーディアンに入ってた精神をコピーしたんだって。うわ不死だって!ナルシスト〜!」
「あそこまでいくと引くわよねー」
ねぇ?とミリーとが顔をあわせていると、どうやら戦闘に入るらしく、スタンが「漆黒の翼の皆さんは下がって!」と声をかけてきた。
ああ遠慮なくそうするよというと、グリッドを先頭に3人はさっさと下がっていった。
「やっと戦闘か?体なまるかと思ったぜミクラトーン♪」
「ミクトランだ」
肩を回しながら前線に加わったに、名前を間違われたミクトランが律儀につっこんだ。
ソーディアンを構え、戦う気満々のスタンたちを見て、ミクトランがふっと笑った。
「まぁそうあせるな諸君。折角ここまで来た客だ。丁重におもてなしをと思っていいものを用意した」
「なによ!」
ニヤリと笑うミクトランにルーティが噛み付くと、ミクトランはさらに笑みを深くしてぱちんと指を鳴らした。
「今時指ならして呼ぶかよっ。ふ、古ーーっ!!・・・って、え?」
笑っていたとミクトランを睨んでいたスタンたちの前に、信じられないものがでてきた。
「・・・リオン・・・・」
誰もが目を大きく開けて驚く中、ルーティが静かにその名前を呼んだ。
シャルティエを手に持った、まぎれもないリオンだった。
横から静かに歩き現れると、ミクトランの前に立った。
「リオン・・・・?リオン。なあ、リオンか?」
「リオン!」
スタンが呼びかけてもルーティが呼びかけても、リオンは微動だにしない。
全員が混乱してリオンを見つめる中、急にが走り出した。
!」
「だめだ、行くな!!」
ウッドロウとスタンが止めたが、は足を止めなかった。止めるどころか、ますます足を速めた。
「リオン・・・・リオン!お前、やっぱり生きてたんだな!!まだ死んで−−−−−」
一瞬。一瞬だった。がリオンに近づき、あともう数十センチ。いつもの癖で抱きつこうとしたときだった。
シャルティエが胸にズブ・・・と刺さっている。心臓より上だったため、シャルティエが刺さったまま固まっている。
ーーーーーー!!」
さん!」
ルーティとフィリアが叫んだ。スタンは驚いて声も出せず、ウッドロウは歯を食いしばっている。
『・・・・・・・』
「リ・・・オン・・・?」
かすかに聞こえてきたリオンの声に、が反応した。喋ろうとするたび血を吐きそうになる。
シャルティエが刺さったままの所為か、麻痺したのか、痛みはそれほど感じなかった。
・・・・』
かすかだが確かに名前を呼んでくるリオンを見て、が微笑みシャルティエに手をおいた。
「いいよ・・・。いいよ・・・リオン・・・」
優しいく話しかけたに驚いてか、リオンが顔を上げた。リオンと目が合うと、は嬉しそうに笑った。
「そ・・だ、マリアンさんね・・・・大丈夫だよ。ちゃんと・・・助けたから・・・心配しないで・・。・・・どつくなよ」
・・・・』
冗談を言うと、はまた名前を呼んできたリオンににっこり笑った。
幸いなことに、二人の会話は小さすぎて誰にも聞こえていなかった。
何度もリオンに呼びかけるスタンたちの声を聞いて、ミクトランが声を立てて笑った。
「無駄だよ諸君。彼は死んだのだ。今の彼は生ける屍に過ぎんのだよ。主人の命令を忠実に聞くだけの人形なのだよ。さあリオン、その娘をこちらへ」
『・・・・』
ミクトランに命令されても、リオンは動かなかった。首をかしげたあと、ミクトランはもう一度「その娘をこちらへ」とリオンに命令した。
「大丈夫だリオン。また後でな・・・」
が早口でそう伝えると、シャルティエにぐっと力が入った。
力が入ったかと思うと、の体はぐるりと横に回され後ろの方に飛ばされていた。
ミクトランがそれをキャッチすると、剣が抜かれあふれでてきた血が床にぼたぼたと落ちた。
さん!」
「いけない!あのままでは出血多量で死んでしまうぞ!!」
「でもここからじゃ晶術もとどかないわよ!」
「心配は無い」
焦って困惑するルーティたちに、ミクトランが青ざめてぐったりしているを抱き上げながら言った。
どういうことだ!と怒鳴ったスタンやルーティたちがミクトランを睨んでいると、ミクトランはしばらくしてからにキュアをかけた。
「とりあえず傷はふさがったが・・・コレで死んでもまた生き返らせれる。そこにいる、生ける屍とは違う、完全な形でな」
「貴様・・・・!!」
「人の命をなんだと思ってるのよ!!」
憎しみの増した目で睨んでくるルーティたちを嘲笑うと、ミクトランはリオンに命令をした。
「行け、リオン。いや、生ける屍よ、奴らを殺せ!」
リオンに命令をすると、ミクトランは笑いながら奥へと消えていった。
『・・・コロシテクレ・・・』
「リオン?」
『ボクヲ・・・ハヤク・・・』
その会話を聞いたのを最後に、はスタンたちと離れてしまった。
(あ〜、貧血だぁ〜。でもこれって・・・貧血の域なのかな・・・?もーいいや・・・動けるようになるまで休んどけ)
どこか投げやりになりながら、は段々と鬱陶しいくらいまぶしい部屋に運ばれていった。







続く
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いや、終われよもう。って感じですね。うーんまたウザイくらい長い☆(コラコラコラ)
無駄な会話多いからなー主人公いると。なくすかこいつ。いや、だめじゃんそれ!(一人ノリつっこみ)
なんだかお茶目なミクラト・・・ゲフッ、ミクトラン。(そのうち本当にミクラトンとしかうたなくなる可能性大)
さーて次でやっと終わりかなぁ?戦闘シーンだ〜〜久々に!フフフ、無理〜。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました〜。どこまでもふざけてるねここの話し☆