「マーリアーンさーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!」
ヒューゴ邸の玄関先、が両手を口に添えて大声をだした。
はた迷惑この上ない行動だが、今は特に迷惑がる人物もいなかったので問題はないだろう。
ぱたぱたぱたと二階から足音が聞こえたかと思うと、廊下からマリアンが走ってやってきた。
!戻ってこれたのね!」
「モチのロンさ☆」
階段をだーっと降りると、マリアンは勢い余ってに抱きついた。








my way of living 36
〜古い、アルバムの中に♪溢れてる、思い出がいぃっぱ(ノイズ放送キャンセル)〜








「く、苦し・・・・」
「きゃぁっ!ごめんなさいっ」
危うく窒息しかけていたがうめき声を上げると、マリアンはようやく腕を放した。
ほへ・・・と謎の発音でため息をつくと、は「さぁて掃除だ掃除」と無意味にテンションを上げた。
「休んでなさい。片づけなら私がやっておくから」
「いーの。俺もやる!スタンたちばーっか仕事しちゃってさー。俺だけのけものなんだよ?」
ここにルーティがいたらまた痛いつっこみが入ったのだろうが、とりあえずいるのはマリアンだけだったのでつっこみは入らなかった。
しゃがみこんでいじけるを見て笑うと、マリアンは子供をなだめるように頭をなでた。
「あなたのためを思っての行動じゃない?さあ、片付けを手伝ってくれるというのなら、しっかり働いてもらいますからね」
「合点!」
にっこり笑いながらマリアンが言うと、は元気よく立ち上がって腕を十字にガッと組んだ。
とりあえず、といって二人が移動したところはリオンの部屋だった。
久々に入るリオンの部屋は、本人が元々あまり元気のいいほうでもなかったので、いつもと変わらぬ空気を保っていた。
殺風景なのは相変わらずで、足りないとしたら彼がいつも暇なときに読んでいた本が机の上に無いのと、本人たちだろう。
マリアンが部屋の明かりをつけ窓をあけると、海から流れてくる気持ちの良い風が入ってきた。
外は暗く、明るい人々の声はなかったが、やはりダリルシェイドだと思わせてくれる風だった。
こうまで暗いといつもならおいしいと感じられる空気もおいしいと感じられない気もしたが、はベランダにでて深呼吸した。
目を開けて街を見回してみると、どこの家も電気をつけていた。一番明るいのはセインガルド城だろうか。
カモメたちの声しか聞こえなくなってしまった港の方を見て、は部屋の中に戻った。
「で?どこから片付けるの?なーんか片付けるものないように見えるのは俺の気のせい?」
「大当たりよ」
額に手をあてて部屋を見回したに、マリアンが真顔で答えた。
ぴたりと止まってがマリアンと目を合わせると、二人は一緒に噴出した。
「あいつなんか趣味なかったの〜?」
「それがなぁんにも。いつも帰ってきても寝るためだけっていう感じだったし。あるとしたら・・・難しい本を読むくらいかしら」
といってマリアンが呆れたようにため息をつくと、も同じく呆れてため息をついた。
「つまんない人生送ってんなーあいつ」
「それでもが来てからは結構変わったのよ。冗談もよく言うようになったし」
「それ嫌味だから」
「鬼ごっこなんてして遊ぶようになったし」
「あれ命がけだから」
「人に言葉を返すのも上手くなって・・・」
「それつっこみだから」
「本当に、あなたのおかげでいい方向に変わってくれたわ。あの子に楽しみを教えてくれてありがとうね」
にっこりとマリアンが笑うと、は一瞬固まってその後目を泳がせた。
「・・・お、俺はなにもしてないよ」
「あら、そうかしら?」
「あいつは・・・あいつは元々知ってたよ。マリアンさんがいたもん」
確信したように言うから、今度はマリアンが目をそむけた。
「私は・・・私こそなにもしてないわ」
「そんなことないよ。だってあいつ、旅してるときだってずっとマリアンさんのこと気にかけてたし。任務のときなんてプリンがおやつだと凄い速さで終わらせてたし。マリアンさんのこと話してるときは何気に楽しそうだったし。一番大事なこと教えてあげたのは絶対にマリアンさんだよ」
と断言したをぽかんと見ると、マリアンは「・・・そう」と言って微笑み手を伸ばしてきた。
ぎゅっとを抱きしめると、マリアンはぱっと顔を上げて「さあ片付けましょう!」と元気よく言った。
しばらくタンスやら机やらの中身を取り出すと、マリアンはふぅ、とため息をついた。
は楽しそうに家捜し・・・・色々なものを出してきている。
「つか本当にあいつ持ってるものすくないなー」
「日記もなにもつけない子だったから、あるのは本と洋服くらいね」
「うわー!ひらひらついたシャツがあるーー!!お坊ちゃま〜〜〜〜〜!!!」
「あら、懐かしいわ。これ8歳くらいのときにきていた服よ」
わらわらと出てきた服の中から一つひっぱりだしたが見つけたのはひだがついたYシャツだった。
手に持って大爆笑していると、マリアンが懐かしそうにそれを持ち上げた。
8歳、と聞いてが大声をだすと、マリアンはくすくす笑った。
「うっそーーーーー!!?」
「本当よ。今の服を着始めたのは大体10歳くらいかしら・・・・?あ、ほら、これよ。小さいでしょう?」
「きゃはははは!かわいーー!!120センチもなかったんじゃないの!?」
「それ、言ったら斬られちゃうわよ?」
10歳の頃着ていたというリオンの戦闘服(正装?)を持ち上げると、はそれを見ながらまた爆笑した。
マリアンが斬られる宣言をしてもの笑いは止まらず、他にもあった小さな服をひっぱりだしては笑いのネタにしていた。
そんなを見て笑いながら、マリアンは「たまにオベロン社の食事会にも出席していたからね」と言い、ひらひらのついた服を見ては懐かしそうに微笑んでいた。
「あれ・・・?これ、写真・・・・?この世界カメラなんてあるの?」
「ええ、オベロン社で開発した全自動指揮カメラよ。ああ、懐かしいわぁ。レンブラントさんがよく、内緒で撮ってたのよ」
「それ犯罪・・・・」
「ウフフッ、知らないわ」
のつっこみを笑顔で流すと、マリアンは他にも転がっている写真を手に持った。
「あの子に内緒で撮って、洋服と一緒にしまっておいたんだっけ。あとでアルバムにでもしようかなんて言ってたのに、すっかり忘れてたわ」
「ふーん。うわ!これ可愛い!!」
「あら、小さいわね〜」
年のころは6歳だろうか、図書館で一生懸命本を読んでいるところだった。
読めないところでもあるのか、本を睨んで眉をひそめている。
「これさらにちっちゃい!!ていうか連続撮影でもしたのか・・・イレーヌパパさん・・・」
「あら、可愛いわ」
今度は、庭の花壇で蝶をじっと見ている写真だった。3歳くらいだろうか、足が花壇に隠れて見えない。顔は咲いている花の何個分だろうか。しゃがみこんで花に止まる蝶を不思議そうに見つめていた。
カメラの存在に気付いていないのか、まん前から堂々とられている。
連続撮影とが言ったとおり、次のリオンの行動もカメラにしっかと撮られていた。
蝶に手を伸ばしている写真、その次は蝶が飛んでしまってあっと口をあけながらひらひらと飛び上がった蝶を見ている。
次の写真はもマリアンも思わず顔を緩ませた。蝶が手の上に止まり、嬉しそうに笑っている。今では考えられない顔だ。
まだヒューゴの冷たさにそう接触してはいなかったのか、6歳くらいの写真に見えた寂しそうな表情はあまり感じ取れない。
次はこちらを見て驚いている顔だった。今頃気付いたのか、ともマリアンも思わず笑ってしまった。
連続撮影の最後は蝶を手に乗せたまま嬉しそうにそれを見せている。相当嬉しかったのだろう。
やべぇ〜〜〜・・・vvといいながら溶けそうになっているを見て笑うと、マリアンは他の写真にも手を伸ばした。
12・3歳くらいのものであろうか、今よりさらに幼い顔立ちで不機嫌そうにこちらを睨んでいる。二人はプッと噴出すと、また他の写真を見た。
本を読んだまま肘をついて眠りこけている。最後に見た写真は恐らく一番新しいものだろう、無表情でシャルティエを振り回している。
年が増えるごとに段々と暗くなっていった表情を見て、マリアンとは沈黙していた。
「・・・ねえ、マリアンさん。これもらっていってもいい?」
「ええ・・・そうね。もう誰もいないし・・・・いいと思うわ」
「マリアンさんも選んでよ。俺だけもらうのってなんかずるいし」
ずるい、とらしい言葉を聞いて、マリアンはくすくすと笑った。言われたとおり2・3枚写真をとると、あとはが自分の鞄に大事そうにしまいこんだ。
その後服や本を片付けると、マリアンは「お茶にしましょう」と言って立ち上がった。
「あれ?イレーヌパパさんとヒューゴさんのところは?」
「二人とももう終わってしまったわ」
「そっか・・・・。あ、この本どうしよ」
と言ってが取り出したのは、ヒューゴに借りていた本だった。
古びたその本を見て、マリアンは「もらっておいたら?」とに言ってきた。
「もうヒューゴ様も誰もいないのだから・・・。ヒューゴ様のお部屋にもいってみなさい。他にも本があったらから」
「・・・・うん、わかった」
「お茶が出来たら呼びに行くわ。あんまり遅かったら来てくれても構わないけど」
「へへへ〜〜行っちゃうかも」
ここにつっこみがいたら「暴食」と一言入るのだろうが、生憎ボケしかいなかったので笑い流された。
部屋をでてマリアンと分かれると、はヒューゴの部屋へと向かった。



お茶を入れたマリアンは、を呼びにヒューゴの部屋へ行った。
?お茶が入ったわよ」
だが、扉を開けておくに入ってもの姿はなかった。
整理しておいた本が少し構われた形跡を見ると、ここに来たことは間違いないだろう。
ならば何処へ行ったのだろうかと、マリアンは首をかしげながら廊下へでた。
すぐ手前の扉を見て、マリアンは直感的にここではないだろうかと中へ入ってみた。ヒューゴの寝室だ。
リオンすら入ることはなかった(と思う)そこは、確かまだ構っていなかったはずだと思い出しながら扉をそっと開けてみた。
廊下に明かりが漏れて、初めてここにがいると分かった。やはりここかと安息をつきながら中へ入ろうとして、マリアンは足を踏みとどめた。
「・・・!」
全開に開けた窓の外を、は悲しそうに眺めていた。
なんともいえないその表情に、マリアンは息を詰まらせた。きゅっと手を握ると、そっと扉を閉め台所へと戻った。


「・・・・ほあ?」
ヒューゴの部屋へきてから1時間ほどたって、は目を覚ました。
どうやら眠ってしまっていたらしい。
二つ並んだベッドのうちの片方に寝転がって寝てしまっていたことに気付くと、は「あちゃ〜」といいながら頭を掻いた。
さらっとしたシーツが気持ちよく、ふわりとしずむベッドはとても心地よかった。おそらくぼーっとしてそのまま寝てしまったんだろうと勝手に自己完結すると、はよいしょと立ち上がった。
数日振りのヒューゴ邸のベッドの寝心地は、前から知っている寝心地とかわらずとてもよかった。
熟睡していたらしいと気付いて初めて自分が相当疲れていたことに気付くと、とりあえずは頭を働かせるために伸びをした。
ここでヒューゴが寝ていたのかと思うと不思議な気持ちになったが、はそれをため息で流して部屋をでた。
下のキッチンへ行くと、いい匂いがした。
何度もかいだ覚えのあるそのにおいに、のテンションは一気に上がった。
「マリアンさーーーーーーーーーーーーん!!!」
「あら、もう来ちゃったの。ごめんなさいね、かぼちゃパイ作ってたんだけどまだできなくって。もうちょっとだから、そこに座って待ってて」
「やったーーーvv」
大喜びして跳ね上がると、はスキップしながらマリアンに言われた席についた。
メイドたちとよくお茶をしていたテーブルだ。
しばらくしてパイができると、は嬉しそうに「イェア☆」と言った。
マリアンがお茶を入れてさっそくお茶を始めると、マリアンが「そういえば」とパイを切り分けながら話し始めた。
「さっきスタンくんたちが来てね」
「スタンたちが!?」
「なんでも・・・ソーディアンのレベルアップととベルセなんとかっていう石の回収と、街のモンスター退治にそれぞれわかれて行ってくるって・・・。あなたに良く休むよう言っておいてって言われたわ」
マリアンが思い出したように言うと、はパイとお茶を急いで食べ始めた。
、もう少しゆっくり食べなさい。つまっちゃうわよ?」
「いい・・・わけでもないけど、早く行かなきゃ!」
「どこか分からないでしょ?」
「うーんでもいく!」
と言ってまた食べ始めたを見て、マリアンは笑いながらため息をついた。
「わかったから、もっとゆっくり食べなさい。そうしたら何処へ行ったか教えてあげる」
「ほんと!?」
「ええ。だって、何かあったときにがじっと待ってられるわけないものね」
マリアンがそういうと、は飲んでいたお茶をブッと吐きかけた。
マリアンさん!と言って怒り出したをマリアンがくすくす笑うと、そのうちも一緒になって笑い始めた。
マリアンに言われたとおりのんびりと話しながらお茶をしたは、スタンたちが向かったそれぞれの行き先を聞くことができた。
急いで剣をもつと、鞄を置いてさっさと走り出した。
「行ってきます!」
「いってらっしゃい。気をつけて」
見送りに来て手を振るマリアンに後ろ手で返事を返すと、は全力疾走してヒューゴ邸を出て行った。



クレスタの街の外で、最初の頃より数が減ったモンスターたちと兵士たちがにらみ合いをしていた。
「しびれ〜〜〜ろぉ〜〜〜〜〜〜〜〜♪」
「ヘルズハリケーン!!」
その一番前にいたジョニーとコングマンが、先にモンスターたちに攻撃をしかけた。
痺れたり動けなくなったりとするモンスターたちを確認すると、ジョニーが「今だ、かかれ!!」と兵士たちに声をかけた。
ジョニーの声を聞くと兵士たちは一斉に駆けていき、モンスターたちと戦い始めた。
「結構減ったな。ここはもう大丈夫か」
「あーあ、ったく。なーんでこの俺様がお前みたいな奴と一緒に行動しなきゃならねぇんだよ」
「そりゃあこっちの台詞だぜぇ?」
フンッ、と鼻を鳴らして腕を組んだコングマンにジョニーが肩を竦ませため息をついた。
戦いに参加せずに後ろでのんびりしていた二人を、後ろから誰かがどんっと押した。
「とーかなんとか言っちゃって、結構仲良さそうじゃん」
「「!?」」
二人がなにごとかと後ろを振り向くと、叩いた手をそのままにして悪戯っぽく笑っているが立っていた。
驚いて二人が声を上げると、は可笑しそうに腹を抱えて大笑いした。
「ふ、二人ともマヌケ面ーーー!!!」
「おいおい勘弁してくれよ。マヌケ面はこいつだけだぜ」
「ぬぁにい!?お前の方が十分マヌケ面だ!!」
指差してまで笑うに、ジョニーが心底嫌そうにコングマンを指差していった。
さらにコングマンがジョニーを指差すと、はますます大笑いした。
そんなを見てジョニーとコングマンが顔をあわせると、一斉にに攻撃をしかけた。
「笑いすぎだぞお前ぇ!!」
「この素敵ジョニー様のどっこがおかしいってんだい〜〜〜?」
「あははははは!って痛い痛いーー!!」
二人に頭をぐりぐりと押され、は笑いながらなんとか抵抗していた。
しばらくしてようやく攻撃から開放されると、は「疲れた〜」といいながら地面に座った。
「ったく、疲れたのはこっちだぜ」
「だろうね〜〜。俺向こうでパイ食ってた☆」
「テメェ〜〜」
わざとパイを食べていたことをコングマンに言ったは、またコングマンに頭をぐいぐい押された。
頭をおされつつ「ざま〜〜」といいながら大笑いしているに、ジョニーが心配そうに声をかけた。
「もう大丈夫なのか?」
「ばっちりよ☆今の俺に敵うものはない!!」
「上等だ、コラ!!」
「あーはははははっっ!捕まらなければ攻撃なんかきかないもんね〜〜」
「しびれ〜〜〜ろぉ〜〜〜〜〜〜♪」
「それは無しだああぁぁぁぁぁぁぁ」
ジョニーにしびれルンバを歌われたはずべしゃ、と地面に倒れ、結局はコングマンにシメられた。
きゅう、と言っているをジョニーがネコの子を持つように持ち上げると、次は何処だ?とコングマンに問いかけた。
「アルメイダの街はもう人はいないっていうしな、後はハーメンツだけだぜ」
「よし、行こう。綺麗なおねえちゃんがまってるかもしれねぇ」
「そりゃあ楽しみだ」
「おや、いいのかい?」
「何がだよ」
「い〜や〜?♪」
は?と首をかしげるコングマンに、ジョニーは楽しそうに「なんでもないぜ♪」と答えてすたすた歩き出した。
はジョニーにもたれたままネコ状態でぶらぶら揺れており、ちょっぴり眉をひそめている。
「わしゃネコじゃないぞい」
「誰の真似だい?まぁまぁそれはおいておいて。、いいこと教えてやるぜ!」
「え?なになに??」
ぷい、とそっぽをむいていたにジョニーがいい事を教える、というと、うってかわって機嫌を良くし、顔を首をジョニーの方へ向けた。
そんなを見て「単純だナァ」と笑うと、ジョニーはコングマンの方をちらりと見てにやりと笑った。
「あいつな、フィリアのことが好きみたいだぜ」
「わ〜〜〜〜〜vvうそ〜〜〜〜〜vvいいこと聞いた〜〜〜☆きしししし」
小声でジョニーが耳打ちすると、は新しいおもちゃを手に入れた子供のように顔を輝かせ、ジョニーと怪しく笑い始めた。
「ん?なんだ?」
「「なんにもー?」」
嫌な笑い方をする二人にコングマンが気付き問いかけたが、二人は一緒になって同じ答えを出すばかりで結局コングマンは笑っている理由を聞くことができなかった。



「あーはははははは!やーいやーい!」
「やーい♪」
「ぐぬぅ〜!!お、お前らーーーーー!!!」
「キャー!コングマンさんてば怖いですワぁ!」
「ジョニーさんへったーーーーーー!!!」
「なにぃ!?迫真の演技だろーが」
「ブッっ殺す!!」
「「わぁあぁあーーーーっっ!!」」
スタンたちが階段を登っていると、セインガルド城の会議室の中からやけに賑やかな声が聞こえてきた。
「ジョニーさんたちの声だ」
「なに騒いでんのよあいつら」
あっ、と言って最初に気付いたのはスタンだった。その後ついてきたルーティが呆れ、フィリアは「楽しそうですわ」とのほほんとしていた。
スタンが「ただいま戻りましたー」といいながらガチャ、と扉を開けた瞬間、目の前に椅子があった。
ドゴォッッ
「ブフワーーーーーッッ」
「あーーー!!!スタンがーーー!!」
「しっかりしろ、スタン!おーいだれか救急車〜」
「あるわけないでしょこんなときに!」
思い切り良い音を出して顔面にぶつかった椅子は、そのままスタンごと床に落ちた。
が叫び、ジョニーが抱き上げ救急車を呼んだところでルーティがやっとつっこみに入った。
それを聞いて二人が爆笑していると、スタンが「うっ・・」とうめき声を上げた。
「スタンさま、大丈夫ですの!?」
「スタンさまが死んでしまわれては、ワタクシ、生きていけませんワ!!」
「ぶワッ」
「遊ぶなバカコンビー!!」
始めにがスタンを覗き込みお嬢様ごっこをし始めると、ジョニーもそれに乗って続きの台詞を勝手に作って喋りだした。
その後スタンから手を離すと、二人は手で顔を覆ってよよよと泣きまねをした。
床に落ちたスタンは頭をおさえながら起き上がると、まず最初にを見てあ!と驚いた。
「いててて・・・・ってぁあ!!!?」
「ああ!そういえば!!」
「まあ!さん!!」
スタンがの存在に気付くと、ルーティとフィリアもやっとに気付いた。今さらだ。
「うわ遅っ!!めっさ遅っ!!なに、俺そんなに存在感薄い!?」
「大丈夫だ!お前は俺の中ででっかい☆だぜ!!」
「ありがとうジョニーさん・・・!!私、負けないっ!」
「何にさ」
「よし!夕日に向かって走ろう!」
「でませんわよ?夕日・・・」
ジョニーとの小劇場に、スタンとフィリアが律儀につっこみを入れてくれた。
フィリアのつっこみをうけて固まると、二人は「ありがとーございましたー」といいながら頭を下げ、横に下がっていった。
アホくさ・・・とルーティが呆れていると、ウッドロウとマリーとチェルシーたちが帰ってきた。
「ぁあ!さん!」
「もう大丈夫なのか?」
「家で安静にしてろといったのに」
入ってくるなりチェルシーに見つかり、3人に口々に怒られた。
がうぅ・・・と言ってジョニーの後ろに隠れると、イクティノスがフォロー・・・?を入れた。
『無駄ですよウッドロウ殿。はどこにいっても自由気ままで楽天的。かつトラブルメーカーで手のつけようがないですから』
「素敵なフォローサンクスイクティン☆」
『また懐かしいあだ名をだしてきましたねぇ』
「い、イクティン・・・・」
の言葉を聞いて、ディムロスたちがブッと噴出した。スタンは笑いを堪えている。
『他にも色々考えられましたけど、まだ昔の僕らにはあってないようだから言わないでおきますね』
「そりゃあ楽しみだ☆」
『そういえば、昔あったときも今と同じあだ名つけらたのよね』
『つまり、いくつになっても頭の中は変わらないということじゃな』
クレメンテが落ちをつけると、そこにいた全員が笑った。マリーとチェルシー、ジョニーとコングマンは近くにいた人に訳を受けてから笑った。
「素敵なことじゃないか!」
「あはははは!」
が胸を張って言い返しさらに笑いを煽ったが、当のはキョロキョロと辺りを見回した。
「どうしたのよ?」
「いや、つっこみたんねーなーと思ってさ。ここでいつもなら「少しは進歩しろ!」とかいうつっこみがずばーん!と入るはずなのに・・・」
「・・・・」
「・・・、リオンはもういないんだよ?」
「あ、そっか。あいつか」
のつっこみの指摘で、一気に笑いが止まった。ルーティはうつむき、スタンがにリオンはいない、というと、は変わりない声でさらりと返した。
「ごめんみんな。ちょっと失敗した」
「いーっていーって。ほら、さっさと会議始めちゃいましょ?」
一番名前を聞いて取り乱すかと思った二人がひょうひょうとしているので、仲間たちは拍子抜けした。
その後スタンが仕切りなおし−−−そして「なんでお前が」と数名にシメられ−−−明日のことについて話し合った。
「こちらの準備は整いました。明日の正午、ダイクロフトへ突入します」
「・・いよいよか・・・・」
助手の話を聞いて、スタンがぎゅっと手を握った。
気合入れるの早い早いとがつっこみを入れると、仲間たちはどっと笑った。
「今日はセインガルド王が特別に宿を用意してくれています。そちらの方で疲れを癒してください。それでは、解散」
助手の声がかかると、それぞれ伸びたりのんびりと立ち上がったりと動き始めた。
一旦仲間たちと別れると、はヒューゴ邸へと帰った。
「たーだーいま〜〜〜〜〜〜!」
「はいはいおかえりなさい」
またも玄関で大声をあげると、くすくすと笑いながらマリアンがキッチンの方からやってきた。
夕食をとってからみんなのところへ遊びに行く、と言うに「もう出来てるわよ」とマリアンが言うと、は大喜びした。
「おれ、動きすぎでもうお腹ぺこぺこだよぉ」
お腹を押さえて元気のないフリをしたをマリアンが笑うと、二人は食事の準備が整った大広間へと入っていった。
「うっわー!すっごいご馳走!!」
「どんどん食べてね。今日は腕によりをかけたから」
もちろん!というと、はいただきまーすと手を合わせ勢いよく食べ始めた。
マリアンも前の席に座ると、を見てくすくす笑い、それから一緒に食べ始めた。
「最後のデザートはプリンよ」
「やったーvvマリアンさん大好きー!」
両手を挙げて喜んだに、マリアンはあらあら、というとプリンを運びながらくすくす笑った。
プリンが目の前に置かれると、は手を合わせた。
なにごとか?とマリアンが不思議そうに見ていると、がそれに気付いてん?と目をあけた。
「黙祷。リオンにマリアンさんの手作りプリンを見せびらかしてるの」
「まあ、ったら」
にししししと笑いながら言ったに、マリアンも笑った。
「そこにいるのはわかっているぞリオン!しかーし、このプリンは渡さん!!」
「あははははっ」
片手を顔の前で合わせた時の状態にしたまま、もう片方のスプーンを持っている手でリオンのいつも座っていた隣の席をが指すと、マリアンが珍しく声を立てて笑った。
一緒になって笑ってマリアンを見ると、はいただきまーすとまた言ってプリンを食べた。


食事を終えると、はダリルシェイドにある一番大きな宿屋へ行った。
まだ7時すぎだったので、全員が酒場にいて食事をとったり酒を飲んだりしていた。
ばたーんと扉を開けてそこに入ると、は両手を上に挙げて身体をしならせた。
「ハァイ皆さん!未来系アイドル見参ーーーーー☆」
「うわ、でた!」
「うわ、でた!とはなんだそこ!」
スタンがげっと言いうと、はスタンをズビッと指差した。
それを見て全員が受けると、はスタンを立ち上がらせて二人で「どうも〜〜」と手を振った。
「ってなんで俺までやんなくちゃいけないんだよ!」
「のってたくせに」
「う、煩いっ」
痛いところを疲れたスタンは少し声が落ちていた。
その後、ジョニーが歌おうとしてルーティに「アンタのおポンチな歌なんか聞いたら、あたし間違いなく死ぬような気がする」と言われ酒場の隅でいじけたり、コングマンが女遊びは常識だと言ってフィリアに「不潔ですわ・・・」と言われてショックを受け大爆笑されたりと、場はかなり盛り上がった。
「ぃよーし!6番、!歌います!!」
「イエー☆」
「結局歌うのぉ!?」
ノッたジョニーとは裏腹に、ルーティはかなり嫌そうな顔をした。
歌でいい思い出が特にない彼女だ。
二人はひそひそ作戦会議をすると、ジョニーはやはりここにもいたマスターにギターを借りて「行くぜ!」と声をかけた。
どこからともなく・・・・というよりむしろマスターにマイクを投げてもらうと、は右手でキャッチしてすぐ椅子にダンッと足をついた。
「曲目は!」
「BLOWIN’」
題名を言うと、ジョニーはギターを弾き始めた。
がジョニーの演奏にあわせて、ロック調の歌を歌い始める。
ノリのいい歌に仲間たちが手拍子を始めると、もジョニーも笑みを浮かべ、ところどころ遊びながら歌った。
そのうちが身振り手振りで仲間たちを巻き込み始める。
スタンからノリはじめ、その内マリーやフィリア、ルーティまで乗せられ、苦笑を浮かべるウッドロウも(一緒に歌いはしなかったが)手拍子やらなにやら、やり始めた。
一番ノリノリだったのはスタンとコングマンだったが。
「終わりー!」
「いよっしゃーーー!」
『イエーーーーー!!』
歌い終わると、ほとんど全員が無意味に大声をあげた。
近所迷惑この上ない。
あまりの可笑しさにソーディアンたちも思わず笑ってしまったほどだった。
盛り上がるだけ盛り上がったときだった。ウッドロウがさて、と言って席を立った。
「明日に備えてそろそろ寝た方がいい。全員、無理にでも身体を休めておきなさい」
「え〜〜じゃあお開きかぁ」
「あ、。あんたにコレ渡しとくわ」
「ギター?こんなものどこから・・・」
ルーティがに投げてよこしたのは(投げるなよ)、まだ新品のギターだった。
アンスズーンで
何故
真顔でつっこんだに「細かいことは気にしない!」というと、ルーティはさっさと2階へ登っていった。
ギターを持って固まるを見て皆笑うと、寝酒を飲むと証してまだ飲む気満々のコングマンと、本当に寝酒を飲むつもりのマリーとジョニーだけ残ることになった。
それ以外全員部屋に戻り、4人は席についてのんびりとすごした。
しばらく飲んでいると(はジュース)、ルーティが外へ出て行った。
その数分後スタンも出て行き、出刃亀をしようとしたはマリーにつかまり、結局中に残っていた。
「何か一曲歌うかいジョニーさん」
「いいねぇ。だったら、ラブソングでもいってみるかい?」
「あんまりそわそわしないで?♪あなたはいつでもキョロキョロ〜♪よそみをするのはやめてよ♪あたしが誰より一番☆♪」
「そのラブソングかよ」
「めちゃくちゃ素敵だっちゃ!」
「でもちょっと違うっちゃ!」
ジョニーが甲高い声で喋った。もマネをしだす始末だ。
「どこがっちゃ!」
「場違いだっちゃ!」
と二人が会話を進めていったところ最終的にコングマンが「ちゃっちゃっ・ちゃっちゃっうるせーーー!!!」と怒り出し、結局ラブソングは無しになった。
「私は・・・レクイエムがいいな」
「葬送曲か・・・・。俺もそれだ。イレーヌさんに歌ってやってくれ・・・」
両手に顎を乗せながらマリーが言うと、酒の入ったグラスを回しながらコングマンも同意した。
二人の言葉を聞くと、はぽつりと「ガキども大丈夫かな・・・」と言った。
「きっと生きてるさ。あんなガキどもがそう簡単に死ぬかよ」
「うん・・・そうだね。さて、歌おうかジョニーさん」
「そうだな・・。んでなに歌うんだ?」
とジョニーが問いかけると、は「これで☆」と言って楽譜をとりだした。
「おっ、これね。OKOK。・・・ってこれ葬送曲か?」
「あー。まあいいんじゃない?みんなの歌ですってことで」
「わけわかんね〜ぃ」
のボケを笑うと、ジョニーはオルガンを見つけて「お、いいねぇ」と言いながら近づいた。
「オルガンとは洒落てるねぇ」
、それ、俺の台詞だ」
肩を竦ませながら言ったにジョニーがつっこむと、今度はマリーたちまで一緒になって笑った。
さぁて始めるぜ!と言ってジョニーが椅子に座ると、はすーふぅ、と微妙な深呼吸をして楽譜を見た。
ジョニーが最初の音符をぽん・・・・と弾くと、は静に歌いだした。
空気に染み渡るような声が、部屋中に響く。
深く、神妙なその歌を、コングマンもマリーも静かに聴いた。
歌い終わると、は一つふぅ、とため息をついてジョニーとともに席につく。
マリーは肘を突いてグラスをカラカラ回しながら微笑し、コングマンは両手でグラスを持ち、とジョニーの方を見ていた。
「いい歌だな・・・今の私にぴったりだ」
「そうだね・・・。聞きたくなったらいつでも歌うよ。マリーさんだけのために☆」
「それは嬉しいな」
が親指を上げてにっこり笑いながら言うと、マリーはくすくす笑った。
「俺はもうちょっと違う感じの歌がよかったな」
「そりゃあ〜フィリアラヴvだもんねえ〜vv」
「そうそう、フィリアちゃんラーヴvだもんなあ〜?」
ねーvと言って顔をあわせるジョニーとの方を見て、コングマンは真っ赤になりながら大声を出した。
「な、ななななんでお、お前らがそれを!!?」
「さー?」
「なんでだろうなー?」
フフフフーと笑いながら同じ方向に首をかしげた二人に、コングマンがとうとうキレた。
「お、お前らーーー!!!」
「あのぅ・・・もう少し、静かにしてもらえませんか?」
「フィ、フィリアさん!?は、はいっ!」
急に現れたフィリアに驚きつつも、コングマンはガタッと席から立ち上がって裏声で返事を返した。
コングマンの裏声を聞いてジョニーとは大爆笑だ。
そんな二人に首をかしげると、フィリアはにっこり笑い「おやすみなさい」と言って戻っていった。
それにも「は、はい・・・!!」と裏声で返すコングマンを見てさらに二人が笑っていると、隣でさえりげなく一緒に笑っていたマリーが「さて、私たちもそろそろお開きにしよう」と言って席を立った。
「たりねぇよ。こんな酒じゃあ」
「じゃあ一人で飲んでたら?」
「冷てえなオイ」
「私も、もう飲む気はないからな。明日にそなえなければ」
お開きお開き、とやジョニーたちも帰る準備をし始めると、コングマンは「たりねぇんだよ」と一言言った。
「こんなんじゃ・・・・全然たんねぇ・・・・」
全員がコングマンを見てしばらく沈黙していると、コングマンはぐぃっとグラスに残っていた酒をあおった。
そんなコングマンを見ると、マリーはふぅ、とため息をついた。
「酒で無理にテンションをあげるのはいいがな、明日二日酔いになって戦えないと言っても知らないぞ」
「ならねえよ!俺はそこまでよわかねえ!」
「だったらさっさと寝る!フィリアのこと守ってやんなきゃなんねーだろ?」
「ぶわッ!つめて!!」
マリーに向かって叫んだコングマンに、がマスターから(このために)入れてもらってきた水をぶっかけた。
氷まで入っているというマスターの気の回しようの成果か、コングマンの酔いは一気に冷めた。
てめぇ!と言ってコングマンがまた怒鳴ったが、は「にしししし〜」と笑うだけだった。
そんな悪戯っぽい笑顔を見ると、コングマンは諦めたようにため息をついた。
「わぁったわぁった。もう寝るよ。お前ももう帰れ!」
「言われなくとも!」
「んじゃ、俺が送ってくぜ」
合点、と言って手を上げたに、ジョニーが送り役をかって出た。
そんなジョニーを見ると、マリーとコングマンが悪戯っぽく笑いながらジョニーに忠告をした。
「お前〜下心あるんじゃねえか〜〜?」
「ないない。俺は紳士なの」
「フフッ。そんなことを言って、送り狼になるなよ」
「う〜ん、送り狼かぁ。狼ジョニーちゃんなんてのも中々いいな」
「ねぇねぇ送り狼って?ネコに負けじと狼の宅急便かなにか?」
ジョニーの服の端を引っ張りながら素で聞いてきたを見て、大人3人組が顔を見合わせた。
こいつ知らねえ。
「いいか、、送り狼ってーのはなあ」
「そーそ!狼の宅急便のこと!さーあをヒューゴ邸までお届け〜〜〜♪びゅーーんっっ」
「わ〜〜!あはははは!!」
コングマンの説明を途中で遮ると、ジョニーはホラを吹いての腰辺りを掴んで持ち上げてだーっと走った。
は大喜びだ。
「下心ありありだな・・・」
「いや、真顔で関心してないで止めろよお前!!」
天然炸裂のマリーにコングマンがつっこんだが、ジョニーはを米俵状に持ち変えると「じゃ〜ね〜お二人さん☆」とさっさと酒場を出て行った。
米俵式のもたれ方が2回目のはまだ楽しそうにはしゃいでおり、二人に「ばいばーい☆」と言うとジョニーに運ばれていった。
外へ出ると、スタンとルーティが二人で空を見ながら話していた。
「よっ、お二人さん。夜でも青いお空の下でランデヴーかい☆」
「ち違うわよ!」
「明日、帰ってきたらどうしようかって話しをしてたんだ」
真っ赤になって大声で否定したルーティの隣から、スタンが片耳を押さえ苦笑いしながら訂正した。
それを聞いたは明日帰ってきたら?と首をかしげ、ジョニーは「ほぉ・・・」と感心したような声を出した。
「まず風呂入って着替えて飯食って酒飲んで」
「細かッ!!」
「あんた酒飲んじゃダメでしょ!」
「なーんかまとまったつっこみがないねぇ」
の言葉につっこみをいれた二人に対して、ジョニーが駄目押しをした。
じゃあスタンたちはどうなのさ、とふてくされながら聞き返してきたに、スタンが「俺〜?」といって照れくさそうに頭を掻いた。
「俺は〜とりあえずクレスタに残って・・・ヤギを飼って鶏飼って毎朝餌上げてブランコもつくって花壇も作って」
「お前も十分こまけえよ」
「ていうかクレスタ、なんだな?ふーん?へー?」
がつっこみを入れジョニーが茶々を入れると、ルーティに「もう帰んなさい!!」と怒っておっぱらわれた。
やっぱりかつがれたままのは二人に「おやすみー。良い夜を☆」と手を振り、ジョニーはそんなを担いでさっさと逃げた。
しばらく走ると、ジョニーはを下ろして膝に手をつき、肩で息をした。
そんなジョニーをがしゃがんでみていると、ジョニーは顔をあげて「行くか」と声をかけた。
二人でてくてくと歩いている間、特に会話もなかったが近かったのでとくに問題もなかった。
「もーついちゃったよ。ありがとね、ジョニーさん」
「いーってことよ。こんな遅くに女の子を一人で帰すわけにいかないからね♪」
と言ってジョニーがウィンクをすると、は「女の子ー?」といって笑った。
おいおい、とジョニーが苦笑いすると、今度はあーあと言って伸びながらあくびをした。
「結局送り狼にはなれなかったなぁ・・・」
「送ったじゃん」
「ん?まぁ、そうなんだけどな」
素で言ってくるに苦笑いすると、ジョニーはぴんとひらめいたようにぱっと顔を明るくした。
「なあ、送ったお礼に、キス一つくれるってのはどうよ?」
「はぁー?」
にーっこり笑いながらジョニーが言うと、はアホかこいつ、という目でジョニーを見た。
やっぱりそうかわかってたよわかってたさとジョニーがしゃがみこんでぶつくさいじけていると、はけらけら笑い出した。
「いいよ」
「マジでぇ〜?」
「今テンション高いからなんでもできるかも」
冗談っぽいの言い草にジョニーも立ち上がりながら冗談で返すと、は手でちょいちょいとジョニーをこまねいた。
手で言われたとおりかがむと、「目ーつぶって」とがにっこり笑いながら言ってきた。
「おいおいマジかよ・・・」
目を閉じながら小声でジョニーが言ったが、は気づいていなかった。
しばらく待っていると、唇ではなく頬にほんのちょっとだけやわらかな感触があたった。
「・・・頬ですか?」
「頬ですよ?」
「マジですか?」
「マジです。ヒューゴさんというかミクトランもよくやってきたよ?」
「・・・チッ、あの野郎」
本当に憎憎しそうにつぶやいたがには聞こえておらず、は首をかしげてジョニーを見ていた。
「ちょっぴり期待してたのになあ。ジョニーさんがっかりぃ」
「ガキ相手に何言ってんだか。んじゃ、おやすみ〜〜☆」
「おう、また明日」
手を振って分かれた後、ジョニーは宿屋への道を歩きながらふぅ、とため息をついた。
「ま、儲けたことにはかわりないし?いいってことにしましょうか。あれで本当に口にこられてたら止める気なかったろーしなー」
あはははは。と、あくまで明るく言っているが、内容はかなり痛い。
そしてジョニーは更なる真実を知らない。
「すまんねネコくん。肉きゅう協力感謝」
「にゃあっ」
ジョニーがいなくなり屋敷の玄関近くまで来ると、は懐からネコをとりだした。
「本当は鼻をひっつかんで遊ぼうと思ってたけど、まあいっか」
まさに遊んでやろうと手を伸ばした瞬間、ネコが現れたためとっ捕まえて協力(強制的)してもらったのだ。
顎をカリカリと掻いてから離してやると、ネコはたーっっといなくなってしまった。
「ただいまー・・・・」
「遅いわよ。女の子がこんな遅くまで遊んでちゃいけません」
「うひゃあっ!マリアンさん起きてたの!?」
そーっと屋敷に入ると、目の前にマリアンが立っていた。
さっそく怒られて小さくなると、は扉に半分隠れながらマリアンに質問した。
「ええそうよ」
「あちゃあ〜。先に寝てて良かったのに」
「だって心配だったんですもん。それより、今日はリオンの部屋でも使って寝る?」
ひょんなことを聞いてきたマリアンに、は目を丸くして驚いた。
が、すぐに我に変えると、さっさと答えを返した。
「いや、斬られそうだからいい」
「フフフ、そう」
「マリアンさんはいいの?」
くすくすと笑うマリアンにが問いかけると、マリアンはん?と首をかしげてから答えた。
「私は自分の部屋で寝るわ。あとどれだけ、ここですごせるか分からないから・・・」
「・・・そうだね。俺も自分の部屋で寝るよ。久々にここのベッド満喫したいからね」
と言うと、はマリアンと顔をあわせて笑った。
「それじゃあ寝ましょうか」
「うん、おやすみなさいー。あ、マリアンさん」
「なぁに?」
電気を消そうとしていたマリアンに、が急に声をかけた。
「明日さ、午後まで暇だから・・・・それまでリオンの部屋でごろごろしない?お菓子とかお茶もって!」
「・・・・いいわね。賛成!」
それを聞いてやった!と喜ぶと、はまたおやすみと一言言って部屋に向かっていった。
マリアンはの後姿を見送ると、電気を落とした。
暗い廊下はいつも以上に人の気配を感じさせなく、は寂しく感じた。
ここにいた人たちはもういない。と思うと、ミクトランへの恨みがふつふつとわきあがるようだった。
「明日・・・・勝ってやる。絶対に」
勝てると分かっているのに、は何故かそう言わずにいられなかった。
久々に自分の部屋に戻ると、なんだか暖かい気分になった。自然と緩む顔をそのままに、はベッドへ倒れこんだ。
脇にあるテーブルの上においておいた子供たちからの例の手紙を見ると、はそれを鞄の中にしまいこんだ。
剣を横に置き、靴を脱ぎ、胸までしかない白い鎧を脱ぐと大の字になって寝転がった。
ふわふわと上下するベッドが余計に眠たさを煽る。
あまりに懐かしく感じるベッドの上で、はイレーヌたちとの生活を思い出しながら穏やかな気落ちで眠りに付いた。








続く
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決戦前夜。ただでは得をさせない主人公。哀れジョニーさんまたチャンスを掴んでください(待て)
今回分かる人にしかわからないネタが多かったですねぇ。
DA・I'sとか(ダイズかよ)あんまりそわそわしないでぇ?♪とか(ラムかよ)皆の歌ですとか(教育テレビかよ)
三村ゲームかよ。(結局三村だよ)
ていうか今回ヴァカ長!!まあ主人公帰ってきたしいいってことで・・・・だめ?(あたりまえだ)
にしても今回カッコのつっこみ多かったなぁ。だめだこんなんじゃー!!(下手くそめ)
つかあのパーティーつっこみいなきゃなりたたないって。今回はスタンとルーティとコングマンが結構がんばってたけど。(ありえんメンバー)
うん、まあおいといて(コラ)ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。