守護竜自爆装置を作動させたスタンたちは、一時ラディスロウへと戻った。
相変わらず力の無いをつれて戻った頃には、ウッドロウたちも帰ってきていた。
「・・・・さん・・・」
ルーティとマリーに引っ張られ、ぐったりしながら連れてこられたをみて、フィリアが心配そうに声をかけた。
誰もそれ以上喋れず、いやな沈黙がラディスロウに流れた。
「・・・腹減った・・・」
「「・・・はぁ!?」」
「・・・。あははははっ。くんらしいな」
「まったくだ」









my way of living 34
〜落とすのは便器の汚れだけにしてください(下品ネタ禁止)〜









の言葉にスタンとルーティが素っ頓狂な声をあげ、ウッドロウとマリーとフィリアは声を上げて笑った。
「だってさー・・・俺捕まってからずーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっと飯くってねえんだよ?ごはんー。味噌汁ー。カレー。パンー。肉ー。チョコバナナー。からあげー。サバ」
「はいはいはいはい。もうわかったから」
放っておけば終わりなく食べ物の名前を言っていそうなに、ルーティがため息をつきながらつっこんだ。
『おや?ですか?元気がないから全然気付きませんでしたよ。久しぶりですね』
ウッドロウの腰から顔が見えたのか、イクティノスがに声をかけた。
久しぶり、という単語に、マスターや仲間たちが首をかしげている。
「あ?えーっとイクティノス?」
『そうですよ。1000年ぶりですか』
「1000年?!」
とんでもない年月をきいて、スタンが大声を出した。
ルーティたちも驚いている。
『ええ、とは1000年前にあっています。そうでしょう?ディムロス』
『え・・・・いや・・・私は分からんが・・・』
『忘れてしまったのですか?ふと現れたと思ったら、いつの間にか私たちの輪の中に入ってた』
『・・・?ん?!?あの煩いのか!』
「ぅをーい」
思い出したのか、ディムロスは思わず本音をだしてしまった。
そんなディムロスにさりげなくがつっこんだが、ソーディアンたちは無視して話を続けていった。
『そういえば・・・・そういえばそうね。いたわ、あなた。いつもだれかれ構わず絡んではコントをして・・』
『おお、おお!そういえばおったのぅ。懐かしいわい』
「あのー・・・話しが見えないんだけど・・・」
ソーディアンたちの中で勝手に話しが進む中、スタンが横から首をつっこんだ。
ああ、そうだったとディムロスがマスターたちに気付いた時、一行はラディスロウのコントロールルームについていた。
マリーとルーティがを床に下ろしていると、リトラーが全員に声をかけてきた。
『帰ってきたか。諸君、ごくろうだった。・・・・おや?そこにいるのはではないのか?』
「そうでーす」
『久しぶりだな』
「だからー!なんでがリトラーやアトワイトたちと知り合いなわけ!?」
またもリトラーに久しぶりと声をかけられるを見て、とうとうルーティが暴走しだした。
慌てるスタンとは裏腹に、リトラーは画面からにっこりと笑いかけながら説明をした。
『今から約1000年前、天地戦争時代の丁度終わりごろ。ハロルドに連れられてひょっこり現れたのがだ。入ってくるなりハロルドが私の護衛兵だとかなんとか・・・・とにかくダイクロフトに突入するという大事な時期に急に軍に入ってきてな、それからは毎日すごかった』
昔を思い出すようにリトラーが言った。
『まったくだ・・・』
「「「「・・・・・」」」」
ソーディアンの声が聞こえる4人はそろって沈黙した。ディムロスの声を耳にして、なにをしたんだ、と心中つっこんだ。
リトラーの話ししかきいていないマリーは、その天然を活かしに活かして「そうだったのか」とに話しかけていた。
「うーん、おそらくいつかの俺が行ったんだろうけど、残念ながら今の俺はまだ1000年前には行ってないんだよね。多分もう少ししたら行くから、その時はまた夜露死苦」
『そうか、それは残念だ。まあ楽しみにしているよ。今の私がいうのもなんだがな』
くすくすと笑いながら言ったリトラーだったが、はにっこりと笑って見せるだけだった。
『どうしたんだ?元気がないようだが・・・まあ、あえて聞かないでおこう。戦いの中では・・・・何が起こるかわからないからな。さて、これからのことに話をもっていこうか。守護竜の爆発を確認した。残るはバリアー除去装置だが・・・・』
「それならば心配ない。イクティノスに指導をうけて、もうすでに出来上がった」
『そうか、ならば、あとは浮遊クルーザーで敵地へ乗り込むまでだ』
「はい!」
リトラーに指示を受けると、スタンがしっかりと返事をかえした。
それじゃあ行こうか、とそれぞれが武器の確認やアイテムの確認を始めた頃、そういえば、とマリーが全員に声をかけた。
はどうするんだ?」
「あ・・・・どうしよっか」
のことを思い出して、スタンがうーんと唸りながら眉をひそめた。
ウッドロウとフィリアもを見ている。
「あんた、エレベーターに乗ってダリルシェイドに戻りなさい」
そんな中、ルーティが冷静に考えたすえの判断か、に言った。
ルーティを見て、スタンたちもそれがいいよな、と顔を見合わせていた。
だが、はルーティを見上げると首を横に振った。
「なんでよ?今のあんたじゃ戦力にもならないし、なによりヒューゴのところへ行くのよ?またつかまりでもしたら、今度こそ逃げられないかもしれない」
「別にいいよ。それに、俺にはまだやらなきゃならないことがある」
そういうと、は床に手をつきぐっと力をいれ、無理やり立ち上がった。
腰についている剣を確かめるように手で触ると、行こう、と扉の方を見て言った。
立つのもやっとのを見て止めようとしたルーティだったが、なにを言っても帰らなさそうなを見て、諦めたようにため息をついた。
驚いてを見ていたスタンたちだったが、「よし、行こう!」というスタンの一声で我に返り、それぞれ部屋を出て行った。
がコントロールルームからでていくときだった。リトラーが声をかけたきた。

「なんすか?」
『がんばりなさい』
「・・・・おっけ」
今だけでなく、これからのことまで指しているようなリトラーのいいように、はふっと顔をゆるませた。
先ほどの作り上げたような笑い顔よりは表情がでているを見て、リトラーも顔を緩ませた。
浮遊クルーザーに乗り込むと、イクティノスの指導にしたがってスタンがそれを操縦した。
ダイクロフトを目指して飛んでいる間もは一言も喋らずぼーっとしていたが、途中、フィリアに食料をもらい体力を回復させていた。
「見えてきたわ、ダイクロフトよ」
ルーティが前に見えてきた大きな傘じょうの浮遊物を見て言った。
『ウッドロウ殿、私をバリアー除去装置の前まで』
「わかった。行ってくる」
イクティノスをもつと、ウッドロウは操縦室をでていった。
スタンたちがバリアー除去装置について話していると、上の甲板部分から、ピッと一筋の光が発射された。
バチバチッッという音が聞こえ目の前がぱっと光ったかと思うと、ダイクロフトの周りに張り巡らされていたバリアーがすっと消え去った。
「バリアーが消えた!」
「やったぞ!イクティノス!」
ウッドロウが嬉しそうに少しはしゃぎながら入ってくると、すぐさま椅子に座りシートベルトをつけた。
その後なにやら四角いものを取り出すと、ぱか、とあけて中に並ぶスイッチを押した。
「リトラー、これより我々はベルクラントへ突入する」
《了解した。諸君らの健闘を祈る》
どうやら通信機だったらしいそれを鞄にしまうと、ウッドロウはスタンと目を合わせ、スタンは浮遊クルーザーを発進させた。
ベルクラントに近づくにつれ、緊張感も高まった。が、はリンゴをしゃくしゃくとほおばりながらぼんやりとダイクロフトを眺めていた。


ベルクラントについてすぐ、モンスターが襲撃してきた。
『ベルクラントの最上階へは各階層をつなぐエレベーターを使っていけるはずだ。まずはエレベーターを探せ』
モンスターをなぎ払っているスタンにディムロスが指示をだした。
ディムロスに返事をかえすと、スタンは全てを倒さず道を作る程度にモンスターを倒し進んでいった。
心配してスタンがを見ると、は無表情ながら戦っていた。
「・・・、大丈夫?」
「ああ。平気さ。こいつらに比べたら」
はいつものようにあえてモンスターを倒さず逃がしていたが、他の仲間たちに倒されレンズになっていくモンスターの方を見て感情のない声で言った。
「俺はただ動きづらいだけ。こいつらは、死んでいく。俺は痛くはないよ。ほら、行こうスタン」
両手を横に広げると、は「ほらほら」といってスタンを押していった。スタンは納得してない顔だったが、何も言い返せずただ押されていった。
最後の階段を発見して登ると、そこは制御室のようだった。奥から話し声が聞こえる。
「おやめください、ヒューゴ様!世界を救うのに、どうして破壊が必要なのですか!!」
「うるさい!お前は黙っていろ!」
「きゃぁっ」
ぱしんっっという音が聞こえたかと思うと、ルーティがヒューゴ、と一言つぶやき走って言った。
その後をスタンが急いでおいかけ、も一緒に走ろうとしたとき、後ろから誰かに腕を引かれた。
くん、君は下がっていたまえ」
「みつかっては、またつかまってしまいますわ」
「フィリア・・・ウッドロウ・・・・・。わかった」
マリーたちが走っていく中立ち止まり、ウッドロウとフィリアにそう言われると、はこくんとうなずいた。
それを見た二人はにっこり笑うと、ウッドロウは頭を、フィリアは二の腕あたりをぽんと叩いて走っていった。
ウッドロウについていた女の子もぺこりと頭をさげると、ウッドロウの後ろにぴったりと付いて走っていった。
仲間たちの心使いをうけ、それに従いゆっくりとあるきながら仲間たちのやりとりが見える位置まで来ると、隠れられる程度の位置に座り込んだ。
ふぅ、とため息をつくと、はヒューゴと向かい合うスタンたちを見た。
「とうとうみつけたわよヒューゴ!」
「ふん、きさまらか」
というヒューゴの後ろにはマリアンが泣きながら座っている。
「観念しなさいヒューゴ!どうやって空中都市を復活させたかは知らないけど、あんたはここで終わりよ」
「実の父親に剣をむけるのか」
アトワイトを構えるルーティに、嘲笑いながらヒューゴが言ってきた。
そんなヒューゴの反応を見て、ルーティはぎゅっと剣を握り返しヒューゴを睨んだ。
「なによ今更!あんたなんか、父親なんて認めないわ!」
「ほう、驚かんのか?」
「リオンから聞いてるわ。全てアンタが計画しいたってこともね」
「やつめ・・・余計なことを」
怒りを含んだ声で答えるルーティの言葉を聞いて、ヒューゴがチッと舌打ちをした。
リオンという言葉を聞いて、マリアンが反応した。
「リオンは?エミリオはあれからどうしたの」
「死んだわよ。あなたを守ろうとしてね。こんなやつの命令に従って・・・・私たちと戦って・・・・・」
「そんな・・・・そんな!」
悲しそうに言うルーティの言葉を聞いて、マリアンがまた泣き始めた。
「馬鹿よあいつ・・・!!死んじゃったら、なんにもならないのに・・!!」
「そうでもないぞ。あいつは私のためによく働いてくれた」
うつむき、吐き捨てるように言ったルーティにヒューゴがにやりと笑いながら言った。
ヒューゴの言葉を聞いたルーティは、バッと顔を上げ、信じられないものでも見るかのように目をカッと開いた。
「それでも親なわけ?!」
「私の偉大な計画のために死んだのだ。決して無駄ではない。奴も本望だろう」
「なんてことを・・・・」
今度は本当に悲しそうに、アトワイトを握り目を細めた。
「エミリオ・・!!」
「マリアンさん、こっちへ!早く!」
いつの間に後ろに回ったのか、スタンがマリアンを後ろから必死に呼んでいた。
「好きにしろ。リオンが死んだ今となってはお前に利用価値はない」
見向きもせずに言うヒューゴからマリアンを助け出すと、スタンはのところに急いでつれてきた。
!」
「マリアンさん!」
の顔を見て驚くと、マリアンは何とか逃げられたことを察し、ますます泣きながらに抱きついてきた。
、マリアンさんを頼む」
『そこの脱出ポットから逃がしてやれ』
「わかった」
にマリアンを預けると、スタンはすぐに戻っていった。
しばらくなき続けると、マリアンはようやく落ち着き顔をあげた。
、よかった、助かったのね・・・!」
「うん・・・。マリアンさんも助かってよかった・・・」
「あなた、まさかまだ身体が・・・?」
ぎこちなく笑うを見て、マリアンがはっとしながら問いかけた。は苦笑いすると、・・・うん、と小さく答えた。
の答えを聞くと、マリアンはまた泣きそうになりながら抱きついてきた。
「さあ、マリアンさん、コレに乗って逃げて。ダリルシェイドに戻らなくちゃ」
「あなたは?あなたはどうするの?」
「俺は残るよ。ヒューゴさんが残ってる」
脱出ポットから目を離し、ヒューゴの方を見たに、マリアンが「なんですって」と声をあげた。
「こんな身体でどうしようというの!あなたも・・・・いえ、あなただけでも逃げて、生きて・・!」
の肩を掴んで言うマリアンに、はやんわりと横に首を振った。
「あなたが生きていなければ意味がないんだ。リオンはマリアンさんのために・・・・」
「・・・・・」
の言葉に、マリアンがうつむいた。
今度はがマリアンの肩に手を置くいた。マリアンもそれに気付き顔を上げた。
「マリアン、僕は・・・・僕は、君に生きて幸せになって欲しい。あの屋敷の中で、マリアンだけが救いだった。だからどうか逃げて、僕のことを忘れて、幸せになって・・・・」
マリアンの目をまっすぐ見てはなさず、まるでリオンが喋っているかのようにマリアンに言い聞かせた。
「・・・・って、あいつがここにいたらこういうかな〜なんて」
の言葉を遮って、マリアンが抱きついた。
「・・っっ、エミッ・・・リオ・・・・!!エミリオ・・!!」
「・・・」
そのまま泣き出してしまったマリアンに何も言うことが出来ず、はなんとなく抱き返してみた。
ますますマリアンが泣き出してしまって慌てたが、しばらくたっておちついたようなのではほっと胸をなでおろした。
「ありがとう・・・・。エミリオが帰ってきたみたいだったわ。あんまりあの子ににているものだから、ついつい泣いてしまって・・・。本当に、エミリオがいるのかと思った。顔や髪の色が似ているからかしら」
少しぐずつきながらの頬を右手でなでると、マリアンはにっこり笑った。なんとなく母親を思わせるそのしぐさに、までリオンになったような心境に襲われた。
「そりゃあよかった。あいつには似てるって言われて喜ばれたこと無かったから」
が冗談を返すと、マリアンはくすくすと笑った。もくすくすと笑うと、マリアンを脱出用ポットまで連れて行った。
「それじゃあまた・・・後で。屋敷でまっててね。他のメイドさんたちが心配してるだろうから」
「ええ・・でも、本当に大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。さっき少し食べたから、きっとまだ動けると思う。なにより、マリアンさんは助けなきゃ。あいつにどつかれちゃう」
言って肩を竦めたを見てマリアンが笑った。そのまま手を振ると、マリアンは脱出用ポットに乗った。
出て行く脱出用ポットの窓から手を振るマリアンに笑顔で答えると、その後残ったは寂しそうに脱出用ポットが出た後の扉を見ていた。
扉からは空が、太陽の光を遮断されて暗くなってしまった海と陸地が見えた。いつかの窓の風景が頭に蘇ってすぐ消えた。
「・・・せめて、マリアンさんだけでも助かってほしいよね」
そうつぶやくと、はもとの場所へと戻った。
戦況は最悪だった。
スタンはヒューゴの5メートルほど手前でディムロスをついてやっと立ち上がり、ルーティはヒューゴをひたすら睨みつけながら膝をつき肩で息をし、マリーは壁まで吹っ飛ばされており、フィリアはクレメンテを抱きかかえながら座りこみ、ウッドロウはイクティノスを床に突き片膝をついていた。ピンク色の髪をした少女はウッドロウに寄り添っている。
「うっ・・・強い・・・!!」
『ヒューゴの腕では無い。ベルセリオスの力だ。だが、何故なのだベルセリオス。何故お前が!』
『ははははっ。まだわからんか?』
困惑したようなディムロスに、黒いソーディアンが笑いながら悪戯っぽく返した。
スタンが肩で息をしながらヒューゴを睨んでいると、後ろからマリーが「でやぁぁあああ!!」と叫びながらヒューゴにつっこんでいった。
ヒューゴがマリーの剣をソーディアンで受けると、マリーが怒りを押し殺すように問いかけた。
「ヒューゴ、すべてはお前の計画だといったな。ダリスもそうなのか!?」
最後は声を上げてしまったマリーの問いかけを聴くと、ヒューゴはわざとらしく「ああ・・」と言いながら遠くを見た。
「あの傭兵隊長か。腕立つ奴だったかったからな、仲間にしてやった。この剣の力で過去の記憶を消してな」
「剛雷剣!!」
「ぬぉああっ!!」
マリーの攻撃が当たり、隙ができたヒューゴに、フィリアとウッドロウが次々と攻撃を仕掛けていった。
「ホーリーランス!!」
「ウォールウィンド!」
「ぐあぁぁああっっ」
二人の攻撃が当たったものの、ヒューゴはまだ立っていた。
『闇雲に攻撃してもダメじゃ。力をあわせ多重攻撃をかけるのじゃ』
クレメンテが言ったことをフィリアがマリーとチェルシーたちに教えると、二人とウッドロウが顔を見合わせ行動にでた。
「裂・魔神剣!!」
「迅雷!!」
「ストリームアロー!!」
「う・・・ぉのれぇぇ・・!」
3人の攻撃があたると、とうとうヒューゴが膝をついた。
『その調子じゃ!』
「うるさい!!これしきのことで私は倒されんぞ!地上を破滅に導くまでは!!」
クレメンテの言葉を遮るようにヒューゴがどなった。
だがなんとか立ち上がったときにはもう遅く、スタンが胸元に斬りこんでいた。
「爪竜連牙斬!!」
連続で斬りこまれると、ヒューゴはうめき声をあげながら床に倒れた。
まだソーディアンを握り締めながら肩で息をするヒューゴに、ディムロスが声をかけた。
『ヒューゴ!ベルセリオスがお前に知識を与えたのは分かった。だが何故だ、何故地上の破滅をのぞむ!』
「それが私の望みだ!」
「何ゆえの望んだ。お前も天上人の末裔か」
「違う!私は・・・私は・・・・私は望んだのだ・・・!」
ウッドロウを睨みつけながらヒューゴ言い返すと、ルーティが堰を切ったようにヒューゴに怒鳴り散らした。
「リオンや私をすててまで望んだ望はなによ!」
「だまれ!だまれうるさい!」
ぶんぶんと首をふってルーティの言葉を無視すると、ヒューゴが立ち上がった。ここまで荒れているヒューゴを見るのは初めてだ。
「空襲剣!」
「く・・・うわぁあ!」
なんとか受け止めようとディムロスを構えたスタンだったが、あまりの威力に負けてしまった。
「サイクロン!」
「ウォールウィンド!」
「うわあああぁぁぁっっ!」
が、その後にすぐにフィリアとウッドロウが晶術をかけた。
一気に攻撃を食らったヒューゴは、ソーディアンをつきながらもやっと立っている。
「私は・・・・私はやらねばならない・・」
野心の残った目でまだスタンたちを見るヒューゴに、ルーティが泣きそうな声で攻撃をした。
「スナイプロア!!」
「獅吼爆炎剣!」
スタンが獅吼爆炎剣を打つと、ヒューゴはとうとう倒れこんだ。
肩で息をしながら、スタンは「・・やった・・・!」とディムロスに言い、ディムロスも『ああ、かたずいたな』と静かに答えた。
その時だった。倒れていたヒューゴが、急に声を上げた。
「おも・・だした・・・思い出した・・」
「まだやる気なのか」
「私は・・・望んでなど・・・いなかったんだ・・う・・ルーティ・・・」
マリーの問いかけに望んでいなかったとだけ答えると、顔をルーティの方へ向けた。
ルーティはまだヒューゴを睨みながら、「なによ、今更命乞いっ?」と冷たくあしらった。
「私は・・ようやく自分をとりもどした・・・・・お前に・・・・お前に会いたかった」
「やめてよっ」
『まって。様子が違うわ。さっきまでのヒューゴじゃない』
憎々しそうに吐き捨てて目をそらしたルーティに、アトワイトがヒューゴを見ながら不思議そうに言った。
「すまない・・・・私は・・お前を捨てたくなかった・・だがあの剣が・・・あの剣が私に!・・私は・・・・嫌がるクリスに命じて・・お前を捨てさせたんだ・・・・ぅっ・・・・すまなかった・・・」
「なんでいまさらそんなこというのっ・・」
今頃になってあやまってきたヒューゴに、ルーティが余計に憎々しそうな声で言い返した。
「エミリオにもすまないことをした・・・でも・・もうすぐ逢える・・・。逢って・・エミリオとクリスにもあやまらなければ・・・・・」
仰向けになると、どこか夢見心地なような、泣きそうな声でヒューゴが言った。
そんなヒューゴを見て本当に戻ったと気付いたのか、ルーティが泣きそうになりながら「なんで・・・なんで・・・・?」と小さな声で繰り返した。
ルーティ・・・・・と小さく名前を呼ぶと、ヒューゴはルーティの方へ顔を向けて優しく微笑んだ。
「ルーティ・・・お前だけは・・・・精一杯、生きてくれ・・・愛する・・・娘よ・・」
そう言ってゆっくり目を閉じたヒューゴに、ルーティが「お父さん!!」と叫びながら駆け寄った。
「お父さん!はっきりいってよ!!どうしたのよ・・!なんで・・・なんでこんなことしたのよ!!」
ルーティはかけよると、泣きながらヒューゴをゆすった。
『もう、だめよルーティ。命は・・・失われたわ・・・』
アトワイトが言葉を詰まらせながらルーティに言うと、「なんで・・・なんでなのよ!!ちゃんと説明してよ・・・!!」と言いながら、ルーティは何度も床を叩いていた。
「・・・・・ヒューゴさん・・・」
も仲間たちの後ろから一部始終を見ていた。膝を抱えるように座ると、膝の上に頭を落とした。とうとうヒューゴも死んでしまったのだ。
『説明なら私がしてやろう』
ルーティの泣き声しか音が無かったはずのそこに、ヒューゴのもっていたソーディアンの声が響き渡った。
ディムロスが『ベルセリオス!』と叫ぶと、スタンが「あのソーディアン、一人で話してる。宙に浮いてるよ!」と少しマヌケに驚いた。
『その男は私の支配を受けていたんだ』
『あなたがやったというの、ベルセリオス』
『いいかげんに気付いたらどうだ?それとも諸君らは、天上の王を忘れてしまったのかな』
責めるように言うアトワイトに、黒いソーディアンがおかしそうに笑いながら答えた。
ソーディアンたちがそろって『ミクトラン!』と叫ぶと、ソーディアン・・ことミクトランは満足そうな声をあげた。
『ようやくの正解だ』
ソーディアン同士の話だったので、マリーとチェルシーは首をかしげるばかりだ。
ソーディアンたちの会話をルーティやウッドロウが二人に伝えている。どうやらソーディアンたちの話は終わったようだ。
ヒューゴがミクトランに操られていたことを初め、ミクトランがソーディアンベルセリオスのコアクリスタルに死ぬ間際、人格を投与したこと、死んだフリをして1000年間この計画をたてていたことなど、全てを話した。
『ヒューゴは生真面目な考古学者だった。遺跡でソーディアンを発掘し、私に操られた』
「許さない・・・・あんたさえいなければ・・!!私たちは、私たちの家族はこんな運命じゃなかった!!」
そう言ってルーティが立ち上がると、イクティノスが「ソーディアンマスター以外は下げたほうがいい」と声をあげ、ウッドロウがマリーとチェルシーに声をかけてさげさせた。
、大丈夫か?」
「マリーさんこそ」
後ろに下がってすぐ、階段のあたりで隠れていたにマリーが声をかけた。
にっと笑いながらがマリーに言い返していると、マリーの後ろから少女がひょっこり顔をだした。
さんというのですかぁ?私はチェルシー・トーンと申しますぅ。以後、お見知りおきを」
「チェルシーだねぇ。うん、よろしくぅ」
ぺこりと頭を下げたチェルシーの喋り言葉をが真似して返すと、マリーとチェルシーがくすくすと笑った。
も一緒になって笑っていると、二人の後ろから酷い爆発音と爆風がふいてきた。
危うく飛ばされかけた二人だったがマリーは壁を掴みなんとかそれを押さえ、チェルシーはマリーに引っ張られてなんとか助かった。
「ウッドロウ様!」
「なんという力だ・・・!ルーティ!」
爆風がやんだ瞬間、二人は一目散に呼んだ名の仲間の元へかけていった。
ミクトランの・・・というか、ソーディアンの形が先ほどと違っている。第2形態だ。
マリーがミクトランに斬りこんだが、簡単に返されてしまった。
『諸君らにも見せて上げよう』
ミクトランが言うと、またもベルクラント全体から嫌な機械音が聞こえてきた。
「くそぉぉおお!!」
スタンが立ち上がってミクトランにつっこんだが、いとも簡単に跳ね返された。
それからすぐ、ベルクラントからヴン・・・・・と機械が動き出すような音がし始めた。
「そんな・・・・また撃つつもりか!?」
がばっと立ち上がり、勢い余ってはスタンたちのところまで飛び出してしまった。
!?なぜ君がここにいる!?』
いきなり目の前に現れたに心底驚いたらしく、ミクトランが今までに見たことの無いくらい動揺していた。
「俺は神出鬼没な地獄の軍団ショッカーから空間移動を教わったんだ!じゃなくて・・」
『今素だっただろう?』
「うっせ。とにかくだ。今すぐベルクラント止めやがれ!!」
痛いところでつっこみを入れてきたミクトランをぺっと跳ね返すと、はずびっと指差しながらベルクラントの静止を求めた。
が、ミクトランは笑い、「もう無理だよ」と言った。
ミクトランの言ったとおり、その後すぐにベルクラントが発射された。酷い爆発音が聞こえ下が光ったのが見えた。土がまた上がってくるのを見ると、はミクトランをぎっと睨んだ。
『諸君、今の発射で外郭が完成される。王国が完成するのだ。・・なにを睨んでいるんだい?ダイクロフトにいれば、こんなところを見ずにすんだのに・・・』
「どうするかは俺の勝手だ。その前に聞く。イレーヌさんとバルックさんにあんな捨て駒のような役をさせたのはお前か」
ため息をつきながら言ったミクトランを無視してが問いかけた。ミクトランはしばらく沈黙すると、「あれは彼らの意思でだ」と返してきた。
『さて、話も終わったことだ、そろそろダイクロフトへ帰ろうか?』
「誰が!!・・・・・・っっ!!?」
誰が帰るか、と言おうとしただったが、それ以上口が・・・というよりは身体ごと動かなくなってしまった。
『さあ、こっちへくるんだ・・・』
ミクトランの言葉の通り、吸い込まれるようにはミクトランの方へと歩いていった。
途中倒れこんでいたマリーが「いくな!」と止めたが、はただ呆然と前を見て歩いていた。
『待てミクトラン!スタン、立て!ミクトランが逃げてしまうぞ!』
「う・・・くそ・・!」
スタンが何とか出せたのは腕だけだった。腕をついてぐっと力をいれたが、身体は一向に立ってはくれない。
そうこうしているうちに、ミクトランとはダイクロフトへと続くエレベーターまでたどりついていた。
『相変わらずだなディムロス。この状況でもまだ私が逃げるというのか。この平気はもはや必要ない。諸君らを地上へ帰してあげよう』
シャッという音と共に、エレベーターの扉が開いた。中に入ると、ミクトランはディムロスに最後の言葉をかけながらエレベーターの扉を閉めようとした。
「じょう・・・・・だんじゃね・・・・!誰が!!」
!?』
扉が閉まりかけたとき、がガッと扉を掴み、外へ飛び出した。
飛び出しざまに、しっかりと上へ上がるボタンを押して。
「剣に腕はないだろう?残念だったな」
倒れざま、はミクトランのコアクリスタルに向かって笑って見せた。
まだを呼ぶ声が聞こえた気がしたが、その声もちょっとすると聞こえなくなった。
『全員、急いでダイクロフトに乗り移るんじゃ!!』
クレメンテがはっとしたように全員に声をかけた。なんとか立ち上がると、まずはウッドロウが扉まで走ってきた。
「ダメだ、扉は完全にしまっている!」
「どいてくださいウッドロウさん!!フレアトーネード!!」
ウッドロウが動けなくなっているを急いでつれて離れると、スタンが呪文をすぐにかけた。
扉は壊れはしたのだが、その先に広がるのは絶えず姿をかえる空だった。
もうすでにダイクロフトと切り離されていたらしい。
「しょうがない、とにかくここから出よう!」
とスタンが言ったのだが、結局7人はベルクラントから自然と出ていた。
重いベルクラントは下へ下へとおちている。下は、真っ青な海だ。
『晶力を集めてなるべく落下速度を落とすんじゃ!海に叩きつけられるぞ!』
「げぇ!そんなの嫌よ!」
クレメンテが言うなり、ルーティはアトワイトを取り出した。
他のマスターたちもソーディアンと取り出すと、4人はソーディアンに集中した。
ドォォォォォ・・・・・・・・・・という音と共に、下からは大きな水しぶきが上がってくる。海が近い。
チェルシーはウッドロウにしがみついている。
・・・と、光が全員を包み込んだ。
「「「「うわぁぁぁああああああ!!」」」」
「「きゃぁぁぁぁあああああ!!」」
海に落ちる直前、衝撃が和らいだようだ。全員が生きていることでそれがわかる。
海の上に顔をだすと、黒い船が現れた。
「なんてことだよぉ〜♪ソーディアン使いが降ってきた〜♪どぉいぅことだぁ〜よぉ〜♪世界はいったい、どんな運命に巻き込まれるっていうんだ」
「歌ってないで助けてください!」
「お、すまねえな」
スタンがもっともなことをつっこんだ。
歌っているのはジョニーだ。ベルクラントが落ちたときに波をかぶったのか、ずぶぬれになりながらスタンたちににっこり笑っている。
衛兵たちが小船を下ろしスタンたちを救助しようと慌てていると、ルーティが「ちょっとまってスタン」とスタンに声をかけた。
「いない・・・・がいないわ!!」
「なんだって!!?」
周りを見回してみても、の姿はどこにもなかった。ルーティの声が聞こえたのか、ジョニーも「なんだって!?」と驚いた。
が!?ってことはもしかして・・・海に?!」
「助けなきゃ!」
ジョニーの言葉を聞いてスタンが海に潜ろうとした。が、ルーティに両手で捕まえられてしまった。
「今のアンタじゃ無理よ!」
「そんなこといったってほっとけるかよ!」
「俺が行く!!」
「ジョニーさん!?」
スタンや衛兵たちが声をかけたときはもう遅く、ジョニーはすでに海にとびこんでいた。



海の中で一人、はぼんやりと目をあけた。
(・・・・海か。どーりで目が痛ぇ)
ベルクラントから落ちてくる際、は空から色々な場所を見ていた。ダリルシェイド、ノイシュタット、カルビオラ、アクアヴェイル、ハイデルベルグ・・・・。そうして周りをぐるりと見回すと、今度は横を見て自分がどれだけの速さで落ちているのか実感してみたり、海を見てどれくらいの距離があるのか考えてみたり、ダイクロフトを見てあれくらいの高さから来たのか、と改めて実感してみたり。
案外落ちることを楽しむと、次に行き着いたのは海の中だった。海におちる寸前で、ふわりと身体が浮いた気がしたが、はあえて目を閉じた。
少しずつ沈んでいっている自身を感じながらも、はぼけーっとしていた。
(あー・・・もう別にいいか。身体も動かないことだし・・・。このまま海の底に行くっていうのも良いな。でも、冷たいんなら底に行く前に死にたいな・・・)
と呑気に考えて目を閉じると、周りの水が動いた気がした。
何かな?と思った瞬間、は誰かに腕を引っ張られ引き上げられていた。








続く
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むはぁーー。やっとこさかけましたーーーー!!(打つの遅いー)
最後の最後にでやがりました。我らがヒーロー(どちらかっていうとフィバッてるのはここらだけなので我がヒーロー)ジョニーさん。
さーて楽しくなるぞぉ〜(待て)
いや、てか自分テンション低ー。(知るか)
つっこみだけはテンションいつも通りで。(いやだからなに)
主人公・・・ヒューゴさんが死んでしまうのをもう先に受け流して(流したのかよ)しまいました〜。マリアンさんに帰ってから世話になろう(待て)
ていうかルーティ切ない〜〜・・。ここはスタンに癒しを(爪竜連牙斬)
こんなの読んで下さった方、ありがとうございました〜〜(礼)