王の謁見も終わり、一行は飛行竜の止まっている展望台までスタンの見送りに来ていた。
「これで晴れて自由の身だな」
「誰かさんには散々こき使われたけどな、なぁ、リオン!」
スタンが嫌味臭く言うと、リオンは少しむっとし、他の仲間たちはくすくすと笑った。
「スタンてリオンだけじゃなくてみんなに使われてたじゃん」
「うーん綺麗な夕日だっ」
「うわぁいシカト☆」
そんなスタンにがさらりとつっこむと、スタンは額に手をかざし、遠くに見える夕日を見て話を流した。
「スタンくんも話を流すのが上手くなったな」
そんな経験積むな、と、思わずつっこみそうになったのはリオンだけだった。









my way of living 32
〜ああ・・・・もう無理ッス(何)昼メロかYO☆〜










「自業自得だ。だが、実際、お前らもよくやってくれた」
ふん、と鼻でかるくあしらいながらリオンが言うと、ルーティが「まーたぁ」と呆れたようにため息をついた。
「かわいげないわね。ありがとう、って一言がなんで言えないのかしら?」
「ふん、知るか」
「その反応は可愛いと思うよ」
「・・・・」
ルーティの言葉を聞いてそっぽを向いたリオンを指差しながらが言うと、リオンは無言での指を普通は曲がらない方向に曲げた。
あぎゃぁぁぁと小さくうめくの横で、仲間たちはさっさと話を進めていった。
「でも、これでようやく自由に冒険できる身分になったんだよな・・・・・」
「なにいってんのよ。まだ冒険の旅を続けるつもり?帰る家があるんだから、あなたは待ってる人のところへ胸張って帰ればいいのよ!」
ずびしっとルーティが指差しながら言うと、スタンは「あはは・・・・」と笑って誤魔化した。
「またどこかで会えたらいいな・・・」
「あたしはまっぴらだわ。もう厄介ごとからは足を洗いたいもの」
「まったく、トラブルメーカーだったのはどっちだよ・・・」
「何か言った!?」
「いや、なにも・・・」
ぽそりと言ったスタンの言葉を聞き逃さなかったのか、ルーティがスタンをギロリと睨んだ。
「少し落ち着いたら、ハイデルベルグへくるといい。歓迎させてもらうよ」
そんな二人のやりとりを見て笑いながらウッドロウが言うと、ルーティは笑って誤魔化した後に「王様じきじきの招待だもの。そのうち、きっとお邪魔させていただくわ」と返した。
「ファンダリアは、この私が必ず復興させてみせる。それともう一つ、マリーさんの事は私に任せてくれたまえ。彼女も私の国の民だ。負うとして放ってもおけんよ。彼女の住むサイリルは目と鼻の先だからな」
「そう、お願いするわね。あたしも落ち着いたら訪ねてみるつもりだけどね」
「なにより気になるだろうしね〜・・・ひててへへ」
くんの頬は良く伸びるね」
「よく伸ばしてるからな」
両手を口にそえて茶々を入れたの頬を、ウッドロウが爽やかな笑顔を浮かべながら引っ張った。
何センチか頬を伸ばされているの横から、リオンがしらっとよく伸びる理由を触る程度説明した。
と、3人がそんなやり取りをしている間に、スタンたちはさっさと話を進めていた。
「大丈夫かな、マリーさん・・・」
「・・・・こればっかりはわかんないわね」
「それで、フィリアはどうするんだい?」
「私、ストレイライズの神殿に戻ることにしましたわ」
「え、なんで?」
「アイルツ司教の力になれればと思って・・・・・」
「あんたはまだそんなこと言ってるの?いいかげん、普通の女の子に戻ればいいのに。もう十分だと思うけど?」
「私は神殿の中の世界しか知りませんし・・・・・それに、そういうのって性に合ってないみたいですわ」
「お別れだね、フィリア」
「またいつかあえますわ。そんな気がするんです」
「じゃあ、それまで元気で」
「ええ、スタンさんもお体に気をつけて」
フィリアとスタンが話をつけると、乗組員が「スタン殿、飛行竜の準備、できました」と呼びにきた。
わかりました。すぐに行くと伝えてくださいとスタンが乗組員に伝えると、乗組員はかしこまりましたと返事を返して飛行竜の中に戻っていった。
「それじゃあ、みんな・・・また」
くるりと仲間たちの方へ振り返ると、スタンは不自然に手をあげながら名残惜しそうに別れの挨拶をした。
「ええ、お気をつけて」
「じゃあな」
「またね」
「元気でな、スタンくん」
「・・・・」
他の全員が別れの挨拶をしていくなか、ルーティは一人黙り込んでいた。それにみんな首をかしげ声をかけたが、ルーティは「何でもないわよ」の一点張りだった。
「何でもなくないだろ?」
「うるさいわね、とっとと行っちゃいなさいよ!」
「ちょっと待てよ」
言うや否や顔をそむけ、手すりまで離れていったルーティにスタンが焦れたように声をかけた。
「いいから、早く行って!」
「どうしたんだよ」
「あんたなんか最低よ!女の子の涙を見たがるなんて趣味悪すぎるわよ!」
「へ?」
やっかいばらいでもしているような言い分だったルーティがひょんなことをいいだしたため、スタンや他の仲間たちは驚いて固まった。
しばらくすると、ウッドロウが明るい声でリオンとフィリアとに声をかけた。
「さて、我々は先に失礼しようか」
「そうだな」
「そうだねっv♪」
「ええ・・・・そうですね」
少し暗いフィリアが気になりはしたものの、はリオンたちとさっさと階段を下りていった。
いよーし!みんな、出場亀するゼ☆!」
数段降りた後、急にくるっと方向転換をしてスタンたちが見える程度にしゃがみこんだ
それに驚いてフィリアが階段から落ちかけた。
「ぇえ!?いけませんわさん!」
「しっ!静かに!」
「声が大きいぞお前ら」
「ごめんごめん☆」
「なんでリオンさんまでノリノリなんですか・・・」
同じくしゃがみこみ声を潜めるウッドロウ、声の大きさまで指摘してきたリオンの3人を見て、フィリアは泣きそうになった。
「ルーティ・・」
そんな4人に気付きもせず、スタンとルーティは会話を再開させていた。
「あんたもバカよね。せっかくの報酬金をパーにしちゃってさ・・・・」
ワザとそっけなく言っている風なルーティの物言いに、ウッドロウがフッと笑った。若いなとでもいいたかったのだろうか。
「俺は自分の思ったままの事をしただけだよ。誰かに言われたからってそうしたんじゃない、俺がそうしたかったんだ」
スタンらしー!とが小声で笑った。
「ありがとう、スタン。あなたがいてくれなかったら、あたしはきっと何もかも投げ出してたと思うわ。一緒に旅ができて、本当に良かったと思ってるのよ。あなたと初めて会った時、田舎者で世間知らずの扱いやすい奴だと思ったわ。バカがつくほど正直で、簡単に人を信用するし・・・・。性格はまっすぐで単純、おだてれば乗りやすいしとても便利な存在だったの。こき使うだけ使ってどっかでポイしてやろうと思ったこともあったわ」
真面目に話すルーティの声を聞いて、4人は沈黙した。
「でもね・・・・完全に逆になっちゃったわね。あなたの純粋さにあたしは随分と影響を受けたのよ・・・。そうでなければ、こんなに素直になんかなれなかった・・・・」
うんうんと4人がうなずいた。
「そんなことないよ・・・」
「あたしはね、あなたが思ってるほどいい子じゃないのよ・・・」
「思ってない、思ってない」
4人ともブッと噴出し手で口を覆った。堪えきれない笑い声が少し手から漏れている。
ルーティが咳払いをした。
「ま、まぁ、それはともかくとして・・・あたしはあなたに随分と助けられてきたわ。あなたが気付くと気付かないとに関わらずね。どんなに感謝しても足りないわ。今まで本当にありがとう」
「ルーティ・・・・」
ありえなくない?あれありえなくない?と、とリオンが顔をあわせてルーティを指をさした。
「あ、ごめんなさい。足止めしちゃったわね。早く行かないと・・・・・」
「俺たちは世界の英雄なんだ。少しくらい待たせたって構わないさ」
「誰も知らない英雄、ね」
「それを言うなよ・・・・」
「いいじゃない、それでも。英雄スタン・エルロン。あたしは知ってるわよ」
ルーティとスタンの会話を聞いて、4人ともなんだかしみじみとしていた。
「また会えるよね?」
「あったりまえじゃない!何、改まってんのよ!」
「うん、その方がルーティらしいや。じゃあ、もう行くよ。元気でね」
「あなたこそ、元気でね」
「いろいろありがとう。それじゃあ・・・・・」
そこまできくと、4人はゆっくりとその場から離れた。
音を立てないように階段から降りると、しばらくたってから飛行竜が発進しだした。
「これでスタンともお別れか」
「寂しくなるな」
空へと飛び出していった飛行竜を見送りながら、ため息混じりにが言い、ウッドロウが苦笑いした。
「にしてもさっきの楽しかったな〜v」
「余興くらいにはなったな」
「思い切し噴出してたくせにー」
「うるさい」
「フフフッ、お二人とも相変わらずですわね」
さっそくじゃれあい始めた二人を見て、フィリアがくすくすと笑った。
そのうちルーティが上から降りてきて合流し、5人はダリルシェイドの入り口へと移動した。
「じゃー・・またね。そのうちあうこともあるでしょ」
「レンズ集め続けりゃ嫌でも会うんじゃない?」
「違いないな」
「可愛くない返答ねあんたら」
にししと笑いながら言ったと、それに同意しため息をつきながらいったリオンをルーティが睨んだ。
そのうちふぅ、とため息をつくと、「まぁ、なれたけど」といって開き直った。
「またどっかであったら声くらいかけなさいよ」
「覚えてたらな」
「ほーんとにかわいくないわね!」
「訳してあげる。かならずかけるってさ」
「勝手な訳をつけるな!」
「あはははははーっっ」
怒ったリオンから笑いながら逃げる
そんな二人のやりとりを見てため息をつくと、ルーティはまた挨拶をしてさっさといってしまった。
「じゃね」
「おう、またなー」
「・・・ああ」
どこまでも素直じゃないリオンだ。
「では、私たちもそろそろ行きましょうか」
「そうだな」
「そっかー二人もいなくなるんだよね」
ルーティを見送った後に荷物を持ち始めた二人を見て、が寂しそうに眉をひそめながら言った。
「またいつか会えますわ」
「仕事の合間をぬって遊びに来てくれ。私は今度こそ抜け出せそうに無いからな」
悪戯っぽく笑いながら言ったウッドロウを見て、とフィリアが「あ!」と声をあげた。
「放浪癖が直るいい機会じゃないのか」
「それもそうだな」
果たしてどこまで抜けられるか・・・
はふぅ、とため息をつきながら肩を竦ませ、首をふった。
くんの悪戯好き解消よりは早く抜けられると思うよ」
「アレは俺の生きがいだ!!
「胸を張って言うなトラブル作成機
うわ俺ハイテク!
「あの・・・違うと思うんですけど・・・」
「フィリアナイスつっこみ☆」
のボケを最後に、フィリアとウッドロウもダリルシェイドを発つことにした。
「ばいばーい」
「はい、また」
「二人とも元気で」
「ああ。じゃあな」
二人が小さくなるまで手を振ると気がすんだのか、はよーし!と言いながらぐっと伸びをした。
「帰ろうか、リオン」
「ああ。疲れた」
「マリアンさんがプリン作って待ってるかもねーv」
「だからどうしてマリアンに行くんだ!」
お茶らけたとおちょくられたリオンは、ヒューゴ邸まで鬼ごっこをしながら帰っていった。
結局、の言ったとおりマリアンは二人にプリンを作っており、リオンはにからかわれたが機嫌はさほど悪くは無かった。
そのうち日もすっかり落ちてしまい、とリオンは各自の部屋へ入り先に入浴を済ませた。
なんだかんだやっていて数日間風呂に入れなかったのだからそうしたくなるのも当たり前だろう。
そして、入浴をすませたがベッドに寝転がってうとうとしはじめたころだった。
メイドが「夕食の準備ができました」と部屋まで呼びにきた。
適当に返事を返すと、はのろのろと立ち上がり、目を覚ますとさっさと大広間へ向かった。
「ご飯〜♪ご飯〜♪」
「・・・廊下も普通に歩けないのか」
途中、部屋からでてきたリオンとばったり会った。スキップ交じりに歩いていたを見て、怪訝そうな顔をする。
「歩けるとも!リオンこそもっと面白く歩けないのか!」
「面白く歩こうとも思わない」
さらりと答えると、リオンはを置いてさっさと歩き出した。


「このポンツクーーー!」
「誰がポンツクだ痴呆娘!」
いつの間に競り合い始めたのか、リオンとは早歩きをしながら大広間に入ってきた。
口喧嘩は入った瞬間やみ、そのまま食事へとうつるかと思われた。が。
「あ・・・・?イレーヌさん!!?バルックさん!!?」
大広間の中には、何故かイレーヌとバルックがいた。
ヒューゴはいないようだったが、今のはそのことも頭にないくらい驚きにでいっぱいだった。
「リオンくん、、お疲れ様!」
「おかえり、リオン」
二人がにっこりと笑いながら驚きを隠せないリオンとに声をかけると、はぱぁっと顔を輝かせ二人に抱きついた。
「うわぁっ!!なんで二人がここにいるの!!?」
「特別な仕事が入ってね」
「しばらくここでお世話になることになったのよ」
「本当!?」
「・・・」
二人の言葉をきいて跳ねて喜ぶの後ろで、リオンは不安気に顔を歪めていた。
「しばらく会ってないと随分成長したように見えるな」
「そりゃ日々成長してますから」
「どこをどう間違ってなにを成長したんだかな・・・・」
ふぅ、とため息をつき、肩を竦ませながらリオンが皮肉を言った。
「全てにおいて素敵にヴァージョンアップさ☆」
「あらあら。頭が一番素敵みたいねv
以前よりいちだんと毒舌になったイレーヌの言葉が発せられ、残りの3人が固まったときだった。ヒューゴが大広間へ入ってきた
もリオンもきたようだな。それじゃあ食事を始めようか」
ヒューゴのその一言で食事が始まり、その日はイレーヌとバルックとがいつまでも残って談笑していた。



それから数日間はセインガルド王が出してくれた休暇が続き、リオンももヒューゴ邸でのんびりとすごしていた。
「なあなあリオン、港の市場いかね!」
相当暇だったのか、どたばたとあわただしく部屋に入ってくるなりハイテンションでリオンに声をかけた。
「ああ、いいぞ」
「ぇえ!!!??」
「・・・・なんだ」
さらりとOKをだしたリオンに、言った本人のが驚き、大口を開けたまま固まった。
そんなの反応を不機嫌そうにリオンが見ると、ははっと気がついて「いや、ねえ?」とおばさんくさく声をかけた。
「リオンがそんな簡単に街に出るなんていうとは思わなかった・・・・」
「失礼な奴だな。僕はひきこもりでもなければ根暗キャラでもない」
へー。そうなんだ〜
真顔で返すな
真顔で返してきたをリオンがギッと睨むと、は「あはは、まあまあ」と笑って誤魔化し、リオンをひっぱってさっさと街へ出かけていった。
「あ〜久々だ〜〜」
「そうだな」
「てかリオンと二人でこうやって歩くのって今まであったっけ?」
「なかったな」
「全部任務で兵隊さん一緒だったもんねー。あ!焼きトウモロコシ発見!!」
「はしゃぐな馬鹿」
市場をのらりくらりと歩きながら話していると、が焼きトウモロコシに向かって突っ走っていった。
リオンは呆れたようにため息をつき、の後をゆっくり歩いておいかけた。(実は他人の振りしたいだけだったりして)
「リーオン☆これ食おうぜコレ!!」
「暴食」
「まだおやつ前だ!」
「なお悪い」
というかこいつおやつまで食べる気なのか、とつっこみたそうなリオンだったが、もうすでにトウモロコシを買っているを見てうなだれた。
「はーい坊ちゃんトウモロコシだぜ☆」
「お前はここに来ちゃあこうして物を食ってるのか」
「文化に触れるには食が一番!!」
「もう十分触れてる」
「いいからいいから!さあ食えやれ食え!」
「強制か」
ちゃっかり二人分買ってきたに無理やりトウモロコシを手渡されると、リオンはむすっとしながらトウモロコシを見た。
市場でそのまま食べるのもなんだということになり、二人は船場まで来て海のほうに足を投げ出し、腰をおろした。
「海でトウモロコシか〜・・・・・あわねぇー」
「なら買うな」
「いいんだよ」
トウモロコシをかじりながら自分で似合わないといったにリオンが即つっこんだ。
つっこんだがは適当にそれを流し、トウモロコシを食べながら遠くの水平線を眺めた。
「みんなどうしてるかな」
「まだ数日しかたってないだろうが」
「そうだけどさー・・・。今まで一緒にいるのが当たり前だった分なんかねー」
「・・・フン」
それからしばらく、二人はぼーっと海を眺めながらトウモロコシを食べた。
全部食べ終えると、は後ろに手をつき空を仰いだ。
「楽しかったなーあの旅。ルーティは変だしスタンは馬鹿だしフィリアは爆弾魔だしマリーさんは天然だしウッドロウはガングロだし」
「なんだそれは」
「あははははっ。あのメンバー楽しかったなーってさ!てかリオン、なんか最近ノリがいいね」
「気のせいだ」
リオンの方を向きながらが言うと、リオンはそっぽをむいてしまった。
えー、絶対ノリいいって、と言うを適当にあしらうと、リオンは思い出したように「そういえば・・」と話を始めた。
「今日の夕食は外で食べると言ってたな。桜が満開になるからみん」
「いよーーーし行くぞリオン!!食材買って帰ろう!!」
がばっと立ち上がったを見て、リオンが鼻で笑った。
なんだよーと文句をいうに「なんでもない」といいながら、とりあえずリオンは市場へと歩いた。
「・・・結局マリアンさんの手伝いがしたかっただけだったりして」
「・・・・・」
後ろからついてきたがぼそりというと、リオンは沈黙した。
「プププーッ!ぼ、坊ちゃん可愛すぎ!!」
「う、煩い!!それに違う!」
大声をあげて否定したが、「赤くなって言っても説得力ないよ」とに言われ、リオンはため息をついて肩をおとした。


とリオンの買ってきた食材と頼んでおいた食材をマリアンたちが調理したあと、イレーヌ、バルック、ヒューゴ、リオン、、レンブラント爺、マリアンの7人は外へと出た。
荷物を持ったのはレンブラント爺とマリアン、そしてリオンとだ。
ちなみに後ろの二人は強引にマリアンから食べ物をひったくった。
桜の木の下までくると、レンブラント爺がシートを敷き、もってきた数個のライトをつけた。
白い照明は桜を照らすようにセットされており、夜の桜を一層綺麗に見せた。
「わーいお花見お花見ーー!」
「騒ぐなうっとおしい」
「まあまあ、いいじゃないか。折角こんなところまできたんだからな」
「そうですね、飲みましょうか」
バルックの言葉が開始の合図となり、マリアンとレンブラント爺以外はそれぞれシートの上にならべられた料理に手を付けていった。
いつもなら気難しくて会話などまったくもってしないヒューゴが、今日に限ってはバルックやイレーヌと楽しそうに話していた。
は相変わらずとぼけたことばかり言い、それにリオンがしっかりとつっこんでいった。
「あはははははははっ。バルックさん面白〜い」
「・・・、俺は何もしてないんだが・・・」
数十分後、がいつも以上にへらへらしながらバルックを見て大笑いした。
少し泣きそうになりながらバルックがにつっこんでいると、イレーヌがの飲んだ飲み物を見て声を上げた。
「ちょっとまって、これ、お酒じゃない!?」
「間違えて飲んだのか!?」
「ん〜?ちゃんと飲み物のんだよ?」
「飲んでよくない飲み物だ馬鹿っ」
そこらへんに落ちているものを飲んだ3歳児を相手にするように慌てるイレーヌとバルックを無視し、リオンがにつっこんだ。
放っておけばそのうち酔いも冷めるだろう、というレンブラント爺の言葉を聞き、なんとかその場の混乱(約2名)は収まった。
「ぬ〜・・・・。つか眠っ・・・」
「寝るな」
座りながらもふらふらと身体をゆらすと、はリオンの肩に頭を乗っけて目を閉じた。
鬱陶しそうにリオンがつっこむと、ヒューゴが「しょうがない」とため息をついた。
、少しそこら辺を歩いてこよう。そうすれば酔いもさめるだろう」
ほら、とネコに手でも伸ばすようにヒューゴが手を差し出すと、はうっすら目をあけてきょとんとした。
「散歩?」
「散歩」
「いく」
散歩と聞いて即答で行くと返したを見て、リオン以外の全員が苦笑いした。
危なっかしい足取りで「よいしょ」といいながら立ち上がると、はヒューゴにつれられて桜の咲く道を歩き出した。
「風気持ちいー・・・」
「酒で少し火照っているからね」
ヒューゴに手を引かれながら、はのんびりと歩いた。ヒューゴはヒューゴでの呑気な動きを見て笑っている。
「忙しくて話を聞く時間が無かったけど、今回の任務はどうだった?」
「うーん。楽しかったよ。いろんな人にあったし、いろんなことがあったし・・・」
「どんな人にあってどんなことがあった?」
「まずトッシューでしょ?コングマンでしょ?ジョニーさんでしょ?フェイトさんでしょ?バティスタでしょ?ダーゼンさんでしょ?」
「うーん・・・ほとんど男性の名前に聞こえるのは私の気のせいかな?」
「トッシューはすんごく可愛いんだよ。あとバティスタはおっさんで、ダーゼンさんはおばけ!」
「・・・おばけ?」
「フィリアに爆弾投げられたけど、無事だったの」
いつも以上にまとまりなく話すの話を聞いて、ヒューゴは首をかしげた。
それでもは嬉々として話している。
「んでジョニーさんはトラで、フェイトさんは腹黒で、コングマンは芸人だったの」
「えーっと・・・うん、そうなんだ」
「あははははっ凄い面白いでしょ?」
「よくわからないけどね」
にへら、と笑いながら言ってくるに、ヒューゴも笑顔で返した。
しばらくそうしているうちに、並んでいた桜の木がなくなってしまった。
「あらー桜並木道が終わっちゃったね、ヒューゴさん」
「そろそろ戻ろうか?」
「もっと歩きたかったなー」
「ここから戻れば十分な距離だよ」
残念そうに地面を蹴るを見てくすくす笑いながらヒューゴが言うと、「そうだね」と納得してはくるりと身体を回した。
「そういえばヒューゴさん俺なんかにつきあってよかったの?」
「おや、酔いがさめてきたのかな?」
急に消極的になったに悪戯っぽく笑いながらヒューゴが問いかけると、は片手で頬をかきながら「ちょっとだけ」と返した。
「いいんだよ。私がそうしたかっただけなんだから」
「そうなんですか?」
「ああ。そうだとも」
首をかしげるに、ヒューゴが大きく頷きながら返した。
そうか、よかった、とにっこり笑いながらが返すと、ヒューゴがぴたりと立ち止まった。
そうなると必然的に手をつないでいたも止まるわけで、は横に引っ張られて「おっとっと」と言いながらもなんとか立ち止まった。
先程までとは違い真顔になったヒューゴを見て、は不安そうに顔をしかめた。
「ヒューゴさん・・・?」
「・・・・・。君に、前から聞いてみたいこと・・というか、言ってみたかったこと、かな。・・・があったんだ」
ふっ、と表情を緩めてヒューゴが言うと、はほっとしながらも何事だろうかと首をかしげた。
何か言われることというと、思い当たる節がいくつもある。(色んな意味で)
「君は、今誰か一緒にいたい人はいるかな?」
「え?いや、一緒にいたいといったらみんなだけど・・・」
「そうか・・・・」
がおどおどしながらそういうと、ヒューゴは手を顎にそえてなにやら考え出した。
何なんだ?とが首をかしげると、ヒューゴはふと手を下ろして微笑んだ。
「これから色々なことがあると思うが・・・・・私は、君とともに過ごしたいと思う」
「・・・・・へ?」
「いつでも・・・近くにいてほしいんだが・・・・」
どうだろう?というヒューゴに、はただただ間の抜けたような顔をしていた。
いまいち状況が理解できずおろおろとするに、ヒューゴがはっきりと言った。

「好きだよ、。私とともに来て欲しい」

「えっ・・・・」
ざわめいたのは、決して風でも桜でもないだろう。
どきっと一つ心臓を煽られたかと思うと、の脈拍数はどんどんと上がっていった。
優しく微笑みながら、しかし目はしっかりと光を宿したヒューゴから目をはなせずにいた。
「え・・・・・・・え!?あの・・・・・えーと・・・」
ようやく頭が動き出すと、はおろおろして慌ててヒューゴから目をそらした。
そのまま目を泳がせて「あー」とか「うー」とかよく分からない声を出している。
そんなを見てクスっと笑うと、ヒューゴはつないでいた手をくっとひっぱった。
身長的にヒューゴの胸板に顔がぶつかりそうになるくらいまで素直にひっぱられると、はヒューゴに頭を優しく抱かれた。
「私と共にいくのが嫌だというなら、この手を離して離れていってほしい」
ヒューゴが選択の自由を与えたのと同様に、繋がれていた手の力は少し動かせば外せるほど小さなものになった。
目の前はヒューゴの着ていた真っ黒な服しか見えない。
はしばらく黙り込むと、こつんと頭をつけて目を閉じた。
「・・・・わかりません」
ふー。と諦めたようにため息をつきながらが言うと、ヒューゴは苦笑いした。
「それでいいよ」
言ってぽんぽんとの頭を叩くと、ヒューゴは一歩離れて「帰ろうか?」とに声をかけた。
はい、と小さくつぶやいてうつむきながら頷いたを見て苦笑いしながらため息をつくと、ヒューゴはつないだ手を引っ張りながらゆっくりゆっくりと歩きはじめた。
されるままについていくはうつむいたままで、頭は半分ほど働いてくれていなかった。
(あー・・・夜でよかったかも)
さー・・っと吹いてくる涼しい風を受けながら、は上がってしまった熱を下げようとふらふらする足で歩きながら頑張っていた。
元いた場所につくと、もう荷物は片付けられた後だった。
15分ほどあけていただけだったが、リオンはやっと帰ってきた、という顔をした。
、酔いは覚めたか?」
「ん〜・・・?」
「これはだめね。半分寝ているわ」
こういうところの判断の早さはさすがというところか、イレーヌはヒューゴに引っ張られて歩いてきたを見てすぐにそう言った。
とりあえず帰ろうか、ということになり、道中はヒューゴにひっぱられながら歩いた。
「ねえねえみんなー」
「どうした?」
屋敷へ帰る途中、がヒューゴに引っ張られ視点のままならない目で前を歩く全員に声をかけた。
バルックがまたなにかボケるのかな、と少し期待の混じった笑顔で返事をすると、リオンやイレーヌたちも何事かと振り返った。
「またさ、ここでこーやってお花見しようね」
とても嬉しそうに笑うを見て、マリアン以外の全員が固まった。
らしい言葉にマリアンはくすくすと笑っていたが、イレーヌは一瞬寂しそうにに笑いかけ、「そうね」と明るく言った。
がそうしたいなら、またこうしてここに来たらいい」
「やったー!」
空いた片手を元気よくあげると、は一つあくびをした。
屋敷に帰ると、ヒューゴはを部屋まで送り、はヒューゴに「おやすみなさい」と挨拶するとのろのろとベランダまで移動した。
「・・・・・ふー・・・」
まさかあんなことを言われるとは、と、は深くため息をついた。
今こそ後のことを考えて気が重いが、言われたあの時、浮かれそうになった感情があったことをは認識していた。
自分はヒューゴのことをどう思っているのか考えそうになったところで、は思考を止めた。
「考えてなんになるんだろ」
というか、眠い。めんどくさい。
これが今の出した答えだった。
明日になればなんかうかぶだろーとなんとも楽天的な考えまで行き着くと、はベランダの戸を閉めてベッドにダイブした。
「・・・・・・・・・・・・ん?」
ふと、頭の中で何かが横切った気がした。
とても大事なことだったような気がするのだが、一向に思い出せない。
しばらく考えて、は数日前いきなり現れたイレーヌとバルックのところに思考がとんだ。
「イレーヌさんとバルックさん・・・・・・・・ぁ・・・・・・!?」
イレーヌとバルックの二人でピンときた。忘れていた記憶のところどころがつながった。
空虚だった部分が埋まると、は一気に思考をめぐらせた。
ヒューゴ・・・というかミクトランは自分の記憶の一部を忘れさせ、リオンやたちに神の眼を取り返す任務を与えた。
この時点でまずおかしい。自分の見てきた物語の中では、確かにミクトランが神の眼を手にし、ダイクロフトを飛ばしていたはずなのだ。
なによりヒューゴとリオンは神の眼を盗みだし、世界を陥れた人物として名が回っていた。
今のままではまるで正反対である。
「イレーヌさんとバルックさんが来たってコトは・・・・もしかしてもう・・・・!!」
なにより先程のヒューゴの言葉も引っかかった。

『これから色々なことがあると思うが・・・・』

これがなにを意味するのか、今までの情報と今の状況。18年後、リオンとスタンの息子カイルたちの冒険を全て見てきたにはすぐに想像できた。
「・・・・リオン!」
思い当たって、はすぐに行動にでた。
リオンを逃がさなければならない。
バッとベッドから立ち上がると、はそっと扉をあけた。廊下には誰もいない。
「間に合ってくれ・・・・・!!」
確認してすぐ、はリオンの部屋へと向かった。
コンコンとノックをすると、中から「誰だ」とリオンの声がした。
「俺だけど・・・」
「なんだ、お前か。どうしたんだ?」
夜遅くにこんなにもあわただしく部屋へとやってきたというのに、リオンの物腰は柔らかかった。
何かがおかしいと、の不安は一層駆り立たされた。
「リオン、落ち着いて聞いてくれ」
「まずお前がおちつけ」
「だーから先に聞けーーい!」
「わかったから落ち着け」
きぃーーー!!と暴れかけたをどうどうとリオンが止めると、は一度深呼吸をしてから話し始めた。
「リオン、今すぐマリアンさんつれて逃げろ」
「・・・・は?」
「いいから、早く!急がないと間に合わなくなる!!」
「なにを言ってるんだお前は。まだ酔ってるのか」
「違うよ!」
なるべく大きな声をださないように、は小声で話した。
リオンがまだは酔っているものだと勘違いし、話をそらしたが、は食い下がらなかった。
「このままここにいたらお前が危ないんだ!マリアンさんも・・二人とも」
「二人ともなんだ。死ぬとでもいうのか?」
「・・・・・・そうだよ」
がバツが悪そうに言うと、リオンは声を立てて笑った。
「馬鹿かお前は。そんなわけないだろ」
「あるから言ってんだよ!このまんまここにいたら、ヒューゴさんに使われてそれで・・」
途中まで言って、ははっと息を呑み口をつぐんだ。
ここから先のことは、果たして口に出していいのだろうかと思ったのだろう。何も言えず、その場に固まった。
「・・・・言いたいことはそれだけか?」
「・・え・・・」
うつむいていて気がつかなかったが、リオンの顔はもう笑ってはいなかった。といっても、先程の笑いも馬鹿にしたものだったのだが。
冷たさどころか殺気まで帯びているリオンの目を見て、は今更ながらに震え上がった。
「お前がどこでなにを聞いたのかは知らないが、僕はここから逃げ出す気はない」
「そんな・・!」
「僕は誰にも譲歩しないし、逃げも隠れもしない。マリアンも死なないし、僕も死なない」
「でも!!」
「煩い!!」
が言葉を発する前に、リオンが怒鳴り声を上げ、それを妨げた。
先程の目が殺気の色に染まる。
は何も言えないまま、目を大きく見開いてリオンを見ている。
「他に用がないのなら、さっさと帰れ。ここへは来るな」
「リオン!」
「帰れ!」
がんとして言葉を受け入れないリオンの態度に、はとうとう何もいえなくなってしまった。
扉の前で固まってただリオンを見ていた。
がどんな顔をしていたのか、リオンがから目をそらした。
一瞬、とても悲しそうな顔をしたのを、は見逃さなかったが、これ以上はなにもいえないだろう。
「・・・・」
「なにやってるんだ。早く帰れよ」
「・・・・・」
「お」
お前は死ぬだけでこの場は終わりだろうけどな!残された人間はどうなるんだよ!!スタンは?フィリアは?ウッドロウは?マリーは?マリアンは?ルーティは?誰があんたに死んで欲しいっていってた!!?誰があんたにそんなこと−−−」
っ−−−・・・・・・!?」
「まったく、よくここまで思い出したものだな」
逆ギレをおこしていたのに突然倒れたに驚いて、リオンが声を上げ駆け寄ろうとしたが、その足は一歩踏み出して立ち止まった。
倒れたを持ち上げたのは、先程まで気配すらなかったヒューゴだった。
その笑みはこれからおこることを見据えてか、嬉しそうに、だが不敵に笑んでいた。
リオンは一歩飛び出した足をしまいこむと、シャルティエを持った。
「時が来た。行くぞリオン」
「はっ」
暗闇で見えなかったが、ヒューゴの後ろにはイレーヌとバルックも一緒に立っていた。
玄関までいくとロープで縛られ眠らされたマリアンがレンブラントにもたれており、ヒューゴはレンブラントに目配せすると屋敷の扉を静かに開かせた。
夜の闇が空を包み、真上より少し西に落ちかかった月が7人を皓々と照らしつけた。
オベロン社の社員数名が屋敷の前で待機しており、ヒューゴと話をつけるとすぐに移動し始めた。
気を失ってヒューゴにもたれている、ロープで縛られ気絶するマリアンを見て、リオンはうつむいた。



次にが目を覚ましたのは、水がところどころから流れる海底洞窟の中だった。
思うように動かない身体でなんとか周りを見ようと目を動かしてみる。
近くにいるのはヒューゴ、ロープで縛られたマリアン、自分を運んでいるレンブラント、そして何処となく表情に暗い影を落とすリオンだった。
イレーヌとバルックの姿は見えず、足音も4人のものだけだ。
(なんで・・・・・声が・・・・!!)
今すぐにでもレンブラントの腕から逃げ出し、この状況を何とかしたいのに、声すらだせはしない。あの時ヒューゴになにかされたのか。
内心舌打ちしつつも、は懸命に身体を動かそうとした。
「どうした、リオン」
広い空間の開いたところにでると、リオンが真ん中あたりで立ち止まった。
「・・・・」
「何か言いたそうだな。私は別に構わないのだよ。お前が来てくれなくてもな。私は一人でも遂行する。お前はここに置き去りにされ、滅びを待つだけだよ。もちろん、この女もお前と同じ運命をたどる事になる。それなら本望かね?」
くすくすと笑いながら言うヒューゴに嫌悪感をいだきながらも、は動けずにいた。
できることなら、今すぐこの場でマリアンを助け出し、リオンと逃げて欲しい。
「汚いやり方だな」
吐き捨てるようにリオンが言った。ヒューゴはまだ嘲笑っている。
「何のためにこの女を連れてきたと思っているんだ。彼女は人質なのだよ。この女を助ける代わりに私に協力するという約束、忘れたとは言わんだろう?」
「エミリオ、やめなさい。私はどうなっても構わない!こんなバカなことに・・・・」
「人質は黙ってるんだ。それとも、力ずくで口を塞がないとわからないか?この子のように・・・」
ヒューゴがの頬に触れたが、はヒューゴが言葉を発した瞬間目を閉じ、気付かれないよう意識のないふりをした。
「よせ!マリアンに手をだすな!お前の言う通りだ。マリアンを助けてくれるなら、僕はなんでもやる」
「エミリオ・・・・」
「ふふ、わかればいいのだよ。お前がそういう態度でいれば、彼女も死なずにすむよ。どうして最初から素直になれないんだ、エミリオ?」
「・・・・」
だから言ったのだ。後悔するくらいならあの時逃げていればと。とは悔しさで目をカッと見開きながら思った。
「まあよかろう。ん?どうやらネズミが紛れ込んだようだな」
自分たちの他に聞こえてきた足音、には嫌な予感がした。
『気をつけろスタン、誰かいるぞ!』
ディムロスの声だ。間違い。は急に不幸のどん底に突き落とされたような気になった。
「いたぞ、あそこだ!」
「ヒューゴ、待ちなさい!」
「止すのじゃ、来てはならん」
顔を歪めながらレンブラントが言ったが、スタンたちは引き下がらなかった。
それを見たヒューゴは、すっ・・・と指差し、一つの仕事をリオンに命じた。
「エミリオ、奴らを始末しろ」
「いやー、やめて!」
「お前は黙っていろ!」
大声で叫んだマリアンの抵抗もむなしく、マリアンはヒューゴにつれられ奥へと消えていった。
「・・・坊ちゃん」
レンブラントはボソリとつぶやくと、ヒューゴの後を追おうとした。が、何かに止められ、そこから動けなくなった。
「・・・!?」
『・・・、君はまだ・・・』
本来なら動かないはずの身体では懸命に近くの岩を掴んでいた。
先程までぐったりしていたが動き出したことに驚いて、スタンたちが声をかける。
リオンも驚いての方を振り向いた。
「リオ・・・シャ・・・・ル・・・・・・・!水・・・・・・にげ・・・・・」
「なにを言っているんだ?動けもしないお前に何が出来る」
「マリア・・・・大じょ・・・・・・ぶ・・・!はや・・・・逃げ・・・・・・・!!」
「煩い。レンブラント、連れて行け」
喉を押しながら懸命に声を出そうとするにそういうと、リオンはスタンたちの方へと身を翻した。
「みん・・・・な・・・・・リオ・・・・・助け・・・・・・・!!」
「行くんだ、
まだ何か言おうと掠れた声を上げ、今度はスタンたちに向かって叫んだだったが、岩を掴んでいた両手をレンブラントにつかまれ、抵抗もむなしく引っ張られていった。
!!」
「や・・・だ・・・・!!リオ・・・・!!ル・・・ティ・・・・・・!!」
出来うる限りの声を張り上げ手を伸ばしただったが、伸ばした手はなにをつかむこともなく、リオンも一瞬振り向いただけだった。
そのままは洞窟の奥へと引きずられていった。
スタンたちの声も、今では遠くに聞こえる。
(こんな冷たくて悲しいところで、リオンは一人で死ぬのか・・・!?)
何もできな自分の無力さがあまりに悔しくては泣きそうになった。
といっても、今はもう泣く気力すらない。先程動かした所為か、身体は余計に言うことを聞かなかった。


「どうしたレンブラント。随分と遅かったな」
色々な機械が立ち並ぶ奇怪な部屋で、ヒューゴとイレーヌたちは待っていた。
マリアンは泣いており、今もしばられたまま座り込んでいた。
「ほぅ、こんな身体になってもまだ動けたか」
レンブラントからの報告を受けてか、ヒューゴは楽しそうに笑いながらレンブラントに持たれているの顔を覗き込んだ。
「本当に、いつも驚かされる。君はたいした精神力の持ち主だね」
(わけわかんねぇよボケ!!つか俺の身体に何しやがった変態!ロリコン!!)
このような状況になってもなお口の悪さは変わらないというところが、なんともらしい。(しかも痛いところをつく)
この神経の図太さに、本人はまだ気付いていないが。
「・・・さて、ダイクロフト、発進する」
「はっ!」
オベロン社の社員がまるで軍人のように返事をすると、カタカタとキーボードを打ち始めた。
(こいつ・・・・リオンを置いていく気かよ!?)
あまりの怒りに一気に頭に血が上ったが、身体はついてこなかった。
乗り物から発せられる聞いたことも無いような音を耳にしながらは悲しさと怒りと悔しさでどうにかなりそうだった。








続く
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えー。まずは最初にすみません。長いのは、あんまりにも連載多くなりすぎたから(待て)
あ〜〜〜坊ちゃんがーーーーー!!!!(止まれ)途中までほのぼの・・・っていうかちょっとまてよそこ!
そこのロリコンさん!!16才になにさらす!!いや、書いたの自分なんですけど・・・・。
リオンが飛行竜おりたあたりからノリが良かったのは・・・・という答えは、また後ほど奴が。(コラ)
今回出た台詞、後々主人公が悩みへとつなげていくことでしょう。きゃはははは(笑うとこじゃないし)
はーい。すみません。途中まで超適当激駄文バリ死文でーした(造語作んな)
ここまで読んでくださった方・・・いらっしゃったら、ありがとうございました(礼)