「なあガングロさんよ、この城いったいどういう構造してるんだ?」
「私のいた頃とは随分変わってしまっているようだよ」
「うーんそりゃ残念!匠にリフォームされちゃったネ☆
「それは困ったな」
「城のリフォームなどあってたまるか」
仕掛けだれけで迷路のようなハイデルベルグ城の中を走りながら、とウッドロウがボケ、リオンがつっこんだ。








my way of living 31
〜最後のお遊戯。ベタなボスアブラハム(仮)〜









城の最上階へと続く階段を登っていくと、夜中だというのに段々と明るい光が満ちてきた。
「どういうことだ?」
「上に行ってみれば分かるだろう」
階段を登りながら、首をかしげたスタンにウッドロウが答えた。
「行きましょ」
「はい!」
キッと階段の上を睨みながら言ったルーティに頷くと、6人は最上階へと登った。
階段を登るとすぐ、光の元と一人の男が目に入った。
恐ろしいほどに光り輝く神の眼と、不敵に微笑むグレバムだった。
「グレバム!」
「みつけたぞアブラハム!!お前のやろうとしていることはまるっとお見通しだ!!!ッッブッ」
フィリアの後に続き、ズビっとグレバムを指差しながらバカなことを口走ったを、リオンが後ろからシャルティエで殴った。
危うく舌をかみそうになったは頭を抑えながらリオンを怨めしそうに見ている。
このボケが。とリオンが目でを責めていると、やっと自分の話す番になったグレバムが空気を作るためかフフフと笑い返してから話始めた。ちょっとまぬけだ。
「よくぞここまで来た。と言いたいところだが・・・残念だったな、貴様らの命運もここまでだ」
「そうはいかん!我が父の仇、取らせてもらう」
「ほう、できるかな?」
「これ以上、あなたの好きにはさせませんわ!」
「おとなしく石になっていればいいものを・・・むざむざ殺されに来たか。まとめて片付けてくれるわ!この神の眼の威力、己の身で知るがよい!」
「その前にそのベタな台詞しか言えない言語センスどうにかしたほうが」
だまれ!!刀の錆にしてくれる!!」
「それ刀じゃないし。つかソーディアン錆びさせるなよもったいない!
「貧乏性か」
ウッドロウとフィリアの後にさりげなく続けてが言葉を入れると、グレバムはノリよく(違)言葉を返してきた。
さらにがグレバムにつっこみをいれると、リオンがぼそりと皮肉を言った。
「黙れ!」
「うわわっ!」
本格的に怒ると、グレバムはその場から剣をふってきた。
間合いというほど近い距離ではなかった、というか遠かったので当たりはしなかったが、かわりにスタンの魔人剣に似たつむじ風がビュンッと飛んできた。
が紙一重でそれを避けほっと胸をなでおろしていると、グレバムはニヤリと笑った。
「そんな・・・こんなことができるなんて・・・・!!」
壁にあいた傷を見て、フィリアがサッと青ざめた。
そんなフィリアを放って、はルーティと立ち並びフンッ、と鼻であしらった。
「神の眼あっての芸当だろう?むかつくんだよそういうの!」
「あたしも同感だわ!よくも・・よくもマリーを!!!」
言うや否や、とルーティは剣を引き抜きつっこんでいった。
「ふん、バカめ!」
「うわぁ!!」
「きゃあ!!」
とルーティがグレバムに近づく前に、グレバムが振った剣のありえないほどの剣圧で、二人が壁まで吹き飛んだ。
「ぐっ!!・・・っく・・・・そっ・・!」
「けほっ・・・けほっっ・・・!」
、ルーティ!!くそ・・!!てやぁぁぁぁああああ!!!」
「加勢する!」
壁に叩きつけられむせ込んだ二人を見て、スタンがディムロスを振りかざしながらつっこんでいった。
その後に続き、ウッドロウも弓を持ちある程度前へ出ると矢を構えた。
「チッ!前から行っても近づけないだろうが!」
「こんなときこそ晶術ですわ!」
スタンとウッドロウにつっこみながら晶術を唱えるリオンと同じくして、フィリアもクレメンテを構え、晶術を発動させようとした。
「たぁあ!!」
「はっ!!」
スタンが剣を振り下ろし、ウッドロウが矢を射たが、グレバムはそれをイクティノスでいとも簡単に振り払った。
「フン、小ざかしい!エアスラスト!!!
「うわぁぁあああ!!」
「きゃぁあああ!!」
「くっっ!」
いくつもの鋭い風が、スタンたちに襲い掛かった。
壁際にいたルーティとにはかろうじて当たりはしなかったが、他の4人は風の刃に切り刻まれ、身体を守るのに精一杯だった。
「リオン!!」
「っ、馬鹿!でてくるな!!」
大きめな風の刃がリオンに襲いかかろうとしたとき、が壁からリオンのところまでダッと走りこんだ。
リオンが身体を固めながらを止めたが、はそのままリオンに飛びつき、二人とも床に倒れこんだ。
「!!!」
「いっ・・・っつ・・」
!!』
ぎりぎりでリオンは避けれたが、は二の腕をざっくりと切っていた。
倒れこんでそのまま、腕を押さえている。
「だから言っただろうが馬鹿者!!何故わざわざあたりに来た!!」
「だって、なんか知らないけどリオンにだけは当たってほしくないとか思ったんだもん!!私の髪は、風なんかに負けない
『うわっ、わけわかんないお子様がいる!』
「駄々をこねるな!余計なお世話だ!やるならフィリアでも守っておけ!」
腕を押さえながらも必死なをリオンが怒ると、はリオンをキッと見た。
「なんでそういうこと言うんだよ!それに放っておいたらお前・・・死にそうな気がしてならなくて・・・!」
「誰が死ぬか。勝手に殺すな」
『その前にが出血多量で死にそうだよ?』
どくどくと血がでてくるの腕を見ながらシャルティエがつっこんだ。
シャルティエの言葉をうけて、二人もの腕をみた。
「うわーい大変だ☆シャルさんきゅーv」
『フフフッ、どういたしまして☆』
「解決になっていないだろうが馬鹿者どもが!!」
「今解決してあげるわよ!!ナース!!!
いつの間に詠唱していたのか、ルーティが全員に回復晶術をかけていた。
それを受けて、グレバムの前で膝をつき、息も絶え絶えだったスタンがバッと立ち上がった。
「うぉぉおおお!!」
「この力の差がまだ分からぬか!!」
ディムロスを振り上げつっこんでくるスタンにグレバムがまたイクティノスを振った。剣圧がスタンに降りかかる。
「くっ・・・・っそお!!負けて・・たまるかぁあ!!」
「なっ!!」
その剣圧をディムロスで受けると、ぐぐっと耐え、それから一気になぎ払った。
「でやぁぁあああ!!」
ザンッッ、と一斬り、グレバムに剣が入った。
それからすぐに下がると、グレバムはざっくりと上から斜めに斬られた傷口を肩をだくように押さえ、よろめいた。
肩で息をし、口からは少量の血を吐いていたが、グレバムはにやりと笑いながらゆっくりと顔をあげた。
「くっくっくっ、少しは楽しませてくれるか。だが、所詮、その程度では神の眼の真の力の前では赤子同然よ!見るがいい!神の眼の真の力を!」
そういうと、グレバムは両手をバッと広げた。それに共鳴したように神の眼が輝きだし、グレバムを光が包んだ。
スタンにつけられた傷も見る見るうちに治っていく。
「そんな・・・」
それを見て驚愕の表情を浮かべたのは、声を上げたルーティだけではなかった。
皆そのありえない光景を見ながら、固まっていた。
だが、急にグレバムに異変が起きた。
「な、制御が・・・・バカな・・・この私がぁ!」
傷が直ったかと思うと、グレバムはぶくぶくと膨らんでいった。
胸、顔、足、腕・・・・・それぞれが見るのも嫌になるほど不自然に膨らむと、ぎりぎりと血管が浮き出し、皮の裂けるブチブチブチという嫌な音がした。「ぎゃぁぁあああ・・・・!」と引きちぎれそうになっている喉で叫び声を上げると、目が飛び出し、グレバムは頭から吹っ飛んでいった。
それから身体の部分部分が同じように破裂し、グレバムは粉々になりながら神の眼に吸い取られていった。
「過ぎたる力を制御出来ず、己の身を滅ぼすか・・・皮肉なものだな・・・・・。イクティノスは返してもらうぞ」
神の眼の前でぽつんと一つおちていた剣・・・イクティノスを拾うと、ウッドロウはため息をついた。
それからぼーっとしていた5人が、それぞれ顔を見合わせると表情を緩ませた。
「ついにやったんだ!」
『喜ぶのはまだ早いぞ!』
「え?」
やり終えた!と両手を挙げて喜んだスタンに、ディムロスが焦りながら呼びかけた。
ディムロスの言葉を聞いて何事だと周りを見回したの目に、壊れそうなほど光り輝く神の眼が入ってきた。
『いかん、オーバーロードじゃ』
『このままでは爆発するわ』
「爆発ですって!冗談じゃないわ!」
「爆発ってどんくらい?」
『星一つ吹き飛ばすくらいの威力だ!』
「「ええ!!?」」
『坊ちゃん、あれしか!』
ディムロスの言葉にとルーティが驚いていると、シャルティエがリオンに急かすように声をかけた。
「くそっ、仕方がない!みんな、このディスクをソーディアンに付けろ!」
言うや否や、リオンは何の装飾もなされていない真っ白なディスクをスタンとルーティとフィリアに投げた。
「え、え?」
「いいから早くしろ!」
「こんなものでなにをしようってのよ!」
「いいから、四方に散ってソーディアンを掲げるんだ!」
状況をつかめず焦るスタンと、文句を言ってディスクをはめようとしないルーティにリオンが大声を出すと、二人とも急いでディスクをソーディアンに入れた。もとより冷静になってディスクを入れていたフィリアと目を合わせると、4人はソーディアンをかかげた。
「落ち着いた?」
「ちょっとあんた、どんな手品を使ったのよ?」
バチバチとものすごい音を立てていた神の眼が鎮まると、スタンとはへたりこみ、フィリアとウッドロウがほっと胸をなでおろした。
ルーティがリオンにつっかかると、リオンはそれに適当に答え次の指示をだした。
「オベロン社の秘密兵器だ。さて、後は陛下の元へ神の眼を運ぶだけだ。それが済めばお前たちは晴れて自由の身だ」
「よし、早速運び出そう!」
「待ちたまえ」
息巻いてスタンが立ち上がると、今度はそれをウッドロウが止めた。
あらら、とこけると、スタンがウッドロウを見て首をかしげた。
「ウッドロウさん?」
「君たちも神の眼の威力は見ただろう。これは人の手にゆだねるべき物ではない。今すぐこの場で破壊してしまうべきだ」
「ちょっと待ってください」
「そんなことしたら報酬がもらえないじゃない」
「まあ言ってる事あってるけどさ」
「「余計なこと言うな!!」」
もっともなことを言ったウッドロウにスタンとルーティが反論すると、がボソリと賛成した。
それにスタンとルーティがつっこんでいると、ウッドロウがイクティノスを持って神の眼の前へとたった。
「君たちがやらないというのであれば、私がやる」
「よせ、無駄だ!」
「行くぞ、イクティノス!」
リオンが止めたが、ウッドロウはそのままイクティノスを神の眼につきたてようとした。・・が、壊すどころか剣はささりもしない。
「どういうことだ・・・・」
「だから言ったんだ。神の眼を壊すなんてことに力を貸すものか。もっとも、ちゃちなソーディアンの力くらいじゃ傷の一つもつかないさ」
「なんということだ・・・」
傷一つない神の眼を前にして、ウッドロウの表情は暗かった。
リオンはため息をつくと、セインガルド王を信頼してもらいたいものだなとイクティノスを持って固まってしまったウッドロウに声をかけた。
「神の眼はセインガルドが責任を持って管理し、決して悪用はさせない」
「・・・分かった。だが、私も同行させてもらう。セインガルド王が信用に値する人物か、この目で確かめたい」
「話はまとまったわね」
ウッドロウがそういってリオンを見ると、ルーティがぱんぱんと手を叩きながら言った。
「よし、グレバムの乗ってきた飛行竜で凱旋だ!」
「城の兵たちにも手伝わせよう。ここまで大きなものを、私たちだけでは運べそうにない」
「男どもにがんばってもらえば・・・」
「がんばれよルーティ、
「待て!」
がリオンとスタンとウッドロウを見回しながら冗談を言うと、スタンがさらにボケ流した。
それにが裏手つっこみを入れていると、笑うスタンの後ろから黒いオーラをまとったルーティが現れた。
「あー・・・だから待てっていったのに〜。スタンが大変だ〜」
「誰の所為だ」
「まあまあ。やっと任務も終わったことだしね」
「まだ終わっちゃいない。これからこれをダリルシェイドまで運ばなければならない」
「それはここの兵士さんがやってくれんでしょ?てかリオン、最近喋り方くずれてきたね」
「あいつらの馬鹿が移ったんだろ・・・」
「うわーかわいそっ!」
ルーティにシメられるスタンを眺めながら、とリオンがのんびりと話した。
がリオンの皮肉を聞いて笑うと、急にキョロキョロと辺りを見回した。
「どうしたんだ。食べ物でも見つけたか野生児」
「いや、腹も減ったけど。ここでいつもなら会話に入ってくるシャルの声がない」
「・・・・」
「なんでだ?」
首をかしげるの横で、リオンはしばらく黙りこんだ。
「シャルは・・・・いや、シャルたちは、神の眼が危険から去った今、再び眠りについたんだ」
「えーっと、じゃあ?」
「神の眼が再び危険にさらされるまでは起きない!それくらい分かれ単細胞!」
「酷っ!少しくらい理解するのが遅くてもいいじゃないか!」
「お前のはいつも遅すぎだ!」
そのままギャーギャーと口喧嘩(じゃれあい)を始めてしまった二人を見て、ウッドロウとフィリアがくすくすと笑った。
「リオンさんとさん、仲がよろしいですわね」
「まだ二人とも幼いからな。スタンくんとルーティくんもまだまだ・・・といったところか」
「ふふふっ。みなさんとても楽しそうですわ」
どこまでものほほんとしている二人は、仲間たちのじゃれあいを止めることもせず、ただ微笑ましそうに見守っているだけだった。
今はもう静まった神の眼を、ようやく昇ってきた朝日が差してキラキラと輝かせていた。



「あ〜〜気持ちエエ〜〜・・・・v」
「はははっ。空の旅は初めてかな?」
神の眼を飛行竜にのせ、一行はさっそくダリルシェイドへと出発していた。
神の眼を運んだのは城の兵士たちなのに、何故か運転はウッドロウだ。
もとより好奇心の塊のはそこら中を探検し、操縦席のあったウッドロウの所で次々と変わっていく景色を楽しんでいた。
「もち!なーぜかこれだけは乗っけてくれなかったんだよね。竜のってみたかったのに・・・・」
といじけるを見て、ウッドロウはさらに笑った。(誰の策略で乗れなかったのかは一目瞭然だ)
「ところでガングロ王子。マリーさんはどうするの?」
「彼女は私の国の民だからね。しっかりと守っていくよ」
「そーじゃなくて」
笑顔で流そうとしていたウッドロウに、が顔をしかめながらもう一度問いかけようとした。
ごまかしきれないことを察すると、ウッドロウはふと表情を暗くしながらその問いに答えた。
「・・・・あそこまで傷ついた彼女に、今思いを伝えるのは酷だろう」
「・・・。傷ついた女ほど落ちやすいっていうけど?」
「私はそういう手は使いたくないんでね」
「なーるほど。あんた良い男だね」
「おや、今頃気付いたのか?」
冗談交じりで返してきたウッドロウと笑うだけ笑うと、は「探検に行ってくる!」と言って操縦席を出て行った。
どこかの部屋の前まで来ると、中からスタンとリオンの声が聞こえた。
「放っておけるわけないだろ!俺たちは仲間じゃないか」
「仲間なんて言葉を使うな!僕には仲間なんかいない!」
なにやら言い争っているようで、は好奇心そのままに動き聞き耳をたてた。
「いいから、待ってろよ。なんか冷たいものでももらってきてやるからさ」
「いい加減にしろ、このお節介焼きが!」
「リオン・・・」
「おまえはいつもそうだ!まったく、付き合いきれんな!この際だから言ってやる。人は、信じていたっていつかは裏切られるんだ!」
「それがいったい、何の関係があるんだよ?」
簡単に返してしまったスタンの言葉を聞いてがプッと噴出した。
「僕は誰も信じない・・・・・だから、おまえらも、僕のことは放っておいてくれ!」
「わかったよ。ともかく、今は休んでろよ。じきによくなるさ」
「ふん、だといいがな・・・・・」
リオンと話を終えると、スタンはため息をつきながら部屋から出てきた。
「あれ、?」
「ごめーん。話し聞いちゃった。どうしたんだよリオンのやつ?」
「ああ・・・船酔いだって」
「船酔い!??」
スタンの言葉を聞いて、が大爆笑した。
「あ、あいつでもそんなことあるんだ!」
「ププッ、ちょっと意外だよな!」
につられてか、スタンも一緒になって笑いだした。リオンの部屋の前だったので、二人とも声を抑えている。
「にしても、リオンのやつどうしたんだ?ヒステリーみたいになって」
「あんなこと言われるなんて思わなかったなー・・・へへっ、ちょっと痛かったりして」
首をかしげたの横で、スタンが苦笑いしながら心境を暴露した。
そんなスタンをん?と首をかしげたまま見ると、は「あー・・」と言って同じく苦笑いした。
「もうお別れで明日から会えないから余計そうなんじゃないかな?・・・でもなんだろう、なんかひっかかるな・・何か忘れてるような・・」
「なにを忘れてるの?・・・・ってあー!!ルーティのこと忘れてた!」
「うわ酷っ!ルーティなら甲板にいたけ」
「ありがと!」
が言い終わる前に、スタンはお礼を言いながら走り去っていった。
スタンの後姿を見ながら苦笑いすると、は「さてと」と言って食堂へと向かった。


コンコン、と軽くノックをすると、はそーっと扉を開けた。
「リオン?」
名前を呼んでみたが中から返事はなく、は眠っているのかと解釈してスタスタと入ってきた。
その手にはなにやら色々と乗ったトレーがある。
「ありゃー・・本当に眠ってるよこの人」
テーブルにトレーを置くと、は背中を向けてベッドに入っているリオンの顔を覗き込んだ。
すっかり寝入っているようで、リオンは近くにがいるのにも気付いていない。
しばらくじーっとリオンを観察していただったが、飽きたのかテーブルまで戻った。
テーブルの上にはシャルティエが置いてある。コアクリスタルは閉じたままだ。
「シャルー・・・なんか喋れよ。暇ー・・・」
椅子に座ってテーブルに顎を着けながら、はシャルティエのコアクリスタルをコツンと指ではじいた。
がうとうととしかけたとき、後ろで人の動く気配がした。
「・・・・ぅ」
「リオン?起きたんだ」
「・・なんでお前がいるんだ」
「うわーい寝起き悪っ」
不機嫌そうな声を出しさらに睨みつけながら言ってきたリオンに、が両手を上げてお茶らけた。
昨日から起きて動いていた所為か、二人ともとても眠たそうだ。
「酔ったって聞いたから、氷水と食べ物を少々〜ね。かっぱらってきた
返して来い
「冗談だって☆」
相変わらずだな〜と笑うを見て、リオンがゲンナリとした。
「まあまあ、昨日からなんも食って無いじゃん。その所為もあるよきっと」
「それはお前だけだ」
「いーやそれはない!さあ食うぞ」
「お前も食べるのか?」
「だって俺も食ってねーもん」
さっさと椅子とトレーを移動してきたを見て、リオンは呆れたようにため息をついた。
なんだかんだ言って食べてしまったリオンはむすっとしていたが、はご機嫌だった。
「少しは元気でた?」
「でるかこんなもので」
「やっぱマリアンさんのプリンが・・・」
「だからどうしてマリアンがでてくる!」
「よし、元気でたね」
「・・・・変な確かめ方をするな」
遊ばれているだけのような気もするが、はいたって真剣だ。
リオンはすっかり怒る気もうせ、ぐったりとしている。
「最近お前元気なかったからさー、どうしたのかなって思ってね。そろそろホームシック?」
「そんなわけあるか。大体、元気があるないなんて僕には関係ない」
「あるある大有り。俺につっこむ人がいなくなる」
「・・・それだけか」
「お前、つっこみは重要なんだぞ!!アクアヴェイル出た頃からつっこみが減ってきたからさー、もうつまんないつまんない」
「結局お前個人の気持ちか?」
馬鹿野郎!笑いは世界を救うんだぞ!!」
「そんな救いいらん!」
そうこう馬鹿をしているうちに、リオンは酔っていることを忘れていた。
一番気付かなければならない本人たちはそれにまったく気付かず、二人がボケつっこみを繰り返しているうちに飛行竜はダリルシェイドへと到着した。




「あ〜〜〜疲れた〜〜!」
「・・・こっちが疲れた」
飛行竜を降りて第一声、は元気よく伸びをし、リオンはげんなりとしながらため息をついた。
「にしても、よく今日中についたよね。ウッドロウの安全運転じゃ明日付くかと思ったよ」
「いったい何キロで飛んでいたんだ」
あくびをしながら言ったの言葉を聞いて、リオンが不機嫌そうにウッドロウに問いかけた。
「安全運転なんてとうに超えていた。100キロもだして飛んでいたんだぞ?」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
それでやけに遅かったのかと、仲間たちは沈黙した。
ちなみに100キロで安全運転を超えているというウッドロウの安全運転範囲内は、60キロらしい。微妙だ。(差が40キロ)
朝ハイデルベルグを出発したというのに、もう1時間もしたら日が落ちる時刻だ。
「まあとにかく、誰か一人ダリルシェイドで応援呼んできて、残りはここで見張りでもしましょう。さっさと仕事終わらせて報酬もらわなきゃ♪」
「それもそうだな。さっさと終わらせたいし」
「その必要はないようだ」
リオンの言葉を聞いて首をかしげたスタンとルーティだったが、遠くからやってくる沢山の人影を見て納得した。
ダリルシェイドの兵士たちだ。
「あ!ヒューゴさん!!」
言うや否や、は一目散にヒューゴのもとへとかけていった。
「ヒューゴさんただいま!任務終わったよ!」
「おかえり。よくがんばったね」
だーーッッと走ってきた抱きついた(突進した)を受け止めると、ヒューゴはにっこり笑いながら頭をなでた。
もにっこり笑うと、今度は知り合いの兵士たちにまで声をかけ、リオンたちのもとへと忙しく戻っていった。
戻ってすぐ「報酬♪報酬♪」とテンションの高くなったルーティと飛んだりはねたりしてはしゃぎ、そのうちフィリアまで輪に入れて大騒ぎをした。
「ただいま任務より戻りました」
「ああ、ごくろうだった。上手くいったんだろうな?」
「ええ、もちろんです」
リオンとすれ違いざまに会話をすると、ヒューゴはさっさと兵士たちに指示を出し始めた。
「さて、陛下がお待ちだ。城の方へと向かってくれたまえ」
「ヒューゴさんは?」
「後ですぐにいくよ。も先にいってなさい」
「はい!」
ちょこちょこやってきたの頭をぽんぽんと軽く叩くと、ヒューゴは子供を相手にするような物腰で言った。
もそれに元気よく答えると、先に歩いていたリオンの隣へと走って行った。
「ガキかお前は」
「未成年だもーん。ヒューゴさんも相変わらずだったね」
「お前にだけは甘甘みたいだな」
想像もできないヒューゴの変わりように、リオンは驚きを通り越して呆れていた。
ため息をつきながらリオンが言うと、悪戯っぽい笑顔をうかべたスタンやルーティが茶々を入れにやってきた。
「最初見たときも思ったけど、ヒューゴって人ってにすっごい甘いわよねーv」
「そう?」
「そうだよ!他の人たちと話すときと全然表情違うもん!」
スタンとルーティが力説するが、はきょとんとするばかりだった。
「そーかなぁ?俺だけじゃないと思うよ?お客さんにもああいう顔するし。マリアンさんにも」
バキッッッ
「・・・・・どうしたんだ、リオン」
「別に」
ほどよく近くにあった木を殴ったリオンを見て全員が黙り、スタンが引きながらも問いかけた。
さらりとそれに答えると、リオンは何事もなかったかのように歩いていった。
残された仲間たちは、しばらくその後姿を見つめていた。
「・・・・恋」
「はい?」
「いや、なんでもないよ」
ぽつりとなにかつぶやいたウッドロウにスタンが何事かと聞き返したが、ウッドロウはいつもの爽やかな笑顔でそれを流した。
「リオンさん、なにかあったんでしょうか」
「大丈夫だよ。プリン食べればきっと回復するから」
「は?」
「だからなんでプリン?」
「フフフフフ〜〜♪リーーーーオンーーーーーーーーーーーーーーー☆」
スタンたちの質問にも答えず、は笑顔を作るとリオンの元へと走っていってタックルをくらわ・・・・抱きついた。
「離れろ単細胞!」
を振り落とそうと騒ぐリオンと、そんなリオンの反応を見てけらけら笑っているを見てどうでもよくなったのか、スタンたちは笑いながらため息をつくと二人の元へとかけていった。なんだかんだいってみんな浮かれているのだ。
「おいリオン!俺たちを置いていくなよな!」
「そーよクソガキ!一番のりして報酬上げてもらおうったってそうはいかないんだからね!」
「せっかちですね、リオンさんは。もっとゆっくりしたってお城は逃げていきませんわ」
「そんなに急いてばかりいると、早く歳をとってしまうよ、リオン君」
「お前たちまでくっつくな!!」
「あはははははは!」
に続いてスタン、ルーティと抱きつかれたリオンは倒れかけ、それをフィリアとウッドロウが支えた。
その後怒ったリオンが3人を払い落としなんとか自由になったのだが、またも3人に捕まってしまった。
なおもくっついて離れそうに無いたちを引きずりながら歩くリオンと、そんなリオンを支えるウッドロウとフィリアの姿は、その後何度も見かけられた。
くっついたり離れたりのやり取りが、城に着くまでずっと続けられた。








続く
−−−−−−−−−−−−−−−−
ゲームでいう第一部終了・・・。ですが、ここはまだまだ続きます。
でも次は一旦ほのぼのです。やーっとグレバムかよー。(遅)
ヒューゴさん、主人公にあってもあまり相手してなかったのは人がいた所為か?
ていうかリオン最後の方遊ばれまくりでした(ありえない)これがスタンたちと遊ぶ最後のひと時・・・いや、スタンのお別れがあったし!
あーーーーもうすぐやーーー。嫌ーーー(止まれ)もうすぐですよ。坊ちゃんが・・・!!
・・うっし、気合いれていこ!っしゃーーーー!!んなろーーーーー!!!
えーっと、ここまで読んでくれた方ありがとうございました!