「私は死んではいない。ダリス、お前が私を逃がしてくれたのだ」
「・・・・」
「・・ウッドロウ」
扉の向こうから聞こえてきた衝撃的な事実に、仲間たちは顔だけ驚きながらもしっかりと出場亀をしていた。
ウッドロウは最初のマリーの台詞(妻発言)に衝撃を受け、数秒ほど固まっていた。
が声をかけるとにっこり笑いながら、人差し指を口に当てて「静かに」と合図をした。
my way of living 30
〜ビターは甘いだけじゃないの!!〜
全員が扉に耳をくっつけて話を聞いていることも知らず、二人は話を続けた。
「死んだのだ!愚かにもグレバムさまに逆らったためにな!」
マリーの言葉を聞いたダリスは、大声でマリーに言い返していた。
大声で叫ぶその様子は、まるで自分に言い聞かせるかのようだ。
「私は生きている。ダリス、お前には2度も命を救ってもらった」
「お前が俺の妻であるわけがないのだ」
「お前は忘れているだけだ。思い出せ、サイリルの町を!」
「俺はサイリルから出仕しているが・・・サイリルがどうかしたのか?」
「ダリス、何もかも忘れてしまったのか?」
何が言いたいんだ、とダリスが眉をひそめると、マリーは悲しそうに掠れ声をあげた。
「忘れてなどいない。俺はずっとグレバム様に仕えてきた」
「ウソだ!」
「嘘などではない」
マリーが声を張り上げたが、ダリスは冷静に談々と話した。
「ダリス、お前に会って・・・私は全てを思い出すことができた」
「ほう、何を思い出したのだ?」
「私が・・・・なぜ記憶を失ったのか。そして・・・・その時なにが起きたのか」
「そうまで言うなら話してみるがいい。お前が取り戻したという、その記憶を」
挑戦的にダリスが言うと、マリーは黙りこくってしまった。
そんなマリーを見て嘲笑いながら、ダリスは「どうしたのだ?」とわざとらしくいった。
「俺とお前は夫婦で・・・サイリルで暮らしていた、とでも言うのだろう?」
「そうだ・・・・私たちは平穏な時を過ごしていた。町が炎に包まれた・・・・あの時までは・・・・」
「炎に包まれる?!どういうことだ?俺はずっとサイリルに住んでいるが・・・サイリルが大火に見舞われたことなど、かつてない」
「いや、ある。今では鮮明に思い出せる。昨日まで記憶がなかったとは信じられないくらいにな」
マリーの言葉を聞いてはじかれたように声を張り上げたダリスに、マリーが悲しそうな声で言った。
そんなマリーの様子を見てか、ダリスは「・・・・続けろ」と話しを催促した。
「初めから話すぞ」
「かまわん・・・」
「今から10年以上も昔、ファンダリアは動乱の渦中にあった。そのため、当時のサイリルには自衛団が組織されていた。サイリルとスノーフリアを結ぶティルソの森で・・・かなり大きな戦いがあった。戦いの顛末は知らないが、いやがうえにも治安は乱れた。サイリルの自衛団は歩哨を立てて治安維持につとめ・・・その自衛団にいた若い剣士が、早朝の歩哨任務で一人の侵入者を発見した。胸壁の片隅にうずくまるように座り込んで・・・・薄汚れた服・・・板金のはがれた鎧・・・そして刃こぼれした剣を抱くように握り締めていた。もちろん、若い剣士にも一目で敗残兵とわかった・・・。飢えと寒さで疲れきった顔・・・。涙をたたえた目は、恐怖に脅えていた。敗残兵が捕まった後、どんな扱いを受けるのか・・・。若い剣士はそのみじめな姿に同情したのか・・・自分の家に、かくまい・・・・その命を助けた・・・。ダリス、お前は自衛団に居たことがあるだろう。その時、助けられた敗残兵というのが・・それがこの私さ・・・。・・・・。少しは思い出してくれたか?」
「・・・マリーさん、そんな過去があったんだ」
「ダリスさんは命の恩人だったんですね・・・」
扉の前で耳を当てながら、スタンとフィリアが小声で話した。
「・・・・・。」
「・・・」
「・・・(怒)」
「・・・っ!」
無言でいるウッドロウの肩に「諦めろ」といわんばかりに首を振りながらが手を置き、そのをリオンがどついた。(↑)
そんな無言の会話が繰り広げられていた頃、中では話しが進んでいた。
「だまれ!私は一年前、グレバム様に抜擢され、ハイデルベルグの警備を任されたのだ」
「一年前?さっきおまえは『ずっと』仕えてきたと言ったな?それとも一年というのが『ずっと』なのか?」
「・・・・」
マリーに痛いところをつかれ、ダリスは言葉につまった。
そんなダリスを見て、マリーはふっ・・と笑った。
「いつわりの記憶には・・・つまらない矛盾が満ちているのだな。ダリス、それはまったくのでたらめだ。真実を話そう・・・」
「うるさい!!もう、たくさんだ!!」
続きを話そうとしたマリーの言葉を遮るように、ダリスが吐き捨てるように声を上げた。
そんなダリスを見てくすっと笑うと、今度はマリーが「真実を聞くのが怖いか?」と挑発的に言った。
「なんだと!?」
「私が真実を話した時、お前はすべてを失う。でも、それは・・・自分をとりもどすことだ」
「ふん、こざかしいことを・・・いいだろう、聞いてやる。その後で処断してくれるわ!」
「好きにすればいい・・・私は、お前のおかげで自分を取り戻した。つらい記憶ではあっても・・・自らの生い立ちが知れないよりはいい・・」
「・・・。早く、話せ」
「そうしよう」
マリーの話しが始まった頃、廊下ではちょっぴり騒動がおきていた。
ダリスの言葉を聞いたウッドロウが中に入ろうとし、それをとリオンでなんとかくいとめた。
周りの仲間たちは中の話しに聞き入って気付いていない。
「まったく、ウッドロウもすっかりドリフ色だよ・・・」
「どんな色だ」
ウッドロウを落ち着かせた後、二人はため息をつきながら小声でコントをした。
「どこまで話したか・・・・ともかく動乱のファンダリアはやがて賢王イザークによって平和を取り戻した。長かった・・・。お前に助けられてから、4年が経っていた。その間に、私もサイリルの自衛団に入り・・・そして、ことあるごとに、町を守るために戦った。ダリス、お前と共に戦った4年間は・・・つらくもあったが、ほんとに充実した4年間だった。お前は、私に色々なことを教えてくれたな。おかげで私も、読み書きくらいはできるようになった。それと・・・戦場で干し肉をかじるような生活をしていた私に・・・料理を教えてくれたのも、ダリス、お前だったな。お前はビーストミートのポワレが好きで・・・私はお前に喜んでもらいたくて・・・がんばってなれない料理に取り組んだんだ。そんなこんなで、私が人並みに生活できるようになったころ・・・世の中は平穏になった。その時の、私は・・・世間の安穏とは裏腹に、心穏やかではいられなかった。私はダリスの家に転がり込んだ居候・・・そんな引け目があったから。自衛団は時勢に従って縮小され・・・私は自分の居場所を見失いかけていた。なかば自暴自棄になっていた私に・・・ダリス、おまえが掛けてくれた言葉・・・」
そこまで言うと、マリーは泣き出してしまった。
外にいた全員も思わず沈黙した。
「・・・。あの言葉は心に染みた・・・。・・・。それから次の4年間は・・・特に何事もなかった。平穏無事な4年間・・・しいて言うなら・・・子供に恵まれなかったのが、少しさびしかった。だが今思えば、それは幸いだったのかもしれない。・・・。そして・・・そして今から2年前・・・サイリルの町は何者かに襲われた。町の人々はティルソの森に難を逃れたが・・・防戦に加わったものはことごとく殺された。最後に残ったのはお前と私の二人のみ・・・状況は絶望的だったけど不思議と怖くはなかった。私はお前と一緒だったから怖くなかったんだ。一緒だったから・・・。・・・。でもお前は・・・お前は最後になって二人の志を裏切った。死に臨む、その前に・・・私の記憶を封印し、そして逃がした。自分は死すとも・・・か・・・。気持ちは分かるが・・・つらすぎるぞ・・・。・・・」
最後の方は掠れてしまい、ほとんど聞き取ることができなかった。
しばらくすると、ダリスが口を開いた。
「・・・。どうした、終わりか?」
「・・・。ああ、コレが全てだ・・」
涙を手でぬぐってからマリーがしっかりと答えた。
「残念だが・・・俺は知らないことだ。・・・。なんだ、この記憶は・・・。そ、そんな、まさか・・・サイリルの町で・・」
急に頭を抑えて机に手をつき身体を支えるダリス。
マリーがぱっと顔を輝かせた。
「その記憶こそが真実なのだ」
「何か・・・懐かしい・・響き・・うおぉぉ・・・あ、頭が・・・」
「ダリス、しっかりしろ!」
とうとう両手で頭を押さえてしゃがみこんでしまったダリスにマリーがかけよった。
「おいっ、貴様ら!」
全員が扉に耳をくっつけていたところ、フィリアの後ろから誰かが声をかけてきた。
「しっ、聞こえませんわ・・・・ってきゃぁ!」
「お、おまえらっ!脱獄だな!」
「ちぃ!」
「わわわ・・」
驚いてそれぞれが反応をしめしたところ、誰かに押されてしまったスタンが部屋の扉を押してしまった。
しょうがない、といって全員部屋の中へ逃げ込むと、頭を抱えてしゃがみこんでいるダリスがいた。
「私は・・・誰だ・・・」
「た、隊長!」
「くそっ、わからん・・・」
「まずいぞ、マインドコントロールが!?」
「マインドコントロールだって!?」
後からきた兵士が焦って口に出した言葉を、は聞き逃さなかった。
大声で繰り返したの言葉を聞いて、全員がダリスの方を見た。
「ダリス隊長。アナタ様のお力で、こいつらを始末してください!」
「隊・・・長・・・?・・・そうだ!俺の名はダリス。グレバム様の忠実な部下だ!よし、おまえたち、やるぞ!」
「へい!」
隊長と聞いて頭の方が整理されたのか−−−再び洗脳されたというのが正しいのだが−−−ダリスは目をカッと見開くと勢いよく立ち上がった。
そんなダリスにすがりつくように、マリーが服を引いた。
「ダリス、やめろ!」
「煩い!」
「マリーさんっ!」
バシッと大きな音を立てて、ダリスはマリーと突き飛ばした。壁に頭を強く打ったマリーはぐったりとしている。
「グレバム様に歯向かう愚かな奴らめ!死んで詫びるがいい!」
シャッとマリーと同じ形の剣を抜くと、ダリスはスタンにつっこんできた。
「やめてください、ダリスさん!マリーさんはあなたを助けるために・・」
「煩い!!」
ガキィッと金属の擦りあう嫌な音をたてながら、スタンとダリスは剣を交えた。
「ていうか自分で忠実な部下だ!とかいうかよ普通!今時じゃない!古い!」
「この世界では普通なんじゃないのか。僕は言ったことは無いが」
周りにいた二人の兵を殴り蹴りしながらがつっこむと、リオンがさらりとそれに答えた。
ありえん、と言いながらが最後の一蹴りを食らわせると、兵士の片方は気絶した。
「ダリスーーーっ!!!」
勝負は思ったより早くついた。とリオンとフィリアが周りの兵士を片付けてすぐだった。
マリーの叫び声を聞いて、三人は振り返った。
そこには部屋の真ん中で血だらけになりながら横たわるダリスと寄り添うマリー。
立ち尽くすスタンとウッドロウ。マリーのすぐ前で、ルーティが信じられないようなものでも見るようにそれを見つめていた。
「マリー・・・なぜ・・・戻ってきた・・・」
「ダリス、思い出したのか!」
むせこみながらなんとか言葉を発したダリスに、マリーが泣きながら嬉しそうに答えた。
「お前だけは・・・無事に・・・」
「何も喋るな」
顔をゆがませると、マリーは片方の手をダリスの頬に、もう片方の手をダリスの手に添えた。
「だ、誰か・・・」
全員が二人に気を取られていると、先程リオンとに殴り蹴りされ、フィリアに晶術をくらわされていた兵士が応援をよんだ。
それにいち早く気がついたのはフィリアだった。
「早く逃げろ・・・追手が来る・・・」
「手当てをする」
「構うな・・・私は助からない・・・」
「せっかく・・・やっと会えた・・・」
マリーは首をふりがなら、先程よりもさらにぼろぼろと涙を流した。
そんなマリーを見ると、ダリスはゆっくりと苦笑いをした。
「すまん・・・マリー・・・」
「死ぬな、ダリスっ!また私を一人にするのか!」
「・・・」
「答えろ、ダリスっ!」
泣きながら声を張り上げるマリーを見て微笑むと、ダリスは何か言おうと口を動かした。
だがその口から言葉を発することはなく、ダリスは口をかろうじて動かしただけで、それっきり、目を閉じて動かなくなった。
「ダリスーーっ!!!」
泣き叫び、動かなくなったダリスの顔を両手で包み込むと、マリーはダリスの胸に額を落として泣いた。
誰も声をかけることもなにをすることも出来ず、ただダリスの名前を繰り返し呼び泣き続けるマリーを見ていた。
「マリー・・」
ふいに、ルーティが声をかけた。
「マリー、行こう」
「嫌だ、ここにいる」
ルーティがそっと肩に触れて言ったが、マリーは首を振ってそこから動こうとはしなかった。
「マリー、敵が来るのよ」
「もうどこにもいかない・・・ダリスと一緒にいる」
「マリー、立ちなさい!」
「ルーティ?」
子供をしかりあげるように大声を上げたルーティに驚いて、マリーが顔をあげた。
「ぼさっとしてないの!あんたまで死なせるなんて、そんなのダメだからねっ!」
少し泣きそうな声で言うと、ルーティはダリスを担ぎあげた。
「あんたの旦那も一緒だよ。さ、行こ・・・」
「ルーティ・・・わかった」
ルーティの目を見ると、マリーは涙をふき取り立ち上がった。
それを見た仲間たちはそれぞれほっと胸をなでおろし、スタンがさっそく声をかけた。
「さあ早く!」
「スタン君、屋上だ!」
「はい!」
ウッドロウの言葉を聞いて全員が移動し始めたとき、スタンが机の上にあるダリスの剣を見つけた。
「マリーさん、大事な剣を忘れてますよ?」
「・・・」
「マリーさん?」
「・・え?なに」
声をかけても上の空だったマリーを見て一瞬不安そうに眉をひそめたが、スタンは笑顔を作ってマリーに剣を手渡した。
「はい、忘れ物です」
「ああ、すまない」
剣を受け取ると少し落ち着きをとり戻したか・・・と思ったがあまり効果は見られず、マリーはいつも以上にぼーっとしながら階段を登っていった。
屋上へと上がると、冷たい風が一気に身体に押し寄せた。
「行くぞ!奴らを生かして帰すな!」
「おー!」
「ウッドロウを討ち取ったものには特別にボーナスも出るぞ!」
「おぉー!」
「よし、突撃ぃ!」
建物の外から兵士たちの声が聞こえ、スタンが焦ったようにウッドロウに言った。
「戦いましょう!」
「ダメだ」
「だって、このままじゃ」
「まだ逃げる方法はある」
低く縁取られた屋上のさらに向こう・・・地面を見ながら言うウッドロウを見て、スタンが顔を引きつらせた。
「え・・・ま、まさか・・・」
「大丈夫だ、雪がクッションになってくれる」
「じょ、冗談…・・ですよね?」
「二階から飛び降りるのは雪国の特権・・・・・」
「ーーーーーーー!!!!」
横からボソリと言って来たに、スタンがやめてくれと言わんばかりに叫んだ。
「覚悟を決めたまえ。1,2の3で行くぞ」
「ひゃっほーい♪飛び降り飛び降り♪」
「歌うな野生児!」
喜ぶとは裏腹に、リオンは不機嫌そうにしていた。怖いのだろうか(斬られるぞ)
「1・・2・・・3っ!」
「うわーーっっ」
「わ〜〜〜いっ」
それぞれ異なる叫び声(?)を上げながら落ちると、しばらくしてのそのそと起き上がってきた。
「大丈夫か、スタン君?」
「な、なんとか・・・・」
「あんたね、人一人分楽してんだからもっとしゃきっとしなさいよ!!」
「ハイ・・・」
ダリスごと雪にすっぽり埋まっていたルーティが、八つ当たりか怒ってがばぁっと現れた。
あまりの怖さに思わずスタンは小さくなった。
「この先に洞窟があるはずだ。ひとまずそこに身を隠そう」
そういうと、ウッドロウは暗い雪の道ともいえない道を歩いていった。
「ここまでくれば大丈夫だろう」
たどりついた場所は、洞窟のようなところだった。
キョロキョロと辺りを見回しここは?と質問したスタンに、ウッドロウは「昔の王が作った地下通路だ。王城につながっている」と丁寧に答えた。
じゃあ、この通路をたどっていけば・・・と目を輝かせたスタンに、ウッドロウが顎に手を当てながら目を泳がせた。
「そうだ。だが一つ問題がな・・・」
「なんです?」
「噂では幽霊が出るらしい・・・」
真顔でウッドロウがそういうと、数秒固まったのちにが噴出した。
「や、や、やめてくださいっ!そんな話、き、聞きたくありません!」
「フィリア?」
「落ち着け、たかが噂だ」
耳を押さえてうろたえ始めたフィリアに、リオンがぴしゃりといった。
後ろではルーティが青ざめている。
「ウ、ウッドロウが真顔で幽霊・・・・くくくっ・・・」
「いい加減終われ」
「ププププ・・・」
「だって、だって・・・・」
「リオン君の言う通りだ。心配はいらんよ」
「だったら言うな!」
「あはははは!」
「うるさい!」
さきほどからつっこみに忙しいリオンを見てが大爆笑を始めた。
「フィ、フィリア。前みたいにフィリアボム使えば良いんだよ。どかーんて」
腹を押さえながら言ったの後に、スタンが首をかしげながらフィリアに質問した。
「そういえば前は良かったのになんで今はだめなの?」(リク参考)
「前は昼間で結局なにもでませんでしたし・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「それに実話を教えてもらったのは、出た後でしたもの!」
「フィリア、昼間でも幽霊ってでるんだよ?」
がそういうと、フィリアはさっと青ざめた。
煽ってんじゃねえよとスタンとリオンとルーティがをシメていると、奥の方から足音が聞こえた。
「そこにいるのは誰じゃ?」
「きゃぁー!ゆっ、ゆ、幽霊がっ、で、で、でましたわぁー!」
シュッッ
ドーーーンッッ
「落ち着くんだフィリア!」
「もう遅い気もするけど」
「誰の所為だ!!」
本当にフィリアボムを投げだし、さらに次の爆弾まで投げようとするフィリアをスタンがなんとか止めながら説得していた。
そんなスタンにつっこみを入れるに、さらにリオンがつっこみを入れた。(バレないのか音だして)
「グレバムの手の物かっ!」
「ゲホッ!ごほっ!!その声はウッドロウ様っ!」
「何者だ!?」
「は、ダーゼンであります。ウッドロウ様、ご無事で」
煙の中から咳き込みながら現れたのは、一人の老兵だった。
「ダーゼンか!どうしてここにいる?」
「襲撃時の混乱に乗じ、城下の民を連れてここに逃げ込んだ次第であります」
ダーゼンを見て嬉しそうにウッドロウが笑うと、ダーゼンも同じようににっこりと笑った。
「そうか、ご苦労だった。ともかく、無事でなによりだ」
「本当によく無事だったよね・・・」
「伊達に兵士をしておりませんので。入り口付近は危険ですぞ。何もありませぬが、とりあえず、奥の方へ・・・」
「おい、信用できるのか?」
奥へと歩いていくダーゼンを見ながら、リオンがウッドロウに問いかけた。
「わが父に忠誠を誓った男だ。十分に信頼に足る」
「ふん、わかるものか」
「素直じゃないなぁ・・ひてへへへ!」
奥へと案内されながら、はリオンに頬を思い切りつねのばされた。
「ダーゼン、頼みがある。彼女を、マリーさんをサイリルまで送ってくれ」
「ちょっと、マリーを置いていく気なの!」
民間人たちの非難した一つの部屋に案内されると、ダリスを奥へ下ろした。
その後すぐにウッドロウが発した言葉を聞いて、ルーティが憤慨した。
「今の彼女に戦いは無理だ」
「同感だな」
「マリーさんの悲しみ、分かりますわ」
「・・・フィリア」
悲しそうに少し目を伏せうつむいたフィリアを見て、が背中をぽんぽんと軽く叩いた。
バティスタが死んでそう経ってはいない。悲しむのも無理はないだろう。
「マリーさんを死なせたくないのでな。ここに残ってもらう」
「なによ、今まで一緒に戦ってきた仲間じゃない!それを・・・マリーをこんなところに追いていくですって!」
聞き分けの悪い子供のように、ルーティがウッドロウに噛み付いた。
それを見かねたリオンが肩を竦ませながら言葉をつなげた。
「足をひっぱられでもすると迷惑なんでね」
「冗談じゃないわ!マリーがいつ、あんたの足を引っ張ったってのよ!」
「まだ分からないの?リオンの言い方も素直じゃないけど」
「なにがよ!!」
同じく肩を竦ませながらリオンの横で言葉を発したにルーティが矛先を向けた。
呆れたように同時にため息をついた二人にさらに何か言おうと口を開いたルーティに、スタンが声をかけた。
「ルーティ・・・もう、よせよ」
「スタン!あんたまでそんなことを・・・」
「マリーさんの事を一番知っているのはルーティじゃないか。分かってるんだろ?いや、分かってないわけがないだろ?」
「私は・・・」
言い聞かせるように言ったスタンの言葉を聞くと、ルーティはうつむき目を泳がせ、困惑したように声をにごらせた。
「俺だって辛いんだぞ!でも、本当の仲間だったらわかってやってくれよ!」
「スタン・・・」
遠まわしに言わず、あくまでまっすぐ言葉を伝えたスタンの気持ちが通じたのか、ルーティは弱弱しく顔を上げた。
しばらく黙り込んでマリーの方を向くと、ダリスを見てぼーっとしているマリーに声をかけた。
「マリー・・・あたしたちはグレバムを倒しに行ってくるわ。あんたは自分の故郷に・・サイリルに戻りなさい」
「そうだな。サイリルに戻ろうか、ダリス」
ルーティの言葉を聞くと、マリーはまるでダリスが生きているかのようにダリスに優しく話しかけた。
「そのうち遊びに行くからね。それまで元気でね・・・」
「ルーティも元気でな」
ルーティを見てそういうと、またそっけなくダリスの方へ向き返り、マリーはまたダリスを見つめていた。
そんなマリーを見て「マリー・・・」と悲しそうに名前を呼ぶと、ルーティは息を大きく吐き出した。
「さあ、行きましょう」
振り返った彼女はいつものような強い光を宿らせていたが、どこかやけくそ気味になっている気がして仲間たちは心配した。
「ここを出て左に曲がるとすぐ・・・」
出口まで歩きながらこの先の道を教えるウッドロウたちの後ろで、は一度ふりかえった。
安らかな顔をしているダリスと、ダリスを生気の無い目で見てただ微笑んでいるマリーを見て、眉をひそめると前へと向き直った。
戦いの中では悲しみさえも後になってしまうんだなと、この時はふと思った。
「・・・なにを見ているんだ。さっさと行くぞ」
「・・うん」
リオンに呼ばれて、は暗い通路をスタンたちの後から歩いた。リオンの声が少し暗いのは、きっと気のせいではないだろう。
「・・・あんなマリーさん見て、ルーティはどう思っただろうね」
「・・・・」
『・・・』
足の少し前の方を見ながらリオンは眉をひそめた。
それからしばらくして、「今はグレバムを倒すことだけを考えろ」とリオンはいつものような答えをかえした。
続く
−−−−−−−−−−−−−
やヴぇえ。(それは元からだろってつっこみは無しで)何故か今回シリアスだ!?
ていうかマリーさん切なすぎです・・・。ウッドロウもだけど(これは笑だろう)ダリスさん死んじゃいました・・・・。
きっと死なないだろうと思っていたあなた!ごめんなさい死にました(コラ)
書いてみたら案外切なくてちょっと痛いです(泣)マリーさんの姿が痛々しすぎる・・・どうしてやっちゃったんでしょう・・(TOD2入ったらめんどくさいからです/冗談です)いや、実はちゃんとした理由もありますが(それもとんでもなくどうしようもない)
まあおいといて。あいかーらずわけのわからない文ばかり(それこそ痛い)
ていうか過去の話そのままのっけ(強制終了)
最後に、副題は気にしないで下さい。いつかのめちゃいけ見ていた人ならわかるかも・・・(藤井隆史)
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました!!