「ジョニーさん」
「ん、なんだい?」
トウケイ領へ向かう船の中。とりあえずやることのない一行はいつものように食堂でのんびりとすごしていた。
会話がなくなったころ、スタンがジョニーに問いかけた。
「エレノアさんって?」
「・・・・・」
「ちょっと、スタン!」
スタンの言葉を聞いて固まってしまったジョニー。
ルーティがスタンの腕をひっぱたきながらつっこんだ。
「あーあ。触っちゃいけねぇ傷ってものに触っちゃったよ〜〜ぃ♪」
「・・・歌ってないでなんとかしなさいよ」
「無ー理〜〜〜」
歌うなというルーティのつっこみを、が歌って返した。
my way of living 26
〜男・ジョニー、一花咲かせる。・・・かも〜
3人がなにかとじゃれていると、ジョニーが苦笑いしながらスタンの問いかけに答えた。
「俺とフェイトの幼馴染でな。いや、フェイトの恋人だったが・・・いずれにせよ、彼女はもうこの世にはいない・・・」
「そっか、だからあの時の歌・・」
「ん?ああ・・・まぁそういうことだ・・」
ジョニーがそう言いうと、しーん・・・と食堂にいつもならありえない静けさが漂った。
はっ、とわれに返ると、スタンが急いで「すいません。変なこと聞いちゃって・・・」とジョニーに謝った。
「いいってことよ。だが、あの野郎だけはどうしても許せねえ。道化に身をやつし、他人の目を欺き、俺がどれだけこの機会を待ち望んでいたか・・・」
苦々しそうに言ったジョニーに、全員なんと言えばいいのかわからずただ黙っていた。
「おっと、湿っぽくなっちまったな。俺らしくないぜ」
「ジョニーさんてば怖〜い☆」
「煽るな単細胞」
きゃッとわざとらしくいいながら乙女な動作をしたに、リオンが横から手刀を食らわせた。
「めんあり一本!」
「くらったのはお前だろう。とうとう頭をやられたか」
「頭はもともと丈夫だぜ。ばっちりだ!!」
「・・・・・とりあえず海に帰れ」
外を指差し言ったリオンに、「おいでやす〜v竜宮城へようこそ☆梅の間にお客様一人〜〜!」とが返し、それにさらにリオンが「僕まで巻き込むな」とつっこみを入れた。
そんな二人のやりとりを見てジョニーが大笑いした。
「よーし、景気づけに一曲歌うか」
「それがいいですわ」
「それじゃいくぜ。ジョニーナンバー・・・」
と、ジョニーがいいながら琵琶を構えた丁度そのとき、どん・・・となにか大きなものがぶつかったような振動がした。
ん?と首をかしげたジョニーをはじめ、それぞれ天井や周りを見回しながら首をかしげていた。
しばらくすると、食堂の出入り口をばたーんと開け、船員が慌てた様子で入ってきた。
「たっ、大変です!」
「どうした!」
「もっ、モンスターが!」
「モンスターだと!」
「とりつかれました」
船員の言葉を聞いて、全員は顔を見合わせた。
「とにかく外へ、早く!」
船員に言われるまま、とにかく全員席をたった。
「マスター、今日のご飯が取れるかも☆」
「さん、モンスターは食べられませんよ?」
食堂の出口の手前でがマスターに手を振りながら言った言葉に、フィリアが普通のつっこみを入れた。
そんなフィリアに、は「いや〜どうかな〜〜?」とニヤリと笑いながら言った。
とりあえず急がなければならなかったので、二人は走りながら会話を続けた。
「焼いたらおいしそうじゃない?食べられるかもしれないし」
「ええ?!本当ですか?」
「・・・天然に変なことを植え込むな」
本当に信じてしまうフィリアに向かって、「そうそう!」と真顔で嘘を言い続けるに、リオンが呆れながらつっこんだ。
甲板へとでると、どでかいイカのようなタコのようなモンスターががっしりと船につかまっていた。
本名はクラーケンだ。
「なんだ、こいつは?」
「たこちゅーだタコちゅー!!今夜はたこ焼きパーチーだぜ☆」
「あんなもの食べたくないなぁ」
「食べられるかまぬけどもが」
の言葉にまともに答えたスタン。
そんな二人に中盤を取り仕切っていたリオンがつっこみを入れた。
「イカじゃないのか?」
「貝までついてるわよ」
「お〜豪華だねぇ」
マリーとルーティの言葉を聞くと、ジョニーは額に手をあて笑いながらモンスターを見た。
「ジョニーさん、こいつで一杯どうよ?とーっても不味そうだけど☆」
「腹壊しそうだし遠慮しておくぜ☆」
「えー残念・・・。よしスタン。食っておけ」
「やだよ!どうせのことだから俺で実験するとか言い出すんだろ!」
「あれ?なんでわかったんだ?」
「うわ本気だよ・・・・」
「いいからさっさと戦え」
ボケが一人増えたことにより一層コントの所要時間が長くなり、終わりそうに無いその会話にリオンが終止符をうった。
今まで以上に収拾がつかなそうだ。
ちなみにタコだのイカだの貝だの言われているが、モンスターの本名はクラーケンだ。(しつこい)
「つきました!」
船をつけ、フェイトが全員へそう告げた。
結局、クラーケンはおかずにならなかった。
が、ルーティの餌食となった。
楽しそうにレンズを拾うルーティを見ながら、スタンとは手を合わせていた。
「ご苦労、ご苦労」
「我々はモリュウへ引き返し、増援を率いて戻ってくる。それまで時間を稼いでくれ」
「だったら急いだ方がいいぜ。俺たちがあっというまに倒しちまうかもしれんからな」
「それならそれで構わんさ」
ジョニーのお茶らけた発言にも笑顔で答えるフェイトを見て、ルーティとが「さすが幼馴染・・」と耳打ちをした。
それぞれに挨拶をすると、フェイトは船にのりモリュウへと戻っていった。
「おそらく奴らは街の中心にあるトウケイ城にいるはずだ。ここまで来たらもう小細工はいらん。一気に突破してやつらをぶっ飛ばすぜ!」
「はい!」
「おうよー!」
ジョニーがそういうと、スタンとが元気よく(一部だけ)返事をかえした。
町には人っ子一人おらず、カモメの姿も少なかった。
モリュウやシデンに比べると随分大きな街だったが、他の二つとは比べ物にならないくらい物静かだった。
「船、なんでないんだろう?」
「ここってたしか軍艦も持ってるって聞いたけど?」
とルーティが港を歩きながらそういうと、「おそらく・・」とリオンが答えた。
「ほとんどの兵をセインガルドへ送ったのだろう。ティベリウス大王は海戦の方が得意と聞く」
「じゃあ、もうティベリウスもグレバムも・・・」
スタンがはっとしてリオンを見た。
「行ってみなければわからない。なにより、飛行竜がある。後々むかっても10日以上かかるところを3・4日でおいついてしまうだろう」
「つまり、まだいるかもしれないってこと?」
「飛行竜が移動したところを誰も目撃していない、となればな」
港の奥にいた男のボートに乗せてもらいながらリオンが答えた。
全員が乗ると、ボートはトウケイ城へとゆっくり進み始めた。
「ちょっとまてよ。それじゃあセインガルドの方が大変なことになってるんじゃ・・!!」
「セインガルドも馬鹿じゃない。アクアヴェイルの不審な動きについては前々から気付いていた。こちらが動いたという報告が入り次第すぐにでも準備にとりかかるだろう」
「へー。王様ってすごいんだ」
そうか・・・と安心したように頷いたスタンの後ろから、が呑気な声をあげた。
「・・・・お前少しは勉強した方が良いんじゃないのか?」
「オリャ国治めるほど偉くなりたいとは思わないからいいの」
「まず常識を学べ」
「生きてける程度の知能もってるからいい〜」
「一人じゃ生きていかない奴の典型例だな」
「運強いから大丈夫」
「痴呆相手では話にならん・・・・」
「同じことばっか話してないから痴呆じゃないもーん」
「屁理屈だけは一人前だな」
「リオンには負けるけどね」
「いつ僕が屁理屈を言った」
「結構言うじゃん。ピーマン出たときとか。ニンジ」
がす。
「・・・・なあリオン。本当にこれ死なないのか?」
「安心しろ、大丈夫だ」
リオンの荷物に思い切り頭を殴られたは、しばらくボートの中に沈んでいた。
「ここって本当に城!って感じだね」
「そうかな?」
「モリュウやシデンは洋風が入ってたからね」
「そうだなぁ。親父たちみんな新しいもの好きだったからな・・・あ、いやいやゴフンッ」
「・・・いいからさっさと進むぞ」
トウケイ城に侵入してすぐの会話だ。
きょろきょろとおちつきなく城を歩き回るをひっぱりながら、スタンとリオンが先頭を走っていた。
ひっぱるというより、傍から見ると犬の散歩状態だ。
今回は特に変な仕掛けもなく、一行はスムーズに進んでいた。
ただ少し忍者屋敷のような造りだったため、部屋の扉を探すのに苦労しかけた。
あくまでしかけた、だ。
「この鉢植えの下に隠し通路あるぜ!!」
「ヒュ〜♪まるで忍者屋敷だな」
「あ、ねえねえここ!壁が回るよ!!」
「へそくり発見ー!!」
「ルーティ・・」
次々と出てくる宝箱やへそくりや仕掛けに、約3名は楽しそうにはしゃぎ、喜んだ。
楽しそうに家捜しをする3人に、スタンとリオンが呆れ、フィリアが「いけませんわ・・・」と眉をひそめていた。
マリーはあいかわらずぼーっとしている。
最終的にリオンがキレるよりも早く、フィリアが3人にフィリアボムを投げつけてその行動を止めた。
おやめなさい!と怒るフィリアに、何故かスタンまでもが「は、はい・・」と言ってしまうほど、そのときのフィリアは恐かった。
「何者だ!」
最上階にあった部屋の奥へと進むと、数名の衛兵とともに主犯格と見える男二人がいた。
おそらくどちらかがティベリウスだろう。
「へへーん、世直しジョニー、ここに見参!」
「シデンの三男坊かっ!」
ジョニーが前に進み出てそういうと、ティベリウスらしき男がガタッと椅子からたちながら言った。
ここまでくるとは思ってもいなかったのか、もう一人の男もティベリウスも驚愕している。
「同じく、さきの副将軍水戸光圀候こと(大嘘)、ここに見参!!!」
「水戸・・・?」
ジョニーの隣にぱっと現れが言った。
「あなたの人生、かわるわよ?」
「なに馬鹿を行ってるんだこの単細胞っ」
カトラスをスラッと出し、前に突き出しながらウィンクしたに、リオンが後ろからつっこんだ。
気持ち悪い、と言ったリオンにがなんだと!と怒ると、「全員の代表として言ったまでだ」とリオンはふんぞり返りながら言った。
くっ・・・・とが言葉に詰まると、スタンが「納得するのかよ・・」と呆れながらつぶやいた。
「グレバム、見つけましたわ!」
そんな仲間たちのやり取りも眼中に入れず、フィリアが後ろの方から叫んだ。
その言葉を聞いて、全員がグレバムの方を見た。
あれがグレバム・・・!とスタンが言い、メンバーのほとんどがグレバムを集中的に見ていると、グレバムは焦ったようにティベリウスに声をかけた。
「フィリア、お前が何故!?ティベリウス大王、奴らを!」
「分かっている。任せておけ!刀の錆にしてくれるわ!」
言うや否や、ティベリウスは衛兵たちとともに襲い掛かってきた。
「こいつは俺がやる・・!俺にやらせてくれ!!」
ティベリウスの刀を琵琶で押さえつけながら、ジョニーが全員に言った。
「分かった。まかせたぞ」
「負けんなよ、世直しジョニー!」
「もちろんよ!!」
ガッと剣をはじくとジョニーはまたティベリウスに殴りかかり、ティベリウスも同じようにジョニーに斬りかかり、二人はなんども競り合った。
二人の戦いを観戦することなく、たちは衛兵の相手をすることになった。
今までの戦いで少しはアクアヴェイルの敵になれてきたのか、ほぼ全員、一対一でも十分勝てるほど良い動きになっていた。
「!スピード系頼んだ!」
「オーケー頼まれた!オラ来いエセ武士!」
忍者だ。
またも中指を立てて喧嘩を売ると、アサシンによく似た衛兵は手裏剣を投げてきた。
毒まで塗られていそうなその手裏剣を一つは避け、一つをカトラスでなぎ払うと、向かってくる相手に備えては防御体制に入った。
「だぁぁああっっ」
剣を上段に構え、大きく振りかぶってきた衛兵を見て、は「受け止める」という考えを変えた。
狙うはカウンター。
「はっ!!」
膝を付くほど低い体制になると、相手が剣を振り下ろしてくる前に両足でダンッと地面を蹴った。
さすがに一瞬遅れての判断では遅かったのか、入った傷は浅かった。
何より、靴に金属が入っていなければ今頃足をざっくりやられていただろう。
そんなことを考える間もなくザッと振り返ると、は同じく振り返ってきた衛兵をもう一度斬りつけた。
「ぐあぁぁぁっ」
悲鳴を上げながらもまだ生きている衛兵を見て同情したが、ここまでしたなら早く楽にしてあげたほうがいいだろう、と、はその衛兵の首をザンッと斬った。
「!!?そっか、首って斬るの難しいんだっけ・・・・ごめん」
衛兵の途中で止まってしまったカトラスを引き抜きながら、は目を細めた。
普段からモンスターを斬らないには、人の骨や肉を断つのはまだ難しいらしい。
「・・・・」
しばらく、動かなくなった衛兵を眉をひそめながら見ると、は仲間たちの方へと向かった。
「スタン!刀の攻撃はまともに受けるな!ディムロスがかけるぞ!!」
『そこまでヤワではない!!』
ディムロスが即座に反論した。
「わかってるけど、刀ってのは他のところと造りが違うから硬いんだよっ。はーいみなさんいいですかぁ。か・た・なというものはぁ、鋼や鉄を何枚も何枚も重ねて作られているのでぇ、とっても硬いものなんですねぇ。わかりましたかぁ?」
が横の髪を耳にかきあげながら言った。
某教師の真似でもしているつもりなのか、はっきり言って似てない。なにより説明もどうかと思う。
「げっ、マジ?」
『・・・ルーティ、私たちはソーディアンなのよ?今時作られたものなんかに負けるわけ無いわ』
「なんか年寄りくさい発言ね」
『煩いわね!ほら、さっさと動く!』
アトワイトと喧嘩しながら、ルーティは衛兵たちをざっぱざっぱと斬っていった。
サーチガルドも欠かさない。さすがだ。
全員の手が空く頃には、ジョニーとティベリウスの決着もついていた。
「おのれ・・・」
「おまえに追われ、玉座を失った親父、そして傷心のままに死んでいったエレノア・・・己の悪事の代償を今、その身に受けるがいい!」
ジョニーが琵琶を振りかぶったところで、リオンが「待て」とそれをとめた。
ジョニーのお預けは2回目だ。
「グレバムはどこだ?」
「いなくなってる!」
周りを見回してもグレバムの姿は見当たらず、スタンは「そんな!」と困惑した表情で叫んだ。
「なんでしょう、あの音は?」
「外よ!」
ルーティがベランダの方を指差した。
急いで外へ出ると、目の前を飛行竜が飛び去っていった。
「逃げた!?」
「戻ってきなさいよ、卑怯じゃないの!」
「くそっ、せっかく追い詰めたっていうのに・・・」
飛行竜に向かって叫ぶルーティをマリーとがなんとか押さえていると、リオンが「まだ手段はある」と言いながら中へと入っていった。
「リオン?」
「おい、グレバムはどこへ逃げた?」
急いでリオンを追いかけると、リオンはティベリウスに向かって問いかけていた。
「知らん・・・と言いたいところだが、もはや俺には関係ない・・。奴らはファンダリアだ」
「ファンダリアだと?」
「例の料理本のところだね、マリーさん」
「ああ・・・」
思い出すように言ったの言葉を聞いて、マリーが放心したように気の抜けた返事を返した。
そのままなにも言わなくなったマリーを首をかしげて見ていただったが、ティベリウスが笑い出したため、意識をそちらへと戻した。
「ふふふふ・・・謀られたわ。奴め、はなから俺を捨て石にするつもりだったか」
自傷気に笑いながらティベリウスが言った。
「・・・こんな男がアクアヴェイルの大王か!ザマねぇな、ティベリウス!」
今までの怨みを吐き出すかのように、ジョニーが言い捨てた。
「道化のジョニーとはよく言ったものだな。この俺も、まんまといっぱい食わされたわけだ」
「親父を蹴落として、その程度とはな・・・失望したぜ」
「ていうか気付こうよ」
がもっともなつっこみを入れたのだが、水を差すな!とスタンとルーティとフィリアが口を押さえた。
「何とでも言うがいい。やつの、神の眼の力を利用しているつもりで、その実、利用されたのは俺のほうだったようだ」
「セインガルド侵略などという夢物語に躍らされやがって!」
「夢物語?・・・違うな」
「なに?」
不敵に笑ったティベリウスを見て、噛み付く勢いだったジョニーが思わず止まった。
「これは近い将来にやってくる現実だ。暴走する悪魔を止められるか?セインガルドの少年剣士よ」
ティベリウスはジョニーではなくリオンの方へ向き返った。
「奴はすべてを巻き込み、破壊し、食らい尽くすぞ」
「黙れ!」
ティベリウスの言葉を聞いて、リオンが怒鳴った。
「たとえ俺の命がここで果てようと、セインガルドもすぐ後を追うことになる。グレバムと神の眼によってな!くはははは・・・」
「黙れ下衆野郎!」
「ぐあーーーーっ!」
笑うティベリウスの首を、リオンが思い切り切り裂いた。
「リオン!おまえ、何てことを・・・」
「あちゃ〜。変わるどころか終わっちまったよ」
のボケと驚き半分で言ってきたスタンの言葉を聞いて、肩で息をしていたリオンがふー・・・と息を吐き出した。
「悪いなジョニー。おまえの獲物だったな・・・」
「いいってことよ。手間が省けたぜ」
笑いながら軽く返したジョニーに、リオンがもう一度「すまん」と返した。
そのことについても驚きだが、先程のリオンの行動を、は不審がった。
セインガルドが果てるという言葉を聞けば確かに怒るのもわかるが、さっきのはあまりに大げさすぎではないだろうか。
(なにかあるのか・・?)
そこまで考えて、はなにか頭でひっかかる部分があることに気がついた。
しかも、それを思い出そうと思うとどうも気持ちが悪くなる。
あともうちょっと・・・・・・と思うのだが、その部分は先程のリオンの行動と合わせて「不安」という形で残された。
「ジョニー、無事か!」
バタンッという音とともに、フェイトが部屋へ入ってきた。ジョニーは呑気に手を振ると、「よう、遅かったじゃないか」と冗談交じりに答えた。
「もう終わっちまった後さ」
「倒したのか、奴を・・・」
血だらけになって倒れているティベリウスを見下ろしてフェイトが言った。
「ああ。・・・これでやっとエレノアもうかばれるさ」
「そうか・・・」
しばらく二人でティベリウスを見下ろしていると、スタンがフェイトに「あの・・・」といって話しかけた。
「グレバムが神の眼を持って飛行竜でファンダリアに逃げました」
それを聞いたフェイトはさっと顔色を変え、「なんですって・・・」といった。
「僕たちは奴の後を追う」
「わかりました。では、アクアヴェイルが誇る黒十字軍の艦隊でファンダリアまでお送りしましょう」
リオンの言葉を聞いて、フェイトがそう答えた。
それを聞いたスタンがありがとうございます。助かります、と嬉しそうに言うと、「なに。この程度のことしかできなくて申し訳ない」とフェイトは苦笑いした。
「おい、ジョニー。おまえも一緒に行くのか?」
「いや、俺はここに残る」
「ジョニーさん!」
さらりと言ったジョニーに、スタンが驚いて大声を上げた。
やルーティ、リオンも驚いている。
「悪いなスタン。この惨状を見ちまった以上、今ここでアクアヴェイルを出ては行けないさ」
「心配するな。おまえがいようがいまいが、僕たちグレバムを倒す」
ふんっと鼻で笑いながらリオンが言うと、「そう言ってくれると思ったよ」とジョニーが軽快に笑った。
「ま、あまり役には立てなかったが、俺の歌が聞きたくなかったらまた寄ってくれや。それまで、ぐっばいだぜ」
「え〜〜。そんなぁ・・・」
面白い人が増えたのに、とが残念そうに言うと、そこにいたほとんどの人間が笑った。
「では、私は港の方でお待ちしております」
まだくすくす笑いながらフェイトが言い、その場の片付けを兵士に任せると部屋を出て行った。
「おまえらならやれるさ。一緒に旅できて楽しかったぜ」
「お別れだね、ジョニーさん」
「また歌おうぜ!今度は演歌だ!」
「よっしゃー!歌下手だから絶対無理だーーー!」
「ぇえっ、諦め早っ!」
スタンがそういうと、とジョニーが声をそろえて「「ナイスつっこみ〜♪」」と歌いながら言った。
あほどもが・・・とリオンは呆れたが、そのほかの全員は3人のやり取りを見て楽しそうに笑っていた。
「ほら、行くよ」
「うわ〜〜っ、ジョニーさん〜〜〜」
「〜〜〜」
「ノルな」
どこまでもボケを続ける二人に、リオンがつっこみを入れた。
つっこみを受けたジョニーが今度こそ「じゃ、またな」と笑いながら挨拶をすると、も今度は素直に「また!」と返事を返した。
「8時丁度の〜あずさ2号で〜〜♪私は私はあ・な・たから〜〜〜♪旅立ちます〜〜〜♪」
「おお〜」
「やめろバカ!」
「いてっ!」
拍手を送ったジョニーとは反対に、リオンは上手い間でつっこんだ。
今回はシャルティエの柄でだ。(痛)
ていうか古っ・・・という声が兵士の中から聞こえると、リオンはますます不機嫌そうに眉をひそめた。
恥ずかしいらしい。
「ジョニーさんばいばーい」
「おうじゃーな」
もう何度目かになる挨拶だなと笑いながら、ジョニーはリオンに引きずられていくに手を振った。
スタンやルーティやマリー、頭を下げてきたフィリア、無表情だったが一応手は上げたリオンにも手を振ると、満足気な顔でふぅ、とため息をついた。
「まったく、嵐みたいな奴らだぜ。・・・がんばれよ」
そう言って笑うと、ジョニーはすっきりとした顔でとりあえず復興作業の第一歩にとりかかった。
この部屋の掃除だ。(寒)
今までのことを思い出しながら、ジョニーは今夜また歌おう、と一人心の中でごちた。
今更だが、嵐のような奴というとジョニーも含まれるのではないだろうか?と、あのメンバーの中の誰かが先程の台詞を聞いたら言うだろう。
かなりどうでもいいことだ。
新たに活動を始めたアクアヴェイルから、リオンたちは発った。
新たな悲劇が始まる、丁度1ヶ月前だった。
続く
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うひゃー。微妙な話ー。(コラ)
というかこの終わりどうでしょう。フフッ、ダメダメ☆(自己完結かい)
ジョニーさん・・・とうとうお別れだわ・・・・使いやすかった・・・・あ、いや、ゲフッ。
すみません、精進します(涙)
というかティベリウスとリオンのやり取り、複線ありまくりな気がするのは俺だけだろうか・・・。ま、いっか。(うわ)
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました!