存分に露天風呂に入った一行は、空いた時間、それぞれ自由に過ごしていた。
あるものは剣を磨き、あるものは街の観光へ出かけ、あるものは歌い(!?)、あるものは昼寝をしていた。
my way of living 25
〜歌って踊って喉自慢(2)ルーティ本領を発揮する〜
とりあえず昼食をとった後、は昼寝をしていた。
ルーティ、フィリア、マリーの3人は街を観光しに出かけてしまった。
広い部屋を一人占領し、ふわふわの布団を一人分だしては気持ちよさそうに眠っていた。
全開にした窓からは心地良い潮風が入ってくるため、一層眠りは深まった。
足音が聞こえたかと思うと、ドアの方からコンコンとノックする音が聞こえた。
「おい、いるか」
不機嫌そうなリオンの声がドア越しに部屋へと響いたのだが、は一行に目を覚ます様子はない。
『まだ寝てるんじゃないんですか?鍵あいてたりして』
「まさかそ」
ガチャ
「んなわけ・・・・・・・・・・・・無用心な奴だな」
『まあですしね』
大変失礼な言葉を発しながら、シャルティエをつれた(持った)リオンが部屋の中へ入ってきた。
窓の前、中央部分を陣取って気持ちよさそうに寝ているを見つけたリオンは、シャルティエと共にため息をついた。
リオンがおい、と声をかけたのだが、は「うー・・」と少し唸っただけで、布団を掴んで横へ寝返りをうってしまった。
「・・・・・」
『まあまあ坊ちゃん、抑えて抑えて・・・』
青筋を立て始めたリオンを、シャルティエが慌てて和ませた。(?)
『〜〜〜?もうすぐ夕ご飯になっちゃうよー?』
「う〜?」
「・・・・そういうことにだけは反応するんだな」
シャルティエの言葉に反応して、がリオンの方へ寝返りをうった。
その奇妙なの行動に、リオンが呆れかえってため息をついた。
シャルティエの策が尽きたところで(早)リオンがを蹴った。
いってえ!!と叫ぶと、はぱちっと目をあけ、寝ぼけながらリオンたちの存在を認識した。
「ああ?リオンとシャル?どしたの?」
「どしたのではない。お前いつも寝起き悪すぎだ」
「もう坊ちゃんてば〜。俺の寝起きまで知るほど親密な関係に〜?」
「・・・いつも任務の時に、誰がお前を起こしていると思ってるんだ」
「大体が兵士さんたちで〜・・・・・?その後リオン?」
後・・・・・?とシャルティエが声を上げると、リオンがその説明をご丁寧にもしてくれた。
「兵士たちにお前を起こすのを任せても、結局あまりの寝起きの悪さにはが立たないというから、いつも僕が起こしてやってたんだっ。思い出したか痴呆娘」
「あ〜、あ〜。ん?それ?」
「・・・・・もういい」
思い出したのかリオンを指さしていたのだが、急に忘れたのかまた首をかしげた。
リオンはこれ以上相手をするのが嫌になったのか、諦めたようにため息をついた。
「で、どうしてこんなとこきたの?ルーティたちは?」
『ルーティはと同じくらい性質の悪いスタンを起こしに行ったよ。二人を起こすのは手馴れた人物がいいってことになってね』
「あー。そんでリオンが」
やっと働き始めた―――昼寝の場合回復が早い―――頭を使ったのか、は納得、と言ってぽんと手を叩いた。
「どうでもいい。とっとと行くぞ」
「どこへ?」
「・・・・夕飯抜きだ」
「嫌だ!!」
すっとぼけたにリオンが背を向けてそういうと、は大声でそれに抵抗した。
すっかり頭の覚めたは、無視して歩き出したリオンの後を急いで追いかけた。
大きな食堂は酒場にもなっており、今日は街の領主が変わったこともあって席は満杯だった。
その中でも真ん中の上の方にあった大人数用のテーブルを、一行は早いうちから陣取り楽しそうに食事をしていた。
がやがやとにぎやかな店内は笑ったり歌ったり肩を組んだりと、居る人居る人それぞれが楽しそうだ。
嫌な雰囲気はない。
「おい兄ちゃん、そいつは飾り物かい?」
酔っ払って上機嫌になっている中年くらいの男が、ジョニーの琵琶を指差して言ってきた。
これかい?とそれに笑顔で答えると、ジョニーは立ち上がって琵琶をぽろろんと弾いた。
「これは俺の商売道具〜♪飾りなんかじゃ〜な・い・ぜ〜〜〜イェイ☆」
「イェーイ☆」
ジョニーがじゃんっ、と振動する絃をぴたりと指でとめると、が野次をとばした。
「おっ、いい引きっぷりじゃねーか」
「そりゃ俺は吟遊詩人だからね。人呼んでフーテンのジョニーたぁ俺のことよ!」
「人呼んでじゃなく俺呼んでだろジョニーさん☆」
「おっとそいつは言わない約束だぜ〜♪」
「そいつぁ失礼〜〜♪」
ジョニーと一緒になって歌うに、リオンが呆れスタンは苦笑いした。
それじゃあ一曲やってくれよ!と中年男がジョニーにリクエストすると、ジョニーは快く「OK!」とそれを引き受けた。
「それじゃあいくぜえ!ジョニーナンバー3!!」
「2ってなんだろうね?」
「知るか」
歌いだしたジョニーの前で、がリオンに問いかけた。
即効で冷たく返された。
酷いわ・・!と演技しだしたを無視して、リオンは残っていた食事をかたずけていた。
ジョニーの歌が盛り上がるころ、店に居た客は全員ジョニーの歌を聞いていた。
ジョニーが歌い終わったあとは外に聞こえるくらいの拍手喝采が巻き起こった。
「いいぞ兄ちゃんー!」
「もっとやれー!」
と、ところどころから野次がとび、ジョニーは手を肩辺りにあげながらそれに答えていた。
「まあまあそう焦りなさんなって〜」
「いいなぁジョニーさん」
「お前さんも歌うかい?」
「いいの!?」
驚くに、ジョニーが笑いながら「いいっていいって!」といいながら来い来いと手を振った。
「ギターとハーモニカでもあったらなぁ」
「まっ、今回は俺の琵琶で勘弁してくれよ」
「ピアノくらいならここにあるぞ」
「お〜!誰か引ける奴はいねえかー?!」
「俺俺!俺できるぜ!」
しょぼくれたの発言から、話が段々と大きくなっていった。
結局、ノリの良いお兄さんがピアノも一緒にやると言い出し、がジョニーの楽譜を見て「これ!」と歌を決めていた。
「よぉーし。んじゃミュージック・スタート!」
じゃかジャン、とジョニーが琵琶を弾き始めお兄さんがピアノを弾き、が静かに息をすった。
「丁度一年前に・・・この道を通った夜・・・・・」
「ってロードかよ!!?」
「古っっ!」
「つか何で知ってんだよ!!」
「えー。いい歌じゃないかー」
歌詞を歌い始めたに、のりのよいおじさま、お兄さまがたが一斉につっこんだ。
さすが酒場だ。(それにしてもロードは古い)
ぶーとふくれっつらしたとつっこみを入れる男たちのやりとりに、他にいた客たちはみんな笑った。
しょうがないなぁといい、はジョニーとお兄さんとひそひそ作戦会議をし始めた。
これで!と言ったが楽譜をひっぱりだすと、ジョニーとお兄さんもと顔を見合わせてニヤリと笑った。
絶対なにかたくらんでるよ・・・とそこにいた全員がひそひそ話していると、ジョニーがまた掛け声をかけた。
それとともに、がかなり能天気な歌を歌い始める。
冗談や笑い満載の歌を聞いて、他の客たちが笑い始めた。
リオンが恥だといわんばかりに顔をしかめるが、二人は気付かず、むしろノリノリで歌っていく。
聞いていた客たちが一緒になって歌いだすと、ルーティやスタンたちも笑いながら参加し始めた。
歌が終わった瞬間、またも室内は拍手喝采が巻き起こった。
それと一緒に全員が爆笑していた。
「・・・・・フン」
『坊ちゃん?』
「なんでもない」
盛り上がる酒場の中、リオンは不機嫌そうに嘲笑った。
シャルティエがなにごとかと名前を呼んだのだが、一刀両断されてしまった。
その後もとジョニーがなんとも言えない歌や○いハンカチーフなどの古すぎて若い人にはわからない歌を歌い、酒場のテンションは最高潮にまで達した。
ここらで最後にするよ、とが言うと、ノリの良いおじさんたちにまざってルーティやスタンまでもが「えー!」と野次を飛ばした。
「次で最後〜。ジョニーさん、コレ歌おうよコレ」
「そうだな。まあこれはお前が歌えよ。俺はまだまだ歌うつもりだから」
「え〜〜〜。俺一人ー?やヴぁいって」
「大丈夫大丈夫。ねーちゃん一人でも十分面白いぜ!」
「ど〜も!」
野次をとばしてきたおじさんに、が手を上げて答えた。
それじゃあいくぜ、というジョニーの言葉を聞くと、は焦って楽譜を見た。
音楽が鳴り始めると、「やけに静かな曲だな・・・」と周りがざわめく。
しんみりとした歌を歌うを、全員が静かに眺める。
歌詞やその歌声を聞いて、何人かが目を閉じた。
が歌い終わると、しん・・・と静まりかえっていた酒場が一気に歓声と拍手に包まれる。
おおっ、と驚いていると頭を下げて「どうも〜」と言っているジョニーに、白い紙の塊が投げてよこされた。
「そ、そんな大げさなおっちゃんがた・・」
「いいってことよ!いい歌聞かせてもらったんだからな。その礼だ!」
「そーだもってけもってけ!」
「サンキュー!」
嬉しそうに笑いながらが手を上げると、ピューっと口笛が吹いたり野次がとんだりと大賑わいだった。
その後ジョニーが歌を歌い始めたのを聴きながら、は椅子へと座った。
「ふーっ。スッキリ爽快☆」
「馬鹿に見えるぞ」
「ねえ、そのねじってある紙ってなに?」
リオンがつっこんだすぐ後、スタンがの手の中にあるねじった紙の束を指差しながら問いかけた。
「ああこれ?おひねりっていうんだよ」
「おひねり?」
「うーんと・・・・簡単に言うとあれよ、金入ってんの」
「なぁんですってえええ!!?」
「どわっっ!」
「・・・・でた」
がそういった瞬間、ルーティが大声で叫んだ。
リオンは嫌そうに顔をしかめながら耳を押さえ、スタンは響いたのか、頭をとんとん叩いている。
マリーとフィリアにいたってはなんのダメージもなしだ。
「ちょっと、それ本当?」
「う、うん。ほら」
ねじってあった紙を一つ解くと、ガルドが数枚音を立ててテーブルに落ちた。
それを見たルーティは「わおv!!」と言いながら両手を合わせ、嬉しそうに飛び跳ねた。
「!」
「は、はいっっ!!」
大声で名前を呼んだかと思うと、ルーティはの肩をガシッッとつかんだ。
「次も頼んだわよ」
「な、何がっすか・・・・」
「何がって商ば・・・・歌よ歌!!」
「めっ、目が、目がお金になってるッスよルーティさんっっ!!」
ぐぐぐと顔を近づけてくるルーティはかなりの迫力だ。
はかなり怯えている。
「あら、いたって普通の目よ。とにかく、よろしくねv」
「脅すな」
ハート付きで言ったルーティにリオンが横からつっこんだ。
「脅してなんかいないわよ人聞きの悪い。でもどうしてもっと早く気付かなかったのかしら・・・・。もっと早く気付いていれば昼間のうちだって・・・・あ!ノイシュタットなんて恰好の餌場じゃない!ねえジョニーに、この旅が終わったら、私たちとレンズハンターしない?きっと楽しいと思うわよ〜v」
「いや、遠慮しておきます・・・・・」
「遠慮なんかしなくていいわよー!」
「馬鹿かお前は。こいつはヒューゴ様のもとで働いているんだ。レンズハンターなんかになれるわけがないだろう」
「チッ・・・」
「怖ひ・・・」
「お疲れ・・・」
リオンの後ろに隠れながら言ったに、スタンが同情して声をかけた。
その後舌打ちをして静かになったかと思われたルーティだったが、後のスタン曰く、「あいつ・・・・ずっとぼそぼそ『ダリルシェイドを中心として・・・・ノイシュタットには月3回・・・観光客を狙えば案外いけるわね・・・中奥公園なんて・・』って商売の事口走ってたよ・・・・すっごい怖かった・・・」だとか。
その日、遅くまで酒場に残っていたのはマリーとジョニーだけで、他の全員は足早に部屋へと帰った。
次の日の朝、支度を終えた一行はフェイトの協力により船でトウケイへと出発した。
ときどき遠い目をするジョニーには、そのときは誰一人気付かずにいた。
つづく
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無駄に長いぜイエー。ロード最高〜(古)
え?最近歌ってばかり?
そんな、まさかジョニーがいるのを良いことに歌で場所とろうなんてこれっぽっちも思ってませんよ!
ウォフンッ。
さー次はトウケイ領ですね!(無理やり話を変える)
グレバムにごたいメーン。ネタねぇ〜(アイタタ)
早くウッドロウひきいれたパーティにしたいです。あの若年寄なところが好き。(コラ)
ここまでつきあってくださったかた、ありがとうございました。