次の日の朝。はメイドに起こされ、その後イレーヌたちと朝食をとった。
「剣の稽古は仕事が終わってからでいいかな?」
「はい!すみません無理言って・・・」
「かまわないさ」
寛大に笑ってみせるバルックに、もてへへと笑い返した。
「それじゃあ暇な間・・・私のお手伝いでもしてもらおうかしら」
というイレーヌの申し出にが元気よくOKと返事を返すと、3人はまた笑いあった。
my way of living 2
〜なんちゃって教師と意地悪おねえさんと鬼コーチパパ〜
「―――といっても・・・とくにすることもないのよね、今日は」
「そうなんですか?」
「それじゃあ、ちょっとあそこによっていきましょうかv」
一人で話を進めていくイレーヌに、は首をかしげながらも従ってついていった。
ここよ、というイレーヌの立つ先には、初めてこの街に入ったときに見た少し影のあるところ。
だがその時と反応は違って、無表情だった子供たちはイレーヌを見ると笑顔で駆け寄ってきた。
「いれーぬ!」
「いれーぬだ!」
「ねえイレーヌ、その人だれ?」
ところどころからイレーヌイレーヌと声がかかり、イレーヌもその声に笑顔で答えている。
その中の一人がに目をつけ、イレーヌに質問をすると、イレーヌも「あぁ」といっての紹介をしだした。
それを聞いた子供たちが、今度はによってきて質問攻めにする。
矛先がむいたは慌ててそれに対応し、イレーヌはそれを見て微笑んでいた。
「がっこう?」
「何それ?」
子供たちが聞いたことのない単語を耳にし、乗り上げるような勢いで質問してくる。
が自分の国の話をしたのだ。
イレーヌも聞いたことがないわ、と興味を示した。
「え!?ここって学校無いんですか?!」
「ここに限らずどこにも無いと思うんだけれど・・・・・聞いたことがないわ」
「うーん・・・そっかぁ」
無いのかぁ・・・・と手を顎に添えて一人で考え出したに、子供たちが痺れを切らせて早く教えろー!!と抗議してきた。
「あ、ゴメンゴメン!学校ってのはね、簡単に言えば集団で勉強をする施設のことかな?俺の国では小学校・中学校・高等学校・大学・専門学校・・・・とまあ色々あったけど・・・」
「勉強?」
「みんなで勉強するの?」
「そーそー。それぞれ専門の先生がついたりしてね」
「へぇ・・・・そんな施設があるのね・・・」
感心したように頷きながらイレーヌが言った。
子供たちは「いいなー」とそれぞれ声をあげ、「どんなことをやってるの?」だとか「何人くらいいるの?」だとか・・・質問が絶えないようだ。
「えーっと。じゃあ俺バルックさんいないと暇だし、教えられる範囲で教えてあげようか?」
「え!?いいの?!」
「教えられる範囲ならね・・・・・」
「えー。なんかだと不安だな〜」
「なんだと?!」
「きゃははは」
「あらあら・・・」
いつの間にかすっかり子供たちと打ち解けてしまったを見て、イレーヌは笑みをこぼした。
その後のやりとりでただ単に精神年齢が低いだけだったということが判明するのだが、今のところそれはあえて伏せておくとしよう。
そこらじゅうにいた子供たちが円になって集まり、のなんちゃって教師生活が幕をあけたのだった。
「―――で、こうなるんだよ。さーてここで問題!3+5+7はなんだ!!」
「うわ難しっ!」
「卑怯だぞ!今まですうじ二つずつだったのに!!」
「フハハハハッ!算数に卑怯もクソもなぁーーい!」
「ガキくさーい」
「私わかったよ、15でしょ!」
「早っ!」
「すっご〜い!」
「何!?とけたのかお前?!」
「へへーんザマミロ〜〜」
「お・ま・え・は・といてないだろっっ」
ぐりぐりと少年の頭をゲンコツで押さえつけると、少年は「ぎゃ〜〜〜〜!!」と声を上げながらじたばたと暴れた。
それを見たほかの子供たちが腹をかかえて大笑いし、イレーヌも一緒になって笑っていた。
時間は足早にすぎ、気がつけば日がもう落ちかけていた。
そろそろ帰りましょうか、というイレーヌの一声で勉強会はお開きになり、子供たちもそれぞれ手を振ったり生意気言ったり、と色々な挨拶を二人にすると、自分たちの住むところへ帰っていった。
イレーヌの屋敷へ帰る途中、その日の仕事を終えて戻ってきたバルックに会い、3人でその日にあったことなど色々と雑談をしながら帰った。
「さて、まずは基本からだ」
「はい!」
夕食をとるまでの時間、バルックはをイレーヌの屋敷の庭に呼び出した。
もちろん、剣を教えるため。
その傍ではイレーヌがお茶を飲みながらのほほんと二人の様子を見守っている。
「構え方はこう。握り方はこう。足をもう少し開いて上下にして・・・・そう、その方が動きやすい」
初めて剣を振るに、バルックは細かなところまで一つ一つ丁寧に教えていった。
「―――よし、じゃあそれで素振り10回!」
「了解!」
面白おかしく返事をするに、イレーヌもバルックも笑いながらのんびりとそのときを過ごした。
「・・ぜー・・・・はー・・・」
「夕食もできたことだし、少し休憩にしよう。疲れたかい?」
「もちのロンで・・・・。っていうかバルックさん!素振りの回数が増えていくのは何故!?」
「あっはっはっ。それは練習あるのみだからだよ☆」
いつからそんなノリの良いオジサマになられたのですか・・・・と肩で息をしながらつっこむを見て、バルックは更に笑った。
メイドが呼びに現れたのを機に、3人は食卓へと向かった。
食事をすませて少し休憩した後、また3人は外へ出た。バルックとは剣の稽古、イレーヌはそれをのほほんと見守る。
剣の素振りをするだけした後、バルックは上段からの切り、下段からな切り、突きなど、少しだけ基本動作を教えた。
目の前につごうよくそこらへんにあった木の丸太を立て、バルックの号令にあわせてはその動作をした。
「よし。今日はここまでにしておこう」
「あ、ありがとうゴザイマシタ〜・・・・」
「二人とも、お疲れ様」
運動後に飲み物はいかが?と、イレーヌが出してきたジュースに、はその日にやった動作のどれよりも速く動いた。
「ぷはー。生き返る〜・・・v」
「そんな大げさな・・・・」
そんなの様子を見て、バルックは苦笑いし、イレーヌはくすくすと笑った。
「うっわぁあ!すっごい桜!綺麗〜」
「この桜はここらへんで一番大きいからな」
「夜桜っていうのもいいわね」
が声を張り上げて驚いたのは、イレーヌの屋敷の庭に咲く大きな桜。
公園に咲いていたどの桜よりも大きかった。
ただ大きいだけではない、その桜にあるなにかが他の桜よりもいっそう美しさを引き立てているようには感じた。
ただそれが何かはわかりはしなかったが。
「この桜どうしたんですか?」
がイレーヌに聞くと、イレーヌは少し間をおいてから話した。
「今はこの街が大好きだけど、来た当時は本当に嫌で嫌で仕方がなかったの。そんな時、中央公園に行ってね、ぼんやりと満開の桜を見てたりしたのよ。セインガルドの桜も、ノイシュタットの桜も同じ。どこの国でも桜は一緒なの。そんなこと考えると悩んでた自分がバカみたいに思えてきてね…・・。国は違っても同じ大地の上、辛くたってがんばれるわ、ってそんな気になれたのよ。
・・・・で、なにかるごとに夜家を抜け出して公園の桜を私が見に行くものだから、お父様がここに一つだけ、この桜を植えてくださったの」
ウフフッと悪戯っぽく笑うイレーヌを見てバルックは呆れながら笑ったが、は一緒になって笑っていた。
「いつも見るのは私だけだったけど・・・・こうして何人かで眺めるのもいいわね」
「大丈夫イレーヌ。明日もまたこうして見れる」
「え゛。明日もこの時間まで地獄の特訓?」
「もちろんだ」
「バルックさんの鬼〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
「あはははは」
ずるずるずる〜と剣に手だけを残し、は脱力して地面へ伸びた。
翌日、イレーヌがオベロン社支店で仕事をしていると、なんだか機嫌がよさそうながやってきた。
「イレーヌさん♪」
「なあに?」
「なにか歴史の本とかってありますか?貸してほしいんですけど・・・」
「あるけど・・・・どうするの?」
「子供たちと一緒に歴史の勉強+国語のレッスンです!!」
「子供たちと一緒に、なのね〜」
「うっ!イレーヌさんの意地悪〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ」
昨日からいじめだーーーーーーーー!!!!!と、オベロン社の支店の中なのにもかかわらず叫ぶ。
店員はそんなやりとりを見てくすくすと笑い、イレーヌは謝りながらも笑っていた。
「いいわよ。屋敷の書斎にあるわ。必要なら全っ部もっていって」
「いや・・・・全部はさすがに・・・」
「フフっ、冗談よ」
「イレーヌさ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん」
「ほらほら!生徒をまたせちゃだめでしょ?なんちゃって教師さんv」
イレーヌの意地悪にうう〜〜〜〜とうなりながらも、お礼を言って屋敷へと向かうを微笑みながら見送ると、イレーヌは仕事に戻った。
一方は屋敷に戻りさっさとそれらしい本を見つけると、足早に子供たちの下へと向かった。
「ぃよーっし野郎どもアマども!本日は歴史アーンド国語の勉強だ☆」
「れきしー?」
「こくごってなーに?」
今日も勉強の内容から子供たちとの学習が始まった。
夕方まで子供たちと勉強をすると、イレーヌの屋敷に帰ってバルックに剣の稽古をつけてもらう・・・・。
稽古の後は必ず3人で庭にある桜をながめながら談笑していた。
そんな生活が、それから1ヶ月は続いた。
がこの世界にきてから1ヶ月が経ったある日のことだった。
ダリルシェイドから、オベロン社総帥であるヒューゴ・ジルクリフトが訪れた。
「ヒューゴ様、お久しぶりです」
「ああ、調子はどうだイレーヌ?」
と、屋敷の方にきてイレーヌと仕事について話し出した。
それを遠めに見ながら、今日は子供たちとなにをしようか・・・・・と考えていただが、なんとなくその場の雰囲気が堅苦しくていづらくてしょうがない、と少し眉をひそめた。
バルックは早めに帰ってくるといっていたが、まだ戻ってきてはいない。
「おや?そちらにいるのが例の・・・・」
「あ、ですっ」
「ヒューゴ・ジルクリフトだ。よろしく」
なんとなく緊張してしまって声が上手くでてきてはくれなかったが、そんなの様子にヒューゴが笑うと、なんだかその場の空気が少し和んだ気がして肩の力が抜けた。
「そんなに緊張しなくても良いよ」
「はあ・・・・えっと・・はい?」
小首をかしげながら返事をするを見て、今度はイレーヌもヒューゴとともに笑った。
いまいち判っていないが首をかしげて二人の笑いを更に煽っていると、丁度そこにバルックが仕事から戻ってきた。
「ヒューゴ様、お久しぶりです」
「バルック。長期の仕事を無理に頼んですまなかったな」
「いえ。こちらはあまり熱くなくて過ごしやすいですよ」
穏やかな空気のまま会話が流れていくのを見て、いつの間にかは微笑んでいた。
嬉しそうね?というイレーヌに、「なんとなくね、いい感じ」とが答えると、イレーヌは微笑んだ。
バルックとひとしきり話を終えると、ヒューゴはたちの方へと向いた。
なんだろう。と首をかしげてきょとんとしているに、ヒューゴが一言言った。
「くん、明日から君に私の屋敷ですごしてほしいと思うのだけど・・・・どうだろう?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。え?」
続く
−−−−−−−−−−−−−−−
・・・・・。
なんだこの中途な終わりは。しかも主人公イレーヌさんとバルックさんとほのぼのすごしてる毎日日記化してるし!
いや、ほのぼのすきなんですけど・・・・・・リオンとか出ないし。
ていうかほとんど二人がオリキャラになってはいないだろうか?
ていうかヒューゴ様、あなたの喋り方がわかりません。(オイ)
次はきっとリオンでます。出します。出させてください。出てください。(頼むのかよ)
・・・ファイトー、おー!(ごくせん)
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。