「ここはどこだ?」
「なんか、海に沈んだ街みたいね」
「うわ廃墟〜」
『緊張感の無い子ね』
『のはいつものことだよ』
アトワイトのつっこみに、シャルティエがさらりと答えた。
my way of living 11
〜新しい(お笑い)メンバーとディムロスの秘話〜
「今の街とは、随分造りが違うな」
と、周りを見回すスタン。
それって田舎者のよくする行動だよね、とが水をさし、ルーティがそれを聞いて大爆笑し、スタンいじめが勃発した。
「おいフィリア。まだ呼んでいるのか?」
「ええ、この都市の奥のほう・・・この部屋は上の方向に抜けるようですわ」
リオンとフィリアは全面無視だ。
「わかった。行ってみよう」
こほん、と咳をつくと、スタンはそそくさと歩き出した。
奥に進むにつれ声がはっきりしてきたというフィリアを守りながら、全員で固まって道を進んだ。
「なんで瓦礫をよかすのが俺だけなんだよ」
「あんた、か弱い女の子にやらせる気?」
「どこが・・・・」
「何?」
ぼそりと言ったスタンの声が聞こえたらしく、ルーティが凄みのある顔でわざと聞き返した。
な、なんでもない・・・・と簡単に引いたスタンにフンと一瞥すると、ルーティは「さー動いた動いた!」と野次を飛ばした。
「俺も手伝うよ」
「〜」
「泣くな泣くな」
スタン一人じゃいつ終わるかわかんないからね、とニヤリと笑って言うに、「もういいよ・・・」とスタンが怒る気もうせたといわんばかりに半泣きになりながらため息をついた。
「冗談冗談!ほら、さっさとやろう」
「ありがとう」
「礼なんざいらねーって」
「でも、この中でこんなこと言ってくれるのだけだし・・・」
「スタンかまって遊ぶの楽しいから、くたばられたら困るしね」
「おい・・・・」
「あははははー。さーラストっと」
次いこー!と誤魔化してすたたと歩いていったの後ろを、スタンが待て!と追いかけた。
「誤魔化してもだめだからなっ」
「きゃはははははっ」
その後ろを、テンションが高いんだか低いんだか分からない仲間たちがぞろぞろと歩いてきた。
「仲がよろしいですわね」
「馬鹿同士気があうんだろう」
「とーかなんとか言っちゃって、本当は気になってんじゃないの〜〜〜〜?」
「それはルーティじゃないのか?さっきからよそよそしいぞ」
「な、なに言ってるのよマリー!」
「・・・・・ふん、馬鹿者どもが」
なんだかんだいって、パーティーは上手くやれているようだ。
「リオン、モンスターだっっ」
「喜ぶな!はフィリアを守れ。スタンはマリーと前線へ。援護する」
「分かった」
「ここが中央区か?」
それから20分ほど歩いていった先、一つの部屋にたどりついた。
3Dかなにかの浮かぶ四面体の向こう側に、ひびの入った剣が一つ置いてあった。
『よく来たの、フィリア・フィリス』
「え、誰ですの?」
『その声は!』
『クレメンテ老じゃん』
『本当ですか?』
『なんじゃ、おまえらか。ムードぶち壊しじゃの・・・・』
「そ、ソーディアン!?」
「やけにお茶目なソーディアンだね」
『いいじゃろ』
「ナイスキャラ」
驚くスタンをよそに、はさっそくクレメンテとコントを始めてしまった。
「も声が聞こえるのか?」
「・・・え?マリーさん聞こえないの?」
「素質を持ったものしか聞こえないんじゃないのか?」
「え?!そうだったの?!知らなかったー」
「・・・・・・単細胞」
ぼそりと悪態をついたリオンに、だと坊ちゃん!とが怒り出し、クレメンテとフィリアが真剣な話やふざけた話をしている横でじゃれあいだした。
「仲がいいな、二人とも」
マリーがいつもの天然ボケをしだした。
「仲がいいのは認めるけど」
「認めるな」
すかさずリオンがつっこんだ。
「今のはちょっと違うかな」
「そうか?違わないと思うがな。それに見ていて面白い」
「マリーさんも面白くて好きだな、俺」
にこにこと二人で笑いあっていると、いつの間にかフィリアはソーディアンクレメンテを手にしていた。
「よかったね、フィリア」
「ええ、これからはみなさんの足手まといにならないようにがんばります」
「がんばれ!」
フィリアにもすっかり慣れてしまったは、さっきから嬉しそうに大事そうにクレメンテを抱えているフィリアにじゃれていた。
『そういえば、おぬしもワシらの声が聞こえておるのか?』
「うん、聞こえてるよ。さっき話したじゃんおじいちゃん」
『ブッ!クレメンテ老におじいちゃん・・・・』
「え、もしかしてもっと若かった!?ねえシャル〜〜!」
『そういう問題じゃないのよ』
笑いが止まらないらしいシャルティエの代わりに、アトワイトが冷静につっこみを入れた。
が、その持ち主は笑っていた。
『いいのじゃよ・・・どうせワシは老いぼれじゃ・・』
「いいのになんでそんな傷ついてるの?」
『ここはノルところなんじゃがなぁ』
「はっ、しまった俺としたことがっ」
「なにやってるのさ・・・」
どうしようもないコント(?)をする二人にスタンがつっこんだ。
クレメンテはそのつっこみで気が済んだのか、ほっほっほっと軽快に笑った。
『にしてもシャルティエ、お主口調がかわったのう』
『昔はこんなにはきはきしてなかったものね』
『どちらかというと謙遜した皮肉屋な感じだったな』
『もーなんだよ皆してっ』
そんな話をぶり返すなと怒るシャルティエに、3人(?)が笑いながら謝った。
「ねえねえ、今思ったんだけどさ」
「なに?」
急にが話を持ち出し、皆なにごとかとそちらの方を向いた。
「マスターのスタンが寝ぼすけなら、ディムロスさんも寝ぼすけなのかな」
『それはない』
「でも目覚めたの一番最後だし・・・」
『それはない』
「戦ってるとき以外実は寝てたりして!」
『それはないっっ』
が次々出してくるとんでもない言葉に、ディムロスが即答で否定した。
リオンは呆れたが、それ以外の全員が笑った。
「ディムロス・・・・そうだったのか。そうならそうと言ってくれたらよかったのにっ」
『だから違うといっている!』
「なにが起きてるんだ?」
「あのね、ディムロスさんてば実は・・・・」
『変なことを吹き込むな!』
『あら、照れなくてもいいじゃない?』
『そーそーっ』
スタンが笑いをこらえながらディムロスに言うと、アトワイトやクレメンテ、シャルティエまでもが同じようにディムロスに声をかけた。
マリーはとルーティに説明を受け、本気にしてしまったようだった。
結局船につくまで、ディムロスいびりが続いた。
「疲れたので部屋で休んでますわ」
「私も寝よ〜っと」
「俺も寝ようかな」
「起きれるのか?」
「・・・・マリーさん・・・・・」
海底都市から戻ってすぐ、メンバーのほとんどが自室に戻って疲れを癒していた。
が、一人ここに例外がいた。
「もったいないよなー皆。天気いいのに」
甲板に人が居ないのをいいことに、は本をもって寝そべっていた。
「この本ももう読んじゃった。・・・・・ここで試してみるか?みるかっ?」
よっしゃ!と立ち上がると、本を片手に先程の都市で集まったレンズを取り出し、そこら辺にちりばめた。
「まずは簡単なものからいってみるか。・・・・・・。ごめんね、なるべく無駄に使わないようにするから・・・・・・」
海底都市では場所がなく、ほとんどのモンスターを殺してしまった。
そのおかげで手に入ったレンズを前に、は合掌して目を閉じた。
「よっし、んじゃいってみますか〜、伊達にデスティニー2はやってないからな〜♪知ってるような技ばかりでよかった♪」
ちりばめたのはいいがいきなりそこらにあるのから力を引き出すのは無理か、と考えたは、その中の一つを手にとった。
レンズの力を体系化させる原理は分かっている。あとは集中してなんども練習するのみだ、と気合を入れると、目をつぶり集中しだす。
「・・・・アクアスパイク!!」
叫んだ瞬間、海の水がザァァァアアと薄く円状に持ち上がり縦に起き上がった。
やったか!と思った瞬間。
ドザァァァァ・・・・
「あちゃ〜・・・・。まぁとりあえずだけど・・・・・ちょっとだけできたぁ〜?」
驚きながらその場にどすんと座ったところで、手に持っていたレンズが砕けていることに気がついた。
「これ少し疲れるのな。よし次!」
手元にあったレンズをひっつかむと、立ち上がってまた目を閉じた。
誰もいない船内の食堂で、リオンは一人暇にしていた。
今しがたまで読んでいた本が終わってしまったのだ。
少し風にあたろうかと席を立ち、甲板の方へと足を運んだ。
「ウィンドスラッシュ!!」
ぷしゅぷしゅる〜。
「っだぁぁぁあああなんじゃそらーーーーーー!!!」
聞き覚えのある声を聞いて、リオンはゲンナリとした。
「もっかい・・・・」
どうやら声の主はこちらに気付いていないらしく、そこらへんにちらばっていたレンズを手に持つと目を閉じた。
「・・・なにをやっているんだあの馬鹿は」
『なんか様子が変ですよ?これって・・・まさか晶術?』
「そんなわけがあるか。あいつはソーディアンをもってはいないんだ」
でも・・・・・とそのただならぬ気配を感じ取りながら言うシャルティエに、見ていれば分かるとリオンが会話を停止させた。
「ウィンドスラッシュ!!」
シュンッふしゅる〜・
「また不発・・・。ま、そう簡単にはいかないか・・・・」
「レンズをばら撒いて、なにをしているんだ」
「リオン!」
いきなり現れたリオンを見て、は驚いたようだ。
皆部屋で休むと散っていったため、まさか人が来るとは思ってもいなかったのだろう。
『ねえ、もしかして今のって・・・・・』
「ああ・・・・見てたの?晶術だよ」
『なんでできるの?ソーディアンもないのに』
できてるわけでもないよと笑い飛ばすと、これだ!とリオンの目の前に一冊の本をとりだした。
「・・・・・これは?」
「これには晶術を体系化させる術が記されているのサ」
ふっふっふっふっと本を握り締めながら不敵に笑うに、シャルティエがそんな!と言った。
『それができたのは過去に二人・・・・・・ハロルド・ベルセリオスと天上王ミクトランだけのはずだよ』
「うーん。じゃそのどっちかがこれを書いたんじゃない?天地戦争が終わったころに作られた本だって言ってたから」
「ヒューゴに借りた本というのは・・・・これなのか?」
「そ。俺も晶術とやらを使いたくてね」
結果はこうだけど。と大笑いしだしたをリオンは本と交互に見やった。
「そんなに珍しい現象なのか?」
「こんなことするやつはまずいないな」
「ふーん。じゃなおさらできるようになろう♪」
『やっぱりだね・・・・』
「それ以外なんだよー」
「単細胞」
「なんだと!?」
またもじゃれあうだけじゃれあうと、は晶術の練習にもどり、リオンはそれをぼんやりと眺め、たまに皮肉を言ったりした。
「よーし、次はこれだっ!ストーンザッパー!!」
しーん。
「・・・・何も起きないぞ」
「―――はっ!石がなかった!!」
『普通なくてもでてくるものじゃない?砂漠で水系の使うのと同じでさ』
「・・・・どあほうが」
「海底から出てこないかな〜」
「でてくるわけがあるか馬鹿。―――海を覗くなっ!」
「って!」
すぱんっ、とリオンにどつかれ、は海に落ちかけた。
慌ててリオンが引っ張り、なんとか海に落ちるのは免れたのだが、逆に格好悪く二人してしりもちをついてしまった。
「落ちるつもりかお前はっ」
「リオンが押したんだろうがっ」
「お前が馬鹿なことをするからだろう」
フン、とそっぽを向いたリオンにがき〜〜〜〜〜っっと怒った。
『どっちもどっちだね』
「あ〜・・・・そうかもねぇ」
眠くなってきた〜・・・と寝転がって伸びるを横目に見やり、リオンも小さく欠伸した。
時間的に日が沈むころだった。
丁度北西の方角にあるカルバレイスに向かっていた船の飢え斜め左の方向に夕日が見えた。
「肌寒くなったと思ったら、もう日ぃ沈むんだ」
よいっと起き上がると、両手で肩を抱きながらが言った。
「向こうを出たのが3時半ころだったからな。カルバレイスにつくのは明日の昼ごろになるだろう」
「あ、今ってカルバレイスに向かってるんだ?」
初耳といわんばかりに今更なことを質問してくるを、リオンはおもいっきりいぶかしげな顔で見た。
「・・・・・お前は今まで何を聞いてきたんだ。その耳は飾りか?」
「俺がみんなの話を聞いたのは2回目に屋敷に帰ってきた後だから細かいこと聞いてないの。いつの間にか面白い人増えてるし・・・」
「いじける点はそこか?」
「これ以上なにがあるってんだ?」
両者とも相手の顔をじっと見てしばらく沈黙していた。
「・・・・付き合いきれんな」
「えー、付き合い悪いなー。本当はなんだかんだ言ってもフィリアの後追っちゃうくらい付き合いいいくせにー」
「言ってることがわからんぞ痴呆娘」
『坊ちゃん照れてます?』
「そんなわけある・・・」
「シャル正解〜」
『やった〜』
「お前らな・・・・・・」
冷静な考え方や態度のわりに短気なリオンが、シャルティエとを海に落とそうとしたのはそれから数秒後の話。
その後、一命を取り留めたはルーティに見つかる前にさっさとレンズをしまいこんだ。
それと同時にマリーがひょいと現れ、心臓を痛く煽った。
夕食だと知らせてくれたマリーに、「今行く」と適当に言葉を返した後胸をなでおろしているを、リオンが鼻で笑った。
続く
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やっとここまできました。やっとです。先は長いです。(ギャース/古)
ていうかシャル今回も笑いまくり。クレメンテにおじいちゃん・・・。なんてこった。(自分で書いておいて)
そしてリオンはストレスたまりまくりでしょうかねぇ。
この二人進展もクソもありゃしねぇ。
いや、最初のうちは・・・・・・注意書きの通りです・・・(汗)
にしても・・・ディムロスさんはいじめると案外面白いということが自分のなかだけで判明。(ダメじゃん)
フフッ・・・・いいのさ・・・・。
スタンやルーティともじゃれてるってことが書けただけでも・・・・。(小さくまとまんなや)
ここまでお付き合いいただいた方、ありがとうございました。