もしも君の傍にいたなら

もしも君とともに時間を過ごせたなら

もしも君の心に入れたなら

もしかしたらその運命を変えることができたのかもしれない









my way of living 1
〜増えた歯車と車の使えない世界(謎)〜











「やっと・・・・・・やっと買えたーーーーーー!!!!!!!!」
なんともいえないサブタイトルのあとにこれだ。
というつっこみはおいておいて、人通りの多い商店街、某雑誌・ゲーム販売店前。
学校の制服と思われる格好からしておそらく少女。
・・・・が、何故かその販売店の袋を抱えながらはた迷惑なことに叫んでいる。
その場にいた通行人も少し白い目で遠くから眺めると、その場を何事もなかったかのように通り過ぎて言った。
「・・・・・はっ!!しまった!つい叫んでしまった!!」
大丈夫かね?と心配してくるそこらの店のおばちゃんおじちゃんに愛想よく大丈夫で〜すと笑顔で答えると、少女は浮き足立ちながらその場を後にした。





「長かった・・・・・ここにくるまで・・・・・」
部屋に入るなりテレビの前に座り込むと、くっ・・・・と手を握りながら感涙した。
「友達のモノを一緒にやらせてもらってついつい無理をして買ってしまったのがディステニー2・・・・ルーティがなんだとかスタンがなんだとか前作をやっていなければ判らない要素もりだくさんすぎてちょっぴり悔しい目にあっていたけど・・・・・ジューダスことリオン=マグナスの過去だなんて知らなきゃダメだろ!?人として!!」
まずこの場合本人自体人として危ないのではないか?というつっこみが入りそうだが、本人が気付いていないのとつっこみ役がいないため、その疑問は永久の闇へと葬り去られた。
「たしかリオンって死んじゃうんだよねー・・・。2は泣いたよ。(泣くなよ自分)これやったらもっかい2やろ!さあ!!いざ出発!冒険の旅!!!」
縦に置かれたPS2を起動させると、今しがた買ってきたディステニーをセットした。
「よっしゃー!GO〜・・・・お?ぇぇえええええ!??」
ソフトがPS2に入った瞬間、目の前に光る大きな穴が現れた。
「まぶしっ!っていうかな、な、なんだあぁぁぁぁあああああ!!!」
手で光を遮った瞬間、その穴が空気ごと吸い込み始めた。
あまりの勢いに、必然的に少女はその穴の中へと吸い込まれていった。
ちょっとまてーーーー!!という騒音としかとれない叫び声をあげながら。




ぐるるるるる・・・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?」
次に目が覚めたとき、目の前で信じられない光景が広がっていた。
おとぎ話で出てきそうな兵士が2・3人、自分の前で血だらけになって倒れていた。
そして、そのさらに先にはまさに「くいちぎりますよ」といわんばかりにこちらを威嚇してくる狼とも犬とも見れる(チワワは含まれておりません)、ただし大きさはそれの1.5倍はあるだろう生き物がそのむき出しの歯に血を滴らせながら立っていた。
おそらく目の前にいる兵士(らしきもの)のものなんだろうなぁなどと混乱する頭で少女がぼんやり考えていると、後ろから声がかかった。
「おい!大丈夫か!?早く逃げろ!!」
他の兵士がやってきたのか、少女とその生き物に向かって走ってきていた。
「つっても・・・・・足、動かな・・・」
「ガウッッッ」
「!!?」
ガキィィッッ
急に襲い掛かってきた生き物の大きく開いた口を、とっさに近くにあった剣を地面に刺し、ぎりぎりで受け止めた。
「くっ・・・・・!!!」
ぎりぎりと食らいつこうと押してくるそれを、必死に押し返そうと両手に力を込める。
「たあ!!」
ザンッという音とともに押してきた力が一気に消え、目の前に迫っていた生き物は酷い悲鳴を上げるとばたりと崩れ落ちた。
どうやら声をかけてきた、兵士らしき人物が斬りかかったようだ。 返り血が少しかかっている。
少女は 自分ナイス反射神経!とか切り込むときの掛け声ちょっとマヌケだな。とか、まったくもって場違いなことを頭で考えられるものの、体はまったく動けずにいた。
「大丈夫か!?よく受け止めたなぁ」
「あ・・・・」
声をかけられて、混乱していた頭が我に帰った。そのとたん、周りの風景がありありと目に入った。
先程着られて痙攣を起こしている生き物。
そのすぐ後ろですでに息絶えた兵士たちの顔。
生き物によって与えられた大きな引っかき傷。
食いちぎられた肉片。
今更ながらに身体が震えた。
何故、自分はここにいるのだろう。
「おい、大丈夫か?無理もないか、こんなもの見ちまったんだからな・・・・・・」
外傷はあるか?とやさしく聞かれ、少女はゆるゆると首を横に振った。
目が離せない。
そんな様子を見てか、助けてくれた兵士らしき人物はぽんぽんと頭に手をおいた。
ビクッと肩がおののいたが、そのおかげでその光景から目を離すことができた。
上を見上げると、気遣い気に苦笑いをしている兵士らしき人物(しつこい)と目があった。
「とりあえずここは危険だ。移動しよう」
立てるか?と聞かれ頷いて、どうにか少女は自分の力で立ち上がった。







綺麗に咲く桜があちこちに見られ、海の潮風もほんの少し鼻に届く。
大きな屋敷がところどころに立ち並ぶ中、無表情な子供たちが小さな家の並ぶあたりでぼんやりと立っていた。
ここだ。と先程助けてくれた兵士が立ち止まった。
彼の向こう側には大きな扉があった。
その屋敷のあまりの大きさに、少女は思わず「うわ〜」と声をだして見上げた。
「いらっしゃい、早かったのね。あら?その子は・・・?」
ガチャッ、と開いた扉から出てきたのは、柔らかな空気をまとった優しそうな女性だった。
不思議そうに首をかしげて少女を見ていたが、あぁ、という兵士の声でその視線をそちらへ移した。
「街の外で襲われていた」
「まぁ・・・・・」
大変だったわね・・・。と優しく抱きしめられ、少女は初めて緊張がとけた気がした。
涙がでそうになったが、その前にはっと気がついて急いで体を離した。
「服!汚れちゃいますっっ」
慌てて離れてはみたものの時すでに遅く、女性の着ていた洋服はすでに赤い染みができていた。
ああぁぁぁぁぁぁ・・・・・とうなだれる少女に、女性はにっこりと笑った。
「大丈夫よ。ちゃんと洗えば落ちるから。それにしてもあなた、珍しい服を着ているのね。ここら辺では見たことがないし・・・」
何処から来たの?と聞いてくる女性の言葉で、少女は自分のいる状況をやっと思い出した。
「あの。日本・・・・・ってとこなんですけど・・・・」
「ニホン?」
「聞いたことある?」
「いや・・・・」
首を振る兵士を見て、少女もしゅんとなった。
(ここは・・・日本じゃない・・・?でも言葉通じるよね・・・。なんなんだ!?っていうかどこ?!もしかして・・別の世界とか?なーんてまっさか〜)
頭の中はどこまでも楽天的だった。
「とりあえず、こんな格好のままじゃなんだし家に入らない?えっと――――」
「あ・・・です」
ちゃんね。お風呂に入ってすっきりしましょ。私はイレーヌよ」
よろしく、とにっこり笑うイレーヌに、もつられて笑い返した。
「俺はもういくぞ。まだ仕事の途中だったしな」
「ええ。がんばってね」
「あ!ありがとうございました!」
ぺこんと頭を下げたを見て二人は顔を見合わせると、にっこり笑ってぽんっと背中をおした。
屋敷の中に入ると、メイドたちが数人出迎えてくれた。
イレーヌも兵士と話をすませるとすぐ入ってきた。
「ほらほら、お風呂は上よ。行きましょ♪」
どうしたらよいのかわからず立ち止まっているをみつけると、イレーヌは「はいはい♪」といいながら楽しそうに背中を押して浴場へと連れて行った。




「お風呂ありがとうございました〜(ご馳走様でしたのほうがいいだろうか・・・)」
恐る恐る、といった足取りでイレーヌのいる部屋に入ってくるを、イレーヌは面白そうに笑いながら椅子に座らせた。
「その服、私のお下がりで悪いけど・・・・あとで街に買い物に行きましょうね」
「えっ!?そんなっ、悪いですよ!」
さすがに血のついたままの服は着られないだろうと、イレーヌはわざわざ服を用意してくれていた。
今はイレーヌのおさがりだというシンプルな服を着ているだったが、それ以上にさらに服まで用意するといいだしたイレーヌにさすがに首を横に振った。
「いいのよ。他にあてもないのでしょう?」
うっ。と息詰まると、は「はい・・・・」と脱力しながら素直に返事を返した。
そんなをくすくす笑うと、じゃあ決まりね、とイレーヌが言った。
ちゃんはニホンってところからきたのよね?」
「はい・・・・そうなんですけど・・・・・・」
やはり自分の推測は当たっているのだろうか・・・?とうつむきながら思想をめぐらせていると、イレーヌが申しわけなさそうに声をかけてきた。
「ごめんなさいね、力になれなくて・・・」
「いえ!そんなことないです!!こんなみずしらずの奴にお風呂まで入れさせてもらって・・・」
ありがとうございます!と言うに微笑むと、「お茶でもしてから出かけましょうか」と紅茶を勧めてきた。
本当にもうしわけないな、と思いながらも、その嬉しい勧めをは快く受けた。






「あははは!ちゃんてば面白いっ」
「え?そ、そうですか?」
本当に首をかしげて考え出したを見て、イレーヌはさらに笑った。
酷いですよー。とがふてくされると、ごめんなさいと笑いをこらえながらあやまってきた。
イレーヌが大笑いするはめになった理由は、の国の話から始まる。
その国の大体の話を簡単に済ますと、イレーヌはが日常でどんな生活をおくっているのかについて質問してみた。
その話が問題だった。
自分は普通に日常生活について語っているつもりだったのだが、の日常はあまりにも可笑しかったらしい。
そのため、あまりの可笑しさにイレーヌは大笑いしてしまったのだった。
「そういえば、私を助けてくれた兵隊さんの名前聞いてなかったなぁ」
「え?兵隊?」
紅茶を口に運びながらぽつりと言ったの言葉の何が面白かったのか、イレーヌはまた笑い出してしまった。
なんですかもー。とまたふてくされるをなだめると、まだくすくす笑いながら説明してくれた。
「あの人ね、兵隊さんじゃないのよ」
「え?!でも兵士の格好して・・・」
「あれは今とりかかっている仕事でどうしてもそういう格好をしざるおえなくてね。本当はオベロン社カルバレイス地方の責任者なの」
「オベロン社・・・・カルバレイス・・・・?」
「ああ―――知らないかしら?やっぱり国が違うものね。オベロン社っていうのはね、ヒューゴ・ジルクリフトという人が作ったレンズ製品を取り扱う会社なんだけど・・・・。あ、レンズも知らないかしら」
と、オベロン社やレンズについて分かりやすく説明をしてくれるイレーヌ。自分もそこの社員で、この地域の責任者だという。
「ここの地名も言っていなかったわね。ここはノイシュタットという街なの」
「ノイシュタット・・・・」
聞いたことある。
オベロン社。
レンズ。
ノイシュタット。
イレーヌ。
「まさかここ・・・・デスティニー・・!!?」
「え?」
「あ、いや、なんでもないです!レンズってすごいなぁ〜って思って☆そ、そういえばここの街、桜の木がありましたよね。綺麗だったなぁ」
「ニホンにも桜があるの?」
「はい。春になると毎年咲いてます。お花見と証した飲み会をやったり」
「ふふっ。面白いことを言うのね」
なんとかごまかせたか?!と内心冷や汗だらだらだったはそれでもにこっと笑って見せた。
つられて笑うイレーヌが、そろそろお買い物に行きましょうか、と言い、二人は屋敷を後にした。









「これ似合うと思うんだけど・・・どうしても嫌?」
「スカートは嫌です・・・・」
洋服店の中で紛争すること数十分。
どうしてもスカートははきたくないと駄々をこねると、どうしてもスカートやひらひらした可愛らしい洋服を着せたいと駄々をこねるイレーヌ。
結局、の意見が通りスカートは却下されたのだが、諦め切れなかったイレーヌが「じゃあお家の中だけできさせて!それとも・・・お姉さんのいうことが・・・」とあまりにもお願い(脅迫)してくるので、どの道そういう服までも無駄に買ってしまったのだった。
ありがとうございましたーという店員の声をうけつつ店を出、そのあとは公園の方へ散歩ついでに観光をしにいった。
「すみません、なにからなにまで・・・・・」
「いいのよ!なんだか妹ができたみたいで、嬉しくって」
とはしゃぐイレーヌを見て、も同じように笑った。
「私も、イレーヌさんみたいな人がお姉さんならいいなあ」
桜を見ながらアイスキャンディーを食べると、暗くなる前に家路へとつくことにした。







その日の夜、イレーヌの屋敷の扉を開いたバルックは驚いた。
「おかえりなさい!バルックさん!」
「おかえりなさい」
「・・・・・・ただいま・・・・・?」
はたして返答はこれであっているのだろうか。バルックはしばし考えた。
ここはイレーヌの家だ。
自分は仕事で空いている部屋を使わせてもらっているだけなのだ。(宿代けちりましたね?)
「おや?、服を買ってもらったのか」
「はい!イレーヌさんと買い物に行ってきたんです」
ねー、と顔を見合わせるすっかり仲のよくなった二人を見て、バルックは苦笑いをこぼした。
最初に見たときの少女の表情はウソのように、今は明るく笑っている。
「それにしても・・・ずいぶんとボーイッシュな感じに見えるが?」
がどうしてもって聞かないんだもの」
もっと可愛らしいのがよかったのに・・・と頬をふくらませるイレーヌに、バルックはまた苦笑いをした。





「―――で、はこれからどうするんだ?」
夕食も終え、リビングでのんびりと談笑をしているときだった。
バルックがふいにそう問いかけた。
「うーん・・・どうしましょう・・・。どうやら私の国はどこにも見当たらないようだし・・・・・」
「そうね・・・家にずっといてもらってもかまわないけど・・・・そういうわけにもいかないものね・・・」
うーん。と三人でそれぞれ考えたが、一向に答えは出ず、とりあえずしばらくはイレーヌのところに世話になる、ということになった。
「ヒューゴ様に色々と聞いてみるわ。あの方ならなにか知っているかもしれないし」
「それもそうだな」
「うーん。それはそれとして、あの・・・・バルックさん」
遠慮がちにきいてくるに、バルックは優しく対応した。
あの・・・とまたいい、うつむくと、はおもむろに口を開いた。
「剣を・・・習いたいのですけど・・・」
ダメですかね?といってくるを、二人とも驚きを隠せない顔で見ていた。
「何故?」
「いや、今日みたいなことにまたなったら、今度は自分で自分の身をまもらなくちゃと思って。今度はバルックさんみたいな人も居ないかもしれないし」
(というかせっかくディステニーの世界にきたんだし!戦えるようになればジューダスにあえるかもしれないし!!)←激下心
「でも―――」
「君がやりたい、というのなら、空いた時間に稽古をつけてもいいが・・・・」
「ホントですか!!」
身を乗り出してまで聞いてくるに、バルックは苦笑いしながら「ああ」と返事をした。
「そんな、バルック・・・!は女の子なのよ?」
「今時女の子だって剣術くらい身につけておかないとな」
何があるかわからないしと笑いながら言うバルックに、イレーヌは一つため息をつくと判ったわ・・・・と同意してくれた。
「但し、傷はつけちゃだめよ。嫁入り前なんだから」
「よーく、分かってるよ」
「やったー!ありがとうございます!」
両手をあげて喜ぶを見て、二人は自然と笑っていた。




夜、イレーヌに用意してもらった客人用の部屋にはいた。
「本当に・・・ディステニーの世界なんだ・・・。イレーヌさんていえばあのオベロン社廃校の奥にあったメッセージを残した人だし!! それにオベロン社とか・・・・レンズ!本当に・・・本当に来てるんだ・・・俺・・・・」
ゲームのディスクを入れた後すぐに、光り輝く穴(微妙)に吸い込まれ今に至るまでを思い出し、一人感動していた。
「く〜〜〜〜〜!!!すっごいすっごい!!本当に来ちゃったよーー!!冒険したい!できるかな?ジューダスにあえるかな?あれ、リオンか?わかんねぇけど楽しみーーーーっっ!!!」
ちゃっかり剣も教えてもらえることになったし♪とウキウキしながら布団に入ると、眠気がすぐに襲ってきた。
「明日・・・・ちゃんと起きなきゃ・・・。バルックさんに剣・・・・・強く・・・・・っていうか、ここテレビも車もないのな」
それ以降、その部屋には彼女の寝息しか聞こえはしなかった。







続く
−−−−−−−−−−
やっちゃいましたTODドリ!
書きたかったのです。すみません。謝るくらいなら書くなとか言わないでください。
書きたかったんです。
今回イレーヌさんとバルックさん・・・・・って、オリジナルですね、ほとんど・・・。
彼ら彼女らのことをよーく熟知している方々、本当にすみません。
さーてがんばって書くぞー。(オイ)
長い文につきあってくださったみなさま、ありがとうございました。