「つーわけで、茶番劇に参加して欲しいんだけど。きみ悪人面してるし、案外役者そうだしさぁー」
「・・・そんな理由で俺を・・・」
現在地、私の作った亜空間。
現在人口、2名。
私とげんなりしてるバルバトス。
ことのあらましとやりたいことをさくっと伝えたら、早速脱力された。
いーじゃん人生また楽しめるんだぞー?またとない幸運だぞー?と呼びかけても、どこが幸運だとか文句言われる。
幸運じゃん。
「そんなくだらない芝居に俺を巻き込むな」
「ステキな彼女作れるようにセッティングするよー?結果は君の努力次第だけど」
いらん!!
「意地張っちゃって」
素直になっといたほうがいいだろうに。所詮は男だ。
しらーっとした目で見る私を、バルバトスは殺しそうな勢いで睨んでくる。
キモイ。
言ったらさらに殺気立たれた。
「ユー、生き返ってエンジョイしちゃいなヨ」
「なんだそのネタじみた誘い文句は」
「もー文句多いなー。どーせ歴史なんて修正されるから、ディムロスぶっ倒すっつーイレギュラーだって起こしていいんだぜ?」
「・・・」
やっぱディムロスでつれるらしい。
アトワイトも手に入れられるかもよーと言ったら睨まれたけど。
「練習台に歴史に残る英雄と戦ってくるってーのも中々楽しいと思うけど」
「む・・・」
「ま、殺したらまずいのとかは、こちらで指示ださせてもらうけど」
「・・・」
「ああ、ディムロスは特に入ってないから」
大丈夫大丈夫と手を振れば、また考え始めるバルバトス。
顎に手を当ててなんてベタな考える人ポーズを取っていたバルバトスは、にやりと笑うと私を見た。
「いいだろう。お前の茶番劇、のってやる」
「そう。交渉成立」
手を上げれば、バルバトスもしっかりのって手を上げてくれる。
ノリがよろしくて嬉しい限りだ。
ぱぁんと合わせたら結構痛かったから、空間移動能力は劣化させておいた。
後で文句言われるかもしれない。



バルバトスを生き返らせてから向かったのは、デュナミス孤児院。
お昼寝の時間を狙って姿を現せばかなり驚かれ警戒されたけど、とりあえず話し聞いて欲しいなーと言ったらお人よしスタンがさっくりうなずいてくれた。
明らか怪しいじゃない!なんてしっかり警戒していたルーティは、トイレットペーパーと洗剤でつっておいた。
で。
まだ小さなカイルを抱っこしたルーティと能天気スタンと三人で、お茶しながら説明だ。
もちろん、ルーティが真っ先にアホくさいと蹴ってくれた。
「そんなこと急に言われたって、信じられるわけ無いでしょ」
「まぁ、そうかもしれないけど、これがまた本当なんだよね」
「大体ねぇ、旦那殺される挙句息子が危ない目にあいますよーなんていわれて、はいそうですかじゃあ協力しますなんて言えるわけないでしょ!」
「まーまールーティ、落ち着いて」
「あんたは考えなさすぎなの!!」
どうやら、結婚してもこの関係は変わらないらしい。
まーまー落ち着いてと声をかければ、元はと言えばアンタの所為じゃない!と怒られた。
そんなこと言われてもだ。
「まぁ、どうあがこうが計画は進めるからそのつもりで」
「ちょっと!じゃあ何のための協力要請よ!!」
「いやぁ、一応伝えておいた方がいいかなーって。10年も苦労することになるんだし」
「あのねぇ・・・!」
「ルーティ。落ち着けって」
「コレが落ち着いていられる!?」
「ルーティ」
どんとテーブルを叩くルーティに、スタンが声を低くする。
むすっとしながら黙り込むルーティを見て、私は関心してしまった。
なるほど、ディムロスのマスターなだけある。
「俺はエルレインの話を信じる」
「ちょっとスタン!」
「嘘はついてないよ。ルーティだって分かるだろ?それに、神様が現れて世界を支配されたんじゃ、たとえ幸福振りまかれてもやっぱりいい気分じゃないしさ」
「なによりヤツは自己中だから。恐らく平和的に人々を幸福へと導いたとしても、後々になって完全に神が支配するよう手を回すと思う」
勝手な推測だけど当たってると思われる。
私の言葉を聞いて、スタンはそれじゃあやっぱり嫌だな、とうなずく。
ルーティが、それこそむっすーとした顔で黙りこくった。
「俺は協力するよ」
「っスタン!あんた死んじゃうのよ!?」
「うーん・・・まぁ、歴史の修正がかかるまでだろ?カイルと・・・リアラだっけ?その子たちがなんとかしてくれるだろうしさ」
「あのねぇ、本当にどうにかできるわけじゃないの!できるようにこいつがこれから仕組むっていってんの!」
「だったらいいじゃないか」
「よくないわよ!!」
「うぅ・・・ぁぁああああ!!」
「「「げっ」」」
カイルがおきた。
あーごめんねうるさくして怒ってないわよ〜パパがバカなだけよ〜それひどくないか?と、二人してカイルをあやし始める。
他の子供たちが別の部屋で眠っているのが、せめてもの救いだ。
ようやくカイルを泣き止ませたルーティが、険しい表情でスタンを見た。
「あんた、このカイルや私を置いて死ぬって言うの」
「・・・」
「随分無責任じゃない。二人で孤児院をやってくんでしょう。あれはウソだったの?」
「ウソじゃない。ウソじゃないよ」
「ウソよ!今死ぬって自ら言ったじゃない!!」
「そういうことじゃないんだ、ルーティ」
はたから見れば痴話げんかだけど、とりあえず様子見しておこう。
下手に口を出せば状況悪化だ。
それにしてもスタン落ち着いてるな。
「俺はみんなの未来を守りたい」
「でも・・・だからって・・・」
「それに、あの旅で俺は色々なことを学んだ。辛いこともあったし、苦しいこともあったけど・・・随分と成長したって、自分でも思えた」
遠い目をしていたスタンが、ルーティに抱っこされているカイルの頭を撫でる。
カイルは嬉しそうにきゃあきゃあ笑った。
ほのぼのした、いい家庭だ。
「だからいつか、カイルにも旅をして欲しいと思ってたんだ。カイルも旅をして、成長して、守りたいと思える大切なものを見つけて欲しいって」
「でも・・・」
「ルーティの気持ちも分かるよ。俺だって出来れば一緒にいたいさ。けど、それが未来のためになるって言うのなら・・・俺は一度死ぬよ」
「スタン・・・」
ルーティが涙ぐんでる。
スタンはルーティに微笑んで、カイルが釣られて泣きそうになってるのを見て慌て出した。
めっちゃ心が痛むんですけど。
早くも私、くじけそうだ。
「・・・あのー」
「なによ」
感動やら悲しいやらで涙ぐんでたルーティが、一気に鬼の顔になる。
睨まれて引いたけど、こほんと咳をついて何とか持ち直した。
「だったら、死ぬのは無しで大怪我だけにするってのはどう?」
「「は?」」
「いやー、なんか申し訳なくなってきたっつーか」
「あ、あんたねえ!ここまで引っ掻き回しといて、今更・・・!!」
「そ、そうだよ!それに、必要なことなんだろ!?」
「うーん、確かに必要なことではあると思うんだけどね」
でもただ単に悲しい過去があったんですよーっていうか、乗り越えなきゃならない記憶的な要素だったし。
「ようは、罪の意識植えさせればいーだけのことなんだから、足の一本か腕の一本でもなくせばいーんじゃないかなーって」
「「足の一本か腕の一本って・・・」」
ものっそ脱力されてる。
きょとーんとしてるカイルが可愛い。あー可愛いな〜カイル可愛いな〜。
でどーよ、と問いかければ、二人ともため息をついてうなだれた。
一緒に体がナナメになったカイルが、めっちゃ楽しそうに笑ってる。
「・・・まぁ、それでいいっていうならいいけど」
「・・・けどなぁ、なんかなぁ」
「いーんじゃない?上手く行きそうになければまた過去に飛んできて手回すから」
「上手くいくようがんばりなさいよ!!」
つっこまれた。
とにかくその方向で話がまとまって、カイルの旅についていきたいなーだのもう歳でしょだの雑談になる。
リアラってどんな子?とやはり将来の嫁が気になるらしくて、リアラのことについてもアレコレ聞かれた。
うんまぁ、今のところまだ成長途中で微妙な子だ。可愛いけど。
さてそろそろ行かないとと時計を見て、とにかくよろしくお願いしますカイル6歳くらいのときに襲いにくるんで、と頭を下げておいた。
ああはいわかりましたこちらこそ、と頭を下げ返してくれるのは、スタンだ。
ルーティはなにこのバカ二匹、みたいな顔で私たちを見ている。
ルーティの服にしがみついて指咥えちゃってるカイルに、しゃがみこんで視線を合わせた。
かーわーいーいー。
「あの子のこと、よろしく頼むね、カイル」
頭をなでて言えば、カイルはこてんと首をかしげる。
まだわかんないわよと二人に苦笑いされた。
「だぁれー?」
「っかわいい・・・!!こ、子供いいなぁ・・・私も欲しいなぁ」
「結婚しちゃえばいいじゃないか。もういい年だろ?」
「そうよ。ぼーっとしてると一気にふけるわよ」
「あーまー、見た目これだけど生まれて1年くらいだからさー私」
「「はあ!?」」
ひらひら手を振って答えれば、いい反応を返してくれるスタンとルーティ。
なに言っちゃってんのアンタ!?とまともなつっこみを入れるルーティとは裏腹に、へぇー最近の子供って成長が早いんだなーとスタンが見事にボケてくれた。
どつかれ床に沈むスタンを見て、カイルが大喜びだ。
・・・強く育てよ、小さな英雄。
「どーゆーことよ、それ!」
「どーゆーことって言われても、フォルトゥナが強制的に生み出した存在が聖女だし」
生まれてすぐの一年は、リアラと下僕たちと世界ちまちまお助け旅行をしていた。
「必要な知識は最初から埋め込まれてたから、この状況なんじゃない?」
「じゃあ、リアラって子も?」
「そうなるかな」
ありえない・・・とルーティがうなだれる。
大丈夫精神年齢はそれなりだから、と返せばため息をつかれた。
多分リアラもそこらじゅう旅するだろうし、私もこれから神団を拠点にアレコレ紛争して数年過ごすはめになる。
ゲーム開始時にはそれなりに板についてくるんじゃないだろうか。
「あれ?ちょっと待ってくれよ」
空気をまったく読まずに、スタンが声を上げる。
なによとルーティが顔を向けると、んーと微妙なしかめ面でスタンが口を開いた。
「エルレインとリアラって子は、神様から生まれたんだろ?それじゃあ、神様が死んだら君たちはどうなるんだ?」
「私は消滅するかな」
「ちょっと待ちなさい」
びしっとルーティが手をつきつけてくる。
はい待ちますよ、と返したら叩かれた。なんでだ。
「神様殺したら消えちゃうんだったら、カイルの嫁はどーなんのよ!」
「は!そーか!」
「遅いこのスカタン!!」
「ひ、ひど!叩くことないじゃないか!」
「はいはいストップ。リアラは大丈夫だから」
手を振って二人の言い合いをとめれば、ルーティはしかめ面で、スタンはきょとんとした顔で動きを止める。
どういうこと?説明して、といい感じにアンバランスな二人に苦笑いを返して、私はまたカイルの頭をなでた。
「リアラはね、カイルと二人で未来を願って、歴史の修正が行われた後に再び復活するんだ」
「じゃあ、一度は死ぬってこと?」
「死ぬというより、神と共に消滅しかけた、というところじゃないかな。このペンダント、私たち聖女にとってはレンズみたいな力の元なんだけどね」
首に下げた丸いペンダントを手に取れば、二人ともじーっとそれを見始める。
何ガルド・・・とか聞こえたけど無視だ。
つーかまだ狙ってんのか。金。
「これの力を丸々使ってリアラは復活するんだ。だから大丈夫。デュナミス家の未来は安泰さ!
「いや、別に家を継げって言ってるわけじゃないんだけど」
「じゃあ、君はどうなるんだ?」
「さあ。消滅じゃない?」
エルレインなんて見る影も無かったな、エンディング。
私の言葉に、また二人がはあ?!と声を上げる。
カイルが驚いてるって。
「あんたそれでいいわけ!?」
「うーん、これまたトップシークレットだけど、私前世の記憶持ちだから。結構人生楽しんできたし、やることやっちゃえば悔いはないかな」
「「はあー!!?」」
「はあー?」
「あはは。カイル真似っこ〜」
超可愛い〜。
頭なでればきゃあきゃあ喜ぶ。
うぁ〜んかーわーうぃ〜なんてデレデレしてたら、ルーティに殴られた。酷い。
「痛い」
「痛いどころじゃないわよ!なによそれ!」
「神様も聖女もいるんだから、別にもう前世くらいどーでもいーんじゃね?」
「「・・・」」
確かに、な顔をしてる二人。
笑ってたカイルは首を傾げてる。
気にしなくていーよー大きく育てよーと頭をなでればまたにこぉと笑う。可愛い・・・!
「ねーねー時折こっそりカイルのこと見に来ていい?」
「え?ああ、全然構わないよ」
「ってそーじゃなくてー!あーもーつっこみ足りないーーー!!」
どっからつっこめばいーのよリオーン!とかルーティが叫び出す。
リオン、お前結局パーティ内のつっこみ役だったのか。・・・さすが苦労人。
さりげなく同情の電波を飛ばしてから、もーいーじゃんとルーティに声をかければ、うなだれた。
うんもーいーわどーでも、と。
投げやりだ。私の所為か。
「とゆーことでカイル、15歳からの冒険、楽しみにしてろよ」
「ぼーけん!えーゆー!」
この年から英雄バカかよ。
ルーティがため息ついてカイルの頭をなでてる。
父さんみたいになっちゃだめよ、と。ひどくないかそれ、とかスタンがいじけてても無視だ。
「じゃ、また時期になったら作戦会議に顔出すから」
「うん、わかったよ。他のみんなにも連絡を入れておこうか?ウッドロウなんて謁見までに時間がかかりそうだし」
「ああ、それは嬉しいな。お願いするよ」
「ここまでするなんて・・・。あんた、相当その子のことが大事なのね」
スタンの嬉しい協力に頷いていれば、ルーティが呆れ顔でため息混じりに言ってくる。
え、大事?
・・・リアラのことが?
「なんか、自覚ないっぽいぞ」
「アホねこいつ」
聞こえてるから。・・・私がリアラをねぇ・・・」
こそこそ言ってるようだけど丸聞こえだ。カイルが真似してるからやめなさいルーティ。
にしても、リアラが大事か。
「そっか。妹みたいなものだもんな」
ぽむ、と手を叩いて今更納得する。
気付いたら隣にいて、当たり前のように一緒に旅をして色んな人を助けたり救ったりして、ボケてつっこまれて時折どつかれて。
あの子との時間は、家族と過ごしているときのように自然で和やかだった。(一部DV?)
「それじゃ、妹のために必ず成功させますかね」
「世界のためでしょーよ」
「世界?興味ないかも」
世界の未来のためーとか言ってたけど、ぶっちゃけそんなでもないな。
ルーティが顔引きつらせてるけどスルーだ。
スタンはけらけら笑ってる。
「転生してそっこー役割与えられたから、乗りかかった船に乗っかっただけだな。乗ったからには、確実にゴールするさ」
とゆーわけでこれからよろしく!
私の調子よすぎる言葉には、スタンのおう!という威勢のいい声と、しょーがないわね、というルーティの呆れた声が返って来た。
十分十分。
二人のおかげで、フィリアとウッドロウ、それからアクアヴェイルのフェイトやジョニー、コングマンにマリー、チェルシーと。
先の騒乱時代、活躍したメンバーとパイプを持つことが出来た。
アタモニ神団での地位も上々。なんてったって聖〜女♪・・・いやいや、まぁうん聖女だし。
打倒神消滅への土台は、着実に揃っていった。




というわけで月日は流れ、大体の作業が終わったので、お待ちかねのリオンだ。
さくっと18年前にとんで、おっ死んだところを捕獲した。
「う・・・僕は・・・?」
「リオン・マグナス」
「っ誰だ!?」
上ずらないようにがんばったら、めっちゃ硬い声になっちゃった☆
まぁそれっぽくていーだろう。
美声に産んでくれてありがとう、フォルトゥナ。そこは感謝するけどデフォルトの格好はいただけないな。
アタモニ神団掌握したら、とりあえずイメチェンだと違う方向に紛争した。
バルバトス筆頭に協力者たちに呆れられたり笑われたりしたのは、記憶に新しい。
さてなりきりなりきり、と。
「私はフォルトゥナ神より生まれた聖女、エルレイン」
「聖女だと?馬鹿馬鹿しい」
「ならばなぜ、死んだはずの君がここにいる?」
一番馬鹿馬鹿しいと思ってるの私なんだから、つっこまないでほしい。
さすがとか思っちゃったけど。思っちゃったけど!
リオンかわいー!声素敵ー!
心を落ち着かせてにやけそうな顔を抑えながら言えば、リオンははっと我に帰って周りを見回した。
つれてきたのは18年経ったダリルシェイド――廃屋の並ぶ、悲しい街だ。
変わり果てたその姿を見たリオンは、ぐっと息を詰まらせた。
目の前にヒューゴの屋敷(裏側)があったのだから、なおさらだろう。
「ここは・・・」
「分かるでしょう?安心しなさい。あれから、18年経ったダリルシェイドだから」
「18年!?」
裏路地といえ、大声をあげれば人が集まる。
言えばすぐに黙り込んだ。むっすーっとしながら。(ルーティそっくりだな)(最近シワ増えたっておちょくったら殴られた)
可愛い。マジかわいーんスけどリオンくん。お持ち帰りしたい。
「・・・何が望みだ」
「さすがはリオン・マグナス。私が望むことはただ一つ。人々を幸福に導くこと」
「・・・人々を幸福にだと?」
それこそバカけてる、なんて言い出しそうなくらい顔ゆがめてる。
でも可愛いんだから美形は得だ。コノヤロウ。
私は目を細めて微笑・・・・・・めるよう勤めた。
そう見えてたら嬉しい。悪役笑いだったらどうしてくれよう。
「あなたにもその手伝いをしてほしい」
「・・・バカな。僕は裏切りものだ。その僕にこんなことを言うなんて・・・」
「あなたは、後悔などしていない。それが自分にとって正しい道だと信じ、突き進んできたのでしょう?」
問いかければ、黙り込む。
本当に、可愛らしい限りだ。
「けれど貴方の心は悲しみに満ちている」
「だからこそ僕に目をつけた、と?・・・くだらないな。悲しみにくれた全ての死人を、生き返らせるとでも?」
「それもできましょう。神を光臨させることさえできれば」
「・・・」
うっさんくせーこいつ、って目で見られる。
・・・まあそうだろうな。怪しい勧誘だろう。大当たりだ。
「あなたにしていただきたいことは、難しいけれど出来ないことじゃない」
そう、出来ると知っているからこそいえる言葉だ。
リオンはまだ怪訝な顔で私を見てる。
「あなたが幸せにしたいと思う人を、助けてあげてください」
リオンの眉間にさらに皺がよる。
「あなたが幸せにしたいと思う人たちを、幸せにしてあげてください」
本格的に胡散臭そうに見られてる。
「あなたが幸せにしたいと思う人たちと共に、貴方も幸せになってください」
ウソ偽りの無い言葉だ。
リオンは顔をしかめにしかめている。
ただ、先ほどのような胡散臭そうな色は消えてる。
「自分が幸せになるなど、とも考えているでしょう。だからといって、不幸になるだけが罪滅ぼしじゃない」
「幸せになることこそ罪滅ぼしとはいえない」
「場合によるものです。あなたは愛する者のために、愛する人の幸せのために、命の限りを尽くした。・・・私は、あなたを尊敬している」
そのあり方は、生半可なものじゃあ出来ないだろう。
またリオンは顔をしかめたけど、そんなの一々気にしてたら終わらないから用意していた服を投げた。
アタモニ神団の服なのはこの際目を瞑っていただきたい。
「その姿ではなにかと問題でしょう。おちつくまで、それを着て行動していなさい」
「・・・」
「それでは。健闘を祈りますよ」
本当に、がんばってもらわないと。
ジューダスの存在は必要不可欠だ。
私の投げた服やガルドその他諸々の入った袋を見てるリオン。
そんなリオンの前から、私はさっさと姿を消す。光って。
その演出に驚いてくれたリオンは、シャルティエとなにやら話して(独り言言ってたよ怪しい)から、適当な廃墟に入って着替えを済ませた。
そこから彼は、街の人々から情報収集。
ヒューゴ宅にある本や資料で、この時代の状況を一日ばかりかけて把握した。
恐ろしい少年だ。
いい戦力になってくれるだろう。
ただ
「だから違うと言っている!僕はただ・・・!!」
「もしかして、アタモニ神団の衣服を入団してもいないのに着ていたのか!?」
「なんて罰当たりな!!」
「だから・・・!!」
「おい!奥の独房につっこんどけ!!」
「話を聞け!!」
こいつ本当に大丈夫か?









舞台裏の下準備