森の奥にある大きな木の根に近づいたたちは、ライガに襲われていた。
どうやら女王を守る護衛のようだ。
「傷は負わせるなよ!」
「あいよ!」
「おい、俺は!?」
「「そこにいろ!」」
鞘から抜かずに剣を持って走る二人。
ルークはミュウを抱えて待機命令だ。そわそわしながら二人を見ている。
前からつっこんでいくに、ライガが牙を向ける。
は軌道を逸らして踏み込み、ライガの突進をさけながら前足を剣で殴打した。
横から回ったリオンが胴を叩きつけ、続けて連続攻撃を加えていく。
リオンの連続攻撃が終えれば、息をつく間を与えずが連続で叩いた。
ものの数秒でライガが地面に倒れる。
ふーと息をつく二人を見て、ルークが目をきらきらさせながらおぉ〜と声を上げた。
「つえー・・・!」
「フン」
「これくらい俺らにかかればたらの子さいさい!」
「お茶のこさいさいだ」
「なんだよーちょっとしたお茶目じゃんかよー」
「・・・このアホさがなきゃな」
からアホをとったらただのから』
それで良くねえ!?
ちゃっかりボケるシャルティエにルークがしっかりつっこみを入れる。
わールークナイスーいい感じーととシャルティエがルークをもてはやし、呆れ顔したリオンがとっとと行くぞと歩き出した。
女王のいるという根の入り口で、またライガに襲われるがそれもさっさと撃退する。
「すっげーよマジで!お前らホントに強いんだな!」
「まーな!」
「これくらい容易い。だが油断するな。殺していないからな。後ろからいつくるかわからない」
「げっ・・・」
油断大敵だ、というリオンに、ルークが思い切り顔をしかめる。
が、大丈夫大丈夫なんとかなるってーとがすぐさま緊張をぶち壊し、リオンにどつかれルークもとうとう呆れ返った。
中に入れば、大きなライガが一頭ふせっていた。
ライガクイーンはたちが入ってくることが分かっていたのか、殺気だって睨んでくる。
「ぐるるるる・・・」
「おー。こんにちはー、ライガの女王さん。俺です!」
「アホか」
「挨拶は大事だ!」
すちゃっと手を挙げ早速笑顔で挨拶するを、リオンがどつく。
そんな二人を後ろから眺めているルークが、ひたすら呆れ顔だ。
がおぉとライガクイーンに吼えられて、ようやく二人は目的を思い出した。
「突然すまない。ライガを攻撃しておいてなんだが、僕らは話しをしにきたんだ。あなたに害を与える気はない」
「このとーりです!」
膝をつくリオンに続き、がぽーいと剣を投げる。
おいー!?とルークが叫んだが、ため息をついたリオンもシャルティエをぽいとそこらに投げた。
いやんとか聞こえて全員白い目だ。
まーまーとルークに手を振ってから、はリオンの隣に正座する。
ルークもとが声をかければ、ルークも渋々座り込んだ。
ライガクイーンは、まだぐるぐる喉を鳴らして唸っている。
「は、話を聞く気はないといってるですの・・・」
「うーん、それはそれでも別にいーんだけど、とりあえず聞くだけでもお願いします」
「というかお前それを寄越せ」
「みゅみゅー!」
「リオン・・・」
手を突いてぺこーっと頭を下げる
リオンはミュウをひっつかんでソーサラーリングを奪う。
みゅうみゅう鳴いてミュウがリオンの周りをぴょんぴょん跳ねたが、うるさい黙れと睨みつけられてうなだれた。
腕にぶかぶかのリングをつけるリオンを見て、もリングに腕を突っ込む。
ちょこっとリオンが睨み、が笑顔で対抗してと見詰め合ってから、二人はライガクイーンに向き合った。
ルークが、さりげなく後ろからリングに手を突っ込んでくる。
「僕たちに敵意が無いのは分かってもらえたか?」
『・・・貴様らは食われにきたのか』
「いーえ。おバカチーグルが人里に手出したもんだから様子見にきたんですけど、別件頼まれてここにきたんです」
「チーグルを煮るなり焼くなりすることには特に口出ししない。僕らは伝言を頼まれた」
「お、お前らなあ」
『ルーク、ちょっと坊ちゃんたちに・・・いや、坊ちゃんに任せて』
「なんで俺抜かすかなシャル」
『日ごろの行い』
こそこそルークを宥めるシャルティエにがつっこむが、さっくり返される。
そら言い返せねーと顔を逸らすを、リオンの変わりにルークがどついた。
それでだと、リオンがチーグルの要求、それについての条件、恐らく軍が動くだろうことなど諸々を伝えていく。
最初は怒りながらも聞いてくれたライガクイーンは、ライガ族の事情を愚痴のように語り、がそれに乗ってとうとう話し合いは井戸端会議に。
路線変わってんぞとのルークのつっこみは、リオンに物理的に止められた。
交渉にやってきて1時間弱。
ライガ族は、なんとか移住の案を認めてくれた。
「僕らがいうのもなんだが、すまないな」
『お前らの言葉に嘘はなかった。こちらも愚痴れて少し気が晴れた』
「愚痴なら任せろよ!結構みんなの愚痴聞いてるからさ!」
「お前は愚痴られる側だろうが」
「いや、リオンにだけは言われたくないし」
『「確かに」』
「・・・斬る!」
「ほらそれー!すぐそれー!だから愚痴られるんだ!」
、お前ここで留守番だ」
「八つ当たりだー!!」
びしっと指差すリオンにが叫び返す。
フンとそっぽを向くリオンを、ルークどころかライガクイーンまでが呆れた顔で見た。
リオンのマントに卵をつつんで、先ほどボコったライガに咥えさせリオンとルークがライガクイーンに続いて木の根から出て行く。
いってらっしゃーいと手を振るには、おーというルークの声とリオンのチラ見が返された。
残ったは、静まり返った木の根の中を少し探検する。
やることがなくなった後は鞄の中身を漁り、未だ入りっぱなしの唱術の本(著ハロルド)をぱらぱら読み返し、さらに暇になってごろごろ寝転がり始めた。
「やーるーこーとーないー。リオンー」
ごろごろしながら声を上げてみたが、の声が壁に跳ね返って響くだけだ。
無言になったは、はぁとため息をついた。
「・・・うし!こんなときこそ歌だ!」
ギター何故だか無いけど!と声を上げながら、はむくりと起き上がる。
きょろきょろ周りを見て、リオンたちがいなくなった方向をじーっと見て、ため息をついてから深呼吸。
すぅっと息を吸って、思いついた歌を適当に歌い始めた。
空洞の中で声が反響して、面白がったはノリノリで歌を歌う。
「す・き・だよーと言えずに〜初ぅ〜恋はぁ〜♪」
「・・・あのー」
「へい!?」
一人盛り上がりサビ部分を歌っていたところで、後ろから物凄く恐る恐る声をかけられが思い切り驚く。
びくぅっと肩をゆらして振り返れば、緑色の髪の少年にツインテールの少女、青い軍服を着た青年が立っていた。
三人を見て、はこてんと首をかしげる。
緑色の少年が、さく、と足を踏み出しの元までやってきた。
「ちょ、イオン様ぁ!うかつに近づいちゃダメですぅ!」
「アニス。失礼なことを言ってはだめですよ。彼女は大丈夫です」
「おや、どうしてですか?」
「あんなに楽しそうに歌っていたのだから、多分大丈夫です」
「うんそこは記憶から抹消して欲しいかな。それと歌歌ってる陽気な人間にうかつに近づくと、歌に巻き込まれるよ?」
自ら巻き込む言ってる!!
ルークに負けないつっこみスキルを、ツインテールの少女(アニスというらしい)が披露する。
ほら大丈夫ですと緑の少年は笑顔で振り返り、それを見た青の青年が思い切りため息をついた。
「それで、お聞きしたいことがあるんですが・・・いいですか?」
「はいはいなんですか?」
目の前にやってきて身を屈ませる少年に、はくるりと正座で向きかえって首をかしげる。
へらりと笑った緑の少年が、の前にしゃがみこんで周りを見回した。
「ここにライガクイーンがいると聞いてやってきたのですが」
「女王様なら別の森に行きましたよ」
「え?ライガクイーンが?」
「チーグルを襲ってるんじゃないんですかぁ?」
「うーんと、チーグルに住んでた家を理不尽にも燃やされた挙句責任取れないとかのたまうから何匹か食ったとは言ってたけど」
「ああ、そうだったんですか。チーグルの長老に少し話は聞いてきたんですけど・・・」
「イオン様そこつっこむとこです!」
の言葉に素直に返してくる少年(イオンというらしい)に、アニスがしっかりつっこみながらたかたか走ってくる。
え?と首をかしげるイオンを見て、アニスと青の青年がうなだれた。
「それで、ライガクイーンはどうされたんです?」
「ん?チーグルの出した条件と、あと人間が攻めてくるかもよっていったら、仕方ないから移住してあげるって」
「そうだったんですか。よかった」
「あなたが説得してくれたんですかぁ?」
「んーん、俺は愚痴を聞いただけ!」
「「愚痴・・・」」
「ライガの言葉が分かるんですか?」
「いえいえ、ソーサラーリングっていうアイテム使ってです」
の言葉になんともいえない顔をする二人を無視し、イオンがおっとり首をかしげる。
ぶんぶん手を振ったはこーゆーの、と手で大きさを表現し、イオンはやはり、のほほんとしながらへぇ〜そういうのなんですか、と相槌を返してきた。
ため息をついた青年が、メガネを押し上げる。
「それで、あなたはここでなにを?」
「ライガ族の引越し手伝ってる仲間を待ってるんです」
「ぇえ!?人が一緒に行って大丈夫なの!?ライガって人食べるんだよ!?」
すちゃっと手を挙げ答えるに、アニスが思い切り大声を上げる。
まさか知らないんですか?と青年に問いかけられて、知ってるよ?とはまた首をかしげる。
「敵意がないのが分かったから、俺たちは食べないでおくって」
「・・・そんなんで通じるものなんですかぁ?大佐」
「・・・いえ、聞いたことがありません」
「えっと・・・大丈夫なんですか?」
「大丈夫だと思うよ?魔物は嘘つかないし女王様は話の分かる人?だし。それに何かあってもつよーい相棒がいるから!」
ぐっと、は拳を握る。
きょとんとするイオン。胡散臭そうに顔をしかめるアニス。
青年は、ほぅ、と小さく声を上げた。探るように目を細めて。
イオンはにこりとに笑う。
「あなたは、その人のことをとても信頼してるんですね」
「うん!なんてったって俺の相棒だから!」
「もしや貴方は、エンゲーブにいらした家出貴族の護衛の方ですか?」
「そーで・・・す?」
「僕らもエンゲーブにいたんです。そこで貴方たちのことも噂で聞いたんですよ」
「地図も食料も持ってないで迷子になってた迷子三人組がいると」
「あちゃーそこまで細かくバラさなくても」
「・・・マジで迷子だったの、アンタら」
頭に手を置くを見て、アニスが半目になる。
えへーとは誤魔化し笑いし、そんなを見てイオンが笑った。
「そういえば、お名前はなんというんですか?僕はイオンです」
「俺です!」
「私はアニスちゃんです!で、こっちが」
「どうも。マルクト帝国軍第三師団師団長ジェイド・カーティス大佐です」
「えーっと・・・マルクト帝国軍だいし?」
「・・・ジェイドで結構ですよー」
「はぁーい」
「うわー」
にこーっと笑って言うジェイド。良い子に手を挙げ返事をする
アニスが思い切り呆れ顔し、そりゃ迷子にもなるわけだ、とぼやいた。
イオンはとジェイドのやり取りを見て、くすくす笑っている。
「それで、貴方が一緒にいる方というのは――」
「大佐!」
目を細めたジェイドが話している途中で、根の入り口から声がかかる。
全員が入り口に顔を向けた。
は、思わずあっと声を上げてしまう。
入り口に立っていたのは、10人ばかりの兵士とルークを攫った賊だった。
名も知らぬ少女は、だらりと下がったままの腕をぶらぶらさせながらこちらにつかつかやってくる。怒った顔で。
「イオン様を連れてなぜこんなところにいるんですか?」
「ええ。それはイオン様がどーーーー〜〜〜しても!チーグルが気になるとおっしゃいまして」
「言い訳はいいです!イオン様になにかあったらどうするおつもりですか!?折角の和平――」
「ティア」
少女――ティアが勢いよく話していたのだが、ジェイドが硬い声で名を呼びそれをとめる。
呼ばれたティアは、びくりと体を揺らした。
ジェイドはちらりとを見る。
「それはここで話すことではありませんよ」
「・・・すみません。しかし――」
「問題はありませんでしたよ。すでに解決された後でしたしね」
肩をすくませて、ジェイドはを見る。
ティアもを怪訝な顔で見てきた。
「その子は?」
「チーグルが食料を盗むはめになった元凶をなくしてくれた方の一人、です」
「一体何が?」
「一々説明するのもめんどうですねぇ。丸く収まりました、終了☆ということで」
「あはは!いーノリー」
「どーも〜」
さらっと流してしまうジェイドを見て、は爆笑してしまう。
笑顔で乗り返してきたジェイドをティアが睨むが、無視だ。
ティアはも睨んできた。
はきょとんとティアを見返す。
「なんなら、彼女に教えていただいてはどうでしょう?」
めんどい!
一刀両断ー!
「あははは!」
「いーノリですね〜」
「それほどでも〜☆」
「大佐!あなたも、ふざけてる場合じゃないわ!」
「じゃーどういう場合?」
何故だか怒鳴られて、はこてんと首をかしげる。
ティアは、ぐっと言葉に詰まった。
ジェイドとアニスが肩を揺らして笑っている。
イオンは、なにかあったんですか?と同じく首をかしげた。
ティアはおろおろ目を泳がせ始める。
「ねー、なにがそんな場合じゃないの?」
「・・・あなたには関係ないわ!」
「俺に怒鳴っておいてそれないんじゃない?単なる八つ当たり?・・・感じ悪」
「し、失礼ね!八つ当たりなんかじゃないわ!」
「八つ当たりじゃん。これ理不尽じゃねー?」
「・・・えーと」
「あ、ごめん。イオンにふっても困るよな」
「じゃ、私にふります?」
「ふっちゃおっかなー♪」
「ふられちゃおっかなー♪」
「た、大佐ぁ、ちょっとキモイでっ・・・す・・・!ぶはっ!」
「いいや可愛いとあえて言うとこだよ。ジェイドかーわーいーいー」
「「あははははは!」」
「さすがに寒気がしますねぇ」
の悪乗りにアニスとイオンが笑い、肩をすくませ切り落とすジェイドにまで一緒になって笑う。
完全に蚊帳の外になったティアはむすっとしながらそっぽを向いていたが、全員無視だ。
あーはらいてーと転がるに、顔を赤くしたイオンがこくこく頷いた。
「そーいえば、イオンたちはなんでここに?」
「あ、はい。エンゲーブの盗難事件が気になりまして・・・。チーグルの長に事情を聞いて、すでに交渉に行った人間がいると言われたので何か出来ることがないかと思いまして」
「ふえー、それでわざわざ」
「はい。でも一足遅かったみたいですね」
「いやいや、十分役に立ったよ」
「え?なににですか?」
「俺の暇つぶし!」
笑顔で豪語する
イオンがまた笑いの渦に巻き込まれる。
ちょっとーイオン様を暇つぶしに使わないでよねーとアニスに言われて、ごめーんと軽く手を挙げ謝っておいた。
涙が出るほど笑っているイオンを見て、これやばいかなととアニスで背中をさする。
やれやれとジェイドがため息をついた。
「それじゃあここまで来たことですし、の仲間たちが帰ってくるまで暇つぶしになってあげましょうか」
「わーマジで!ちょー助かる!」
「大佐。そんなことをしている場合ではないはずです」
「やれやれ。ティアは真面目ですねぇ」
「大佐!世界の――」
「ティーア」
また熱くなるティアを、ジェイドが名を呼びとめる。
まったくあなたはとくどくど嫌味を言いはじめるジェイドを見て、はうわぁとぼやいた。
よくやるなーティア、とアニスがしらけ面している。
ティアの手を見て、じろじろティアを見てから、はイオンにこそこそ顔を近づけた。
「ね、あの子気をつけたほうがいいよ」
「え?・・・何故ですか?」
「うーんと・・・危ないから」
「え?なにが?」
首をかしげるイオンに一緒になって顔を近づけ、アニスが問いかけてくる。
はにょきっと現れたアニスにちょっと驚いてから、ちらりとティアを見て口の横に手を添えた。
「言動が」
「「ぶはっ・・・!」」
「おや?」
の言葉に二人が噴出した途端、ジェイドが嫌味をやめて三人に顔を向ける。
目があったは、にこーっと笑っておいた。
ジェイドもにこーっと笑い返してくる。
「なにか楽しいことでもあったんですか?」
「いーえなんでもー」
「な、なんでもないでーす」
「ぷくくく・・・!」
「楽しいことなら私も入れて欲しいんですけどねぇ」
「子供だけの秘密!」
「差別はいけませんね。心はまだまだ少年ですよ」
「そんなこと言ってる時点で薄汚い大人だよ」
そんなはっきりと!!」
「あははははは!」
あっさり言うにアニスがびしっとつっこみ、イオンが笑い崩れる。
酷いですねーこんなに清らかなのに、と両手を胸に添えるジェイドを笑いながら、どこが清いー?とさらにボケた。
ティアが、物凄く不機嫌な顔でを睨んでくる。
は思い切り睨み返した。
殺気をまじわせて。
「っ・・・!」
「おや」
「・・・えーっとぉ、〜?そんなに怒ンなくてもいーんじゃないかなぁ〜?」
「うん。相手にするまでもないみたいだ」
冷や汗を流しながらアニスが声をかければ、あっさり殺気をしまって嫌味を投げる
ティアがまた思い切りを睨んできた。が、は無視だ。
面白そうにを見ていたジェイドが、目を細めてさらに楽しそうに笑った。
「なるほど。中々に出来る方のようですね」
「なにが?」
「自覚が無いあたり野生的なものを感じますが・・・」
きょとーんと首をかしげるを見て、ジェイドが一気にしらける。
あーちょー納得、というアニスの隣では、イオンが苦笑いだ。
なにが、とむっとするを見てアニスはなんでも、と手を振り、ジェイドはまた面白そうにくすりと笑った。
「さて、残念ですが我々は一足先に失礼しましょうか」
「・・・そうですね。もう少しと話していたかったけど・・・仕事もありますし」
「仕事かぁ。サボりたくなるけど、しょーがないよね。がんばれ!」
ぽん、と肩に手を置きにかっと笑う
ぱちりと瞬きしたイオンは、嬉しそうに笑うとはい!と頷いた。
ぱたぱた砂を払いながら、イオンとアニスが立ち上がる。
ばいばーいと手を振りイオンたちと別れたは、またぽつんと一人になった。
「・・・坊ちゃん遅いなー」
三角座りして体を揺らしながら、はぼやく。
ころんと転がってため息をつくと、目を閉じた。
――しばらくして、人の気配が無くなる。
うっすら目を開けたは、また目を閉じてはぁとため息をついた。
ごろごろ転がって、飽きた頃に体を丸めてまた目を閉じる。
眠気が襲ってきてうつらうつらしたころに、ようやく人の気配が近づいてきた。
「おーい、?って寝てやがる・・・」
「なにもなかったか」
「暇で死に掛けたー」
「って起きてたぁ!?」
『さすがにど真ん中じゃ寝ないよねー。・・・多分』
「ちゃんと岩陰とか木の上とかで寝る!」
「威張れることじゃねぇ・・・」
リオンの問いかけにおどけて返したは、シャルティエに言い返しながら両手足を伸ばして起き上がる。
すたすた近づいてくるリオンに続いて、呆れ顔のルークとソーサラーリングを腹につけたミュウがやってきた。
息をついたリオンが、の髪や服に付いた土を叩いて落とし始める。
「で?」
「胡散臭いマルクト軍人と、導師イオン。ツインテールの関係者っぽい女の子と・・・例の賊が来た」
「あいつ生きてたのか?」
「腕はダメだったみたいだけどね」
「それで?なにをされたんだ」
ルークの問いかけに肩をすくませるに、リオンがさらに問いかける。
はちょこっと話しただけ、と返して後ろに手を付く。
「あいつら一旦戻ってきたみたい。仕事の途中っぽかったけど・・・イオンが駄々捏ねてここまで来たんだって」
「ご苦労なことだな。僕らのことは探られたか?」
「さー?聞こうとしてたみたいだけど賊が乱入してきてヒステリック起こしてね。うやむうやのまま帰ってったよ。あの様子じゃ罪黙認してるのか、知らないのか」
「手を組んでいる可能性は?」
「あるかも。大佐に意見してたし。余計なこと言いかけて怒られてたけど。世界がなんたら〜」
「そうか・・・。これからますます油断できないな」
「・・・それって俺の話か?」
「「そー(だ)」」
こてんと首をかしげるルークに、とリオンがこっくり頷く。
うげぇ、とルークが顔をしかめて、リオンがはぁとため息をついた。
「で、そっちはどうだった?」
「無事新たな住居を確保した。手ごろな魔物もいるし、暫くは安泰だろう。なにもなければな」
「あとは長老に報告するだけですの!」
不穏なリオンの言葉を無視して、やり遂げた!という笑顔で声を上げるミュウ。
そっかーじゃあ行こうかとが立ち上がり、リオンも息をつきながら立ち上がった。
「まさかこっちまで来てこんなことをするなんて・・・」
「まーまー。どこ行ったって冒険は付き物さ!」
「それもどーよ。まー結構楽しかったけどな!」
「いい経験になったねールーク」
「おう!」
「はぁ・・・」
どこまでも呑気な二人に挟まれて、リオンが重いため息をつく。
坊ちゃん負けるなーと応援したシャルティエはぽすぽすコアクリスタルを叩かれる。
長老に報告を済ませ一旦エンゲーブに帰ろうとしていたたちは、ちゃっかり恩を盾に、追放されたミュウを連れて行くはめになった。








スケープゴートは綺麗に笑う