どーんと大きな音と振動で、とルークは目を覚ました。
目を閉じていたリオンも鬱陶しそうに目を開け、窓の外を見る。
「すげぇ!なんだあれ!」
「わー!でっかーい!」
「すごいだろう!マルクト軍の誇る最新の戦艦、タルタロスだ!」
がっと窓に手を付いて顔を出すとルーク。
大はしゃぎの二人に、馬車を運転していた男が機嫌よく答えた。
すげーすげーと二人がはしゃぎまくっていたのだが、戦艦から声がかかる。
慌てて方向転換した馬車の中、とルークは悲鳴を上げながら椅子に強制的に戻された。
「ってぇ〜・・・」
「ケツうったー」
「馬鹿どもが。少しは落ち着け」
「だって俺あんなの初めて見たんだぞ!」
「俺だって!」
「わかったから。窓から見てろ」
「あ!ロールテロー橋が!」
男の声に驚いて、あきれ返っていたリオンもがばっと窓に顔を向ける。
どーんどーんと爆発音を立て、見事に橋が落ちていった。
うそーー!!とが大声で叫ぶ。
ルークが、マジかよ!!と同じく叫んだ。
「あちゃ〜・・・。残念だったな。お前さんら、エンゲーブ付いたら諦めてグランコクマに戻るか、カイツールを抜けてケセドニアにいきな」
「・・・しかなさそうだな」
「でも、旅券どうする?・・・俺とリオンは戸籍がないし、ルークなんて不法侵入だよ?」
「げっ。行けねぇじゃん」
後半小声で言うに、ルークが顔を引きつらせる。
リオンがぐりぐり眉間を捏ねながら、はぁーとため息をついた。
けらけら笑った男が、なんならエンゲーブの村長に話しつけてやるよ、と声をかけてくれる。
マジでおっちゃん!ありがとおじさまー!と現金にも喜ぶたちを見て、リオンはため息をついた。
エンゲーブに付いた馬車から降りて、ルークがほえーと声を上げる。
「初めて?」
「だから初めてだっつってんだろ。すっげー田舎」
「スタンの田舎といい勝負だな」
「ぷっ。リーネの村だっけ?ジューダスシチュー残さなかったもんな」
「うるさい!」
「おーい、荷物手伝ってくんねーか?」
「あ、やるやるー!リオン、ルーク、行こうぜ」
「はぁ?なんで俺まで」
「世の中ギブアンドテイク!ここまで助けてもらって地図までくれて、さらには旅券の話までつけてくれたんだから。感謝しないとな!」
「やむおえんな。行くぞ」
手を振ってさっと歩き出すリオン。
おー!と腕を挙げ隣を歩く。
ルークは、めんどくさそうに舌打ちしてから二人の後を追った。
これこっちー?これは入れればいいのか?となんだかんだいって一緒にルークも手伝いはしたのだが。
「よし。こんだけあればグランコクマまでもつだろう」
「食料ばっかだな」
「そりゃ、食い物がないと餓死しちまうだろ。特にエンゲーブは食べ物が美味いからな」
「へ〜。そうなのか?」
「そうだとも!ここから世界中に食べ物が流れるんだ。エンゲーブ産のものはブランド品としても有名だしな」
「「へぇ〜」」
自分の村でもないのに自慢げな男に、もルークもこくこく頷く。
リオンは一人ため息だ。
じゃーローズさんとこ挨拶にいくぞーと言われて、はお願いしまーすと手を上げた。
えっとよろしく、とルークも言う。
よろしく頼む、とリオンが最後にいい、三人を見て満足そうに頷いた男は歩き出した。
男について歩けば、知り合いも多いのか村人に声をかけられる。
そいつら誰だ?拾ったんだ家出中だとよ、とたまに話題に出されて、ルークは居心地悪そうにした。
逆に「家出最高だよー」と笑顔で手を振るを見て、とリオンと共に呆れてもいたが。
ついたのは、村の中でも一番大きな家だ。
中に入れば、ふくよかな女性がいた。
「おーい、ちょっと頼まれてくれねーか。家出人を拾っちまってさ」
「おやおや、アンタの仕事は物を運ぶだけだと思ってたんだけどね。いくら人乗せられるからって家出まで手伝うんじゃないよ」
「ははは。まーそういうなよ」
ケセドニアに行くのに旅券が必要なんだ、とそのまま話す男性。
女性は、たちをじろじろ見てから男性の話を聞く。
わかったよと言うと、女性はでもねーとため息をついた。
「これから、ちょっと国のお偉いさんが来るんだ。だから紹介状を作れるのは明日になるね」
「紹介状?ここで旅券がもらえるんじゃないのか?」
「さすがにこんな村で旅券の発行なんて出来やしないさ。セントビナーに行って、私の紹介状を渡せば旅券がもらえるよ」
「うん、わかった。ありがとうお姉さん!」
「あらあら口の上手いお嬢さんだね。上手に生きてきたんだろう」
「えっへへー。運と勢いかな!」
「・・・それっぽいな」
「・・・そのまんまだ」
もう頭を撫でられている。
呆れ顔するルークに、同じく呆れ返ったリオンがため息混じりに答えた。
じゃー宿にでも泊まっててくれよそっちにあるからさ、はーい明日また来ます!とは挙手してお返事だ。
お邪魔しましたーと家を出て、ここまで世話になった男に礼を言って別れた。
「で、宿はそこだけど・・・どーすんだ?俺たち金持ってねーぜ?」
「先ほど露店の前を通っただろう。こちらの通貨は僕らの世界と同じガルドだった。心配ない」
「さっすがリオン。じゃ、ちょっと村探検しよう!」
「・・・お前な」
「俺も行きたい」
「はぁ・・・。好きにしろ」
「よーし、出発!」
「おー!」
ひたすらため息をつくリオン。
ぐっと腕を上げるの隣で、ルークも楽しそうに腕を上げた。
わーいとリオンの腕を取って走り出す。
おい!とリオンが声を上げたが、けらけら笑うルークにまで腕をとられ、諦めた顔でまたため息をついた。
へーコレが露店かーとおのぼり丸出しのルーク。美味そーと相変わらずの。
リオンは二人に腕を引かれながら、適当に周りを見ていた。
少しざわついたかと思えば、軍人らしき集団が先ほどの女性――ローズの家に向かっていく。
あれがお偉いさんかねーと見送ってから、たちは村を歩き回った。
「なぁ、アレなんだ?」
「さぁー・・・豚?でもウサギの耳が付いてる」
「これはブウサギっつーんだ。なんだあんたら、よそもんか?」
「家出人です!」
「ああ、あんたたちか」
「なんで知ってんだ!?」
「田舎は噂が早いからな」
笑顔でびしっと腕を上げる。
驚くルークには、リオンがクールにつっこんだ。
早すぎねぇ?そんなものだ、と話す二人を見て、声をかけてきた村人が笑い出す。
そんなもんだよねーと同じく笑うに、そんなもんだなと頷いた。
「で、おじさんブウサギって豚とウサギをくっつけたの?」
「豚とウサギって、こいつはブウサギっつー名前だ。それ以上でもそれ以下でもねぇぞ」
「ふーん。肉でしか見たことなかったな。こんなんなんだな」
「ほほー、お貴族様ってーのは本当にこういうの見たことねーんだなぁ。触ってみるか?」
「いいのか?」
「いいぞ。ほら、こっち入って来いよ」
「いーなー俺も俺も!俺も構いたい!」
「ははは!いーぞ。ボーズも入るか?」
「・・・僕はいい」
大はしゃぎのを笑って、村人はリオンにも問いかける。
げんなりしながら首を振るリオンを見て、ますます笑った。
はきゃあきゃあはしゃいでブウサギと戯れ出す。
最初こそそーっと触っていたルークは、慣れたのかガシガシ頭を撫で出した。
ブウサギたちは自由に歩き回っている。
「あっ、なんだよこいつ逃げやがって」
「こっちの子人懐っこいよ」
「マジで?あーまた逃げたじゃん。の嘘つき」
「違うよルークが乱暴に扱いすぎるんだよ。こうやって優しく撫でてあげるの」
「そーだぞ坊ちゃん。動物も人間と同じだからな。子供より敏感で繊細なもんだ。大事に扱ってやれ」
「ふーん?おーい、こっちこいよ。遊んでやるぞー。・・・こねぇ」
「ははは!さすがに言葉は通じねえよ!」
「よーし俺が見本を見せてやる!ぶったさーん、こっちおいでー」
「ぷっ。無視されてやんの」
「むっきー!馬鹿にしやがって!」
「フッ。敏感だからな」
「馬鹿だって言いたいのかコノヤロー!」
「通じなかったか。ああ、馬鹿だもんな」
「なんだよリオンなんてヘタレのくせに!ヘタレ!ヘタレ!!」
「うるさい!馬鹿よりマシだ!」
「あ、ヘタレ認めた」
「認めてないこのノータリン!」
「んだとヘタレー!」
「ヘタレ言うな単細胞!」
「チービ!」
「痴呆娘!」
ぎゃあぎゃあ始まる二人のじゃれあい。
ルークはあーあと呆れ顔でため息をつく。
おいおいと村人は苦笑いした。
「そんなじゃますます寄ってこねーぞ」
「あいつらアレで楽しんでるからさ。ほーっといていいと思うぜ」
「お前さんも苦労してそうだな。あれじゃ目立つだろう」
「・・・そーだな。家出失敗するかも」
はあーと息をつくルーク。
村人はけらけら笑い出す。
お前らいい加減にしろっつーの!とルークにつっこまれて、とイオンはじゃれあいをやめた。
ブウサギと村人にばいばーいと手を振り、手を振っただけリオンとルークにどつかれ、三人はまた村を歩く。
見る場所ねーなーとぼやくルークに、所詮は田舎だとリオンが辛らつにつっこんだ。
じゃー食材だー!とが騒ぎ出す。
明日にしろ、とリオンがやはりつっこんだ。
「でも今日の分は?俺腹減ったよ」
「俺もー。昨日から全然食ってねぇじゃん」
「そういえばそうだったな・・・。なら少しなにか買うか。宿で食事が出るかも分からない」
「よっしゃーメシー!」
「少しは落ち着け!」
すぐさま駆け出すの首根っこを掴み、リオンが食い止める。
ルークは元気だなぁと呆れ顔し、ほら行くぞと歩き出した。
食材の並ぶ露店に戻れば、がぐうと腹を鳴らす。
お前ホントに女かよ、と呆れるルークに、生理現象だ、とは真顔で返した。
リオンは適当に周りを見て、リンゴの露店で立ち止まる。
「ふむ・・・一つ34ガルド。さすがに産地だけあって安いな」
「へぇー。そうなのか?」
「高いところじゃ100ガルドとかするもんなー。おじさんリンゴみっつ!あとキルマフルーツ?一つ!」
「お前自分の分だけ余分に買うつもりかよ!」
「じゃー二つ」
「ははは。店の前で喧嘩はよしとくれよ。ほら、キルマフルーツ一つおまけにつけてやる」
「わーいありがとー!」
「・・・いいのか、これ」
「もらえるものは貰っておけ」
ぽいと袋におまけを入れてくれる亭主。
は手を挙げ大喜びする。
呆れ顔するルークには、リオンがさらっと肯定した。
「すまんが、ここの宿は食事がでるか?」
「お?・・・ああ、あんたらが家出人たちかい?出る出る。安心しな」
「よかったー。餓死するとこだったよ」
「お前だけだっつーの」
「なら、他の食材は明日にするぞ。・・・それと、ローブかなにか売ってる場所はあるか?」
「ローブねぇ・・・。マントくらいしかないなぁ。兄さんがつけてるのよりは質の悪いもんになっちまうが」
「いや、構わない。ありがとう」
礼を言って、リオンはさっさと歩き出す。
荷物を受け取って礼を言って、もリオンのあとを追った。
ルークもとことこ二人についてくる。
「マントなんて買ってどーすんだ?」
「念のためだ。お前は身なりこそ変だが、見るものには分かる。それに第三位王位継承者とはいえ王族だ。国によくない思想を持つものならば、命を狙ってきてもおかしくはない」
「げぇ、マジかよ」
「そーゆーもんみたいだね。ウッドロウとかジョニーさんも、しっかり変装してたし」
「若干一名ますます派手だったがな」
顔をしかめるルークに、が肩をすくませる。
しっかりとリオンがオチをつけ、もルークも笑った。
そこらでリンゴを食べ、ついでにキルマフルーツも食べてマントを買う。
「なんか微妙・・・」
「じゃ、俺の使う?」
「おお!噂のまったく使われてないマント!」
「フッ。ヒューゴが哀れだな」
「な、なんだよ!マントなんてそーそー使わねーんだから仕方ないだろ!」
のマントを広げてはしゃぎだすルーク。
余計な一言にはリオンが大いに響いて、連鎖反応でも騒ぎ出した。
ルークにマントをつけてやれ、とに命じてから、ふらりと消えるリオン。
似合うか?いかしてるーとはしゃいで、中々戻ってこないリオンを待つ間は、ルークの知っている物語との体験した冒険の話で盛り上がった。
ようやくリオンが戻ってきたので、話に一区切りつけて宿に向かってみる。
宿の前には、村人たちが溜まっていた。
「なんだろうあれ?」
「さあな。集会には見えんが・・・ルーク、うかつに近づくな」
「なんでだよ」
「よく見ろ。深刻な顔をしているだろう。下手に声をかければとばっちりを食らう羽目になる。・・・なにかあったな」
「すいませーん。なにかあったんですか?」
さっさと行こうとするルークを捕まえて、小声でさりげなく指摘するリオン。
がスタスタ前にでて声をかけた。
怪訝な顔で振り返った村人たちが、なんだ?と声を上げる。
先ほどの露店の主人がいて、ああ家出人たちだと声を上げた。
「宿の主人なら今出かけちまってるぞ」
「えー、マジすか。どんくらいで戻ります?」
「そうだなぁ、倉庫の様子を見に行ってるから、すぐに戻ってくるだろうけど」
「なんかあったのか?なんか、深刻な顔?してたけど」
好奇心旺盛らしいルークが、しかめ面する露店の主人に問いかける。
ああ、と全員が嫌そうな声を上げた。
「最近ずーっと食料を盗まれてな。困ってるんだ」
「漆黒の翼の仕業じゃないのかって今言ってたんだけどな」
「漆黒の翼なら、先ほどマルクト軍の戦艦タルタロスがロールテロー橋の向こう側まで追い回していたぞ。橋を落とされてそれ以上の追跡は出来なかったようだが」
「うん?そうなのか?」
「うん。馬車のおじさんとみんなで弾かれかけたからねー」
やばかったよーあれ、とけらけら笑うの頭を叩いて、笑い事じゃぬぇーよとルークがつっこむ。
そうだなあと、村人たちはまた深刻な顔に戻った。
「なんだよ。食料くらむぐ」
「倉庫になにか残ってないの?」
「さぁ・・・いくら探しても、カギを壊した形跡もないしなぁ。それで困ってるんだ」
「おーい!」
男たちがまたうーんと唸り始めたころ、また一人村人が走ってくる。
リオンに口をふさがれたルークは、なんだよ、と顔をしかめた。
「ここは食料を売ることを生活の糧にしている。下手なことは言うな」
「・・・ちぇ」
「今ローズさんとこにローレライ教団の導師様が現れてな、倉庫でチーグルの毛を見つけたらしいぞ」
「チーグルの毛だぁ?」
「チーグルってなに?」
ざわつく村人たちに、が声をかける。
チーグルっつーのは聖獣だと、露店の主人が教えてくれた。
「ここから北に上った森に住んでるちっこくてほわほわした魔物なんだがな・・・どういうことだ?チーグルは草食で、知能も高いから盗みなんて働かないはずだぞ」
「頭使えるこそじゃねーのか?森の食べ物がなくなったのかもしれない」
「とにかく、倉庫に罠でも張っておくか。チーグルが捕まったらそいつが犯人だろう」
そうだな、そうしよう、と村人たちは話をまとめる。
散り散りになった村人の中で、唯一残ったのは今しがた走ってきた男だ。
宿屋の主人だった男に部屋を手配させれば、一部屋しか開いてないといわれた。
軍人が泊まる所為で珍しく満室らしい。
仕方ないと三人で一部屋に入り込み、ようやく腰を落ち着ける。
お茶を飲んで一息ついてから、リオンが地図を開いた。
はリオンが地図を広げたベッドに転がり、同じく地図を眺める。
「エンゲーブ・・・で、確かここがセントビナーだったか。徒歩では結構かかりそうだな」
「えー。俺もう歩きたくぬぇーよ」
「仕方ないだろう。とりあえずお前をバチカルまで送る。その後情報を集めて、帰る方法を探さなくては」
「そうだねー。とっとと帰んないと」
別のベッドにてごろごろしていたルークが文句を言うが、リオンはずばっと切り捨てる。
がこっくり頷くと、むすっとしながら息をついたルークが、そうだ!と声を上げてがばっと起き上がった。
「なんなら家を拠点にしろよ。二人くらい増えたってどーってことねーしさ」
「そう簡単にいくわけないだろう。貴族は対面も考えなければならない。不審者でしかない僕らを屋敷に置くなど、非常識だ」
「まーまー、行ってみて考えようよ。いいっていうならお世話になればいいしさ。それに、まずは無事ルークを家に届けないと。今は敵国にいるんだし、下手に動けば俺たちの所為で戦争始まっちゃうよ」
『うわーが珍しく回り見て行動してる』
「俺だってやるときはやるの!」
ようやく人がいなくなってしゃべるシャルティエ。
ルークはけらけら笑い、リオンはため息をつく。
そうだなと適当にぼやいてから、リオンはじっと地図を見た。
「なぁ。明日チーグルのいるっつー森に行ってみねぇか?」
「は?なんでまた」
ごろごろしながら、ルークが声を上げる。
が首をかしげる前では、リオンが嫌な顔だ。物凄く。
ルークはころりとうつぶせになると、にやりと笑った。
「俺らで食料泥棒の犯人、つきとめてやろうぜ」
「おっ、それ面白そう!」
「馬鹿馬鹿しい。そんなことやってる場合じゃないだろう」
「いーじゃんちょっとくらい。俺帰ったらずーっとまた軟禁だしさ。それに、どーせカイルやスタンがいたら大変だ!なんとかしてあげよう!とか言ってたと思うぜ?」
「あははは!言いそうー!」
「笑い事じゃない」
英雄馬鹿の真似をするルーク。
けらけら笑うの頭をリオンはべしっと叩いた。
いたーいいいじゃーんとは駄々を捏ね始める。
ルークもいいだろーリオンーと駄々を捏ね始めた。
「ダメだ」
「「ええー」」
「お前ら少しは真面目に考えろ。ルークは王族なんだぞ。傷一つつこうものなら即開戦だ。それに、今頃国だって混乱している。とっとと設備の整った街に行き早急に祖国に連絡を入れるべきだ」
「だったら、ここでハト借りちゃえば?」
「敵国から手紙が送れると思うか?保障する人間もいない。ケセドニアに行けば領事館があるらしい。そこでルークの身元を証明してもらい、首都に手紙を送る」
「・・・いーじゃん。俺が怪我したっての唱術でちょちょいのちょいだしさ!俺がなんとかしてやるって!」
「あのな・・・」
「とゆーわけで、明日はチーグルの森にて犯人探しに決定!」
「決定ー!」
「おい!聞けお前ら!!」
勝手に盛り上がるルークと。
リオンがしかりつければ、二人とも少し引いてからいいじゃんーと駄々を捏ね始める。
ガキかこいつら、と顔を引きつらせるリオンには、シャルティエががんばって坊ちゃんとさりげなく声援を送った。
「リオン、ちょっとくら息抜きしようよ」
「お前は息を抜きすぎだ」
「ほーらほらそんな硬いことばっかいわない。肩の力抜いて。別の世界ぶっとんだって、案外なるようになるから」
「お前だけだそれは」
「今日だって昨日だってなるようになっただろ?」
ぎろりと睨みつけるリオンに、は飄々と言ってからにやりと笑う。
リオンは、はぁーとため息をついた。
「最近お得意のボケまで出なくなっちゃってんじゃん。少し遊んで、余裕もとうぜ」
「生憎脳にゆとり持ちすぎのお前と違って、僕は心にゆとりを持つ主義だ」
「んだと石頭ー!」
「鳥頭」
「女顔ぉ!」
「っ男女!」
「チービ!」
「うるさい能無し!」
「なんだよ理屈屋!」
「単細胞!」
「お前ら早速それかよ」
『まぁ、二人のじゃれ愛だからねー』
「愛はない!!」
「ひっどーいリオン私のことは遊びだったのねー!」
「遊んでるのはいつでもどこでもお前だ!」
ぎゃあぎゃあ騒ぎを続行させる二人。
呆れながら二人を見ていたルークは、アホな掛け合いにその内笑い出す。
飽きてシャルティエとアレコレ二人の冒険について話し出した頃に、ようやくとリオンが落ち着いた。
神様の気紛れと悪戯に踊らされてるだけ、それが人生