すやすや眠っていると、ごり、と頭に硬いものがあたる。
「・・・んー?」
コンコンとそれで頭をつつかれて、はころんと寝返りを打ち目を開けた。
ら、ミツコさんが銃を構えてた。
「・・・。おはようございます今日は不機嫌ですね」
「おはよう女の子の日なの。恭弥君も釣られて寝ない」
「・・・は?うぉぉおおい!!」
思い切り眉根を寄せてから隣を見てみれば、すやすや眠りこける恭弥少年。
思い切り叫んで起き上がると、恭弥少年は機嫌悪そうに目を開けた。
「うるさいよ――」
「おはよう恭弥君。今日も朝ごはん食べて行く?」
「・・・いただきます」
「(恭弥が敬語だ!)」
笑顔で恭弥の額に銃を当てるミツコさん。
しかし背後にゴゴゴゴゴと効果音がついている。
さっさと支度しなさい、と銃をしまってミツコさんが出て行くと、はふーと息をついた。
「・・・お前何やってんの?」
「・・・寝心地いいんだ・・・」
「また寝るなミツコさんがキレる」
単に寝にきてるらしい。
びしっとつっこんでから、はさっさと起き上がった。
クローゼットから制服を取り出そうとしたところで、そっちじゃないよ、と後ろから声がかかる。
振り返ればベッドにどさりと置かれる紙袋。
「・・・学ラン?」
「そう」
欠伸をしながら恭弥が答える。
早、といいつつ袋を開けると、真っ黒い制服が入っていた。
取り出せば黒いズボンに黒い上着。そして腕章。
ぷっと笑って、紙袋片手には部屋を出た。
トーストの焼けるいい匂いが部屋に充満している。
顔を洗って脱衣所を出ると、ソファにワイシャツとサラシ置いといたわよとミツコさんに声をかけられた。
あざーッスといいながらソファへ。恭弥はまだ出てこない。
さらしを巻きつけてシャツを着たはいいが、寝室から恭弥が出てこない。
時計を見れば7時30分。
ぇえ!?とが声をあげると、早くに来てくれたのよ恭弥君、とミツコさんが言ってきた。
その恭弥はやはり寝室から出てこない。
息をついて笑みを浮かべると、は寝室に入った。
やはり眠っている。かなり気持ち良さそうに。
「・・・可愛い・・・」
「〜?まだ寝てるのー?」
「はーいはい。おう、また銃突きつけられるぞ」
「・・・」
ミツコさんの声で恭弥が目を覚ます。
眉根を寄せながら目を瞑っている恭弥に声をかけて、はくすくす笑った。
欠伸をしながらようやくベッドを降りてくる。
目を擦ってから、の格好を見てちょっとだけ怪訝な顔をした。
「ベルト白?」
「これしか持ってないし。いいだろ似合ってて」
両手を上げてから、はさっさと歩いてカウンターへ。
ブレザー似合ってなかったしね、と言われて、黙っとけと返しておいた。
のんびり朝食を取ってのんびり一服していると、ミツコさんに持ち物チェックしたの?と声をかけれた。
ただいまリビングお掃除中。のため、たちはベランダに避難。
「・・・あの人一体何者?掃除ってああやるものだっけ」
「あー・・・まぁ、うん。マフィアのお抱えハウスキーパーはただのハウスキーパーじゃないんだと」
「マフィア?」
目を泳がせつつ答えると、やはり怪訝な顔をされる。
ふーと煙を吐いて、は煙草を手に取った。
「俺がマフィアの一員だからミツコさんが来たわけ」
「が?マフィアだって?」
「そ。マフィアに入れば生活全部負担してくれるっつーから」
「それでマフィアになったの君?」
顔をしかめながら問いかけられて、は眉根をよせたまま無言になる。
手すりに両腕を乗せて顎を乗っけていると反対に、手すりに背中をつけて腕を組んでいた恭弥は、無言になったに顔を向けて聞いてる?とまた声をかけてきた。
「入る以外道がなかったんだよ」
「その歳なら自分で生活くらいなんとかできるだろ?」
「普通の二十歳ならな」
ふーと煙を吐いて、投げやりに答える。
恭弥が怪訝な顔をしたところで、さっさといきなさい、とミツコさんが声をかけてきた。
さーて学校行くかダリーと言いながら、は部屋の中に入る。
まだ気にくわなそうな表情だったが、恭弥は何も言わずついてきた。
「腕章は?」
「おっと忘れてた。こっち側だな」
学ランに腕を通して、右側に腕章をつける。みんなと反対側。
これ無茶苦茶熱いな、と顔をしかめると、こんな時期にわざわざ着てるからじゃないとの返事が返ってきた。言った本人は学ランを肩にかけている。
「いつも思うけどそれ落ちないわけ?」
「草壁たち曰く根性で落とさないんだって」
「・・・根性ッスか。熱いッスね」
「聞くと咬み殺したくなるね」
留めておけよ、といいつつマンションの外へ。
留めてるよ、と答えて、恭弥はバイクのエンジンをかけた。
おねがいしまーすと言いながら、はやはり後ろに乗る。背中を向けて。
はぁとため息をついてから、恭弥はバイクを発進させた。
もはやお馴染みとなった行動を取って、お馴染み重いとのコメントが返ってくる。
修行ーとやる気のない声で返した。
学校の近くまで来ると、道行く学生たちがみんな驚いた顔でと恭弥を見ていた。
後ろに後ろ向きに乗っているからは丸見えだ。
なんだかなぁとぼやきつつ、恭弥の背中に頭を乗せた。
学校に着くと、はひらりとバイクから降りる。そして感じる視線。
恭弥は気にせず鍵を取ってスタスタ歩き出した。
二人を注目している生徒たちを、目を細めて見回す。全員そそくさと目を逸らした。
「・・・すんげ」
「。携帯忘れたとか言わないよね」
「あー・・・あ、ポケットに入ってた」
「ミツコさんにお礼言っときなよ。撃たれるよ」
ポケットから携帯電話を取り出すと、恭弥がちゃっかり冗談を飛ばしてくる。
ありそうだからちゃんと言っとく、とくすくす笑いながら返事を返して、は携帯を首に下げた。
上まで上がるのだるいなーと言いながら、玄関へ向かう。やはり道を開ける生徒たち。
靴を履き替えていると、おーいと声をかけられた。
顔を上げれば武とツナ、隼人の三人。
おはよーと手を振ると、うわぁ!とツナが叫んだ。
「本当に学ラン着ちゃってるよ!!」
「似合ってんなー」
「だろ。ただこれ羽織ってると熱いな」
「フツーにわかんだろそれ」
つっこみツナ。褒めるのは武。最後のオチは隼人で決まった。
ダリーと声を上げれば、相変わらずだと笑われる。武に。
「。帰るくらいなら風紀の仕事片付けてね」
「へいへい。りょーかいですよ」
どうやら靴を履き替えたらしい恭弥が、に声をかけてくる。
の後ろに向けて一瞬殺気だった恭弥を見ては首をかしげたが、恭弥はそのまま去っていった。
なんだありゃ、とぼやいていると、ツナのこえー・・・という声が聞こえてくる。
「・・・お前あんなのと付き合って平気なのか?」
「なにが?」
「(山本二号ーー!!)」
ツナのつっこみを感じ取って、さらには首をかしげる。
心配そうな武は、苦笑いすると教室行こうぜ、と声をかけてきた。
「つーかお前が朝からいるっつーのがまずありえねぇ」
「るせーな。俺だってたまには朝から起きるんだよ」
「起こされたんじゃないんだ」
「・・・ツナ。お前は生粋のツッコミだよ」
「図星かよ!!」
やはり最後までつっこむツナ。
はケラケラ笑ってツナの頭をぐしゃぐしゃなでた。
十代目になにすんだ!と叫ぶ隼人と天然炸裂な武とわいわい騒ぎながら教室に入れば、一瞬静まり返る。続いてざわめきだす。をちらちら見て。
顔をしかめてから、はどさりと席に座った。
「言いたいことあるなら言えよ。チラチラチラチラうぜーな」
一言声を上げれば、びくりとほぼ全員体を固めて顔を逸らす。
はますます顔をしかめると、だからなんなんだっつーの、と声を上げた。
隣の席に座った武が、あーあと声を上げて苦笑いする。
「お前転校したばっかで知らないだろ?風紀委員っていうと、不良の吹き溜まりなんだ」
「・・・あー。そういえばリーゼントとか金パとかガラ悪いのが多かったか・・・も・・・?ん?不良しかいない?」
「おいおい気付いてなかったのかよー」
「おー全然気づいてなかったわー」
「笑い事じゃないんじゃないかそれ・・・」
なんだか顔を引きつらせながらツナがつっこんでくる。
笑っていたも武も、そっかなーまあいんじゃね、で終らせてしまった。
「で、お前がやけにあのヒバリと仲がいいから、みんな引いてるってわけ」
「あいつなんかしたの?」
「まあ、いい噂は聞かねーな。トンファーでボコとかは言ったろ」
「あー。まぁ人の話し聞かないし短気だし馬鹿の子だけど、あれで結構面倒見いいしいい奴だぜ?大体真面目に武器持ってるヤツ相手にするから殴られるんだろ。流しとけっつーの」
ため息混じりに言ってから、はだらりと机に体を乗せる。
へーそうなんだ、と言いながら、武も同じように机に体を乗せた。
机に頬杖をつきながら二人の様子を見ていた隼人が、ハッと嘲笑する。
「そうやってると馬鹿二匹いるみてーだぞ」
「るせーぞツナ馬鹿」
「だとテメー!十代目馬鹿で何が悪い!!」
「色々。な、ツナ」
「俺にふるの!?」
ぽんと肩を叩けば、ツナはびくりと体を揺らして素敵なオーバーリアクション。
いやーいい反応だとケラケラ笑うと、十代目で遊んでんじゃねー!と隼人が間に入って来た。ついでにべりっとはがされる。
「男の嫉妬は醜いぞ隼人」
「変な言い回しすんな!」
「え、これ嫉妬じゃねえの?なぁタケ」
「明らかに嫉妬だよな。寂しがりやだなー獄寺は」
「ぁぁあああもうお前ら果てろ!!」
「だめだってだからーー!!」
きょとんとしながら話を振れば、ケラケラ笑いながらそれに乗る(確実に本人本気だが)武。
隼人が大声を上げてダイナマイトを取り出すと、慌ててツナがとめた。
教師が入ってきてSHRが始まる。
ごめんなーツナ、とぽすぽす頭を叩いて謝ると、ホントもうやめてくれよ・・・と机に潰れられた。
一時間目。数学。
無茶苦茶だるいとはやはり机に潰れる。そのまま眠っていたところ隣の武に突かれた。
「これ、わかるか?」
「・・・あー?つーか中1の問題で引っかかってんなよお前・・・正の数負の数って・・・」
「わりーわりー。野球馬鹿だから俺」
にかっと笑いながら、武はがしがし頭をかく。
ぷっと笑うと、しゃーねーやつ、といいながらノートをひょいと取った。
「黒板みねぇの?」
「書いてあるじゃん。はいどこが分からん」
「え。ぶっちゃけどこがわかんねーかわかんねー」
「テメーは本当にゆとり脳だなオイ」
呆れ顔でつっこむと、ゆとり脳って!と叫びながら武が爆笑。
釣られてクラスメイトたちもくすくす笑い出す。
教師にまでゆとり脳と言われて、じゃあこの問題解いてやる!と武が意気込んだ。
「よし!教えてくれ!」
「結局他人任せかよ」
元気よく言われたは、眉根を寄せて目を瞑りながらつっこみ。
受けてしまって武と共にどーもーと両手を上げてから、さっさとノートに顔をむけ――させた。
「普通に計算してきゃこんくらい解けるっつーの」
「えーと。+が先にあって、-の数字よりでかかったら答えも+になるんだよな」
「そうだねータケちゃん。しかし掛け算で-が入ってたら-優先だとも習ってるはずだぞ」
「うわ!忘れてた!」
「このゆとり脳」
目を丸くして叫ぶ武に、はびしっとつっこむ。
じゃあこの足し算先にしてーこっちかけてー、と計算していく武を観察しつつ、はふぁと欠伸する。
解けた!と武が叫ぶと、早速教師が声をかけた。
クラスメイト達はみんなくすくす笑いながら武を見ている。ついでにも。
「4!」
「違う」
「うっそ!?」
「・・・。ここの計算、間違ってる。逆にやっただろ掛け算優先だ」
がーんとショックを受ける武を無視してノートを覗き込んだは、メモしてある数字を見て指差す。
あちゃーと頭をかいた武は、また計算をしなおした。今度こそ正解。
あーあ〜と言いながら机に武が体を伸ばすと、やはり生徒たちが笑った。
人気者らしい武を見てはふぅんと声を上げる。
「ごめんなー。折角教えてくれたのに」
「間違えたのはお前の責任で俺は別段恥をかいてないからよし」
「なんだよそれ!裏切るなよ!」
「なにが裏切りだっつーの」
がばっと体を引いて叫ぶ武に、はやはり眉根を寄せて目を瞑りながらつっこみ。そのまま回りと一緒に少しだけ笑った。
ちぇー見せ場だったのになーとシャーペンをいじる武を見て、息をつきながら笑みを浮かべる。
「単なるニアミスだろ。いっぺんくらいで凹んでんじゃねーよ」
「んー。まーそうだよな」
「そーそー。それにちゃんと計算の式とか細かくメモしてやってんだろ。こういうやり方はちゃんと出来るって証拠。暗算で出来るとかかっこ悪いとかめんどくさいとか言ってメモしないヤツは、伸びないしここ一番て時に失敗する馬鹿」
「え、マジで?」
「マジ」
きょとんとする武に、はこっくり頷く。
教師が便乗してそうだぞーと言い出すと、武はぉお!と嬉しそうに声を上げた。
さりげなく目を泳がせているツナを発見したは、にやりと笑う。
「だからちゃんとメモ取れよ、ツナ」
「んな!?」
「あははは。リアクションいいなー」
「テメー!十代目で遊ぶな!」
「へーへー。じゃあお前で遊んどく」
ツナで遊んで笑っていると、隼人が立ち上がって怒鳴ってくる。
ひらひら手を振って机に頭を落とすとさらに隼人が怒り、はそんな隼人を見てにやりと笑った。
「獄寺、お前遊ばれてるぞ」
「ぁあ!?」
「すぐに熱くなるからに虐められんだって。ほら、席ついたついた」
武にひらひら手を振られて、隼人はチッと舌打ちしながら座る。
ほっと息をついたのは教師と生徒たち。
はニヤニヤ笑っていたが、ふっと息をついて笑うとコロンと頭を転がして目を閉じた。
「あんまり虐めてやるなよ」
「わりーわりー。ああいうやつ見るとどうしても可愛がりたくなってな」
「お前って案外サドだよなー」
「なに言ってるんだ山本!?」
「がサドって話でーす」
「大声で言うことじゃねーぞ、ゆとり脳」
教師に思い切り驚かれたにも関わらず、武は手を上げて笑顔で言う。
がやる気なくつっこみを入れると、それあだ名にやるだろやめろよ!と武につっこまれた。
順調に二時間目の授業が終わり休み時間になると、何故だか女子が教室を出て行く。
男子は全員残ってざわついており、は首をかしげた。
「ああ、家庭科なんだ、次の二時間」
「へー。男でよかった」
「・・・素直だなー」
なんだか物凄く呆れ顔でツナに言われる。
任せろよ、ととりあえず腕を上げておいた。
そこからはもちろん、武と隼人と三人でわあわあ騒ぐのだが。
周りの見る目が変わっているのに気付いて、はため息をついた。
ふーと息をついて、ツナがちらりと周りを見る。
「のこと、皆見直したみたいだな」
「なんつーか、チョロイよな」
「あんまり表で言うとまた変な目で見られるよ」
「別に気にしねーよ。ガキくらい手のひらでこの通り」
しらけ面ツナに、はにやりと笑って開いた手のひらを円を描くように動かす。
うわーと呆れ顔するツナの頭をわしゃわしゃかき回すと、やはり隼人がつっこんできて騒ぐことになった。
家庭科をしている女子とは別に、男子は技能・技術の時間。
CDラック作りとかめんどくさくね?と四人で話しつつ(ツナがの前の席に勝手に移動したところ、隼人も勝手に武の前の席に移動)、課題らしいCDラック作り。
テキパキ木を切ってとんかん釘を打ち込むと、紙やすりでさっさと削る。
「作業早いなぁ」
「こんなん適当に作って出しときゃいいだろ。どうせ使わないんだし。ほれ、それとっとと切ってくっつけちまえよ」
「う、うん」
もう出来上がりかけているのラックを見て、ツナが感心したような声を上げる。
ひらひら手を振ってツナが足を置いている切り途中の板をが指差すと、ツナはせっせと作業を始めた。
しかしのこぎりがうまく使えず。
はぁとため息をつくと、はツナの板に足を乗せた。
「え、?」
「力を入れるのは引くときだけ。のこぎりは真っすぐ構えること。最後までいったら、なるべく平行しにして切れ。ほら、とっとと動く」
「う、うん」
が指示を出して声をかけると、ツナはたどたどしくだが腕を動かし始める。
そうそうあーほらのこぎり斜めにしない、と指示を出しながらやっていると、どうやら同じくダメダメらしい隼人が、チッと舌打ちした。
「まだるっこしい。こいつで一発・・・」
「わーー!ダメだって獄寺くん!」
「爆発させたら形も残らないぞ」
懸命にツナが止め、は呆れ顔しながらつっこむ。
チッと舌打ちすると、隼人はしぶしぶのこぎりで作業を進め始めた。
ふーと息をついているツナに、さっさと終らせようぜ、と武が声をかける。
なんだかわいわい騒ぎながら、二時間が終った。
のはいいのだが、女子がおにぎりを持って教室に戻ってくる。
男子に配ってやるといわれて、は首をかしげた。
「ここって必ずこうなのか?」
「いや。そうでもないかな?ツナ、誰に貰うか決めたか?」
にやにや笑いながら武がツナの肩に腕を乗せる。ツナは赤くなりながらえ?と声を上げた。
わっと声を上げて、女子たちが隼人に集る。
もてるなーあいつ、と隼人をノンビリ眺めていると、ばたばた足音が近づいてきた。
「あ、あの、くん?」
「は?」
声をかけられて、思わずは間抜けな声を上げてしまう。
振り返ればおにぎりを持った女子。心なしか顔が赤い。
「あの、これ、食べてくれないかな?」
「は?・・・貰っていいの?」
「え!う、うん!よかったら貰って!」
「うん?ありがとう」
びっくりしながらおにぎりを突き出してくる女の子に、は首をかしげつつ受け取って笑みを浮かべる。
さらに赤くなった女の子に何故だかありがとう!と言われ、は首をかしげながらこちらこそ?と言っておいた。
女の子はそのまま走って女子の集まりの中へ。そしてきゃーきゃー騒ぎ出す。
他の女の子たちがの元へ向かってきそうな気配を見せた瞬間、ツナがパンツ一丁で教室を駆け回り始めた。
しかもおにぎりを無差別に食い荒らしている。
「まだ足りねーーー!!」
「だれか止めろーー!!」
「だめっ、だめっ」
ぎゃあぎゃあとクラス中が騒ぎ始める。
ツナを目で追っていると、ツナはとうとうの元まで走ってきた。
は目の前まで走ってきたツナの頭をガシッと掴む。
「よこせ!!」
「嫌だ。昼飯奢ってくれンならいいぞ」
おにぎりをかかえつつ言うが、ツナはよーーこーーせーー!!と言いながらじたばたする。
しかしは頭を掴んだまま離さない。
にやりと笑みを浮かべると、奢ってくれるならいいけど?と顔を近づけてもう一度言った。
そこで鬼のような形相だったツナが、段々と元に戻っていく。
が首を傾げて見ていると、ツナがわぁあ!と声を上げて真っ赤になった。無駄だろうに体を抱き締めつつ。
「・・・お前暴走すると裸になるのが趣味なのか?」
「違うよ!!リボーンの死ぬ気弾の所為だ!」
「あぁ・・・」
死ぬ気弾と聞いて、は納得する。
しかし納得しないのはクラスの男子。おーにーぎーりーかーえーせーとツナに迫ってきている。
叫びながら逃げるツナを見て、はため息をついた。
「すげーな。おにぎり死守」
「昼飯代浮いたしな」
「お前金もってんのにケチすぎじゃね?」
隣にやってきた武に続いて、隼人が呆れ顔しながらつっこんでくる。
まーまーツナ助けてやれよ、と言うと、隼人はボコボコにされかけているツナを発見して走っていった。
は腕を組んで壁に背中をくっつけながら、ツナたちのやり取りを見てケラケラ笑う。
武も隣で笑っていたが、一個おにぎりくれ、とちゃっかり言ってきて、はやれやれと笑いながら一つ分けてあげた。
ちなみに昼飯は応接室で食べた。
涼しいから。
馬鹿やって意味のないことを話して少しずつ近づいていく。(それでも見えない、見せない中身はきっと大人のプライドかな)