さーてサボろうと廊下を歩いていたは、大変なモノを見つめた。
モノというより、者。
「あ!姉だ!」
「・・・は?」
廊下にいたのは小さな男の子。
しかもの顔を見た途端、ぱっと顔を輝かせてこちらに走ってくる。
わー!わー!姉だ!と喜びながら抱きつかれて、はぴしりと固まった。
。なにしてるの?」
掛かった声は後ろから。恭弥だ。
しかしは固まったまま。
スタスタ歩いてきた恭弥が、ぱこぉんとの頭を叩いた。ファイルで。
「ハッ」
「・・・ああ。子供に抱きつかれてたのか」
叩かれて我に返る。の、腰辺りを見て恭弥は納得。
愛らしい男の子が抱きついてにこにこしている。
していたのだが、恭弥を見てきょとんとした。
「あなたは雲雀恭弥?」
「うん。君は誰?」
「僕フゥ太!ランキングをして回ってるんだ。姉にこんなところで会えるなんて感動だよ!!」
わーい!と大喜びしながら、フゥ太がまたに抱きつく。
はびくりと体を揺らしたかと思うと、ふわりとフゥ太の頭に手を置いた。
顔はもちろん、笑顔だ。
「かわい〜・・・」
「・・・」
なでなで頭を撫でるを、恭弥が物凄い呆れ顔で見る。
フゥ太っていうのか、といいながらがしゃがみこむと、フゥ太はうんと笑顔で頷いた。
「やっぱフゥ太かわいい〜〜っ」
「うわぁ!――さっすが姉!子供好きランキング8万2千203人中堂々の一位なだけあるよ!」
ぎゅうぅぅぅとフゥ太を抱き締めると、フゥ太は驚いてからに抱きつき返す。
ランキングだの8万だの一位だの聞いて、はひょいと離れた。
恭弥も怪訝な顔で見ている。
「子供好きランキング?」
「そう!あとは並中内可愛いもの好きランキング第一位!ツンデレランキング第一位!授業中に昼寝してる人ランキング第一位!熱しやすく冷めやすいランキング第一位!」
「ワオ。DHCかい?」
「ごめん俺もそう思った」
「違うよ!!」
二人で言うと、フゥ太がちょっと泣きそうになりながらつっこんでくる。
涙目で訴えかけるようなフゥ太を見て、はまたぎゅうと抱きついた。
呆れてため息をついた恭弥にまたぱこぉんと叩かれる。
「それに姉は一度でいいから会ってみたい人ランキングも堂々の一位!ファミリーに入れたいマフィアランキングも一位なんだよ。さすが異界の民だね」
「なんでそのこと・・・・・・て、そうか、お前、ソッチ関連のやつか」
目を丸くして驚いてから、は息をついてフゥ太を見る。
フゥ太はうんと頷いた。
「ランキングフゥ太って呼ばれてるよ。僕のランキングは一度も外れたことがないんだ!」
「ふぅん・・・使いようによっては、有力な情報屋ってところかい?」
「さすが恭弥兄!並盛町の権力ランキング一位は伊達じゃないね!」
「ワオ。僕のランキングまでついてるんだ」
ついでに呼び名まで変わっている。
もっとランキング付けさせて欲しいんだ、と言い出すフゥ太に、恭弥は少し目を泳がせてからいいよ、と承諾した。
「それじゃあ応接室にでも行こうか。ここじゃ寒いし」
「あれ。お前授業は」
「こんな面白い子がいて授業なんて受ける価値ある?」
「ねーな」
「さすが並中サボり魔ランキング一位と二位!」
「「ワオ」」
ついつい二人で声を上げてしまう。
ぷっと吹き出してから、はフゥ太を抱き上げていくか、と立ち上がった。
ついでにさっきのランキングどっちが一位なんだと歩きながら問いかける。
かと思えば恭弥だった。
通ってる日数の違いだねと流されたがじと目で見ただ。
応接室について早速、フゥ太がコートに手を突っ込む。
首をかしげてフゥ太を見ていると、ずるりとありえないでかさの本を取り出した。
「大きな本だね」
「いやなんてーか・・・!・・・うん、もういいや」
「これにランキングをメモしてるんだ。恭弥兄は並中の喧嘩の強さランキング第一位で、恐喝ランキングも第一位!」
「突っ込みどころ満載だな」
活き活きしながらランキングを発表するフゥ太に、が呆れ顔しながらつっこむ。
向かいのソファに座っていた恭弥は、むっとするとお茶入れて、と命令してきた。
はへいへいと声を上げて立ち上がる。
給湯室でお茶を入れていると、他には?という声が後ろから聞こえてきた。
「えーとね、姉が一目惚れされる確立ランキング男女共に票が入って一位だよ!」
「ワオ。あれでかい?」
「不思議なオーラランキングも一位だから、きっとオーラとかで惹き付けられちゃうんじゃないかな。それに綺麗だもの!」
恭弥の失礼な言葉の後に、フゥ太の言葉。
恭弥は未だに「見た目は中の上ってところじゃない?」と発言中。
フゥ太がすぐさま「上だよ!」と言い返していた。
は子供は素直で可愛らしいなぁと独り言をいいながらお茶を入れる。
三人分の紅茶を入れて戻ると、フゥ太が本をめくってえーっとね、と言っているところだった。
「あと恭弥兄が他人から巻き上げた資金ランキング第一位!」
「ホントだめだめだな」
「うるさい。まだあるかい?」
「うーん・・・今のところこれだけかな。じゃあ早速ランキング取らせてもらっても良い?」
ランキングを取る、という問いかけに、も恭弥も怪訝な顔をする。
えーとどうぞ、と言うと、フゥ太はありがとう!と言って立ち上がった。
「いくよ」
フゥ太が一言言って顔を上げた途端、ふわりと物が浮き始める。
も恭弥も、目を丸くして周りを見た。
軽いものからふわふわと上がっている。
フゥ太は一人でなにやらつぶやいている。
「すごいね恭弥兄。並中内のランキングのほとんどが一位だ」
「へぇ」
「瞬発力一位。同じく反射神経、パンチ力、キック力も一位だ」
「ワオ」
つらつら並べられていくランキングに、またも驚きの声が上がる。上げたのは恭弥だが。
フゥ太はまだ続けている。
「トンファーさばきも一位だ」
「使ってる奴コイツ以外見たことねーけど」
「夢失くすようなこと言うの止めようよ」
姉と仲良しランキングも一位。姉の家に居座ってるランキングも姉に集ってるランキングも一位だよ」
「・・・。どんなランキングだよ」
最初はへぇ、と声を上げただが、後者二つを聞いてやはり呆れてしまう。
ふぅんと声を上げた恭弥は、浮いている紅茶を手にとって器用に飲んだ。
姉の信頼度ランキングも一位だね。いーなぁ〜」
「へぇ」
「・・・」
にやりと笑って見られて、はぷいとそっぽを向く。
他には?と恭弥が問いかけるとフゥ太はうぅーんと唸った。
姉のアッシーランキングも他人を寄せ付けず堂々の第一位!」
「・・・」
聞いて恭弥は黙り込む。
ついでに噴出したをじと目で見る。
あーはいはいそーですね、とはひらひら手を振り、フゥ太がまた口を開いた。
「あと恐れられてる人ランキング第一位。下僕の数ランキングも一位。他人をパシリに使うランキングも一位だ」
「ホントわかりやすいよなこいつ」
「うるさい」
「順応力ランキング二位。天然ランキングは四位だよ(姉は5位だけど)」
「あー・・・」
「なんで納得してるんだよ」
微妙な数字だが思わず納得してしまう。睨まれた。
その順位の上が誰だか予想つく、とが言うと、フゥ太が一位から京子姉、笹川了平、武兄だね、と予想通りの返事をくれた。
やっぱり、とはしらけ顔する。
「じゃあ次は姉」
の番が来て、は片腕を背もたれに乗せながらフゥ太に体を向ける。
恭弥と同じく紅茶を取って飲んだ。
「並盛町内での寝坊ランキング一位」
「ブッ!!」
「大正解だ」
思い切り噴いてしまった。恭弥はにやりと笑っている。
フゥ太はそのまま続けた。
「マフィア内では8万2千203人中5位。物凄いお寝坊さんだね」
「まぁ・・・・・・笑ってンな」
「ダッシュ力は並中一位。マフィアでも一位だ!すごい!銃の腕前ランキング、8万2千203人中54位。扱ってる日数が少ないのに凄い才能だよ」
どうしようもないんだか重要なんだかよく分からないランキングだが、読み上げられるたびにへぇ、と声を上げる。
あとはー、とフゥ太が声を上げた。
「お金遣いの荒さランキング並盛内1位。マフィア内では50位」
「ぶっは!・・・それっぽい」
「鈍感ランキングは並盛もマフィアも両方一位!うわぁ酷すぎだ!あとはー・・・うぅーん・・・」
それまで普通に(?)ランキングを並べていたフゥ太が、急に唸りだす。
顔をしかめるフゥ太を見て、どうかしたか?と問いかけた。
姉・・・一度も真面目に戦ってくれないから、ちゃんとしたランキングが出ないんだ」
「・・・」
「銃の腕前ランキングは兎も角、ダッシュ力ランキング以外は圏外扱いだね。やる気出してやれば大体のものは上位を狙えると思うよ。ありえないんだもの」
フゥ太の言葉を聞いて、は思わず顔を逸らす。
恭弥がやはりじと目で見てきたために。
「人外の力を秘めてるランキング一位。短期間で能力が上がったランキング一位。求められてる人ランキングも一位。異空間を越えた影響でランキングは飛びぬけるみたい。それにみんな異界の民が欲しいようだよ」
異界の民と聞いて、は表情を曇らせる。
フゥ太はそこまで読んで元に戻った。
それとともに、浮かんでいたものがどさどさ落ちてくる。
さりげなくフゥ太の紅茶をキャッチしておいた。
「さて、メモしなきゃ」
「一々書いてんのか?」
「うん。書いておかなきゃ忘れちゃうんだ」
テーブルに紅茶を置きながら問いかけると、フゥ太は大きな本にランキングを書きながら答える。
へぇ、と相槌を打って、は本を覗きこんだ。恭弥も見ている。
「恭弥くん、お菓子あるかい?」
「・・・・・・草壁?アレ、買ってきて」
問いかければ恭弥は電話をかけ始める。
いっぱいランキングできたな、と嬉しそうに本に文字を書いているフゥ太を見ていると、暫くして息せき切ったリーゼントが入って来た。草壁がよこしたらしい。
お菓子屋のエンブレムが入った白い箱を置くと、ぺこりと頭を下げて出て行く。
フゥ太が本に夢中になっている間に、はひょいと箱を覗き込んだ。
「書けた!」
「よし。じゃお菓子食べるか、フゥ太」
「お菓子!?」
が問いかけると、フゥ太がぱっと顔を輝かせる。
何食べたい?と箱の中身を見せると、うわぁ、と嬉しそうに声を上げてから、これ!と指差した。
はいよーと返事を返しつつ、はお菓子を取り出す。
恭弥にも渡してから、フォークを取りにいった。
「ありがとう!」
「どーいたしまして。恭弥兄が用意してくれたんだぞ」
「恭弥兄ありがとう!」
「どういたしまして」
わしゃわしゃ頭を撫でてからお菓子の出所を教えてあげれば、フゥ太は素直にお礼を言う。
かわいーとほわほわ笑って頭を撫でていると、いい加減にしなさい、と恭弥に叱られた。
ははいと頷いて体を前に向ける。
やはりお菓子もかわいーと言いながら食べていると、フゥ太がくすりと笑った。
「本当に姉って可愛いもの好きだね」
「大好きだ!だからフゥ太も好き!」
「・・・はぁ」
テンション高く腕を上げて言うと、恭弥がしらけた顔でため息をつく。
フゥ太は恭弥を見ると、にっと笑った。
「大丈夫だよ恭弥兄!恭弥兄は姉の好きな可愛いものランキングで二位だから!」
「・・・。好きな可愛いもの?
フゥ太の言葉を聞いて、恭弥が怪訝な顔でおうむ返しする。
はきょとんと二人を見た。恭弥を見て頷く。
「うん!ちなみに一位は黒猫のキョーヤ!僕はさっきあったばかりなのに3位だった!」
「・・・黒猫のジジ」
「キョーヤ」
諦め悪くジジという恭弥に、がスパッと切り返す。睨まれた。無視した。
だから安心しておきなよ、と言うと、フゥ太はにこにこ笑いながらお菓子をぱくりと食べた。
「ちなみに恭弥兄の強敵は跳ね馬ディーノだね。次に武兄」
「君、もしかして――」
「ランキングしたもの!お菓子を貰ったからそのお礼!あ、リボーンがそのすぐ下にいるけど、侮らない方がいいよ。なんていったって一流ヒットマンだから!」
驚いているらしい恭弥。
そして何か知っているらしいフゥ太。
は二人を怪訝な顔で見る。
暫くじっと見つめあったかと思うと、恭弥がふぅんと言ってお菓子に顔を戻した。
「君のランキング、本当に外れないんだろうね?」
「うん!外れな――あ!」
恭弥の言葉に元気よく頷いたフゥ太は、ぱっと目を開ける。
と恭弥はまたフゥ太に注目した。
「あのね、僕いままで一度もはずしたことなかったんだ!でも・・・ツナ兄がね、僕のランキング外したの!」
「ツナが?」
「そう!凄いよツナ兄!すべてにおいて最下位だったのに、それを全部覆したんだから!」
一度も外したことなかったのに、とフゥ太はうきうきしながら話している。
え、それ外しちゃまずいんじゃ・・・とがつぶやくが、恭弥がまぁ嬉しいならいいんじゃない、と適当に流した。
はぱくりとお菓子を口に入れてから、まさか・・・と声を上げる。
「お前ツナんとこで世話になってるとか?」
「よくわかったね。僕今ツナ兄の家にいさせてもらってるんだ」
フゥ太の言葉を聞いて、はやっぱり、としらけた顔をしながらずるずるソファに座る。
あの子もよく子供に好かれるね、と恭弥がお茶を飲みつつ言い、は座りなおすとそーだなーとため息をついた。
「また家に愚痴り来るかも。ビアンキは大丈夫か?」
「うん?今のところ大丈夫だよ」
「・・・。アレか」
の問いかけに、フゥ太はフォークを咥えながら頷く。
へらりと笑ってフゥ太の頭を撫でていると、ツナの愚痴を思い出したらしい恭弥が遠い目をした。聞く限り酷い。
お菓子を食べ終えると、フゥ太はごちそうさまでした、ときちんと手を合わせた。
は偉い偉いと頭を撫でる。
にこーっと笑われて、やはり抱きついた。
恭弥には呆れられたがフゥ太は抱きつき返してくる。
「いーなーもうフゥ太超可愛い!!」
「危ない道には入らないでね」
「入らねーよ!多分」
「不安だね恭弥兄」
「本当に」
何気に二人が意気投合。
そんなこと言うともうお菓子上げないぞ集らせないぞ、というと、フゥ太がすぐに謝ってきた。
恭弥はむっとしながらを見てくる。(これまた可愛いんだよなとは内心思っている)
「あ!授業終る時間だ」
「あー、ホントだ」
「ツナ兄のところに行かなきゃ。またね姉!恭弥兄!」
ひょいと立ち上がると、フゥ太は焦りながら本をコートに入れ、ぱたぱた走り出す。
おーまた来い、とが声をかけると、珍しく、恭弥も声をかけた。
「またここに来ていいよ」
「・・・またお菓子くれる?」
小動物のような顔で、フゥ太が扉からちょこんと顔を出す。
は撃沈だ。ソファーにつっぷした。
「欲しければ用意しよう」
「やったぁ!恭弥兄は並中の責任感高い人ランキング一位だから、安心だね!またねー!」
嬉しそうに叫ぶと、ばたばた走っていく。
ちゃっかりしてるなぁと声をあげると、さすがあの子関連の子供だ、と恭弥がしらけ面で返してきた。
確かにとは笑ってしまう。
はぁ〜と息をついてソファに寝転がると、はぁ、とため息が聞こえてきた。
「満足そうだね」
「とっても満足だ」
えへ、と笑ったところ、気持ち悪いとの言葉が飛んでくる。
うるせーと言い返してから、はくすくす笑った。
「ツンデレランキング一位だって。なんだそら」
「物凄くツンデレじゃないか。初めてあった時蹴り上げられたし」
「トンファーで殴りかかっといてよく言うぜ。恐喝ランキング一位」
「煩いよ寝坊ランキング一位」
言い合ってから、はまた笑ってしまう。
フゥ太またこないかなーと声をあげると、下手したらまた明日来るんじゃない、と恭弥がため息混じりに言ってきた。


















優しい人ランキング上位のあの人はやっぱり優しかった。(あとの細かなランキングは秘密ー。ちなみにデートに誘うなら、今は海に行きたいみたい)