授業参観の日。
周りの生徒達と同じくツナはそわそわしていた。
母が来ないかと(来るなと)ちらちら後ろを見ていると、母はスーツを着てひらひら手を振りながら入ってくる。
はぁー、とため息をつくと、教師が「数学の得意でない生徒からあてていこうかな」と嬉しくない発言をし始めた。
えっと思わず声を上げてしまったが、当てられたのは山本。
ほっと息をついていると、山本が顔をしかめながらも適当に答える。しかも正解。
盛り上がるクラスの中で立ち上がってアピールする山本。
お調子者だがそれでまた人気を上げている。
すげーとツナが感心していると、山本が隣の席をじっと見た。
隣の席は――。
新学期を向かえて席替えをしたのにも関わらず、はまた山本の席の隣だった。ただいま昼寝中。
クラスの中で唯一の学ラン。
真っ黒な学ランの上に、細い黒髪が呼吸に合わせて小さく動いている。
山本の視線に気付いて、みんながを見る。
も山本と一緒にクラスを盛り上げる一人だ。
全校の認識も、他の風紀とは違うと認識されたようだ。
不良たちとも仲良くやっているらしい。(やはり恐れられているが)
くすくす笑いながらみんながを見ると、教師もため息をついた。
「山本、起こしてやれ」
「オイッス!」
「オメーはいかりや長助か・・・」
「って起きてんのかよ!」
山本が敬礼しつつ声をあげると、が心底眠そうな声でつっこむ。
大げさに山本がつっこむと、はふあ〜ぁとどこかの誰かのように欠伸しながら体を上げて両手を伸ばした。
そのを見て、親たちが少しだけざわめく。
不良か風紀かというものもあるが――大体容姿について。
「(やっぱ顔いいっつーか・・・ハルもかっこいーっつってるもんなぁ)」
さりげなく思ってみる。今のは、気の抜けた美少年だ。(また欠伸してる)
半年切らないままでいた髪は中々に伸びていて、冬休みの終わり頃獄寺に切ってもらっていた。ショートにしては長い。首を囲むようにストレートの髪が落ちている。(家でたまに縛ってる)
「こんだけうるさきゃ起きるっつーの・・・お前騒ぎすぎ」
「てーか起きてろよー。授業中だぜ?」
「どっちもどっちだ。、次答えろ」
ぐっと手を伸ばして首の骨を鳴らして、山本に言い返していたに教師が声をかける。
えー?とは顔をしかめて目を瞑り、今何処?と山本のノートを覗き込んだ。
山本はケラケラ笑いながらだめじゃん、と頭を小突いている。
いて、と言ってから、はトントンとノートをつついて椅子に座りなおした。
「6」
「・・・チッ」
「舌打ち聞こえましたよーせんせ」
「気のせいだ」
「え、今聞こえたよな?」
「ほら、もう歳だからさ。あえて指摘しないでやろーぜタケ」
「そーだなー」
「お前らおもいっきり聞こえてるぞ!」
ゆったり座りながら顔を合わせて話す二人に、教師がびしっと指差してつっこむ。
クラスメイトたちがどっと笑い、山本と一緒にも笑った。
ツナも笑っていたのだが――獄寺の後に、問題をかけられてしまう。
勘で9と言った途端、後ろから飛んでくる下駄。
なんだよと振り向けば気持ち悪い格好のリボーン。
は気付いたらしい。見れば呆れ顔で見ている。
今回はストライクゾーンじゃないなと思っていやいやいやとツナは首を振る。
教師に声をかけられておろおろしていると、はーい!という元気な声。
「100兆万です」
「ランボ!!」
「ガハハハハ!!久しぶりだもんね!」
「よぉ、ランボ」
ツナは驚くが、は呑気にひらひら手を振る。呆れたようなやれやれという笑みで。
ざわめく母親たちに笑い出す生徒たち。そしてとめようとしているイーピン。
教師が声をかけると、ランボは手を上げて九九も出来ると言い出した。
しかしまったく訳が分からず。(キキンがキってなんだよと一人つっこんだ)
しかもあの髪の毛で黒板を消し始める。
しんとクラスが静まり返るなか、がため息をついた。
「ランボ」
「!見てた見てた!?」
「学校は遊ぶところじゃねーんだぞ。前にも言っただろ」
が叱るように声をかけると、ランボはぴょこぴょこの元まで行く。
机に乗るランボ。はため息をつきながらオデコを突いた。
イーピンはハッとして教室の出入り口までいく。
「、お前の知り合いか?」
「まぁ、知り合いかな」
「すいません、うちの子たちなんです。ごめんねくん」
「母さん!!(無視してたのに!!)」
教師が顔をしかめながらに声をかけるのと同時に、母が出てきてランボを抱き上げる。
ツナは思わず叫んでしまった。
ちらりとこちらを見てきたが苦笑いする。
いーえ、とが答えているうちに移動しようと母が歩き出すが、ランボは暴れて抵抗。
「ランボさんと遊んでく!」
「だーめーだ。今度な」
「じゃあ京子と遊んでくーー!」
ひらひら手を振ってあしらう。次にランボが目をつけたのは京子。
なんで連れてきたんだとツナが母に問いかけ、無責任な返事が返ってきたところで――私よ、との声が掛かった。
「隼人の授業参観についていきたいっていうから」
「ビアンキ!!」
「連れてきたんなら、最後まで責任もって面倒見ろよ。迷惑かかってるだろ」
「あら、そうなの?ごめんなさいね」
驚くツナを無視して、ビアンキはと会話する。
全然反省してなさそうなビアンキには目を細めた。
そして倒れる獄寺。わっと教室が騒がしくなる。
「獄寺くん大丈夫?」
「隼人、私がついてるからしっかりしなさい」
「ふわっ」
わざととしか思えない行動。
トドメを刺された獄寺は完全に沈没。
だめだこれ、と思っている間に教師は自習と言って教室を出て行った。
また沢田かとヒソヒソ話し声が聞こえる。
早く帰りたい、と堪えていたところで――さらに問題が起きた。
「俺が代打教師のリボ山だ」
「(あいつなにやってんのーーー!?)」
「!!」
「(そこヒットすんのかよ!!)」
がーんとショックを受けている間に、が頭を抱えてガツッと机に突っ伏す。
山本がの様子を見て――リボーンを見て、こらえろ、とさりげなく背中を叩く。は小さく頷いた。
しかも親御さん達はあっさり受け入れる。
おいおいとさらに内心つっこんでいると、リボーンは黒板にありえなく長い問題を書き始めた。
やはり教室中ざわめく。
「ちなみにこの問題を解いたやつは、いいマフィアの就職口を紹介するぞ」
リボーンの言葉で、教室が固まる。唯一がしらけた顔でため息をついた。
またざわめくクラスの中で、一人声を上げる勇敢な男子。
チョークで潰された。ついでに母親まで潰された。
恐怖で教室が支配される。やはり唯一ため息をつくのは、。慣れだろう。
「はいはーい!うんこ!」
「ぺけ」
急に入って来たランボがアホ発言。
それだけでも十分なサプライズだというのにさらにリボーンは爆弾を投げる。
全員が固まっていると、今度は獄寺がよろよろしながら戻ってきた。
「答えは√5だ!!」
「お前はすでにマフィアだろ」
また爆発。
ツナは慌てて二人の元へいき、いい加減にしろと叫ぶ。が、逆にみんなからどうにかしろとプレッシャーをかけられる。
おろおろしていると、元凶が銃を構えて一言。
「じゃ、どーにかしてやれ」
「え」
撃たれて復活。
「テメーらこれしきも分かんねーのか!!ぶっとばすぞ!!」
「えっ!」
「開き直った!?」
結局状況は変わらず。
クラスメイト達はざわめきながらおろおろしている。
ツナは中で一人、しらけた顔で椅子を斜めにしているに目をつけた。
「!答えろ!!」
「√5」
「さっきの獄寺くんと同じ答えだろうがァア!!」
「だからあってんだろ。大体答えても巻き込まれるし。――リボーン、いい加減にしねーと怒るぞ」
目を細めてがリボーンを見る。
ふいに死ぬ気弾の効力が切れて、ツナはハッとした。
うわぁ!と声を上げてしゃがみこむが、みんな怪訝な顔で見てくるだけだ。(見慣れてしまったクラスメイトたちにちょっと泣きそうになる)
はため息をつくとツナの元まで来て、ばさりと学ランの上着をかけた。
「あ、ありがと・・・」
「いーえ、ボス。――リボーン、帰れ。お前の遊びに付き合わされてツナが偉い目にあってんだろうが」
「俺が帰れば教師がいねーぞ」
「ちゃんとした教師が自習っつってんだ。従え」
目を細めてリボーンと対峙する。
赤ん坊と学生(の格好)なのに、空気が尋常じゃない。
リボーンはじっとを見ると、にやっと笑った。
「の傍にいたいんだもんっ」
「・・・腹立つ・・・!!」
「(がんばれ!!)」
頬を膨らませてぶりっ子攻撃。はぐっと拳を握って唸る。
クラスメイト達はおろおろしながらを見守った。
ニヤッと笑ったリボーンが、カツカツ黒板に何かを書き始める。また長い問題。
「これが解けたら帰ってやるぞ」
「死ね」
「とけねーのか?」
「こんなもんとけるわけねーだろーが」
しらけた顔でが言った瞬間、リボーンが爆弾を投げる。
しかしは銃を取り出してガゥン!!と撃った。
導火線切断。教室の所々からヒッ!と声が上がる。
「・・・いい加減にしろ」
上がる低い声。本気で怒っている。
リボーンはチッと舌打ちすると、ひょいとの肩に飛び乗った。
「それじゃあお前が教えろ」
「「はあ?」」
リボーンの言葉に、ツナとの声が被る。クラスメイト達はまたざわめきだした。
顔をしかめたが、ふざけんじゃねぇぞと声を上げる。
「この時間が終るまで教師やったら、欲しがってた銃買ってやる。今なら豪華手入れ道具セットもつけるぞ」
「・・・。タケ、教科書かせ」
「やんの!?(また釣られてるし!!)」
じっとリボーンを睨んでいたが、山本に顔を向けて一言。思わずツナはつっこむ。
山本はぇえ!?と声をあげたが、教科書を手に前に来た。
「俺ただでさえ馬鹿なんだけど。教科書無しはなー」
「安心しろ、問題はちゃんと書く」
「いやそっちなの?!問題そっちなの!?」
「まーツナ、席戻っておけ。こいつつれて」
「チッ」
懸命に突っ込むがは聞かず。
わしっとリボーンを掴んで渡してきた。
ツナがリボーンを受け取ってぼけっとしている間に、はさっさと黒板を消す。
「・・・ところでページどこだ?」
「そこからかよ!!」
山本が笑いながらつっこみ。
つっこまれたは聞いてねーし、とさらりと答える。
後ろの親達は不満そうにひそひそ話し、生徒達はどっと笑いながら「大丈夫かよそれで!」と野次を飛ばした。
銃をしまったが、なんとかなるんじゃね、と適当な返事を返す。
「じゃ、例題1な」
しかも普通に始めてる。
えー・・・とぼやいたのはツナだけじゃない。
「中1ってこんな問題だっけなぁ・・・。8x−2=4x+4、と。これ習った?」
「習ってないよ」
「あそう。じゃあやるか。正の数、負の数くらいは全員理解してるよな?タケ、大丈夫か」
「だい・・・じょうぶだ!」
「ホントかよ」
教科書片手に問いかける。
山本がテンポ悪く返すと、怪訝な顔をしてからふっと笑った。
それを見て女子達は騒ぐ。
獄寺はいまだに床に潰れたままだ。さすがにな、と同情してしまう。
「じゃあタケ、この中でどう頑張っても計算できないものがある。どれだ」
「え?えーっと・・・x!」
「はい正解。まずはこのxを一つにすること。つーわけで、2xを左に移行する」
「、移行ってなんだ?」
「=の横に移動させることだ馬鹿」
矢印を書きながら、問いかけた山本につっこみ。
何人かがそっとから顔をそらした。ツナもその一人だ。
「案外覚えてないやつ多いみたいだな・・・ったく小学生の問題だろうが。これから沢山使うんだから、覚えとけよ」
気付いたらしく呆れ顔。ツナは笑っておいた。
「移行した場合、+と−が逆になることくらいは分かるよな?」
「そんくれーはさすがに分かる!」
山本がぐっと腕を上げて言うと、そうだそうだ!と声が上がる。
しかしは気にせず。
はいはいよかったねーと言いながら移行した式を書き始めた。
お前バカにしてね?という声に、してる、と返してまた振り向く。
片手は、書いた式にあてたまま。コンコンと叩く。
「移行した式はこの通り。8x-4x=4+2。ここまではいいか?」
「オッケーデスせんせー」
「はいどーも。じゃあ次。xのついている数字は、xのついている数字同士でしか計算できません」
「なんでー?」
赤いチョークで丸をつけるに、誰かが声をかける。
は顔をしかめてあー・・・とぼやいた。
「忘れんなよ!」
「俺は教師じゃないから後で先生に聞け。このxっていうのは数字が入ってるんだ。今は何が入ってるか分からないから代わりにxって記号を使ってるだけ。そのxがくっついてる数字を勝手に計算したら答えがごちゃごちゃになるだろ」
つっこまれつつも答えは返してくる。
物凄く確証なさそうだが。
「だからxのくっついてる式はx同士でしか計算しちゃだめだ。ま、xの数字考えてんだからそれくらい理解できるよな」
「できませーん」
「理解できないやつはそういうもんだと思っておけ」
の適当な言葉に、うわーと声が上がる。
ここまできたらあとは簡単だろ?と言うと、はぴしっと男子生徒を指差した。
「左側はなにxになる?」
「え。えーと、2x」
「そう。じゃあ右側は?」
「あー、6」
答えさせてそう、と言いながら、はまた下に式を書いていく。
あとはー、と言ってまた振り向いた。
「xについてる余計な数字を失くすだけだ。やり方はさすがに分かるよな?」
「隣の数字と割る!」
「おし、じゃあ答えは」
「3!」
調子よく声を上げた生徒を指差して答えまで言わせる。
正解、と言うと笑みを浮かべた。やはり女子は騒ぐ。
じゃあ問1をといて、というと、は問1の問題も黒板に書いた。
山本に「これ解け」と声をかけている。
はぁー、とため息をついて、ツナはノートに問題を書き始めた。
「、!俺っちわかったもんね!」
「へー?じゃあ答えは?」
「10億!」
「5歳でその数字知ってるのは驚きだけどな、遊ぶなランボ」
どうやら回復したらしいランボが足元にくっつき、がしゃがみこむ。頭をぽんぽん叩きつつ。
ランボさんと遊ぼ!と言い出すランボに、はため息をついた。
「学校は遊ぶところじゃないって言ってるだろ?しかも今は授業中だ」
「むー」
「あんまり邪魔するようだと恭弥呼ぶぞ」
『え゛』
の言葉に思わず顔を上げるツナ筆頭のクラスメイト。
ランボはえ〜と声を上げている。
なんであれですむんだよとツナは内心つっこみだ。
「邪魔しないから構って!」
「ったく・・・じゃあランボにも問題」
ため息をついたは、笑みを浮かべてランボの頭に手を置く。
かと思えば、ごそごそポケットに手を入れた。
「飴玉が二つあります」
「!」
「一つランボが食べました」
「やったー!」
「じゃ、残りは幾つ?」
何故だか出てくる飴玉。そして一つランボに上げている。
飴玉を食べたランボは、もごもご口を動かしながら一個!と答えた。
は正解、と言って頭を撫でる。・・・優しい笑みを見て女子が小声で騒いでいた。
「じゃあランボ、二つ引く一つは幾つ?」
「えーと・・・えっと、一つ!」
「よし。じゃあ黒板に書くぞ。2引く1は?」
「1!」
「-に変えるぞ。2−1は?」
「1!」
「正解。じゃあ1−1は?」
「ゼロー!」
飴玉を見せて問いかければ、ランボが元気よく答える。
よし、と言ってはランボの頭を撫でた。いつの間にやら抱き上げている。
「〜。もう解けたぞ」
「え、タケが?」
「なんだよそれ!」
驚くに、山本が顔を引きつらせながらつっこむ。
周りと一緒に笑ったは、それじゃあ全員解けてるな、とまた失礼発言。
ひどくね!?と言う山本にまた笑った。
「じゃあ間違える自信のあるやつ手上げろ」
「どんな当て方だよ!」
「ほーぉ。全員間違ってない自信があると。無いヤツ上げとけ。当てられて間違えた後の凹み具合が変わるぞ」
にやっと笑って言うに、また笑い声が上がる。
じゃあ俺上げとく、と山本はすぐに手を挙げ、釣られて他にも何人か上げた。ツナも上げる。
ぐるりと教室を見てから、は山本をじっと見た。
「じゃあツナ」
「はあ?!」
「俺じゃねーの!?めっちゃドキドキしたんだけど!」
「なに、ほんのちょっとした冒険を提供しただけだ」
「いらねーー!!」
思い切りつっこんだところどっと上がる笑い声。
もケラケラ笑って、ほら答えろ、と手を振ってきた。
ランボは二個目の飴を食べている。・・・さりげなく膝に乗っているリボーンが舌打ちした。
「えーと・・・5」
「はい正解ー。みんな、ツナが解いたぞ。拍手」
「やったなツナ!」
「なにその扱い!!」
笑みを浮かべながらが言うと、すぐに山本が拍手しながら声をかけてくる。
つっこんだが、笑われながら拍手された。
いつもダメだろ!だのなんだのいらない野次を飛ばされつつ。
これについての説明は要らないだろ?とがいうと、そりゃいらないだろ、との返事が所々から飛んだ。
ツナが正解したんだしとの声を聞いて余計なお世話だと内心つっこんだツナだ。
「じゃあ次問2な――ほいこれ」
「あ、俺はあてねーでくれ」
「じゃあタケな」
「無しだって!間違える自信大有りだから!」
「昔の人がこんな言葉を残しているよ。少年よ大志を抱け」
「野球で一杯一杯だ!」
「でけーこころざしだったらたまには数学にも使え」
ボケてつっこんで笑いを取って。
なんだかんだ言って先ほどの恐怖授業がすっかり消えている。
問2は見事山本が解き、次のところもさくさく続けて問いを解いているところで――授業が終った。
それじゃあ今日は色々ありましたがお疲れ様でした、とが頭を下げる。
山本の親父さんが「いいぞちゃん!」と声をかけ、が苦笑いした。
「また食いにきな!今日はとことん奢ってやるぜ!」
「そんなこと言うと、どこかの馬鹿の子がついてきて容赦なく食いますよ」
「いーっていーって!またあの子と来いよ!」
あの子=ヒバリだろう。ツナは顔を引きつらせる。
はやはり苦笑いすると、んじゃー行かせて貰います、と手を上げた。
ツナは(さりげなく着替えていたので)に制服を返しに行く。
「ごめんな。助かった」
「違うだろ」
「ありがとーございました」
「どーいたしまして」
茶化すように言い合って、ツナはと笑う。
ランボはあそぼー、との服をひっぱったが、リボーンに気付くと目をかえた。
「死ね!リボー」
「騒ぐなランボ」
「ごくろうだったな。明日には届けとくぜ」
「おっし」
さり気にガッツポーズ。ランボを教卓に置くと学ランを羽織る。
教科書やノートを置いた生徒たちが席を立ったり部活だ帰りだとおしゃべりを始めたりしはじめ、山本がこちらにこようとした――が、その前に、がらりと扉が開いた。
「」
「あー!」
扉の前に立っていたのはヒバリ。一瞬にして教室が静まり返る。
ランボはヒバリを指差して叫び、はため息をついて笑みを浮かべる。そのままヒバリの元へ。
「また来てたのか牛の子。人を指差さない」
「ぐぴ!」
「恭弥の言うとおり。んで、どーしたんだよ」
ランボの頭をぽんと叩くと、はそのまま顔をヒバリへ。
ヒバリは腕を組んでドアに寄りかかりながら、笑みを浮かべた。
「ちゃんと授業に参加してたかと思ってね」
「まあ、参加はしてた」
「が先生だもんね!にーひくいちはいち!」
「・・・は?先生?」
ランボの言葉を聞いて、ヒバリが怪訝な顔をする。
ため息をついたが簡単に説明した。
聞いたヒバリが呆れたようにため息をつく。
「で、これから委員会サボるつもりだったと」
「・・・」
「今日はゲームの発売日だっけ。ああ、アルバムも出るね」
「なんで把握してんだっつーの」
「言ってたし」
そそくさと顔を逸らす。しかし逃さないヒバリ。
つっこまれてさらりと返していた。
みんなひやひやしながら二人を見ている。
それじゃあ風紀の仕事しに行こうか、とヒバリが言うと、はチッと舌打ちした。
の腕の中から二人を見ていたランボが、口に指を咥える。
「指を咥えない」
「!!」
「ぷっ・・・!」
ランボにつっこむ(というより叱り付ける)ヒバリ。
が噴出して肩を震わせる。
ヒバリは目を細めてをじろりと見たが、はひたすらくくくと笑った。
「まぁた恭弥パパだよ」
『(恭弥パパ!?)』
「またそのネタ?・・・だったらいくよお母さん」
『(お母さん?!)』
ドン引きのツナたちも気にせず、はランボと共に教室を出て行く。
呆然としていれば外から聞こえてくる会話。
ていうか恭弥だけパパで俺が母さん呼ばわり?じゃあママって呼んであげようか。聞こえて聞くんじゃなかったと後悔。(きっと全員)
はぁ、と――ため息が被った。山本だ。
「あいつらホント仲良いっていうか・・・・・・出来てんのかな・・・・・・」
「だ、大丈夫だって!きっと遊びだから!ヒバリに気があってもは冗談だよ!」
最初笑顔だった山本が、ずーんと沈み始める。
ツナは慌てておろおろしながら山本を元気付け、周りの生徒達はなんだかげんなりしながらも山本を見た。
「パパとママだってよ・・・」
「(へこみ放題だよーーー!!)」
「え?いいんじゃない?ランボ君がいるからあわせたんでしょ?くんがママってなんだか似合ってるよねー」
ずーんと凹んでいる山本に、京子が声をかける。
呑気に「あ、お兄さんか」と本人お話中。
京子の言葉を聞いて、山本がきょとんと顔を上げた。
「そーなのかな」
「きっとそうだよ。くんお母さんみたいだったし。先輩も合わせてパパになってくれたんだって」
「(いや絶対そんな性格じゃないから京子ちゃん)」
「そっかー」
「(納得すんのかよ!!)」
ころりと表情を変える山本を見て、ツナはやはりつっこみ。むしろ怒りすらわいてくる。
その後二人はがママだったら・・・と語り始め、ツナと共に他のクラスメイトたちもため息をついた。
天然の京子以外、全員山本がに惚れていることを知っている。(親御さん達は後ろでおろおろしていた)
「子供好きだし、エプロンとかも似合うだろうなぁ。料理もできるんだよ」
「へー。そうなんだぁ。すごいねくん。立派なお嫁さんになれるよ!あ。お婿さんか」
「の子供、きっとかわいいだろうなぁ」
山本は勝手に想像して笑っている。
そして京子は微妙にずれつつも話している。
かみ合わない会話を聞いて、ツナはやはり脱力した。
他のクラスメイトたちがげんなりしながら静かにしていたことは、言うまでも無い。
リボーンは気付いたらいなくなっていた。
どうして君ってそう厄介な人たちばかりに好かれるんだろうね。(お陰でこっちは疲れるんだか助かるんだか)