応接室でパソコンから音楽を流しつつ、は授業をサボっていた。
仕事も終ったしー授業音楽だしーとごろごろソファに座っていると、扉が開く。
恭弥かと思い起き上がると、リボーンだった。
「あ?なんだよリボーン」
「今日学校が終ったらツナの家に来い。あわせたいヤツがいる」
「は?誰だよ」
怪訝な顔で問いかけるが、リボーンはにやっと笑うだけで答えない。
とにかく来いよ、というと、リボーンはそのまま去っていった。
なんなんだ一体と頭を掻いていると、今度は恭弥がやってくる。
「扉開けっ放しでなにしてるんだい?」
「リボーンが来てったんだよ。今しがた」
「呼ぼうよ僕を」
「無茶言うな」
扉をしめながら、恭弥が中に入ってくる。はすぐさまつっこみだ。
お茶が欲しいなサボり魔、と言われて、はへいへい分かりましたよと言いながら立ち上がった。
「今日の放課後、見回りあるから」
「えー用事あんだけど」
「どうせゲームかCDの発売日だろ」
「ちげーよ。ツナん家。リボーンが会わせたいやつがいるから来いって」
給湯室でお茶を入れつつ答えれば、ふーんと返事が返ってくる。
お茶をテーブルに置いてソファに座ると、恭弥がふあ〜ぁと欠伸した。
「それじゃあ、は僕とA地区ね」
「聞けっつーの」
あっさり流された。
放課後不良集団と共に見回りという名の狩りを終えて、ついでに途中マフィアっぽい集団に絡まれて潰して、は恭弥のバイクに乗っていた。
一応考えてはいたらしい。送ってもらっている。
ツナの家の前につくと、黒いスーツの集団がじろじろ二人を見てきた。
「ここってツナの家だよな」
「どうする?」
「まあ、なんとかなるだろ。サンキュ」
お礼を言って、ひょいと降りる。
じゃあ先に帰ってるよと言われて、おいコラと振り返った。が、恭弥はさっさといなくなる。
ため息をつくと、は一歩前に出た。
「待て」
「この家に用があるんですけど」
「部外者は通せないんだ」
「そうですか。じゃ」
「待て。帰んな」
いつの間にやら塀にリボーンが。
はチッと舌打ちした。
「見張ってて正解だな」
「テメーは無駄に用意周到だな」
「そんくれーじゃなきゃお前相手にしてらんねーだろ。行くぞ。ツナの部屋だ」
「リボーンさん、もしかしてその方は・・・」
やる気なさ満載でリボーンと話していると、スーツのお兄さんが入ってくる。
そうだぞ、とリボーンが言った途端、ざわめきだした。
「失礼しました。どうぞお通りください」
「あー・・・ども」
頭を下げられてちょっと引きつつ、は歩き出す。
肩にリボーンが乗ってきて睨んだが、とっとと行くぞで流された。
ため息をつきながら家に入る。
お邪魔しマースと言うと奈々さんにどうぞ〜と笑顔で声をかけられた。
ツナの部屋について扉を開く。
中には床に座ったツナと、黒服の男二人。
無駄に良い椅子に座った綺麗な青年がいた。
「お、リボーン。もしかしてそいつが・・・」
「ああ。だ」
「どーも。です」
驚いた顔をする青年に、部屋に入って軽く会釈する。
おぉ、と横に立っていた黒服が声を上げた。ツナはおろおろしている。
はツナと顔を合わせて肩をすくめてから、息をついて苦笑した。
視線を感じて顔を上げると、最初に声を上げた青年。
じーっと見られて、は怪訝な顔をした。
「なにか?」
「・・・あ、ああ、悪い。俺はキャバッローネファミリー10代目、ディーノだ。よろしくな、異世界の民」
「、です。よろしく」
こちらにやってきて手を出してくるディーノに、は名前をもう一度言いながらそっけなく握手する。
きょとんとを見たディーノは、くっと息をつくとあははと大笑いしだした。
「先に聞いてはいたが、ほんと良い女だな」
「はぁ、どーも。日本語上手ですね」
「あははは!あぁ、敬語はいらねーぞ。さん付けもいらねぇ。楽にしてくれや。話してみたいと思ってたんだ」
からから笑いながら、ディーノはの手を引いて奥に入っていく。
はぁそうッスか、と答えつつ、は連れられた場所に座った。
椅子ではなく隣に座ったディーノが、じっとを見てくる。
は眉根を寄せて見返した。
「目と鼻と口以外なんかついてるか?」
「ぶっ!・・・いやいや。ホントいいな。うん。、家のファミリーにはいらねぇか?」
「ダメだぞディーノ。はやらねー」
「ふぅん・・・リボーン。お前もか」
笑いながらディーノが言うが、すぐさまリボーンが切り返す。いまだ肩に乗ったまま。
目を細めたディーノが、リボーンを見てにやっと笑った。いまだ手を持たれたまま。
ひょいと床に下りたリボーンも、ディーノを見てにやっと笑い返す。
はダルさ全開にため息をついた。恭弥と帰っとけばよかったと思いつつ。
「こいつに最初に目をつけたのは俺だ。ついでに、はボンゴレだしな」
「最初に目をつけたのは山本もだよリボーン」
「そうか。釘指しとかなきゃな」
「?」
「お前は気にすんな」
首を傾げるが流される。
くくっと隣のディーノが笑い出して、はディーノに顔を向けた。
「こっちの生活はどうだ?困ったこととかないか?」
「いや、とくには。面倒なガキが何人もいるけど(恭弥筆頭に)ツナよりはマシかと」
「そりゃ・・・人数の違いじゃない(ヒバリさんは別格だよ)」
さりげなくツナと以心伝心。ツナはげんなりしている。
なぁんだそうかーと残念そうに言うディーノに、はやはり首をかしげた。
「あぁそうだクソチビ。変なのにまた絡まれた。こんなのつけてたけど」
「へぇ・・・カルミアファミリーか。中マフィアってところだな」
「で?」
「潰した」
絡んできた全員がつけていた服のワッペンを取り出すと(破り取ってきた)、ディーノがじろじろ見て笑みを浮かべる。
リボーンに一言で問い返されて、一言で返しておいた。
ニヤッと笑ったリボーンが、上出来だ、と言ってくる。
「報酬はミツコに渡しとく」
「おー」
「へぇ。腕っ節も確かってか」
「やらねーぞ」
何故だか会話が振り出しに。
学校はどうだの風紀はどうだの、ツナのつっこみを交えつつ世間話をしておひらきになった。
「今度飲もうぜ」
「いいな。全然飲み行ってねーから飲みたくて仕方なかったんだ」
「ははっ!じゃー適当に連絡いれるわ」
帰り際、玄関先で誘われる。
にやっと笑って返すと、ひらひら手を振られた。
もひらひら手を振り替えして帰路につく。
帰ったら恭弥がごろごろしていた。
次の日、昨日は恭弥にゲーム禁止令を出されてちゃんと朝起きれたは、欠伸をしつつのろのろ歩いていた。
ら、ツナたちと会った。
「うっわめずらし!今日は槍がふるぞ」
「ふったらお前を魔法使いに任命してやるよ」
「あはははは!はよッス!」
「ふぁぉおータケ」
隼人の失礼な言葉に冗談を返すと、爆笑しながら武が挨拶してくる。
欠伸しながら挨拶し返すと、なんだよそれ、とまた笑われた。
どうやらディーノの話で盛り上がっていたらしい。
「ディーノさん、経営者としてもすごいんだってさ」
「へー。やるねぇ可愛い顔して」
「・・・可愛い?」
ぼーっとしながら返事を返したところ、ツナに怪訝な顔をされる。
可愛い顔だった、と言いきっていると、急に走ってくるモンスターカー。(クラッチ壊れないんだろうかと思ったり)
何故だかツナに投げ縄が投げられてぐるぐる巻きついた。
チッと舌打ちしては銃を取り出す。
縄を撃って斬るとツナがほっと息をついた。
のもつかの間で。
「ウソーーー!!」
「えー・・・」
「おまっ、なにやってんだよ!!」
走り出した車がまた縄を投げて攫っていった。銃を構えながらぼやくと、隼人に怒鳴られる。
あれじゃツナ撃ち殺しちまうよ、とが肩を竦ませると、そりゃやべーな、と難しい顔の武が返してきた。
「ありゃ、ここら一帯を締めてるヤクザ、桃巨会の車だな」
急に現れて説明を始めたのはリボーンだ。
は怪訝な顔でリボーンを見たが、ため息をついて携帯を手に取った。
電話したさきは恭弥。
リボーンたちはなにやら話している。
「おい!行くぞ!」
「先に行ってろ。すぐ行く」
電話を切りつつ言えば、真剣な顔で言った所為か隼人たちは走っていく。
は猛ダッシュする二人を見送った。
「いいのか行かなくて」
「いいのか警察呼ばなくて。・・・つーか、なんで都合よくお前がここにいるんだ?」
「俺は神出鬼没だからな」
目を細めてリボーンを見るが、リボーンは顔も向けずに返してくるだけ。
さらに目を細めてリボーンを見てから、は顔を前に戻した。
リボーンとくだらないやり取りをしていると、ヴォンと音が鳴って恭弥が現れる。
物凄く不機嫌な顔だ。
「朝から急に来いってなに?」
「わりーね恭弥クン。高い夕飯奢るからアッシーよろしく」
「咬み殺すよ」
にらまれるが、はまあまあと言って後ろに乗る。今日は普通に。
「かっとばしてくんねーか。桃巨会っていうヤクザの本拠地」
「なにそれ」
「場所は分かるだろ?頼むから発進」
呆れたような顔で問いかけられて、は早口に説明する。
はぁ、とため息をつくと、振り落とされないでね、と言って恭弥は走り出した。
いつもとは全く違った乱暴な運転。だが、かなりスピードは速い。
桃巨会とでかでか窓に書いてあるビルの前で、バイクは止まった。
「どうする?」
「もういい。アッシーサンキュ」
ひょいと降りて、は階段を駆け上る。
部屋の前まで行けば――今にも乗り込む寸前の武と隼人。肩で息をしている。
「わりーな俺のほうが遅かったか」
「ホントだ畜生!」
「いいから行こうぜ!」
「はいよー」
隼人に怒鳴られ、武に声をかけられて適当に返事を返す。
バンと中にはいると、強面の男たちが一気にこちらに顔を向けた。
「あんだぁテメェら」
「10代目を返せ!」
「まぁまぁ隼人。それじゃあわかんねーから。多分」
「ぁあ?・・・てめぇ、並中の風紀か。風紀が何の用だ」
腕章で判断したらしい男が、ぎろりとを睨んでくる。その一言で周りの空気が変わった。
はふぅ、とため息をついて肩を落とす。
「どうやらお話しで解決、とはいかないみたいだな」
「上等だとっとときやがれ!!」
「なあ、沢田ツナってやつしらねぇか?」
いきり立つ隼人や周りの空気も気にせず、武が問いかける。
さすが、とは内心拍手を送った。
が、隼人の言葉を買った男達はもうやる気満々だ。
ぱきぱき手を鳴らして近づいてきた男たちを見て、は息をついた。
「質問に答えないと、全員潰しちまうぜ」
「上等だコラァ!!」
怒声を響かせて、男が殴りかかってくる。
はカウンターを入れてすっと立った。入れられた男は吹き飛ぶ。
「仕方ねー。潰すか」
一人倒せば、ラァア!!と声を上げて次々襲い掛かってくる。
ちらりと武を確認したが、心配要らないようだ。
気付けば全員ボロボロに。もちろん相手のほうだ。
あーあとぼやいていると、入り口があいた。入って来たのはツナとディーノだ。
「10代目ご無事で!」
「ツナ!」
隼人と武はぱっと顔を上げて駆け寄る。
はため息をついて、後から続いた。
「で?なんでアンタが一緒にいるんだ?」
「悪いな。リボーンの話しにのっちまった」
「やっぱあのガキか・・・」
声をかければ、にかっと笑いながら手を上げてディーノが謝ってくる。
がため息をつくと、ディーノがきょとんとした。
「わかってたのか?」
「ここのヤーさんフェラーリなんて乗ってない。主に黒で組のステッカー付けてる。だから多分嘘だろうなと」
「なるほどな。さすが風紀委員」
「もち。並盛のアレコレ知ってるぜ」
しらけ面しつつふざけて返して、隼人の煙草を取る。
あ、テメー!と怒鳴られたが――奥から、さらに柄の悪い男たちが出てきたため中断となった。
「なにしてくれてんだ?ガキどもが・・・」
ツナが真っ青になって頭を抱える。
隼人がすぐに臨戦態勢に入ったが、ディーノが肩を引いて前に出た。
はちらりと隣に並んだディーノを見る。
「俺はキャバッローネファミリー10代目ディーノだ。こうなったのは全て俺の責任だ。悪かったな。全員の治療費と備品の修理費は払う。それで手を打ってくれ」
自己紹介と謝罪を兼ねて、誠意を持って(きっと多分恐らく)接するディーノを見て、は笑みを浮かべる。
しかしはいそうですかとすまないのがヤクザ。
やはり交渉は決裂した。
ディーノが鞭を取り出す。
「じゃあ、力ずくで帰るしかねーよな。いくぜ!!」
ゴッと鞭をふったはいいが、何故だか攻撃は全て仲間内へ。
あ、と声を上げているうちに自分の方にまで来て、ぱしっと取ったは後ろにぽいと投げた。ディーノごと飛んでいく。
立っているのはツナとだけ。ツナが頭を抱える。
「しゃーねー。お前ら下がってろ」
「何かと思えば・・・並中の風紀委員か。しかもテメーはヒバリと繋がりあるっつー新顔だな?」
何故だか目を付けられてる。ついでに知られている。
はぁまぁそうだけど、と呑気に答えると、丁度いい、との返事が返ってきた。
「テメェとっつかまえてヒバリの前に出してやる!!行け!こいつらみんな口聞けなくしてやれ!!」
「恭弥のヤツなにやらかしたんだよ・・・」
呆れつつ前に出て潰す。
バリンと音が鳴ったかと思うと、ツナが死ぬ気モードになっていた。
ふっと笑って、はドンドン潰していく。
隼人も武も起き上がって、ツナの後ろをしっかり守っていた。
気付けばディーノも戦っている。
壊滅させてから、ふーと息をついた。
「やるなぁ。ここまでとは思ってもなかったぜ」
「まー。伊達に風紀してねーよ」
ニカッと笑ったディーノに声をかけられて、は笑みを浮かべる。
ツナはパンツ一丁でげんなりしており、は苦笑いして頭をくしゃくしゃ撫でた。
「ほら、帰るぞ」
「あ、。外で・・・ヒバリさんが待ってたよ」
「・・・っぷ。あいつもホント、可愛いヤツ」
噴出して笑うと、ツナが顔を歪めてえー・・・と声を上げる。
あははと笑って、はツナの頭をまたくしゃくしゃにした。
撤収ーと外に出れば、本当に待ってる恭弥。
は恭弥の元に行こうとして、お前はこないのか?とディーノに声をかけられた。一旦ツナの家に行くらしい。
「いや・・・俺は――ん?」
断ろうと手を上げたは、ディーノの肩にちょこんと出たとんがりを見てきょとんとする。
ディーノはん?と声をあげると、の視線の先を追ってあっと声を上げた。
「こらエンツィオ。お前いつの間に出てきてたんだ」
「エンツィオ?」
「リボーンに貰った亀だ。エンツィオ」
ディーノが声をかけると、ひょっこり亀が肩に現れる。
はぱあぁと顔を輝かせた。
「かぁわいい〜〜っ。肩のり亀っ」
「ん?持ってみるか」
「うんっ」
ディーノに問いかけられて、顔を輝かせたまま頷く。
ディーノはひょいと亀を手にとって渡してきた。
はうわぁと声をあげながら、亀を顔の前まであげる。エンツィオ〜と声をかけて頭を撫でた。
ディーノがを見てくすりと笑う。
「、もしかして可愛いもの好きなのか?」
「――はっ」
ディーノに声をかけられて、は我に返る。
顔を赤くしておろおろするを見て、ディーノはくすくす笑った。
「なんだよ、別に隠すことねーじゃねぇか」
「う、うるせーな。似合わないだろこんな性格で。他のやつには言うなよ」
「言わねー言わねー。あ、じゃあ。これから部下と買い物行くんだけど、よかったら一緒に――」
「今から風紀の仕事だよ。それじゃ」
むすっとするにくすくす笑いながらディーノが誘いをかけるが、いつの間にやら後ろにいた恭弥にぐいと引っ張られる。
は慌てて手を伸ばしてエンツィオをディーノに返した。
ぐいぐい引っ張られて、転びそうになりながらなんとか体を回す。
「なんだよ急に」
「いつまで待たせておくつもり?」
「はいはい。すいませんでした。・・・ありがとな」
横目に睨まれて、は流すように返事を返してからお礼を言う。
ぱっと手を離した恭弥は、さっさとバイクのエンジンをかけた。
バイクに跨る恭弥の後ろに、いつも通り後ろ向きに乗る。
「またその乗り方に戻るわけ?」
「楽しーんだよ」
首を回して問いかけられて、ぽすりと背中を乗せつつ答える。
こちらを見ているディーノに手を振っていると、グォンと急発進されて危うく落ちかけた。
「さっきの男は?」
「キャバッローネファミリー10代目、ディーノだとさ。ボンゴレとは同盟ファミリーらしい」
問いかけられて、は適当に返事を返す。
恭弥はふぅんと返事を返してきた。
「で、風紀の仕事って」
「・・・見回り」
問いかければ、若干バツが悪そうな声で返事が返ってくる。
首をかしげたは、ふぅんと言って後ろ向きのバイク乗りを楽しんだ。
本当に目が離せないんだから。(風紀委員長の前でナンパなんて良い度胸じゃないか)