「は?誕生日?」
応接室でサボっていたは、急に現れてお茶に参加し始めたリボーンに今日が誕生日だと聞いて間抜けな声を上げた。
リボーンはエスプレッソを赤ん坊ながら優雅に飲んでいる。
テーブルには、恭弥が準備した(正しく言うと不良たちにさせた)お菓子が置いてある。
「そうだぞ。今日学校が終ってから誕生日会をやる」
「へー。赤ん坊の誕生日ね。幾つになるんだい?」
お茶を飲みつつ、とリボーンの向かい側のソファに座っている恭弥が問いかける。
リボーンはこくりとエスプレッソを飲んだ。
「一歳だ」
「いっ・・・!?」
「へぇ。若いね」
幼いんだろ
変なところで天然な恭弥につっこむ。
リボーンは引いてるを無視してまぁなと答えた。
「奇数才の誕生日はボンゴリアン・バースディパーティをしなきゃならねーんだぞ」
「ボンゴリアン・バースディパーティ?」
「また長い名前だね」
怪訝な顔をするに続いて、恭弥がどうでもいいつっこみを入れる。
リボーンはお菓子を食べながらあぁと返事を返した。
「ルールは簡単だぞ。誕生日を迎える主役が参加者たちのプレゼントや出し物に点数をつけるんだ。一番高い点数をとった参加者は主役から豪華なプレゼントがもらえるんだぞ」
「へぇ。楽しそうだね。僕の誕生日も同じルールにしようかな」
「まず人があつまんねっつーの」
笑みを浮かべながら言う恭弥に、は呆れ顔してつっこむ。集まってきた人間を本人が咬み殺してそうだ。
むすっとする恭弥も気にせず、はそれで、とソファに背中をくっつけながらお菓子を取った。
「ボンゴレファミリーは全員強制参加か」
「まぁそんなところだ。ちゃんとプレゼント用意しろよ。最低点をとった参加者は殺されるルールだからな」
「ワオ。いいねそれ」
「よくねーよファミリー減らしてどうする」
無茶苦茶楽しそうに笑う恭弥にしらけ面でつっこんで、はため息をつく。
お菓子を食べながら、どうすっかなーとぼやいた。
「まぁ、なら高得点取れるだろ」
「なんだその嫌な期待。俺人にプレゼントするの苦手なんだけど」
「ヒバリに相談してもいい。何もなしできたら・・・俺の言うこと聞いてもらうか」
ニヤッと笑うリボーンを見て、は思い切り顔を歪める。
の顔を見ると、リボーンはエスプレッソを飲みながらフッと笑った。
「変な仕事押し付けるとかじゃねーぞ。簡単なことだから安心しろ」
「お前の言葉ほど信用ならねーもんはねー」
「・・・俺も信用低いな。まぁ、これは嘘じゃねぇ。楽しみにしてるからな」
しらけた顔でつっこめば、なんだか哀愁漂わせるリボーン。
怪訝な顔をしただが、リボーンはそれ以上何も言わずお菓子を食べた。
なにやら笑みを浮かべていた恭弥が、にやりと笑みを深くする。
「・・・いいなぁ」
「お前は一人妄想してにやけるな」
心底しらけた顔をして、がつっこむ。
恭弥は顔をしかめたが、すぐに笑みを浮かべてお菓子を手に取った。
「面白い祝い方じゃないか。今度からボンゴレ式にしようか」
「気に入らないプレゼントまたは出し物した参加者は咬み殺す。だろ」
「うん」
「却下」
一言で落とすと、恭弥はそれこそむっとしながらを見てくる。
しかし可愛らしいお菓子を手に持ってフォークを咥えているものだからなんともいえない。
うっと息詰まって(色々な意味で)いると、お昼を告げるチャイムがなった。



お昼から恭弥とサボってリボーンのプレゼントを買いに行ったは、ツナの家に向かっていた。
どうやらもう始まっているらしい。騒がしい声が上から聞こえてくる。
「ごめんくださーい」
「あらくん!みんなもう来てるわよ」
「ああやっぱり。お邪魔しますね」
出てきたツナママに愛想笑いして、は家に上がる。
二階の一番煩い部屋に入ると、狭い部屋に全員で詰まっていた。
何故だか隼人が潰れている。ビアンキを見て納得した。
「悪い。遅れた」
「いいぞ。開いてるところに座れ」
「お!も来たのか!寿司食うか?」
「おー。お前の家気前いいな」
リボーンと武に声をかけられつつ、は部屋に入る。
上座にリボーンが座っており、はランボを抱っこして武の隣に座った。
だ!だ!」
「随分遅かったのね。制服のままだし」
「やっぱりかっこいい・・・」
「ああ。プレゼント買いにいったら面倒な群れ見つけちまってな。そのまま風紀の活動開始」
ビアンキに声をかけられ、ハルにじっと見られる。
は苦笑いしながら手に持っていた袋を挙げ、そのまま答えた。
行く先行く先無駄に不良がいた所為で、随分時間を取ってしまった。
の言葉を聞いたツナは顔を引きつらせている。
わいわい騒ぎながら寿司やらお菓子やらを食べると、プレゼントを出すことになった。
「ハルはプレゼント作ってきました」
「へー。がんばるな」
買ってきただけのは、ハルの言葉を聞いて感心する。
いつも黒いスーツなので白いスーツを、といいながらごそごそ鞄を漁るハルに、武がおーっと声を上げた。
「女の子だねぇハルは」
「女の子ですよぉ!――じゃーん!ターゲット柄です!」
「狙われまくりじゃん!」
「はひ!そーいわれてみれば!」
ツナにつっこまれて、ハルが顔を青くする。
しかしリボーンは大喜び。
はつっこみ疲れているツナに同情の視線を送った。
「にしてもすげーな。作りしっかりしてる」
「そーだな。良いプレゼントだぞ」
「ありがとうございます!」
しかも点数は85点。
武は寿司で80点を取ったらしい。甘くないかとやはりツナがつっこんでいたがスルーされた。
次は私の番ね、とビアンキが立ち上がる。
「本場イタリアのピザ生地投げでリボーンの誕生日を祝うわ」
「ビアンキさんすてきー!!」
なんだか乙女な表情になりつつ、ピザ生地をもったビアンキが立ち上がる。
ぽいと投げてひゅんひゅん振り回す様を見て、は武とともにおーっと声をあげた。
「すげー。俺ナマで見たの初めて」
「俺も俺も。うまいもんだな」
ほのぼの武と眺め、他のみんなも感心した様子で見る。
が、何故だかピザ生地で切れるテレビ。電気。というか何でも切れる。
切れてる切れてるーー!とつっこみを入れつつツナは避難し、たちも皆慌てて離れた。
「実は新技だったの」
「なかなかよかったぞ。90点」
「(よかねーよ!!)」
「(・・・疲れるな、ここ)」
ツナが思い切りつっこみ。はげんなりする。
いつもこうだってだから、と電波を飛ばされて、そういやそうだったなとも電波を返しておいた。聞く限り酷い。
次はツナ、というところで、ランボが名乗り出る。
ノリを指で糸状にして割り箸に巻きつけたもの。子供の遊びそのまま。
もちろん最低点の2点を取った。本気でショックを受けているランボを見て、はあきれ返る。
「じゃあ、お前のプレゼントはなんだ」
「へいへい」
ため息をつきつつ、はそこらに転がってしまった袋を取り寄せる。
中から出したのは四角い箱。
綺麗に包んであるそれを、リボーンにほらよと渡した。
「あけていいか?」
「どーぞ。時間なかったから簡単なものだけどな」
確認を取ってから、リボーンが包装紙を解いて箱を開ける。
中から出てきたのは細かな装飾のしてあるコーヒーカップ。
「エスプレッソ好きなんだろ。だったらそういうのでもいいかなって(恭弥が)」
「そうか。今使ってるのも飽きてきてたしな。サンキュー。95点」
「無茶苦茶甘くね!?(明らかに恭弥がって含んでるし!!)」
「素直に現実受け止めとけ(ないよりマシだろ。しかもあれで十五万だ)」
ツナからつっこみ。しかしは流す。(値段を聞いたツナが素で青ざめていた)
とうとうツナの番になって――何も無いと聞いて、は呆れた。
銃を突きつけられたツナが真っ青になっていると、隼人が声を上げる。
「10代目、俺と組みましょう!!」
「あ、生き返った」
「アイツまだ顔青いぞ」
なんだか一杯一杯な隼人を見て、と武が呑気な声を上げる。
結局隼人とツナが組むことになって、隼人が一旦廊下に出て行った。
「あいつすげーの準備してたぜ」
「え、マジで?」
のんびり座りながら武が言ってくる。
が顔を向けて聞き返すと、おお、と返事が返ってきた。
戻ってきた隼人は大きな箱と剣を数本もっている。
何をするのかと思えば、手品だ。
「タネも仕掛けもないこの箱に、このように10代目を閉じ込めます」
「わー。本格的だなーーっ」
「そしてこのように良く切れる剣を突き刺します」
スパッと大根を切る隼人を見て、ハルやランボがそわそわしながら二人を眺める。
ただ武だけは苦笑いだ。
「じゃ、10代目、上手く避けてくださいね」
「え゛!!!(ホントにタネないの〜〜〜!!)」
「・・・うわぁ」
二人のやり取りは周りにバレバレだ。
は顔を引きつらせてしまう。
「俺は無理だっていって断ったんだけどなー」
「(それで朝喧嘩してたんだーーーっっ)」
「・・・そりゃ無理だよな」
焦っているツナにも気付かず、隼人はやはり無駄に盛り上がっている。
10代目なら大丈夫ですってといわれてツナがつっこみ、そりゃそうだとも呆れ顔した。さりげに銃を構えながら。
「ストップ!!中止!それじゃあどっちみち死んじゃうよーーー!!」
「そのとーりだ。じゃあ死ね」
「あ」
さらっと言って、リボーンがツナを撃つ。
みんながびっくりしてツナを見たが、ツナは復活して自ら剣を刺し始めた。
「うおぉぉぉお!!」
勢いよく刺していくのはいいが、みんなおろおろしてしまう。
全て剣を刺し終えると、箱が耐え切れずにびしっと音を立てて前だけ割れた。
「うおっ!」
「ひゃぁぁあああ!!」
「さすがッス!!」
「100点だぞ」
「・・・いや、つか、さ」
無理やり体を捻じ曲げて剣を避けているツナを見て、リボーンと隼人以外血の気を引かせる。
元に戻ったツナは、いでででででと悲鳴を上げ始めた。
しかも結局無理がたたって入院に。
次の日隼人はずーんと沈んでおり、武が苦笑いしながらそんな隼人を見ていた。




「うぅ・・・」
誕生日だというのに病院のベッドで寝たきり。
ツナは泣きそうになっていた。
時計を見れば授業中。
「(せめて学校に行ってればな・・・折角の誕生日に京子ちゃんに会えないなんて・・・)」
はあぁ、と大きなため息がでる。
沈み込みながら窓の外を見ていると、コンコンと扉をノックされた。
「どーぞー・・・」
「幸薄そうな顔してんなー」
「余計なお世話だよ」
入って来たのは。開口一番失礼なことを口走る。
ケラケラ笑うと、まぁそうふて腐れんなよ、と扉を閉めてこちらに来た。
ツナはむすっとする。
「ふて腐れんなって。ほら」
「え?」
がさがさ手に持っていた袋を漁ったかと思うと、ぽいと箱を投げられる。
なにこれ、とツナはを見た。
「誕生日プレゼント」
「え?」
「お前今日誕生日だろ?ま、こんなとこで迎えるってのもなんだけど、おめでと」
ぽかんとしているツナの頭にぽすんと手をのせて、はくすりと笑う。
ツナは放心してしまった。
はツナを見てさらにくすくす笑い出す。
「なに間抜け面してんだよ」
「え・・・だって・・・・・・忘れてるかと思ってた」
の家でゲームをしているときに、話題に上がったことがある。しかし随分前だ。
まだ呆然としながら答えると、はまぁぶっちゃけ昨日思い出した、とはっきり言った。
それはそれでぐさっとくるツナだ。昨日はそのネタでいろいろあった。
はくすくす笑いながら、また袋を漁った。
「それとこれ」
「なにこれ?お菓子?」
ぽいと投げられたのは、セロファンの袋に入ったクッキー。見た目からして手作りだ。
そう、と頷いたは、袋を畳んでサイドテーブルに置いた。
「今日調理自習で女子がクッキー焼いててな。サボる前に家庭科室通ったらくれて」
「・・・無駄にモテてるね」
「ん?あー勘違いすんなよ。それ、京子からお前に」
「え!?」
京子と名前が出て、ツナは思い切り驚いてしまう。
あーやっぱり驚いた、とケラケラ笑うに、どういうことだよ!?と熱くなりながら問いかけた。顔が熱い。
「ん。ツナが入院してるついでに今日誕生日だから、学校サボってお見舞い行くっつったら、じゃあこれ上げてって」
「京子ちゃん・・・!!」
じーんと嬉しさがこみ上げて、ツナは両手でクッキーを持ちながら泣きそうになる。
はくすくす笑うと、よかったなーと言いながらくしゃくしゃ頭を撫でてきた。
「それじゃ、俺は帰るから。多分もう少ししたら騒がしいの来るぞ」
「うわそれは遠慮したい・・・。、ありがとな。すっげー嬉しい(特に京子ちゃんの手作りクッキー!)」
素直に心の中で叫んで、には聞こえるんだったと気付く。開き直った。
はやはりくすくす笑って、そりゃよかったとまた頭を叩いていく。
お大事に、と言ってが病室を出て行った後、ツナは笑いながらぽすんと寝転がった。
「・・・へへへ」
クッキーをじっと眺めて、一人で笑ってしまう。
大事に取っておこう、とうきうきしながら戸棚にしまって――のプレゼントに気付いた。
なんだろうかと開けてみる。
「PSP!!しかもゲームつき!!」
ついでに“暇であろうボスに”との余計な手紙までついている。
やぁった!と喜んで、ツナは早速ゲームをした。
「・・・の誕生日なに送ろうかな」
ふと、ゲームをしている手を止めて考える。
お金は一杯持っているしやりたいことは好き勝手やっているしで、特に思いつかない。
「でもこれだけもらったし・・・・・・・・・みんなにも聞いてみよう」
そして驚かせて喜ばせてやればいい。
一人で想像して、ツナはくすりと笑った。


















つれない言葉の奥に、いつだって暖かさを持っている君に。(だからあの人もひっついてるのかなってちょっと思った)