なんだかんだいって、ようやく風紀の仕事が落ち着いてきた。
うおー俺はやってやったぜーとテーブルにごろごろ頭を乗せているを見て、恭弥が呆れ顔する。
「秋って変質者増えたっけ」
「俺の頭が春といいたいと」
「いいや。大変という言葉をひねって大きく変だと言いたいかな」
しみじみ窓の外を見て言い出す恭弥に、が目を向けて問いかける。すぐに返事が返ってきた。
ケッと吐き捨てて体を上げる。
「あー。肩こった。今日なに食おっかなー。頑張った自分にご褒美あげたいよ」
「それ二日前も言ってたよね」
「幻聴だ」
呆れ顔しつつ言ってくる恭弥に、はすぱっと返す。
はぁ、とため息をつくと、恭弥はソファの背もたれにふんぞり返るように座った。
「お寿司食べたい」
「・・・寿司ッスか」
「最近ずっと食べてなかったしね。ミツコさんの料理かラーメン屋かファミレスかファーストフードかの料理かコンビニか」
「つーかお前が集りきてるだけじゃねーかよ」
「気のせいだよ」
不毛な言い争いがぐだぐだ続く。
はぁ、とため息をついて、も同じように座った。
「・・・寿司食い行くか」
「よし。決定」
「ていうか今気付いたんだけど、なんでお前と食い行くのがもう定着してんだ?俺の金で」
「今更だよ」
大体一人で行っても寂しいだろ、と言われて、まぁ確かに・・・あれ、俺流されてない?と会話が続く。
まあ気にせずに、と背中を押されて、はなんだかなーといいつつ応接室を出た。
一旦マンションに帰ってから、は着替えて外に出る。恭弥はそのまま学ランだ。
どこいく?という話しになって、とりあえず街をぶらぶら歩くことになった。
「・・・飲み屋もいいな」
「僕入れないんだけど」
「嘘だろ」
「まぁね。でもお酒飲まないし。煙草くさいの嫌だし」
つらつら文句を言われて、はいはい分かりましたよーとは答える。
飲み屋の食べ物って美味しいんだけどな、と言ったが、他でも美味しいものは食べれる、とぴしゃりと言われてしまった。
のんびり歩いていくと、店の立ち並んだ通りに出る。
「あそこでいいんじゃない?」
「あー。雰囲気的に良さそうだな。入るか」
恭弥が指差した先を見て、も頷く。
がらりと扉を開いて中に入ると、らっしゃい!と元気な声が聞こえてきた。
「お客さん、何名様で!」
「二人。座席がいいんだけど」
「おう、まだ客いないしいいよ!好きなとこ入りな!」
渋い顔だが親しみやすい亭主が、ニカッと笑って言ってくる。
恭弥のお願いもすんなり通してくれた。
なんだか誰かの笑顔思い出すなぁとつぶやきつつ、は愛想笑いを浮かべてから恭弥の後に続く。
「どうする?」
「お任せ寿司でいいんじゃない?無難に。あ、大トロとウニも。カニの味噌汁も欲しいな」
「もう好きなだけ頼め。金ならたんまり持ってきた」
カードケースに入ったお品書きを眺めつつ、なんだかんだ言って恭弥は食べたいものをつらつら言っていく。
頬杖をつきながら呆れ顔したは、投げやりに言ってお品書きで顔を仰いだ。
「ご注文はお決まりで・・・ってあれ??・・・と、ヒバリ?」
「あれ?タケじゃん。どったのお前」
ひょっこり現れた武に、はきょとんとしてしまう。
武は顔一杯に驚いていた。
恭弥は興味なさそうに頬杖を突きつつ見るだけだ。
ここ俺の家、と言われて、えーマジで?とは驚きながら返事を返した。
「どーしたんだよ」
「見て分からないかい?寿司食べにきたんだよ」
「つーわけ。お前手伝いか。偉いなー」
「注文してもいい?」
なんだか不機嫌に、恭弥が話しの腰を折る。
はため息をつくと、はいはいと言った。武はちょっと顔をしかめている。
「お任せ寿司二つ。とー・・・大トロとウニだっけ?」
「カニの味噌汁。全部二人前」
「食いきれるか?」
「食べれなかったら持って帰ったら?」
投げやりに返されるがは気にせず。
そーっすっかと言って武によろしく、と手を上げる。
メモ帳にさらさら書いた武は、了解、と言ってカウンターの奥に戻っていった。
元気に注文を読み上げる声が聞こえる。
「まっさかタケの家だったとはなー」
「・・・はぁ」
座りなおしてへらへら笑うとは裏腹に、恭弥はつまらなそうにため息をつく。
どうしたんだ?とが首をかしげると、お腹すいた、との返事が返ってきた。
「失礼しまー・・・ぅぇえ!?とヒバリさん!?(マジで来てたのーー!!?)」
「今度は君?」
「は?なんでツナがいんだよ」
お茶を運んできたツナが思い切り引く。
恭弥は横目に見るだけ。は驚きながら見た。
いや・・・実は・・・とお茶を置きながらツナが事情説明。
聞いたはため息をついた。
恭弥はそっぽを向いて無視している。
「なぁるほどね。お前馬鹿だろ」
「ばっ・・・はっきり言いすぎだし・・・」
「あはは。悪い悪い。まぁ、バイトだって良い経験になるし、やっとけよ」
「まぁ・・・警察いくよりましだからやるけどさ・・・」
「暗い顔しない。またゲーム貸してやるから。頑張る頑張る」
ため息をつくツナにケラケラ笑って、はばしばし肩を叩く。
わかった、と元気なくいうと、ツナはとぼとぼ戻っていった。
「一体なんなんだここ」
「運が悪かったっていうか・・・まぁ、リボーンが目ぇつけるくらいなんだ。これで味は保証できたな」
不機嫌な恭弥とは裏腹に、は機嫌よく煙草に火をつける。
煙草くさい、と言われたが、はごめーんの一言で流した。
お客はどうやら、と恭弥の二人だけ。
まだ早い時間なのだからありだろう。
寿司を運んできたのは亭主で、どうやら武の父らしい。
あんたがちゃんか!と笑顔で声をかけてきた。
「いやーどうも、いつもお世話になってます」
「なーに聞けばこっちが世話になってるってーじゃねーの!今日はサービスしとくぜ!極上のネタだ!」
「おっ、ありがとーございます」
ニカッと笑ってくる亭主にも笑い返す。
恭弥はもう箸を持っていただきますと手を合わせていた。
「お二人さん今日はデートかい?」
「まっさかー。学校終ってからよく飯食い行くんスよ」
武父の言葉を聞いて、恭弥がぴたりと動きを止める。
はケラケラ笑いながら手を振った。
実は付き合ってんじゃねーのー?とケラケラ笑いながら言ってくる武父に、委員会同じだけですって、ともやはりケラケラ笑いながら返した。
「そうかい?なんか息あってるって感じだし、ぴったりじゃねーの」
「親父、あんまりちょっかいかけんなよ」
「あーはいはい。悪いね。これからもあの馬鹿頼むよ」
「あははは。こらこそ。タケー、よろしくー」
武に後ろから声をかけられて、親父さんが下がっていく。
ケラケラ笑いながらカウンターの奥に向かって声をかけると、おーよーと返事が返ってきた。
恭弥がはぁ、とため息をつく。
「落ち着いて食べられないんだけど」
「まあまあ、こっからは落ち着いて食おうじゃねーの。・・・他のが届くまで」
ちらほらと客も入ってきたので、恐らくちょっかいはかけられないだろう。
二人だし席を譲ろうかと(恭弥を無視して)声をかけると、気にするなとの返事が返ってきた。
「・・・まぁ、味はいいね」
「ほー。言葉に出すってことは、高得点」
いただきまーすと手を合わせて、もぱくりと食べる。
寿司美味しい・・・と浸っていると、馬鹿に見えるよとつっこみが入った。
これ食えない、といえば恭弥がひょいととっていく。
変わりに勝手に別のものを入れられた。
「・・・なんかホント息あってるね」
「ツナ、顔が死んでるぞ」
他の注文したものを運んできたツナが、なんだかげんなりしながら言ってくる。
恭弥はちらりとツナを見たが、無視して寿司を食べた。
はいどーもとは味噌汁やらトロやらを受け取る。
テーブルに置いたところで、くいと服を引っ張られた。
「ていうかここまでくるとホント同棲してんじゃないのかって思うんだけど」
「いやそこまでは・・・・・・多分?」
こそこそ問いかけられて、は首をかしげつつ答える。
なんか本当に怪しいよ雰囲気、と言われて、はぷっと吹き出した。
「付き合ってるとか思ってんのか?」
「え。まっさか(夫婦に見えるくらいかな)」
「(あれ悪化してね?)」
にやりと笑って問いかけると、真顔で返される。(つっこんだがスルーされた)
行儀悪いよ、と後ろから声をかけられて、はいはいと返事を返しておいた。
がんばれよーとひらひら手を振ると、ツナもひらひら手を振って戻っていく。
くすくす笑いながら、は元いた場所に戻った。
「食事中だっていうのに人引っ張って」
「まあまあ。バイト先に友達きたらはしゃぐもんだって。にしても、俺らそんなに付き合ってるように見えんのかな」
ぱくっと大トロを食べて、うめーとはまた浸る。
またぴたりと箸を止めた恭弥が、暫くしてからまた動き出した。
「・・・まぁ、男と女二人でいればそうも見えるんじゃない?」
「ああ俺女に見えるんだ」
「男と女以前の問題なんだ」
味噌汁を持ちながらきょとんとすると、顔を上げて恭弥がつっこんでくる。
ケラケラ笑ってから、はまた寿司を食べ始めた。
「うめー。いいなここまた来よう」
「来る時は言うこと」
「はいはい」
カニを食べながら言ってくる恭弥に、は適当に返す。
段々活気付いてくる店の中、のんびり夕食を取った。どうやら中々に人気らしい。
食べ終えて一服してから、そろそろ帰るかと立ち上がる。
お金忘れてないだろうねと言われて、ばっちりとベルトにくっついたポシェットを叩いた。
「ごちそうさまでしたー」
「おう!ありがとな!えーと会計は・・・」
「あぁ、ツナの借金今いくらですか?」
レジでが問いかけると、親父さんはへ?と声を上げる。
中にいたツナもへ?と声を上げた。
は適当に札束を取り出して枚数を数える。
「大事なボスだし、まぁ弟みたいなもんだし」
「え、ちょ、?」
「これくらいで」
「え!?ちょっとちゃん、こりゃ多すぎだよ」
何十枚か置くと、親父さんがびっくりしてしどろもどろ言ってくる。
はニカッと笑うと、いやいや受け取ってください、と返した。
「隼人もリボーンたちも迷惑かけたみたいだし。それと・・・予定していた日数分、ツナのこと雇ってくれませんか?」
「はあ!?」
にへらと笑いながらが言うと、ツナが向こう側で叫びだす。
にやりと笑って、は親父さんに顔を向けた。
「学生のうちだと中々社会に触れるってこと、できませんから。ここで少し経験させてやってください。これはその迷惑料も込みってことで」
「ちょ、!?」
「いいねぇその心意気。気に入った!」
にっと笑ってが言えば、親父さんもニカッと笑って言ってくる。
その代わり常連になってくれよ、と言われて、はケラケラ笑いながらそのつもりッス、と返しておいた。
「なにやってんのさ!?」
「まあやっとけって引きこもり。守られてない家の外に出るってのは大事なことだぞ」
「お、いいこというねぇ。やっときな、ツナくん!変わりに働いた分バイト代として給料出すよ」
「ぇえ!?」
小粋な親父さんと驚くツナ。
それじゃあ意味ないんだけどなぁとは苦笑いする。
まあ気にするなって!と返されて、もまーいっかで済ませた。
「んじゃーごちそうさまでした。ツナ、がんばれよ。タケもまたなー」
「おー。また来い」
「・・・ごちそうさま」
呆れ顔しながら、恭弥も声をかけて外に出て行く。
続けて外に出て、は体を伸ばした。
「ふあー」
「ホント馬鹿だよね。あそこまですることないだろうに」
「まあいーじゃねぇの。ゴマすって将来に役立てる」
「・・・はぁ」
やはり呆れられる。
さっさと帰るよテレビ始まる、と言われて、うわーちゃんと時間見てたんだ、といいつつは隣を歩いた。


















感情の落差はお年頃だろうか。みんな大変だな。(え?呑気すぎ?だから長所だって言ってるだろ)