休日。
は朝から腹に来る重みで嫌な目覚め方をした。
「・・・んだよきょーやてめー・・・」
「呼び出しだよ。赤ん坊から」
「無視」
「却下」
スパァン!!と景気よくハリセンで叩かれる。
いってぇ・・・と唸り、は起き上がって欠伸した。
ベッドに座ってハリセン片手の恭弥は、しっかり学ラン着用でため息をついている。
こいつの指紋登録するんじゃなかったかなとはちょっぴり思った。しかし窓からも入ってくる。
「・・・なんで制服?」
「赤ん坊の茶番に乗る約束をしたんだ。借り一つで。なんとかファミリーのも関係あることだから、風紀委員として劇に参加させろってさ」
顔をしかめつつ問いかければ、なんともいえない答えが返ってくる。
あーそーッスか、と呆れてから、は欠伸してベッドを出た。
顔を洗ってから脱衣所に置きっぱなしの制服を着る。
ただ今日はサラシの変わりに大きめの包帯をぐるぐる胸の部分に巻くだけ。Tシャツならばこれでもバレない。
脱衣所から出ると、冷蔵庫を漁りながら恭弥がミツコさん年中無休になってくれないかな、とのたまりだした。本人に言えば銃で撃たれることは分かっているのでここだけの話しだ。
「つーかお前また朝飯なしかよ」
「時間が早いし。どうせ呼ばなきゃならなかったし」
「はいはいー。トースト何枚」
「一枚で十分」
とたとたキッチンに入ってパンを焼く。
恭弥はもう残り物を取り出してカウンターへ。
皿やら箸やらを棚から取り出してカウンターに置くと、目玉焼きくらい作ってとの注文が入った。
「はいこれレンジ」
「・・・タッパーのままでもいけるかな」
「レンジオーケーって書いてあるよ」
すっかり所帯じみてるが学ラン。物凄い違和感だ。
本当に目玉焼きだけやいてトーストを出して、タッパーのままつついて食べる。
ちょっとくらい気を使ったって、と横から文句がきたが、嫌なら食べなくて良いと言ったところ無言になった。
食べ終えて食器を洗っている間に、恭弥はのんびりテレビを見始める。しかもめざましテレビ。
あ、最下位だって(占い)、と言われてハリセン投げてやろうかとは一瞬殺気だった。
「何時に来いって?」
「あともう三十分てところかな」
歯を磨きながら問いかければ、壁に立ててある時計を見つつ返事が返ってくる。
煙草すえるな、と脱衣所に入ると、外から禁煙、との声が追ってきた。無視した。
そこらにほっぽってあった学ランを羽織りつつテレビの前へ。煙草を取り出して火をつける。
「なんだよ。恭弥だってブービーじゃねーの(占い)」
「目の前に最下位がいると随分気が楽だね」
「キョーヤ。お前は可愛いな」
「・・・ジジだろ。ジジ」
黒猫に語りかけて抱きついたところ、物凄く冷めた目で見られた。ついでにつっこまれた。
そうそう、と恭弥が声を上げる。
「つんつん頭の子のところ、死んだフリが得意な人が来るんだってさ。なんとかファミリーの一員らしいけど」
「へー。で?俺達は何をするんだ?」
劇の話を始める恭弥に、はのんびり返事を返す。
恭弥はまぁ引き立て役かな、と顎に手を当てて答えた。
「とりあえず死体の処理を僕らで済ませるって言えば良いらしいよ」
「なるほど。まぁそのほかのことは行ってみてのお楽しみか」
だるそうにが返事を返すと、そんなところだね、との相槌が返ってくる。
そろそろ向かうよと言われて、はへーいと返事を返しながら立ちあがった。
「学ランちゃんと着たら?少し寒いかもしれない」
「あー。秋ってめんどいなー」
「そのノリでいくと冬はダリーだな」
「大正解」
馬鹿な会話をしつつ外へ。
相変わらずなバイク走行で、住宅街の一軒家についた。
「へー。ここがツナん家か。初めて来た」
「・・・君さ、ボスなんだろ彼が」
塀によじ登っていた恭弥が、物凄い呆れ顔で言ってくる。
まあ気にすんなってとスタスタ歩いて、は一気に屋根に飛び乗った。
恭弥がじと目で見てくる。
「・・・やっぱりずるいよねそれ」
「まあまあ。つーか玄関から入らないわけ?」
「やぁ」
「無視かよ」
つっこんでいるを無視してスタスタ屋根を歩いた恭弥は、どこかの窓をがらりと開けて挨拶。
中からヒバリーー!!という多数の叫び声を聞いて、はどーんと恭弥を押した。ちょっと睨まれたけれど無視。
「よー。御揃いで」
!?なんで!?」
煙草を咥えつつ参戦。ツナに思い切り叫ばれた。
見れば武に隼人、ハルもいる。
「今日は君達と遊ぶためにきたわけじゃないんだ」
「まぁ、風紀委員の仕事でな」
ずかずか入っていく恭弥につられて、も土足で入ってしまう。
あ、ごめん、と謝るとなんでそんな普通なのーー!!?とのつっこみが入った。
「ふーん。やるじゃないか。心臓を一発だ」
「即死か?良い腕してんなやったの誰?」
「ツナだぞ」
「リボーン!!」
ごろりと恭弥が転がした男を、はしゃがみこんでマジマジ見つめる。
小声でどーもーと言っといた。
瞳孔が開いたまま目をあわせられて目だけで笑われた。ぶっちゃけ怖い。
リボーンの言葉にツナが真っ青になりながら叫ぶと、他三人がおろおろし始めた。
「ワオ。先越されたな」
「あれ。まだ殺したことなかったんだ」
「さらっと怖い会話してるしーー!!」
「いやー今日も快調」
「つーか!おまえなにしてんだよ!」
両手を頭において叫ぶツナを見てケラケラ笑っていると、隼人が青筋を浮かべながら怒鳴ってくる。
だから風紀委員の仕事、と答えては肩を竦ませた。
「ボスの危機とあっちゃあ俺が手ェかさねーわけにはいかんな。風紀委員の権力駆使してなんとかしてやるよ」
「正しくは僕の権力だけど」
ぽすぽすツナの頭を叩きながら笑うと、恭弥がさりげなくつっこんでくる。
そこは流せよ俺のために、と言うと、知らないよとのそっけない返事が返ってきた。
「うん。この死体は僕が処理してもいいよ」
「はあ〜〜〜!?なに言ってんの〜〜〜!!?」
さらりと恭弥が言えば、ツナがまた大声でつっこむ。
はぷっと笑って、窓に腰掛けると外に灰を落とした。
「死体を見つからないように消してなかったことにしてくれるんだぞ」
「いろんな意味でまずいよそれは!!」
「とりあえず、運び出す前に人相割れないように崩しとくか?」
「待った待ったーー!!」
銃を取り出して構えるに、ツナがブンブン手を振ってつっこんでくる。
銃声で警察呼ばれるかもよ、と恭弥に言われて、それもまずいな、とは銃をしまった。
「じゃああとで風紀の人間をよこすよ。
「へいへい――ああ草壁?とりあえず何人か人集めといてくれ。ああ、よろしく」
「委員会で殺しもみ消してんの〜〜〜!!?」
恭弥に視線を送られて携帯で話すふりをすると、ツナがやはりつっこんでくる。
みんないいリアクションだ。あの武が珍しく青ざめて焦っている。
行くよと言われて、はおーっすと外に出た。
「またね」
「おっじゃましましたー」
中に声をかけて、ひょいと下に下りる。
ツナが慌てて出てきた後に、隼人がダイナマイト両手に現れた。
「果てろ!!」
「そう死に急ぐなよ」
「・・・つーか俺のこと忘れてんだろ、コラ」
振ってきたダイナマイトを、恭弥がトンファーで全部打ち返す。
呆れ顔したは、ドォーンと部屋が爆発したのをぼーっと見て、恭弥に呼ばれた。
「アホだなーあいつら本当に」
「まぁ、完全犯罪はまずできないね」
ノンビリ話しつつバイクに乗って、そのまま発進。
これからどこかいく?と問いかけられて、帰って寝る、とは即答した。
「・・・物凄く不健康だな、本当に」
「ある意味健康的だろ。何処行くっつわれても思い浮かばないしなー。あ、カラオケ行くか。カラオケ。久々に歌いたいかも」
「カラオケ?」
顔をしかめつつおうむ返しされる。
顔を向けて嫌か?と問いかけると、無言になられた。
「行った事ないんだけど」
「あぁ、マジで?じゃ行くか」
「普通そこで行くっていう?」
「何事も経験。人前で歌えるようになっとけってー」
ケラケラ笑いながら言うと、物凄く大きなため息をつかれる。
そこまでリアクション返すか、と言うと、別にいいけどね、との返事が返ってきた。
ていうか開いてるかな、と言うと、開いてないかもね、との返事が返ってくる。
そこらで暇つぶしするかとが言うと、バイクが方向転換した。
「どこいくんだ?」
「いいところ」
問いかければ一言返ってくるだけ。
大人しくぼーっとしていると、ついた所は広い公園。
全面芝生で木も中々に植えられている。全部桜だ。
うわーすげーやったーと走っていくと、はしゃぎすぎ、とのつっこみが飛んできた。
「あー・・・可愛いー・・・」
「キティとかミッフィーだめなのに、子供は大好きなんだ」
「(恭弥の口からキティとミッフィー!)」
子連れの母親発見。
寝転がりながらほわほわ笑っているの隣に座って、恭弥が呆れ顔した。(色々な理由によりはさらに笑顔)
「あんな猫やらウサギの原形とどめてないものは外道だ。ピンク使ったって可愛くない」
「ピンクとか好きなわけ?」
「うー・・・ん、微妙。ものによるかな。感性で決める
「ああそう」
物凄く適当に返された。
学ランが二人、転がっているとやはり不思議なんだろう。たまに見られる。
いいなーたまにはこういうの、と転がっていると、携帯が鳴り出した。
見てみればツナからだ。
「やほー10代目」
!さっきのアレ!違うから!勘違いだから!殺してないから!風紀の人呼ばなくても』
「ああ、知ってる知ってる。先に聞いてたから」
焦った様子で早口に言ってくるツナに、は呑気に言葉を返す。
はぁ?!と叫ばれて、はケラケラ笑った。
一芝居うったことを伝えれば、勘弁してくれよと脱力される。
悪いねーと適当に謝っておいた。
おちょくって宥めてツナごしに隼人とじゃれあってから、電話を切る。
「なんだ。もうバレたのか」
「ああ。元々そのつもりだったんだしいいんじゃね」
興味なさそうに言う恭弥に、も適当に返す。
結局お昼を適当に取ってからカラオケへ。
恭弥が歌える歌といえば校歌くらい。らしい。
歌わせては爆笑。
ついでに全部覚えさせられて二人で歌ったり。(やはり爆笑)
恭弥をカラオケに嵌らせたのはいいが余計に経費がかさむことに気付いて、はちょっと後悔した。


















きっととっても楽しかったと思うよ、二人カラオケ。(校歌褒められても嬉しくもないけど。君の持ってるCD全部覚えてやる)