午前中、家でサボるだけサボっていたは、昼からは授業に出た。
さーて帰るべとのろのろしていたところ、ちゃおッス、との声が。
「・・・クソチビガキ」
「その呼び名なんとかならねーか。まぁいい。面白いもん見せてやるぞ」
「は?」
いたのはリボーン。なぜかロッカーの上に立っている。
が顔をしかめたが、リボーンは気にせずぴょいと飛んできた。
思わず両手で受け止めてしまっただ。
「お、坊主じゃねーか」
「ちゃお。お前も来るか?」
横から顔を覗かせてきた武をリボーンが誘う。
なんかあるのか?と首をかしげる武に、なんか面白いことあるんだと、とが答えた。
「わりー。俺これから部活あるんだわ!」
「あー。そうだな」
「そうか。それじゃあ――」
「あ!リボーン君だ!くん知り合いなの?」
両手を合わせた武。
頷いてそのまま首を回したリボーンだったが、女の子が顔を輝かせて寄ってきたためまたちゃお、と手を上げて挨拶した。
はえーとと声を上げる。
、京子だぞ」
「あー・・・ウン。京子ね」
「・・・お前実は知らないだろ?」
「タケ、牛乳に相談だ」
こそっと問いかけてくる武に、もこそこそ言い返す。ぐっと親指を上げられた。
二人でニヤッと笑ってから、まぁ知り合いだけど、と適当に返事を返す。
「こいつツナん家のヤツだろ?」
「そう!従兄弟なんだって」
「へー」
「そろそろ時間ねぇな。、行くぞ。またな」
「うん、ばいばい!くんもまた明日!」
「ああ。また明日」
ひらひら手を振って、はリボーンを手に外へ。
玄関で武と別れると、そこからはリボーンの誘導する道へ進んだ。
川付近で、なにやら騒がしい声が聞こえてくる。
「え。人落ちた?」
「行くぞ。ツナがいる」
ぐいとシャツを引っ張られて、は舌打ちしながらツナの元へ走る。隼人もいた。
よくよく見れば落ちたのは女の子。しかも溺れている。
「や・・・やばいよ!」
「助けてやる」
「リボーン!!」
「よ」
叫んでいるツナの近くまで行くと、リボーンは一人で手すりにひょいと移る。
が呑気に挨拶している間に、リボーンは死ぬ気弾をツナに打ち込んだ。
「あ」
撃たれたツナがひゅーと下に落ちていく。かと思えば、途中でばりっと脱皮した。
俺につかまれーー!!と叫びながら女の子を抱き上げるツナを見て、リボーンがニッと笑う。
趣味悪いなこいつと呆れ顔していると、下行くぞ、と言ってまた手に乗ってきた。
ため息をついて、は走っていく隼人の後を追う。
下に下りると、女の子をどさりと置いたツナがぜーぜー肩で息をして座り込んだ。
「おつかれー」
「あー・・・死ぬかと思った・・・」
「一度死んだけどな」
くくっと笑って茶化せば、げんなりしながらまぁね、との返事が返ってくる。
準備よくタオルを用意していたらしいリボーンは二人にタオルを投げ、の腕から降りた。
「ありがとーございました・・・」
不思議な武装をしていた女の子が、三角座りしたままお礼を言う。
すぐさま隼人が「ったく反省してんのか?」と声をかけた。
は苦笑いしながら三人を見て、煙草に火をつける。
「10代目にもしものことがあったら、おめーこの世に存在しねーんだからな」
青筋を浮かべてお説教する隼人。
しかし女の子は、黙り込んだかと思うとぷっと吹き出した。
隼人がさらに表情を硬くする。
「死ぬ気でハルを救う!俺につかまれーっ」
とーーっ、おりゃあーっ、と、何故だか動きまで入れて女の子がツナのまねをし始める。
引いたのはツナと隼人。もちょっと引いた。
「そんなクサイ台詞、テレビの中だけだと思ってました」
「(反省してねーーーっっ)」
「・・・哀れな」
ツナのつっこみを感じ取って、は同情のまなざしを贈呈。
しかし女の子は止まらない。
またモノマネをしてやめてよ!とツナに叫ばれていた。
「すごく・・・・・・ステキでしたよ。リボーンちゃんのかわりに飛び込んでくれた10・代・目」
語尾にハートまでつけて、ぽやんとした表情で女の子がツナを見つめる。
あらら〜とは声を上げた。リボーンが笑っている。
「ちょっ、はあ!?」
「ハルはツナさんに惚れたもようです」
「んな゛ーーー!!」
思い切りリアクションよく返すツナを見て、は苦笑いする。
隼人はもはや引いているのか呆れているのか分からない状態。
そして騒ぐツナと女の子はそのまま鬼ごっこ開始。
は隼人とリボーンと共に走る二人をのんびり見守った。
「春がきたな、隼人」
「・・・春・・・か?あれ・・・どう見ても災い・・・」
「まぁ。うん。いいじゃん可愛いし。どーも思考回路おかしいっていうかアホの子だけど」
「確実にアホだろアレ」
の言葉に隼人が即返してくる。そして煙草に火をつけた。
はケラケラ笑ってから、お前らそろそろ風邪引くぞと声をかける。間よくツナがくしゃみした。
「はひー!気付いたらもう一人かっこいい人が!」
「あー、どーも」
戻ってきた女の子が、を見て少しだけ顔を赤くする。
適当に返事を返したはニヤッと笑うリボーンを見て顔をしかめた。
物凄く疲れた様子のツナが、鞄からジャージを取り出して着ている。
「いっとくがハル、こいつは女だぞ」
「はひー!!?」
「わけあって男のふりしなきゃならねーんだ。調子合わせてやれ」
「あー・・・まあ、よろしく?」
頬をかきつつ首をかしげたは、女の子――ハルにじろじろ見られて目を泳がせる。
信じられませんこんなにかっこいいのに!と叫ばれて、あーどうも、と返しておいた。
そこでピリリリと携帯が鳴る。
首に下げていたは、ひょいと取ると電話に出た。
「よー恭弥おめでとう。アホの子が見つかったからお前は晴れて馬鹿の子だ」
『なに開口一番馬鹿言ってんの本当に殺すよ?で、今どこにいる』
「あー。学校の近くの川。飛び込んだ女の子をパンツ一丁になったツナが助け出して惚れられた挙句追いかけられるなんて面白ハプニングに遭遇中だ」
「一々言わなくていいからーーー!!」
「あはははっ。いー反応だぞーツナ」
真っ赤になってつっこんでくるツナに、はケラケラ笑う。
電話の向こうで呆れたようなため息が聞こえて、で、どうしたんだよ、とは笑うのを止めた。
『夏休みの予定決める会議。決まった後でまとめて。明日配布したいから』
「え。だったら決まったの家持ってきてよ。家で処理して明日印刷すりゃいいだろ?」
『僕に届けろっていうの?』
「どの道終ったら遅いからとかいう理由で飯たかるつもりなんだろ。来い」
『・・・はぁ。わかったよ。ただし明日のお昼はのおごりだから』
「はいはいりょーかいしました」
ぴっと電話を切ると、風紀の仕事?とツナに声をかけられる。
そーそー風紀の仕事、と答えると、はくるりと踵を返した。
「夏前だからって油断してると風邪引くぞ。帰ったら風呂入れ」
「あー・・・」
「はい!」
げんなりするツナとは裏腹に、ハルは元気よく返事を返してくる。
帰るのか、とリボーンに問いかけられ、は歩きながらああ帰る、と返事を返した。
「ちょっとくらい付き合ってもいいだろうに」
「ちょっとは付き合っただろ。じゃーな。ツナも隼人もアホの子もまた」
「アホの子ってハルですかーー!!?」
「当たってンな」
がーんとショックを受けるハルとは裏腹に、隼人は大喜び。
リボーンはチッと舌打ちしている。
「今度はお茶くらい付き合えよ」
「気が向いたらな」
ひらひら手を振って、はスタスタ歩いていく。
きょとんと首をかしげたツナは、リボーンに顔を向けた。
「お前が人をお茶に誘うなんてな」
「いい女にはツバつけとくもんだ」
「(なにこいつーーっっ)」
ニヤッと笑うリボーンの言葉を聞いて、ツナはまたオーバーリアクション。青くなりつつ。
それってを気に入ってるってこと・・・?と恐る恐る問いかけるツナに、リボーンはただにやりと笑って去っていった。
「・・・ビアンキにだけは知らせちゃいけない・・・」
「・・・ッスね」
ツナのつぶやきに、真っ青になりながら隼人が頷いた。




中学校はただいまテスト中。
しかしテスト免除のは教室で寝るか(テストは配られない)、応接室で風紀の仕事をするか、家でゴロゴロするかだ。
恭弥が迎えに来るか電話してこない限りは出ない。
ただいま蹴り起こされ、学校へ行く支度中。
ミツコさんに叱られつつは円のソファに座って着替え。
恭弥は半円のソファに座りながら欠伸している。
そこまではノンビリした空気だった。
携帯の着信音が鳴るまでは。
『緑〜たなびく並盛の〜大なく小なく並ーが・いい〜』
「・・・・・・・・・ぶっは!」
音に反応して顔を向けたは、恭弥の持っている真っ黒な携帯電話から校歌らしき音楽が流れてるのを見て噴出す。
校歌って初めて聴いたーーー!!と爆笑していると、目を細めつつ、そしてを蹴りつつ、恭弥が電話に出た。
ごほごほ咽ているうちに恭弥は電話を切る。
「ほら二人とも、ご飯できたわよ」
「はいはーい。あー笑った」
「・・・そこまでか」
「あはははは!だってお前、不良やってるお前が着信音・・・!狙ってただろ、笑い狙ってただろ」
「そこまで受けられると喜ばしい通り越して殴り飛ばしたくなるね」
いまだ爆笑しながらはカウンターへ。
しばらくしてから、恭弥も隣に座った。
「今日もお昼で帰ってくるの?」
「んー。テスト期間だしね」
がぱくりとサラダを食べながら答えると、あらあらそれじゃあお使い頼もうかしらー欲しい本あるのよ、とミツコさんが移動しつつ言い始める。
メモもらえりゃいくよーとが風呂掃除を始めたミツコさんに声をかけると、じゃあ書いとくわ、との返事が返ってきた。
掃除しているというのに聞こえてくる音がガシャーンだのドシーンだのバシ!だのいうのが怖い。いつものことだ。どころか恭弥も慣れた。
朝食を取り終えたあと、ベランダに避難するのもいつものこと。
ミツコさんにメモを貰ってから、は恭弥と共に学校へいった。バイクに乗せてもらって。
「はよーっす」
「はよ・・・」
「うわータケこえー」
教室に入ったら武が死んでいた。ツナも。
どうしたよと問いかければ、今日は数学と英語の二大テストだとの返事が。
あぁとは声を上げた。
「どうせ勉強してねーんだろ」
「部活ー・・・」
はいいよなー・・・受けなくていいんだから・・・」
「そりゃ今更受けてもな」
ひょうひょうとかえして席に座る。
隼人は懸命にツナを励ましていたがどうやら逆効果だった。
死に掛けた顔をしたツナが、ぐるりとに顔を向ける。
「どーせ今更とか言って・・・なんて中学のころもサボってたんだろ」
「うーわー死に掛け10代目。そんなの赤点ぎりぎりに決まってんだろ」
「やっぱり!」
「お前ならそうだと思ってた!!」
何故か結ばれる友情。
裏切ってなかったんだな!などと叫びながら武もツナも抱きついてきた。
呆れ顔してから、俺が真面目に受けると思うのかよとは言い返す。
まさか、と同時に返されついでに隼人に呆れられた。
ちなみに恭弥にはすでに呆れられている。期待してなかったけど、という言葉つきで。
教師が入ってきて、生徒たちがうめき声を上げる。武とツナも上げた。
このクラスノリいいよなーなどとぼやきつつは眠る体制だ。
テストが始まって数十分。
事件は起きた。
『緑〜たなびく並盛の〜大なく小なく並ーが・いい〜』
ガターーンッッと音を立ててが椅子から落ちる。
音源は、の首に下がっている携帯電話。
に顔を向けたクラスメイトたちが、どっと声を上げて笑った。
「こ、校歌って・・・!!」
「うるせー!!」
爆笑して息もつけないツナに怒鳴って、は立ち上がる。
通話ボタンを押してすぐさま怒鳴った。
恭弥ァァァアアア!!なんだこれェ!!」
『なにって、が物凄く喜んでたからわざわざダウンロードして設定してあげたんだよ。僕ってなんて親切なんだろうね』
「んでもってわざわざテスト中静まり返った中電話かけてきたってか!!」
『バカ受けじゃないか。おめでとう』
「ちっともめでたくねっつーの!!この・・・!!馬鹿の子が・・・!!」
くすくす笑いながら茶化してくる電話の向こうの恭弥に、とうとうは脱力する。
いまだクラス中爆笑。
しかし恭弥の名前が出て教師は少し引いている。
床に四つんばいになっていたは、ぐっと携帯電話を握った。
「お前・・・今日夕飯なし。むしろ暫く家に入れさせねぇ」
『え?なにそれ?それは横暴ってものじゃない』
「お前横暴って言葉知ってたんだ?知ってたんだ?ていうかこれ横暴じゃねーよ復讐だ畜生めぜってー入れねぇミツコさんにもチクってやる銃で撃たれればいいよ」
の発言に、クラスがざわめく。色々な意味で。
目を輝かせてを見ている女子もいる。
電話の向こうで恭弥がため息をついた。満足したように。
『まぁそこまで熱くならない。例の雑誌のお店のお菓子詰め合わせセットで手を打とうじゃないか。入れたての紅茶と10種類以上のお菓子が応接室でを待ってるよ』
お前それを早く言え
「(復活したーー!!?)」
『ああ、代金はの財布から出てるから』
「ブッコロすぞテメェ!!」
どうしようもないオチにまたが怒鳴る。
ツナはまた隣で一人つっこみだ。(「(物騒な話しになってるーーー!!)」
電話の向こうでため息をついた恭弥は、また言葉を続けた。
『わざわざ朝から並んで買ってきたんだからそれくらい良いだろ?』
「並んだのお前じゃないよな?リーゼントだよな?ていうかお前いつの間に俺の金盗んでんだ?」
『盗んだなんて人聞きの悪い。ちゃんとミツコさんに貰ったよ。お土産を条件に』
「もらってんなよなんで前からお前とミツコさん手ェ組んでるわけ!?」
次々つっこみが飛ぶが、恭弥は全く動じず。
ミツコさんとはメアド交換もバッチリと聞いてまた脱力した。
いいから早く来なよお茶がさめちゃうよっていうか暇、となんだかもごもご喋る恭弥に、「おまっ、先食ってんなーー!!」と叫んでは教室を飛び出した。
残ったクラスメイト達はぽかんとしながらを見送るしか術が無く。
そして応接室に走りこんだは、すでに一人で優雅にお茶している恭弥を見て本当に脱力した。
「なにやってんの?ほら、折角僕が入れたんだからさっさと座る」
「お前・・・ほんっとうに馬鹿の子・・・」
「全部食べていいんだ。・・・食べれないからミツコさんにお土産決定だな」
「食う食う食う食う」
ぼそりとつぶやく恭弥。
はすぐさま起き上がってソファに座る。
ストレートティーだ、といえば文句ある?とさりげなく睨まれる。しかしは無視。
目の前に並ぶ可愛らしいお菓子を見てうわぁと顔を輝かせた。
「可愛い?」
「うんッ」
機嫌よく満面の笑みで頷いたは、いただきまーすと手を合わせてぱくりと一つ食べる。そのまま足をばたつかせて大喜び。
恭弥がにやりと笑っていることに(そしてすっかり手玉に取られていることに)気付かなかった。



















ほんと君って、一緒に居て飽きない。(馬鹿な子ほど可愛いって身にしみて感じたよ)