夏休みに入ったというのに、ツナは補修で学校に来ていた。
山本も同じく補修組みだ。
数学の宿題を出されて、山本とリボーン(主にこいつ)の提案で、一緒に宿題をすることになった。
家に帰ってリボーンに大人しくするよう言っていれば、ピンポーンとベルがなる。
下に下りれば、コンビニの袋を提げた山本と獄寺がいた。
「え!?隼人!?」
「考えてみたらわかるやついねーとおわんねーだろ?獄寺がいたら100人力だぜ」
「そっか!隼人頭いいもんな!」
「?俺、百人もいない」
「(一気に不安につき落とされたーーー!!)」
山本の隣できょとーんとする獄寺。
山本はけらけら笑うと、獄寺の頭をぽすぽす叩いて例えだよ例え、とつっこんだ。
獄寺は首をかしげたまま、ふぅんと興味なさそうに相槌を打つ。
「つーかさ、ツナも名前で呼んでんだし、俺もお前のこと名前で呼んでいーか?」
「ん?うん」
「サンキュー!じゃあ隼人な!俺も名前で呼べよ!」
「うん」
にかっと嬉しそうに笑う山本。
同じく嬉しそうに笑みを浮かべながら頷く獄寺。
またきゅーんと音が鳴った気がした。
なにを思ったのか、山本がぎゅうぅと獄寺を抱きしめる。
「お前ホント可愛いのなー」
「?」
「しゅ、宿題やろうよ!早く終わらせてゲームしない?(なんかイラつく)」
「おっ、いーねー。じゃ、お邪魔しまーす」
「おじゃまします」
ツナの声に反応して、山本と獄寺がようやく入ってくる。
三人でツナの部屋に移動してから、宿題のプリントを広げた。
一問目からつまずいて、早速獄寺にSOSを出す。
ぼーっとツナたちを見ていた獄寺は、こくりとうなずくとこれはこうで・・・と教え始めた。
何問か終えた頃だった。
カリカリペンを動かしていた山本が、隼人お前さーと声を上げる。
「さっきから教科書読んでるだけじゃん」
「のってるし」
「ははは。そーなのな。でもツナに教えるときは教科書だけじゃなくねー?」
「ツナだし」
「おいおい俺にもちゃんと教えろよ」
「めんどい・・・し、出来てるし」
「ええ?」
苦笑いしながらばしーっと背中を叩く山本のプリントを、獄寺が指差す。
驚いて覗き込めば、確かにほとんど終わっていた。
「おーマジで?」
「あってる」
「やりー!あ、でもさ、問7はさっぱりわかんなかったんだ」
「うん。馬鹿だもんな」
「隼人・・・・(ンなはっきりと・・・!)」
こっくり頷きながら、獄寺はプリントを受け取る。
じーっと見つめた獄寺は、こてんと首を横に倒した。
「えっ、隼人?」
「もしかして・・・わかんねーのか?」
「・・・・・・ごめん」
「わ、わかんなくてもいいよ!ね!他の教えてもらってるしさ!」
「そ、そうそう!めっちゃ助かってるから!な!」
しゅぅんとする獄寺に、ツナも山本も焦って声をかける。
本当に?といわんばかりに見上げられて、またきゅーんと音が鳴った。
みんなで解こう!という方向で話がまとまり、三人でうーんと頭を捻らせる。
まったくとけない。
3時を過ぎた頃、部屋の外からリボーンが声をかけてきた。
「このくそ暑いのに、お前たちあつくるしーぞ。いっそのことガマン大会やれ」
「暑ッ!!!」
何かと思えば、しっかり防寒したリボーンがコタツにキムチ鍋をのせて現れる。
思い切り叫んだツナは、なにやってんだよ!!と勢いそのままつっこんだ。
「悪魔かおまえは!」
「俺じゃねーぞ」
「ハルは悪魔じゃありません・・・」
「ハル!!」
ゆらりとまた部屋の外から現れたのは、沈み込んだハル。
気分転換になると思ってとまったく見当はずれのことを言いながら、ハルはがたがたテーブルを動かし出て行った。
物凄く重い空気を残して。
「ハル・・・何しにきたんだ?」
「さ、さあ?」
「ははは・・・。もてんなーツナ。どーやって知り合ったんだよ。あんな名門の子と」
「名門?」
苦笑いした山本が、話をそらすようにツナに茶化しをいれてくる。
ツナが首をかしげると、山本はハルの通う緑中について教えてくれた。
へーと、ツナも獄寺も意外な事実に感心してしまう。
「この問7も楽勝だったりしてな」
「無理」
山本の言葉を、獄寺が一刀両断する。
え?とツナも山本も、声を上げて獄寺を見た。
「ハルはアホだから」
「(またはっきり言っちゃってるーーー!!)」
「なにいってんだよ隼人。もしかして嫉妬か?」
「・・・」
「か、顔逸らしちゃった・・・(微妙に可愛い)」
けらけら笑いながら山本が問いかければ、獄寺は顔を横に逸らす。
ツナはから笑い、山本はかわいーのなーとけらけら笑っていると、扉の方から「かわいい・・・」とぼそっと聞こえた。
驚いてみてみれば、ハルだ。
「なっ!(盗み聞きしてやがるーー!!)」
「はひ!ばれてしまいました!」
「ははは。おもしれー」
「ふっ、ばれてしまっては仕方ありません。獄寺さん!いくら仕草や表情が時折可愛くても、女の子のハルは負けませんから!」
「?」
「くぅ・・・!負けません・・・!!」
「なんの勝負だよ!!」
うっかりすれば、宿題を忘れそうになってしまう。
とにかくハルを含めて、また勉強会が始まった。
習いました!と豪語するハルに、全員がおおーっと期待した声を上げる。
しかし5分たっても、10分たっても、1時間たってもまったく進展はなかった。
三時間後、ようやくハルがわからないと暴露した。
思い切り期待をはずされたツナたちは、ずーんと空気を重くする。
「ごめんなさい!」
「ハルがアホなの、知ってる」
「隼人それフォローじゃないから!!てかどーすんだよ!!もう真っ暗だよーー!!」
うわぁぁあと自暴自棄になりかけていたところで、変な歌を歌いながら窓からランボが入ってくる。
このイラついてるときに・・・!とツナが睨めば、冷や汗を流して震え出した。
すすすとさりげなく横に移動して、獄寺の後ろに隠れる。
一切表情を変えない所為で、無害に思われたらしい。
「ランボ」
「な、なに?」
「ウザイ」
「ぐぴゃあ!」
案外イラついていたらしい。
奇声を上げたランボは、キムチ鍋に気付いて茶碗片手にすたすた歩き出す。
そのままハルがきゃっきゃと騒ぎ始め、ツナはとうとう邪魔するなら帰れと怒った。
山本がまーまーと何とか宥めるが、問題はまったく解けずじまいだ。
そこで、ああ!とハルが声を上げた。手と共に。
「この問題解けそーな大人の女性を知ってます!!」
「まじ!?」
「はい。この前一緒におでん食べたんですけど、すっごい美人で趣味は料理なんですよ〜!」
「すげー完璧!」
「女の中の女だ」
ハルの言葉を聞いて、山本も獄寺も安心して喜ぶ。
もちろん同じく安心していたツナは、繋がった携帯電話に話しかけるハルの言葉を聞いて、固まった。
「あ、もしもしビアンキさん?」
もちろん、獄寺も固まった。
「ま、待て!!」
「ビアンキは呼ばなくていい!!」
「お、隼人珍しいなー。大声出すとこ初めて見た!」
「ンなこと言ってる場合じゃ――速っ!!」
つっこんだりなんだりしているあいだにも、外からチリンチリーンと自転車のベルの音が聞こえてくる。
さっと立ち上がった獄寺が、ドダダダダと階段を駆け下りていった。
がちゃっと開きかけた扉をけりを入れて閉め返し、鍵を二重に掛けてぜーはー息をつく。
もうすでに顔が青い。
「その照れ方は隼人ね。私は問7を解きにきただけなの。あなたは姉を異性として意識しすぎよ」
「違う・・・!」
「(がんばれ・・・!)」
前から物凄い方向に勘違いされている獄寺。
ずーんと沈みながらも否定したが、ブショアァァァととける扉を見て震えながら目を見開いた。
バッと扉が開けられる。
「あがっ・・・!!」
「隼人!!」
やっぱり獄寺は倒れた。
呆れたようにため息をつくビアンキを無視して、なんとか獄寺をツナの部屋に運ぶ。
ビアンキを見なくてもいいように目にタオルを掛けて、ベッドに寝かせた。
「うぅ・・・」
「だ、大丈夫か?」
かなり真っ青な顔でうなされている獄寺に、山本がおろおろしながら声をかける。
さすがに心配になるだろう。相当酷い。
ツナも大丈夫?と声をかけながらそっと頭を撫でると、うぅ、とうめき声が返ってきた。
「お・・・」
「「お?」」
「おなか、いたい・・・」
「き、きゅんときました・・・!」
情けない声を上げる獄寺に、隣で見ていたハルが、キューンといいながら両手を合わせる。
似たような症状になりかけていたツナと山本はそっと顔を逸らした。
プリントを見ていたビアンキが、ため息をついてツナの隣に並ぶ。
あっちょっととツナが声をかけたが、完全に無視だ。
「お腹が痛いの?隼人」
「・・・」
無言ながらも頷く獄寺。
お前の所為だよとつっこまないあたりに、ツナは泣きそうになった。
「それじゃ薬貰ってきてあげる。寝てなさい」
「あ、問題どうだった?」
「あぁ、あれね・・・・・・どーでもいいわ」
「よくないよ!!」
さらっと流して、つっこみを無視してすたすた部屋を出て行くビアンキ。
どうすんだよ〜〜とツナがうなだれていると、獄寺がちらりと、タオルを取ってツナを見た。
そのままパタンとタオルを退かせると、ツナの頭を撫で始める。
またきゅーんときたツナは、隼人っ・・・と感極まって声を上げた。
「姉貴、ダメ、だから・・・」
「無理して喋んなくていいよ!」
「隼人」
「はぐっ!!」
「あぁぁあああまたーーー!!」
ひょっこり顔を出したビアンキを見て、また獄寺が腹を押さえる。
すたすたやってきたビアンキは、これを飲みなさいと水と薬をずいと出した。
獄寺は、ぎゅうぅぅぅとめを閉じながらぷるぷる両手を差し出している。
「お、俺飲ませて上げるよ。動くの辛いんだろ?」
「んじゃ俺も」
「だったら私がやるわ」
「ぇえ!?いいから!」
「どいて。邪魔」
「(ごめん隼人ーーー!!)」
どーんとビアンキに蹴り退かされて、ツナは謝りながら涙を呑む。
ぎゅーっと目を閉じながらぷるぷる震える獄寺は、口をあけてといわれて素直に口をあけた。
がぼっと薬をつめられて、がぼっと水を飲まされる。
ごほごほ咽ながらもなんとか薬を飲んだ獄寺は、そのまま倒れた。
「ちょ、大丈夫ーー!!?」
「睡眠作用もあるみたいね」
「(ぜってーちげーよ!!)」
悪化させてから、ビアンキはリボーンの元へ。
獄寺は布団をぎゅうぅぅうと握り締めて、なんとか耐えている。
「偉いよ。すげーがんばった。今日家でメシ食ってきなよ」
「・・・うんっ・・・」
「・・・泊まってっていいから」
「うんっ・・・!」
「いーなー。ツナ、俺も泊まっていいか?」
「あー・・・。うん、いいよ」
チッと舌打ちしそうになるが、何とかこらえて頷く。
その後ハルの父親が来たが、結局リボーンが解いてなんともいえないまま終わった。
新学期早々、ツナは笹川了平にあい、ボクシング部入部を死ぬ気で断った。
その後何故だか(いやありゃあ笑顔にやられたとツナは語る)獄寺を気に入った了平は獄寺を誘ったが、獄寺はツナの傍にいたいから、というなんとも乙女チックな理由でさらっと断った。
ボクシングのよさから始まり並べられた理由も、物凄くなびいてない顔で断り続け、結果了平が落ち込んだりもしたが。
そんな獄寺は現在、ツナと山本に連れられ屋上で昼食タイムだ。
もそもそ食べている姿が微妙にリスを連想させて、気を抜けばじっと見てしまう。(首を傾げられてまたきゅんとする悪循環)
なんともいえない誘惑と戦いつつも談笑していたツナは、現在。
栗に腕をつつかれていた。
「いたいいたい刺さってるーーー!!」
「これは秋の隠密要カモフラージュスーツだ」
「100人が100人振り返るぞ!!」
今日も絶えずつっこみが飛ぶ。
さらっと無視したリボーンは、急にアジトを作ると言い出した。
「へー。面白そうだな。秘密基地か」
「アジト・・・ね。ファミリーにアジトは必要だと思う」
「(こころなし嬉しそうーーー!!?冗談じゃないよ!!)」
山本も獄寺も乗り気だ。
ツナ一人が嫌な顔をしていたのだが、二人とも気付かない。
「どこに作るんだ?裏山か?」
「つまんない。遠い」
「あはは。隼人はめんどくさがりだもんなー。じゃあ近場がいいよな」
「学校の応接室だ」
笑いながら無駄に肩を組む山本。
あっと思う間もなく、リボーンが場所をさくっと暴露した。
応接室?と全員がリボーンを見る。
「応接室はほとんど使われてねーんだ。家具も見晴らしもいいし、立地条件は最高だぞ」
リボーンの言葉を聞いて、乗り気の山本と獄寺はもう歩き出す。
まずは机の配置換えからだな、俺ツナの右側がいいじゃあ俺その隣!と楽しそうに歩く二人の後ろを、ツナは嫌々ながらもついていった。
応接室、と書かれたプレートの下に、押し戸が一つ。
人気のない廊下を不信に思いながら、ツナは山本と獄寺の後ろに止まった。
「へ〜〜。こんないい部屋があるとはね――っ!」
「タケシ?」
扉を開いてすぐ息を詰まらせた山本を見て、獄寺が首をかしげる。
中から聞こえた声に反応して、獄寺がすたすた前に出た。
ツナはおろおろしながら後に続く。
ちらりと見えたのは、目つきの鋭い黒髪の男子生徒だ。
「ここ・・・使ってる?」
「そうだよ。ここは風紀委員の活動場所だ」
「仕事・・・してるのか?」
「うん」
こてんと首をかしげながら問いかける獄寺。
少年は、少し怪訝な顔ながらも獄寺の問いかけに頷く。
少年が頷いたとたん、獄寺が申し訳なさそうにしゅんとした。
きゅん、とまた聞こえた気がしてツナは耳に手を当てる。聞こえない。
「仕事、邪魔した。・・・ごめん」
「・・・。一体何をしにきたの?」
「アジト作ろうとしてた。誰も使ってないって言うから・・・ごめん」
しゅんとした犬にしか見えない。
またきゅーんと音が聞こえた。気付けば胸を押さえていて、見れば山本も押えている。
少年が同じように胸に手を当てて、自分で分かってなかったのか首をかしげた。
「ふぅん・・・。君、名前は」
「獄寺隼人」
「そう。君が風紀委員に入るなら、見逃してあげてもいいよ」
なにを?と思っていれば、少年は何故だかトンファーを取り出す。
山本がまずいとつぶやいて青くなった。
「俺はツナの部下だから無理」
「隼人ーーー!!?友達でしょ!友達!」
「・・・将来は部下だもん」
きゅん、とまた変な音が聞こえる。
ああもうなんの音これ!とツナが頭を抱えていると、ふぅんと不機嫌につぶやいた少年がトンファーをぐるりとまわした。
「誰それ」
「ツナ」
「ちょ、隼人・・・!」
すっと横を向いて、ツナを手でさす獄寺。
少年とばっちり目があったツナは、ヒィッと声を上げた。
少年がにやあと笑う。
「それじゃあそいつを咬み殺せば、君は僕の部下になるって訳だ」
「ダメだ。ツナは俺が守る」
「隼人・・・」
しっかり少年と対峙する獄寺に、ツナはじんと感動してしまう。
少年は、気に食わない顔だ。
「そんなに大事なの」
「うん。ツナしかいない」
「えー。隼人俺はー?」
「あ。・・・タケシは2番」
「んー。ま、今ンとこはそれでいいか」
何気にさらりと会話に入る山本。
満足そうにこっくり頷いた山本は、くるりとツナに振り返った。
「いつか隼人の一番貰うからな!ツナ!」
「は!?やだ(アレ!?)」
ぽろっと出た言葉に、ツナ自身驚いて首をかしげる。
へーえと声を上げた山本は、目を細めて笑みを深めた。
「でも俺譲る気ないし」
「(なんか山本が怖い・・・!)」
「ふぅん・・・そういうこと」
山本に続けて、少年が納得したといわんばかりの声を上げる。
多分中心の人物の獄寺は、一人こてんと首をかしげた。
ツナはちょっと恨めしく思ってしまう。
「争奪戦か。面白そうだね」
「勝つのは俺だけどな!」
「?」
「わかんなくていいと思うよ。・・・多分」
「うん」
ツナの言葉に、素直にこくりと頷く獄寺。
ついつい頭を撫でてしまう。
不思議そうにツナを見ていた獄寺は、頭を撫でられたのが嬉しかったのかふんわり笑う。
また、きゅーんと音が聞こえた。
「・・・そういうこと」
「そうなんだよ」
「(いやなにが)」
何故だか納得しだす山本と少年。
にこにこ笑っていた獄寺が、二人を見て首をかしげた。
にこーっと笑った山本が、獄寺の頭を撫でる。
最初きょとんとしていた獄寺は、またふんわり笑った。
きゅーんとまた変な音が聞こえる。
「この音、一体何なんだろう・・・」
「多分隼人効果だと思うぜ」
「ていうかいい加減離れたら?目障りだ」
「おっと」
ブォンと音が聞こえたかと思えば、さっと避けた山本の後に銀色の線が見える。
トンファーを振り回したらしい。
ツナがぞっと背筋を震わせていると、獄寺がむっと少年を睨んだ。
2番でも友達は大事らしい。
獄寺の視線に気付いたらしい少年は、ため息をつくとトンファーをしまった。片方だけ。
「ああいうのはセクハラっていうんだから。君も大人しくしてちゃだめだよ」
「っていいながら・・・」
「僕のはセクハラじゃないから」
「なにそれ」
なでなで獄寺の頭を撫で始める少年。
むっとしていた獄寺は、こてんと首をかしげた。
少年は首をかしげる獄寺をみながら、なでなで頭を撫でる。
じーっと少年を見ていた獄寺が、目を細めてふんわり笑う。
少年も満足そうに笑った。
「これで僕のものね」
「いやちげーから」
「うん。絶対違いますから」
「文句あるわけ」
ぎろ、と睨まれるが、山本が負けじとにらみ返している。
あれ、こいつこんなやつだっけと思いつつ、ツナも視線がするどくなっていた。
ツナたちを見てきょとーんとした獄寺は、少年をじっと見る。
少年は、なに?と首をかしげた。
「・・・名前」
「ああ・・・雲雀恭弥だよ」
「ヒバリ」
「うん。そう」
「つーかいい加減手はなせよな」
こくりと頷く少年――ヒバリから、山本がべりっと獄寺をはがす。
むっとしたヒバリは、トンファーをまた取り出して構えた。
「何勝手なことしてるの」
「勝手なこといってんのはお前だろ。隼人は俺のなの」
「いや山本も十分勝手だから」
「じゃあツナのだってーのかよ」
むむっと、山本がツナを見る。
ツナはうろたえかけた。しかしなんだか譲れないと思ってしまう。
「隼人は誰のもの?」
つい、ツナは獄寺に話をふる。
山本に後ろから抱えられながら、獄寺は首をかしげた。
「俺は俺のものだと思うけど」
「「「(確かに)」」」
今更ながら納得してしまう。
ぺしぺし山本の手を叩いて脱出した獄寺は、ふぅと息をついた。
物凄くマイペースというか、今現在自分の置かれた状況を把握してないことがありあり分かる。
「メシ」
「あー・・・そっか。途中だったか。んじゃ行くか」
「あー・・・うん。そうだね」
「そう。それじゃあ咬み殺そうか」
「「「え」」」
結局トンファーで殴られた。
何故だか一番遠くにいたツナから殴られ、怒った獄寺が襲い掛かったが殴り飛ばされ、山本がやはり怒ったが結局殴りられ、死ぬ気弾を打たれてちょっと戦ってからリボーンのお陰で脱出して。
屋上に戻ってから、厄介なのに目をつけられたとツナは絶叫した。
・・・一番目をつけられた獄寺は、俺が守る、とずれた使命感に燃えていたけれど。
(ははは。隼人天然なのなー)(?タケシだろ)(いや君も十分だって)(そーだぞ。いくら口説いても気付かねーしな)((は?なんだって?))