ツナくんと友達になってから、私には今までとは違う、本当の友達といえる人たちが増えた。
まずは、ツナくんといつもつるんでる獄寺君と山本君。
それから、違う学校に通ってるハルちゃん。(なんと緑中だ)(兄さんは今のところ許してくれてる)
今日はハルちゃんと買い物に行く約束をしています!
「それじゃあ、いってきます」
「いってらっしゃい。5時には帰ってくるんだよ」
「うん」
・・・相変わらず、兄さんは生真面目で厳しい。変なとこ寛大なのに。
約束していた場所に行けば、まだハルちゃんはいない。
途中風紀委員の人を見かけたけど、みんな結構お休みも制服で過ごしているから、遊びにでも出てるんだろう。
ただリーゼントはどうかと思う。
「あ、ちゃん!」
「ハルちゃん。こんにちは」
「こんにちは!」
時間ぴったりに来たハルちゃん。
今日も可愛らしい。
じゃあさっそく行きましょう!と手を引かれて、私は笑いながらハルちゃんの隣に並んだ。
「今日のためにおこずかいためてきました!」
「私も!買い物したら、ナミモリーヌ行かない?」
「さんせー!今日はちゃんとデート記念です!」
デート記念って、と笑ってしまう。
色々なお店を回って、兄さんに頼まれてたノートと消しゴムもしっかり買って、それじゃあナミモリーヌだ!と二人で息巻いた。
こんな風に誰かと買い物するなんて、兄さん以外じゃ初めてだ。
家族で、とかいうのは小さな頃よくあったけど。
ナミモリーヌに入ってカフェオレと御菓子を頼んで、二人して堪能して学校のことなんかをお喋りして。
ああ、私、もしかして今すごく幸せかもしれない。
・・・あれ?なんか、自分で自分が不憫・・・?
「ときにちゃん」
「なぁに?」
さっきまで楽しそうに話していたハルちゃんが、急に真剣な顔つきになる。
しかもしゃきっとわざわざ座りなおして。
私もそうしなきゃかと、そわそわ座りなおした。
「ずばり、ちゃんもツナさんに惚れてますね?」
「・・・!」
ばれた!
と、私は身を硬くしてしまう。
ハルちゃんは私をじーっと見て、やっぱり、とつぶやいた。
ハルちゃんがツナくんのことを好きなのは、知ってる。・・・というか、アレで気付かない方が可笑しいというか。
せっかく出来た友達がなくなってしまいそうで、私はハルちゃんから視線を逸らした。
「・・・うん」
嘘はつけそうになかったけど。
そうですか・・・と、やはりハルちゃんは深刻な声で相槌を返してくる。
これで、楽しい時間は終わりなんだろうか。
「それじゃあ、これからハルとちゃんはライバルですね!」
「はい?」
ライバル。ああライバル。うんライバル。
思わず顔を上げれば、挑戦的な笑みを浮かべてるハルちゃん。
私は呆気にとられた。
「いくらちゃんでも、ハルは負けませんから!」
「う、うん」
「ちゃんも、手加減なんて一切無しですからね!」
女と女の勝負です!と握りこぶしで熱く言うハルちゃん。
友達、なくしそうにないかもしれません。
「うん!がんばる!」
「はい!しょーぶです!」
自然と、笑えてた。
ハルちゃんもにこにこ笑いながら言ってくる。
多分、ハルちゃんも不安に思ってたんじゃないかな。
ハルちゃんがハルちゃんで、本当によかった。
それから私たちはツナくんのどこが好きだとか、どこがいいだとかに熱が入って・・・多分今日の中で一番力が入ってたと思われる。
女の子トークなんて久々・・・いや、雲雀になってから初めて、だ。
なんだろう。急に将来が不安になってきたんだけど。
「やっぱり一番は優しいところですよね〜」
「だよね〜。下心無しで優しいところがすごいと思う」
「ですよねー!もうもう、やっぱりツナさんはステキですぅ!」
じたばた足を振るハルちゃん。
可愛いなぁと素直に思う。
・・・私、勝てるんだろうか。いや勝つ以前にツナくんに・・・女の子としてみてもらえるかな。
最近じゃあ二週間に一度は必ず話せるけど、それでも全然近くない。
ハルちゃん、何歩も有利です。
何て言ったら。
「それじゃあツナさん家に行けばいいんですよ!」
「え゛」
やっぱり、行動力からなにからハルちゃんが物凄く有利だと思う。
そんなこんなでナミモリーヌを出て、やってきたのは普通の住宅街だ。
ツナくんの家はここらしい。
「ツーナーさーん!」
「あらハルちゃんいらっしゃい。あら?そちらの子は?」
「は、初めまして!雲雀です!」
多分ツナくんのお母さんだろう。
可愛らしい雰囲気の人だ。
あああなたがと言われて、私は首をかしげた。
「ツナから話しは気いてるわ〜。お菓子作り上手なんですってね」
「え!?あ、あの、そそそそんな」
「いつもありがとうね〜。あ、これ、よかったら食べて。ツナたちなら2階にいるわよ」
上がって上がってとほいほい家に入れられて、ハルちゃんに引っ張られて2階に上がる。
ツーナーさーん!と元気よくハルちゃんが入れば、中からうわあ!というツナくんの悲鳴が聞こえた。
「んでテメーまで来るんだよアホ女!」
「ハルはアホじゃないですー!」
「あはは!お前ら仲良いのなー。・・・ん?おー!雲雀じゃねーか!」
「え!?・・・って、ちゃんか。よかったー・・・」
「えと・・・お邪魔します」
山本君に気付かれたかと思えば、ツナくんがむちゃくちゃ驚いてから胸をなでおろす。
うん。兄さんだったらびっくりだよね。
ああ?と、ハルちゃんと口げんかしていた獄寺君が私を睨んだ。
「お前まで来たのかよ」
「え・・・う、ん・・・」
「いーじゃねーか楽しくてさ。雲雀の私服初めて見たなー。お前私服でも可愛いのな!」
「え!?」
「(うん言えてる。俺今日運いいかもしれない・・・!)」
なに言ってんのこの人は!と叫ばなかった私を誰か褒めて欲しい。
ああ顔が熱くなってきた、と手で仰いでいれば、えーっと中入って、とツナくんに呼ばれた。
お邪魔します、と中に入って、山本君が開けてくれた場所に座る。
ハルちゃんは、しっかりツナくんの隣をキープだ。
・・・うらやましい。
「ちゃおッス」
「え?・・・うわぁ、可愛い!こんにちは」
後ろから声がかかって、振り向いてみればスーツを着た赤ん坊がいる。
いいなぁ。抱っこしたいなーと思うけど、この子全然隙が無い。
なんでだろう。タダの赤ん坊に見えない。
しかもニヒルに笑ってる。
「雲雀だな。会いたかったぞ」
「え?私のこと知ってるの?」
「知ってるぞ。1−C、23番雲雀。趣味・特技はお菓子作り。雲雀の妹で風紀の手伝いによく借り出されてる5月5日生まれ」
「・・・君何者?」
何故兄さんと一緒の誕生日まで知ってるのか。
私が首を傾げれば、赤ん坊はさらににやーっと笑った。
なんか、可愛いけど、怖い?
「さすが雲雀の妹だな。空気で分かったか」
「ちょ、リボーン!変なこと言うなよ!」
「お前、ボンゴレにはいらねーか?」
「ボンゴレ?」
「リボーン!!」
パスタだろうか。
それにしてはツナくんの焦り具合が尋常じゃない。
「ご、ごめんねちゃん!こいつのこと気にしなくて良いから!」
「ははは。またボーズのマフィアごっこか。俺たちボンゴレっつーマフィアなんだ。ツナをボスにしてな」
「へ〜。面白そう〜」
「(山本ーーーー!!)」
にこにこ笑いながら教えてくれる山本君。
なるほど子供の間で流行ってるのか。・・・うん?何か忘れてるような?
「バカいってんじゃねー!ごっこじゃねえっつってんだろ!!」
「な?超熱いんだぜ」
「へ〜。いいな。ツナくんがボスってステキだね」
「え!?」
「む・・・(わかってんじゃねーか)」
「ですよねー!ハルはツナさんの妻になるんです!」
え、それはちょっといただけない。
少しむっとしてしまったけど、山本君にばしっと叩かれて倒れそうになった。
慌てて手を突いてなんとかこらえたけど。
「もやろうぜ!」
「山本ーーー!!?」
「うーん・・・うん。やろうかな」
「(やめて!!)」
こっくりうなずいた途端、ツナ君が頭を抱え出す。
どうしたのかとツナくんを見たけど、にやっと笑ったリボーンくんがぴょんと私の膝に飛んできた。
「決まりだな。これでもボンゴレの一員だぞ」
「リボーン!!ちゃん、やめていいから!つかやらなくていいから!」
「え?・・・やっぱり、女のマフィアなんてダメかな」
「(ああぁぁ泣きそうな顔はやめてくれ〜〜〜)」
「そんなことねーって!」
「女でもマフィアやってるやつはいるぜ。俺の姉貴もマフィアだ」
「そうなんだ?」
ツナくんにいきなりダメだし食らって凹みかけるけど、山本君と獄寺君がフォロー?に回ってくれる。
うん、ちょっと元気出たかもしれない。
けど、ボスのツナくんはおろおろしてる。
「ツナくん・・・入っちゃダメ?」
「うっ・・・」
「もう決定事項だぞ」
「リボーン!勝手に決めるな!!」
くるりとツナくんに体を向けてリボーン君が言う。
ツナくんが怒った顔で怒鳴っても、物凄く余裕の表情だ。
やりーと山本君が声を上げた。
「じゃ、これやらよろしくな!!」
「うん!よろしく!」
「10代目の右腕は俺だからな!」
「右腕?」
「一番の部下だ。ったく、なんも知らねーのかよ」
「ご、ごめんなさい」
「まーまー。これから知ってきゃいーじゃん。な、!」
「う、うん!」
てゆーか、いつの間に山本君は私を名前で呼んでるんだろう?
頭を撫でられて、ついへらりと笑ってしまう。
あぁぁ・・・とツナくんが変な声を上げてうなだれた。
「ツナくん?どうしたの?・・・大丈夫?」
「えっ、う、うん。・・・ちゃん、危ないんだよ?うん、やっぱやめたほうが」
「しつけーぞツナ」
「だってさリボーン」
まだ食い下がらないツナくん。
というか、ごっこ遊びで危ないって、どんな遊びをしてるんだろう。
リボーンくんが、物凄く大人な態度でため息をついた。
「しょーがねー。はファミリー補欠にしといてやる」
「補欠って!スポーツとは違うだろ!!」
「あはは!いーんじゃね?じゃ、ファミリー入りできるようにがんばんないとな」
「うん!けど、なにをがんばればいいのかな?」
「やっぱり、女を磨くとかですかね?」
こてんと首をかしげるハルちゃん。
うーんと二人で唸っていれば、獄寺君がけっと言った。態度悪い。
「ンなもん殺しの腕を上げるに決まってるだろ」
「殺しって!!(変な知識植えないでーーー!!)」
先輩?である獄寺君の一言に、ツナくんが真っ青になる。
えーっと、多分、いい、のかな?・・・いや殺しとか言っちゃってるし!
でも山本君はそっかーとかいって笑ってる。
これでいーんだろうか。
「はい!ハルはボスであるツナさんを支えることも重要だと思います!」
「そーだな。ハルの言うとおりだぞ」
「そっか。・・・じゃあ、とりあえずツナくんのサポートからかな?」
「だったら勉強教えてやれ。俺も助かる」
「(それくらいなら・・・素直に嬉しいけど)」
「あとは不良を咬み殺せればいーかな」
「(咬み殺す言ったーーー!!)」
首をかしげながら言えば、真っ青になるツナくん。
ん?どこで滑った?私。
けど山本君は爆笑だ。
獄寺君がまたけって言ってるけど。
「不良くらい倒せなくてどーすんだよ。それ以上にファミリー一個潰せる程度の腕は持っておけ」
「ファミリーって、他にもマフィアがいるの?」
「当たり前だろ。まずボンゴレっつーのはな」
「うんうん」
ことこまかに設定を教えてくれる獄寺君。
この人、不良なのに真面目だ。(遊びに)
山本君も隣で聞いてて、時折へーなんて声を上げてる。
「で、やっぱり10代目をお守りするには武器が必要だ。俺はこのボムを使ってる」
「ワォ。ダイナマイト?渋い」
「む・・・わかってんじゃねーか」
「俺は刀だぜ。はなんにする?お菓子得意だし、ビアンキさんみたいなポイズンクッキングとか?」
「それだけはやめて!!(俺の貴重な楽しみが!!)」
それまでうなだれていたツナくんが、急に元気になって叫び出す。
獄寺君がおなかを抑えて真っ青になった。
ビアンキさんもポイズンクッキングも、私は分からない。
「ぽいずんくっきんぐってなに?」
「毒の仕込まれた料理のことだぞ。ビアンキの場合、作った料理が全てポイズンクッキングになるけどな」
「毒か〜」
「やめろ。ぜってーやめろ。それだけはダメだ」
「うん。本当にそれだけはやめてお願い」
それなら出来そうだな、と思ってたけど獄寺君とツナくんに物凄く一生懸命とめられる。
わかったと頷けば、二人とも心底安心したように息をついた。
もしかして、本当に食べ物に当たったのかな・・・それは辛い。
「はちゃんと武器を持ってるぞ」
「え?」
「そーだろ」
「えっと・・・兄さんに貰ったトンファーならあるけど」
「(ヒバリさんなにあげてんのーーー!!?)」
絶対に持ってないとダメ、と言われてるから、一応いつでも取り出せるように仕込んである。
今日はベルトに仕込んでいたから(特注品だよ兄さんから貰った)、それを取り出した。
おぉ、と山本君が声を上げる。
「兄貴の真似できるか?」
「え?・・・君たちなに群れてるの」
「似てるーー!!」
じゃき、とトンファーを構えて目を細めて、声を低くして、とやってみれば、ツナくんに大受けする。
いー感じだぞとリボーンくんに言われて、ありがとうと頭(帽子?)をなでておいた。
カメレオンがいる。
撫でたらこっち見た。
「」
「なに?」
「アレを何とかしてみろ」
「え?あ」
「手榴弾!?」
「ガハハハハ!死ねリボーン!」
窓の外からぽーんと投げられた手榴弾。
木の枝に小さな男の子がいる。
とりあえず、トンファーで外にはじき返しておいた。
ら、どかーんと本当に爆発した。
「え・・・?ほ、本物・・・?」
「おー!やるじゃん!」
「チッ・・・」
「あ、あの、さっきの子は」
「あいつは放っといても大丈夫だぞ」
いつものことだとリボーンくんに流された。
ツナくんを見ても、ははは・・・と壊れたように笑ってる。いいのか、アレ。
そんなこんなで、初心者の私は獄寺君からマフィアについてのお勉強をそれから義務付けられた。
教師は獄寺くんだ。
「とりあえず、ツナくんのことは10代目って呼んだほうがいい?」
「ダメ!ツナでいいから!」
「そっか・・・まだ補欠だもんね」
「(お願いだからしゅんとしないで・・・)」
どうやら、ツナくんへの道は長そうです。
その日は5時になる前にツナくんの家からお邪魔して、また遊ぼうねーと約束して帰った。
兄さんに会った途端群れてたことを思い出したけど、バレなければいーかな。
「ただいまー」
「うんおかえり。。今日群れてなかったよね?」
「え?うん。ファミリーに入りたかったけど、初心者だから補欠だって」
「・・・なにそれ?」
補欠なら群れって言わないよね。
リボーンて赤ちゃんが可愛かったって話したら、何故だか食いつかれた。
(ボンゴレってゆーんだって)(マフィアなんてならなくていいよ)(え〜折角誘ってもらえたのに)(群れるな)(そっち?)